地中の状態は目に見えないため、地盤の良し悪しは地盤調査をしなければ判断できないと思われがちだ。しかし、ちょっとした前提知識をもって注意深く観察すると、地中に隠れたリスクが浮かび上がってくる。

そこで今回は、住宅メーカーや各種団体などで多数の講演実績をもち、地盤関連の著書も多い地盤コンサルタント・高安正道氏監修のもと、目視だけでわかる危険な地盤のチェックポイントを紹介したい。土地選びにはもちろん、中古物件購入時の参考にもなるはずだ。

「崩れる地盤」8つの意外な共通点

まず前提として、物件購入に当たって避けなければならないのは「軟弱地盤」と呼ばれる地盤である。軟弱地盤とは文字通り弱い地盤であり、ここに改良工事なしで建物を建ててしまうと、地盤の一部が沈下して建物が傾いてしまう「不同沈下」や「液状化」といったさまざまな被害が想定される。

軟弱地盤の最大の特徴は、「地下水位が高い」ために地表近くに多くの水を含んでいる点だ。

では、目に見えない地中の水位をどのように探ればよいのだろうか。高安氏によると、主なチェックポイントは次の4点だという。

1.周辺に水路、橋、暗渠がある

「水は低きに流れる」と言うように、「低地」には水が集まりやすく、地下水位も高くなる。水路やそこにかかる橋の多くは低地にあるため、これらは比較的わかりやすい軟弱地盤の目印となる。あくまで目安だが、成人がまたげないくらいの幅の水路が数百メートル以内に複数あった場合は軟弱地盤を警戒する必要がある。

一方、見落としやすい目印に「暗渠(あんきょ)」がある。暗渠とは、水路にコンクリートで蓋をして遊歩道などとしたもの。一見すると通常の道路と変わらないように見えるが、その下には水路が隠れているのだ。暗渠を見分けるポイントは、入り口に車止めがあるか否か。地下が水路になっている暗渠は車両の通行を禁止していることが多いためである。

分かりづらい暗渠の例。写真手前の車止めが目印となる

2.近所の物件の基礎に0.5mm以上のひび割れがある

周辺の物件を見ることも大いに参考となる。もし隣接する家で基礎コンクリートに大きなひび割れ(クラック)があれば、すでに不同沈下を起こしている可能性があり、そこが軟弱地盤である恐れがある。

ただし、ひび割れにも危険なものとそうでないものがあることは覚えておきたい。0.3mm以下の髪の毛のように細いひび割れは「ヘアクラック」と呼ばれ、基礎コンクリートの乾燥・収縮が原因で生じることが多い。住宅の性能に関する基準を定めた「品確法」では、こうしたヘアクラックが構造上の性能に影響を及ぼす可能性は低いとしている。一方、0.5mmを超えるものは危険なクラックであり、瑕疵につながる可能性がある。シャープペンの芯がすっぽり入ってしまうほどのひび割れは、注意して見ておこう。

0.5mmを超える、問題のあるクラックの例。特に通風口の隅部分はクラックが入りやすいのでチェックしたい

3.目的の物件が坂を下りきったところにある

目的の物件を訪れる際はできれば歩いてみて、その途中に坂道があったかどうかを確認してみてほしい。特に、目的地が坂道を下りきった場所である場合はそこが軟弱地盤である可能性が非常に高くなる。水は高いところから低いところへ流れるため、雨水が集中するからだ。もし目的の物件が坂道の下にあれば、水路がないかどうかじっくり探してみてほしい。

4.敷地や隣地にイネ科の植物が生えている

イネ科などの湿地性植物は常に水を吸い上げる必要があるため、地下水位の高いところに生息していることが多い。つまりこうした植物が生えていたら、そこは軟弱地盤の可能性がある。代表的なものはヨシだ。なお、5~6mを超える高木が生えている敷地は、大きな木が生えるだけのしっかりした地盤であることの目安となる。

湿地性植物写真のヨシ (© stars_hjp-Fotolia)

