写真© Олександр Луценко-Fotolia

私が監修している物件では、新たな入居者さんのウエルカムパーティーや、家賃のクレジットカード払い、インターネット無料など色々なコトを実施しています。今日はたくさんある施策の中から、猫専用賃貸ならではのアイデア「ノラネコ割」について、お話いたします。

「ノラネコ割」と言ってはいますが、実際は入居に際して新たに野良猫や保護猫を迎えた場合、1匹につき5000円を支給する「キャッシュバック」に近いやり方をしています。例えば、入居者さんが新たに野良猫を3匹保護して一緒に住む場合、1万5000円をお渡しする、というイメージです。

「ノラネコ割」をきっかけにして猫専用賃貸を知り、新たに野良猫や保護猫を飼う決意をされた入居者さんは、監修物件に4名ほどいらっしゃいます。

「野良猫を救ってくれてありがとう!」の気持ち

「野良猫を保護する」「保護猫を貰い受ける」のは、簡単にできる行為ではないのです。保護する、貰い受けると決めた以上、その猫が天寿を全うするまで責任を持って飼養する必要があるからです。

0歳の子猫が15年生きたとして、一生に掛かる費用はザックリですが150万円程度と言われています。新たに迎え入れる場合、避妊去勢手術や健康診断といった医療費から、猫トイレなど猫用グッズの用意など、何かとお金が掛かります。「ノラネコ割」は、そんな飼い主さんの懐具合をちょっとだけ支援させていただくという、大家からの「金一封」のつもりでお渡ししています。

「ペットショップで買った猫はどうしてダメなの? 同じ生命じゃないか!」と思われる方もいらっしゃることでしょう(実際、言われたことがあります)。仰ることはごもっとも。どちらも尊い命であることに違いはありません。

皆さんは、日本の野良猫が年間何匹、殺処分されているかご存知ですか? 環境省自然環境局発表の最新統計資料によると、昨年の猫殺処分数は4万5574匹。データを見ていただくと、年々殺処分数は減少、返還・譲渡される頭数が増加と、嬉しい結果になってきています。10年前に比べると、ペットを飼う人の意識が大きく変化してきていることの証拠だと思います。

出典:環境省ホームページ

とはいえ、未だにこれだけの猫たちが毎年、殺処分されているのです。殺処分される猫の70%は1歳未満の子猫と言われています。近年、野良犬の姿を外で見かけることがめっきり少なくなりました。

狂犬病の恐れや、人間に危害を加える可能性のある犬に関しては、行政が積極的に野良犬の確保を行いますが、危害を加える危険性の非常に少ない猫の場合、行政が躍起になって「野良猫狩り」をすることはありません

また猫は多産動物で年間複数回の妊娠が可能な動物ですので、避妊去勢手術を施していない生粋の野良猫がいる場合、ネズミ算的にその数が増える可能性があります。こういう社会的背景から、現在の日本において「猫を飼うキッカケ」は「野良猫を拾った、付いてきた、家族が連れてきた」が1位になるのです。

犬を飼おうと思っている人が実際に飼うことを決めた際、最初に頭に浮かぶ選択肢は「ペットショップで買う」のはずです。だって現代は野良犬と出会う機会がもの凄くレアですからね。

また「犬を飼おう!」と思う動機の多くが、「映画で登場した柴犬が欲しい!」や「テレビドラマに出てきたラブラドール・レトリバーが飼いたい!」など、犬種一本釣りのケースが多いように思います。そうすると必然的にペットショップやブリーダーから入手するのが確実です。

猫の場合は前述の通り、出自は野良猫を飼っている家庭が大半。その多くが「飼うつもりはなかったのだけど、飼わざるを得ない状況になってしまった」から飼っている、というのが実情なのです。

つまり「犬を飼う」、「猫を飼う」という行為には飼い主側のマインドに大幅な差がある、ということなのです。「よし! 犬か猫を飼うぞ!」とマインドセットができている人は、迎え入れるための準備も万端なハズ。期せずして飼うことになった人は、あたふたすることになるのは目に見えていますよね。

私がノラネコ割を始めたキッカケは、私自身も飼っている猫たちが野良猫で、飼うまでに莫大な費用が掛かったから、なのです。目ヤニで目が完全に閉じてしまった子猫の手術・入院費用、親猫共々の避妊手術費用、ワクチン接種費用…ここまでで軽く10万円以上は掛かっています。保険のない動物の医療費は、ビックリするほどものすごく高額なのです。

これ以外にも、ペット可賃貸に移るのであれば引越費用も掛かります。このように私が行っている施策は、全て自分の経験を基に行っているのです。あなたがペット可の賃貸をお持ちだったり、これからペット可にしよう、ペット可物件を作ろうと思っている大家さん・オーナーさんでしたら、ぜひ、この「ノラネコ割」を導入して、ノラネコを保護した入居者さんを応援してあげてください。