首都圏を中心に女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開するスマートデイズ(東京都)が今月に入り、オーナーに対してサブリース賃料の支払い停止を発表したことが波紋を呼んでいる。高金利のフルローンで1億~3億円程度の物件を購入したオーナーは約700人に上るとみられ、「人生が滅茶苦茶になった」「もう自己破産するしかない」といった悲痛な声が聞こえてくる。突然の支払い停止の背景には何があったのか。

たった5カ月で破られた「約束」

「なぜあの時、自分で徹底的に調べなかったのか、誰かに相談しなかったのか…。後悔の念は消えません」

川崎市在住で、大手企業に勤務するAさん(45)は2016年夏、杉並区にあるかぼちゃの馬車を購入した。全18室で、物件価格は約2億円。スルガ銀行から金利3.5%、30年のフルローンで融資を受けた。

もともと投資への興味はあり、不動産投資で成功している同僚に『信頼できる』と紹介されたのが、かぼちゃの馬車の販売会社の営業マンだった。スマートデイズが物件を一括借り上げして若い女性に貸し出し、オーナーには毎月保証した賃料を支払うという説明で、渡されたシミュレーションによると利回りは7.8%となっていた。

「これがちゃんと履行されるのであればなかなかいい収益になると思ったし、営業マンも丁寧な印象で信頼しました」。契約書には5年後に両者協議のもと賃料を見直す可能性があるという条項が含まれていたものの、「少なくとも5年間は同じ賃料を受け取り続けることができ、下がったとしてもゼロになるわけではないので許容範囲だと考えていました」。

保証賃料は月122万円で、管理費を引いた113万円が入金される。月々の返済は約100万円で、13万円から諸費用を引いた額が手残り。物件は2017年4月から稼働し、5月以降は契約通りの保証賃料が振り込まれていた。

しかし、「賃料保証」という言葉は、わずか5カ月で裏切られた。

「オーナー様各位」

同年10月26日、スマートデイズから一通の手紙が届いた。「オーナー様各位」で始まるその手紙には、「10月分から当面の間、返済額のみの支払いとする」と記されていた。金融機関の方針変更によって予定されていた販売ができず売り上げが低下し、資金繰りが悪化している―という内容。さらに「オーナー自身で金利引き下げ交渉とリスケ(返済計画の変更)交渉をしてほしい」という主旨の記述もあった。

賃料減額を伝える手紙

Aさんは「正直この手紙が来るまでは、ちゃんと契約通り支払われていればいいと思って、入居状況やビジネスモデルについて考えることはしていませんでした」と振り返る。さらに驚いたのは、手紙には「返済額と同額の支払い」と記されていたにもかかわらず、入金は100万円ではなく90万円だったこと。この10万円の差額は何を意味するのか。

実はAさんは2億円・金利3.5%の融資のほかに、1000万円の「諸経費ローン」を7.5%という高金利で借り入れた形になっていたのだ。「このローンは金消契約の当日に初めて知って、『これは何ですか』と聞くと『決まっていることなので』と言われました」。月々の入金額にはこの諸経費ローンの返済分は含まれず、毎月10万円の持ち出しと固定資産税などの負担が重くのしかかることになった。

1月17日、衝撃の発表

そして2018年1月17日、Aさんを含めかぼちゃの馬車オーナー全員を震撼させる出来事があった。スマートデイズ側がオーナーを招いた説明会の席上、「来月からサブリース賃料の支払いを完全停止する」と発表したのだ。

Aさんを含む出席した複数のオーナーの話を総合すると、スマートデイズ側の説明は「昨年10月に取引先金融機関の融資方針が変わったことで買い手が伸びず、売買件数が大きく落ち込んで経営が悪化。深刻な資金不足に陥り、支払いができない状態になった」という内容だった。

「怒りを通り越して呆れました」とAさんは言う。賃料が一切振り込まれないということは、このままでは毎月100万円近くのマイナスキャッシュフローが発生することになる。自らの立場が危機的状況にあることを痛感しながら「今は怒りより、自分にできることをするしかない」と、すぐに行動を起こした。

まず入居者とコンタクトを取り、入居率がどれぐらいか調べた。スマートデイズに聞いても本当の入居率を言うことはないと思ったからだ。「実はそれまで、スマートデイズからは家賃がいくらで、どういう人が住んでいて、入居率がどれぐらいかということも一切知らされていなかったんです」。不幸中の幸いだったのは、現状は18室中17室入居と高稼働を維持していることだった。

説明会の5日後にサブリース契約の解除通告をした。自主管理に切り替えるためだ。説明会では「サブリース契約の解除は無条件で行う」という話だったが、実際に解除を伝えたところ「待ってくれ」と言われたとAさんは明かす。「1月中の契約解除なら同月末の入金は2月分の家賃なので私のものになるはずですが、その入金分について渋っている。自分たちが取ろうと思っているのでしょう」