「危ない擁壁」に共通する4つのポイント

水が流れ込みやすい低地は軟弱地盤であることはすでに述べたが、裏を返せば「高台にある土地は水はけがよいため良好地盤であることが多い」と言える。しかし、こうした高台にも思わぬリスクが隠れている。それが「擁壁」だ。

高台の傾斜地をひな壇造成する際には擁壁が多用されるケースが多いが、擁壁そのものに問題があれば地盤の崩落など深刻な被害が生じる恐れがある。以下に、高安氏が指摘する危険な擁壁の例を挙げていこう。 

5.二段擁壁である

大谷石+コンクリートブロックなど、異なる種類の材料を積み重ねてつくられた擁壁。まれに3段に積まれた3段擁壁もある。1段目の擁壁の強度を無視して増築されていることが多いため、内部の土圧に耐えられず崩落事故が発生する恐れのある最も危険な擁壁だ。特に既存の建物がある場合、建物を維持したまま擁壁をつくり直すことはできない。そもそも「宅造法」(宅地造成に関する法律)に反した違法な擁壁であり、ここに建つ物件は購入を避けたほうがよいだろう。

石とコンクリートブロックを組み合わせた違法な2段擁壁

無理に積まれた二段擁壁。この時すでにクラックが見られたがその後の豪雨で本記事冒頭の画像のように崩壊してしまった

6.擁壁に「水抜き穴」がない

大雨などで擁壁内の土中の含水量が増加すると、その水がせきとめられることになる。すると水圧が高まって擁壁を押し、崩落の危険性が高まる。これを防ぐため宅造法では、擁壁には「水抜き穴」を設けることが義務づけられている。まれに水抜き穴のない擁壁が見られるが、これは違法であり危険な擁壁なので注意したい。

本来あるべきはずの水抜き穴がない擁壁

7.RC造のL型擁壁である

L型擁壁とは、ブックエンドのようなL型のコンクリートによってつくられたもの。L型の底盤部の上に土を載せ、その自重によって土圧を押さえる仕組みである。L型擁壁は工事の工程で必ず擁壁背面を掘削する必要がある。つまりL型擁壁内の土は例外なく人工的につくられた盛り土だ。盛り土では運搬された土を入れた後に締め固めが行われるが、経年で形成された地盤と同じ密度・強度を保つことはできない。そのため地盤が緩く、高い確率で軟弱地盤となる。

L型擁壁の例。地盤の締め固め不足のため軟弱地盤であることが多い

8.擁壁の高さが2m以下である

高さが2mを超える擁壁を建造するには「工作物確認申請」と呼ばれる手続きが必要となる。つまり、2m超の擁壁は一定の審査をクリアしていると言える。逆に2mに満たない擁壁についてはこうしたルールが設けられていない。中には粗悪なものや、劣化した大谷石による擁壁も見受けられるため、こうした擁壁内に建つ物件もやはり要注意だ。

おさらい:買ってはいけない「崩れる地盤」8つの特徴

【軟弱地盤に関する特徴】
1.周辺に水路、橋、暗渠がある
2.近所の物件の基礎に0.5mm以上のひび割れがある
3.目的の物件が坂を下りきったところにある
4.敷地や隣地にイネ科の植物が生えている

【擁壁に関する特徴】
5.二段擁壁である
6.擁壁に「水抜き穴」がない
7.RC造のL型擁壁である
8.擁壁の高さが2m以下である

建物被害の代表例は「不同沈下」

では、軟弱地盤に起因する建物被害にはどのようなものがあるのか。代表例は「不同沈下」だ。地盤の一部が沈下して建物が傾いてしまう現象である。

不同沈下のやっかいなところは、不均一に沈下するという点。均一に沈下するならばまだマシだが、一部のみが沈むため建物が傾いてしまう。建物が傾くと基礎にひび割れ(クラック)が生じる恐れがあるほか、サッシの建て付けが悪くなって開閉が困難になったり、傾斜によって平衡感覚が失われ、居住者の健康に影響が及んだりする。いずれも建物の資産価値に影響を来す深刻な被害である。

ただし高安氏によると、中古物件の種類や条件によっては、こうした不同沈下のリスクは低減されるという。たとえば築10年が経過した中古戸建やアパートなどがそれだ。

「泥沼を埋め立てたような特殊な例を除けば、不同沈下は10年以内に終息します。したがって築10年を超えた中古物件で、かつその時点で傾きなどの不具合が見られないものは比較的安心な物件といえるでしょう」

また仮に軟弱地盤であっても、「支持杭」による地盤改良工事を終えていれば不同沈下は起こりづらい。支持杭とは、地中の固い地盤の層(支持層)の深さまで至る杭を打設し、直接建物を支えるというもの。中規模以上のRC造マンションなどではこうした杭が施工済みであることが多く、施工の質に問題さえなければ不同沈下のリスクは低くなると言える。

不同沈下の修正費用はどれくらい?

もし沈下による傾きが生じた場合、それを修正するにはどうすればよいのか。高安氏によると、傾きの修正には大がかりな工事が必要になるという。地盤を修正する方法はいくつかあるが、中でも最も効果が高いとされる「アンダーピニング工法」(ジャッキを用いて基礎下に鋼管を圧入し、杭として作用させることで建物を支持する)を用いた場合、一般的な戸建住宅で600万円~1000万円程度のコストがかかると言われる。

軟弱地盤の物件でこうした高額な地盤修正コストを見込んで利回りを想定するのはあまり現実的ではないだろう。しかし条件さえ満たせば、手間やコストをかけずに修正する方法もある。

「不同沈下はどんなに長くても10年で止まります。逆に言えば、もし傾いていても築10年を超えていればその後の沈下は起こらないという考え方もできるわけです。その場合、床の高さを大工工事で修正するといった簡便な方法で対応することも、選択肢になり得ると思います」(高安氏)

木造は床下も覗くべし!

軟弱地盤は地下水位が高いことから、地面からの湿気が上がって来やすいという欠点もある。年間数十棟の木造建築の設計・監理を手がける一級建築士のK氏によると、特に木造の戸建やアパートでは、この湿気が建物に致命傷を与える可能性があるという。

「クライアントから住宅購入の相談を受けることがしばしばありますが、そのときはとにかく床下の状態をチェックしてほしいと伝えています。なかでも基礎の接地部にコンクリートの床面がなく、土が露出しているものは要注意です。湿気を遮るコンクリートがないため地中の湿気が上にのぼり、これが建物の土台や柱の根元部分などを腐食させる要因となる可能性があるからです。地下水位の高い軟弱地盤ともなれば、さらに危険度は高まるでしょう」

K氏によると、基礎の状態を簡単にチェックする方法があるという。それは、基礎の側部に開けられた通気口を覗いてみること。地面の部分に土が見えたら要注意だという。もし通気口がない、あるいは見えない場合は台所などの床下収納を開け、内部にあるプラスチックの収納ケースを取り外すとそのまま床下=基礎の状態が確認できる。

地盤調査が最も確実だが…

本来、軟弱地盤であるかどうかは、最終的には地盤調査を実施しなければわからない。しかし、既存の建物がある場合、地盤調査は困難だ。もしくは新築時に作成された「地盤調査報告書」を確認するのがてっとり早いが、売主から書類を見せてもらえないケースも少なくない。そうした状況下では、今回紹介したチェック方法が役に立つはずだ。

地盤や敷地にまつわるリスクは目に見えず分かりづらいうえ、中古物件の購入時にはどうしても軽んじられる傾向にある。しかし、万が一建物を支える地盤が崩れてしまえば、その損害は計り知れない。

今回提示したチェック項目は手軽さを重視した簡易な方法であり、あくまで参考として役立てていただくためのものだ。それでも本記事をきっかけに、建物だけでなく敷地・地盤に潜むリスクにも目を向けていただきたい。そして少しでも良質な物件に巡り会うきっかけとしていただきたい。

○写真提供:環境地質
http://www.kankyo-c.com/

(楽待編集部)