何人の自己破産者が出るのか

Aさんのように、比較的入居率が高く再生の道がまだ残されているケースはそれほど多くはない。中には入居率が20%を切っている人もいれば、まだ家具すら搬入されていない人、さらには建築すら終わっていない人もいる。「一体何人の自己破産者が出るのか分からない」とAさん。「みんな金利交渉やリスケ交渉に動いていますが、成功した人は聞いたことがない。応じる気はないでしょう」

説明会で出会った被害者同士でも情報交換をしているが、「今は被害者同士ですらライバルなんです」とAさん。「800棟も物件があって、全員助かるわけがない。当然、助かる人と助からない人がいる。粛々と金利交渉や借り換え打診などを続けながら、自分で再生するしかないんです」

なぜ被害に遭ってしまったのか―という後悔の思いは消えない。「不動産投資で成功している同僚から紹介された営業マンだったから、話を聞いて信頼してしまった。あとは『契約書は絶対』という考えが幻想にすぎないということ。『5年間は約束した賃料を支払う』なんていう言葉は、手紙一つで反故にされる。不動産投資は人任せでは絶対に勝てない。自分で徹底的に調べて一つ一つ確認し、第三者にも相談しなければならない。それを強く実感しました」

サブリースの赤字を建築利益で補填する自転車操業

スマートデイズ(旧社名スマートライフ)は2012年に創業し、2014年4月から女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開。「30年一括借り上げ」を謳い、「自己資金ゼロ」「サブリースで空室の心配がない」といったセールストークで急速に物件数を拡大してきた。

物件数は2017年8月末時点で約800棟・1万室に上り、前社長の大地則幸氏の著書などによると、毎月50棟ものシェアハウスを建築していた時期もあるとみられる。同社が求人サイトに掲載していた2017年3月期の売上は316億9700万円で、2013年7月期の4億4502万円からわずか3年半で70倍近くまで急拡大していた。

しかし、物件数が異常ともいえるペースで増える一方、入居は全く追い付いていなかったのが実態だ。スマートデイズ側は2017年10月末時点での入居率について「40%程度」と説明しており、シェアハウスの賃貸管理運営による利益はほとんどなく赤字状態に陥っていたとみられる。そのため、建築販売によって得た利益を賃料に充て、サブリース事業の赤字を補填するという自転車操業のような経営を続けていた可能性が高い。

ほぼ全空の物件も

実際にかぼちゃの馬車の公式サイトで物件を検索すると、比較的立地・賃料などの条件が良いにもかかわらず、ほぼ全空のような物件が散見される。

全17室の全空物件(かぼちゃの馬車公式サイトより)※2018年1月25日現在

一部のオーナーによると、空室状態を改善させるために、説明されていた家賃より低い金額で入居させていたケースも多かったという話もある。あるオーナーは「最初は家賃6万円と説明されていたが、実際には4、5万円だったと後から知った」と語る。入居率が低い上に家賃も抑えていたのであれば、サブリース賃料との逆ザヤ状態はさらに拡大していたことが伺える。

入居率の低さは当然という見方もある。中古戸建をリノベーションしたシェアハウス5棟34室を所有する「投資家ずん」さんは「募集媒体を自社サイトに限定していることがある種の機会損失になっている」と指摘。かぼちゃの馬車は共用リビングを造らない仕様のため、シェアハウス募集サイトの中には共用リビングが一定の広さでないと掲載しないサイトが多いことも影響しているとみられる。

物件価格に関しては、スマートデイズが建築コストに儲けを上乗せして販売し、その金で家賃保証を補填していたとみられている。投資家ずんさんはスマートデイズが新築で得た売上の内訳に関して「仮に1億円で販売されたかぼちゃの馬車があったとして、土地建物の価値は5000万円程度。販売協力会社へのマージンなど諸々の経費が1000万円で、残りの4000万円くらいが利益だったのでは」と分析している。

自身の所有物件は全て自主管理で、平均利回り20%を超えている。「私の物件は家具家電まで含め1500万円程度の投資で7室のシェアハウスを立ち上げています。つまり1室あたりの金額は200万円代ですが、かぼちゃの馬車の1室あたりのコストは立地にもよりますが1000万円を超えている。新築と中古の違いはあるにせよ、投資家目線からすると割高感は否めません」

なぜ、高属性のオーナーが被害に遭ってしまうのか

かぼちゃの馬車を購入したオーナーの中は、高年収のサラリーマンや弁護士、公認会計士などの有資格者も多いとみられている。スマートデイズが急速に売上を伸ばしてきた背景には、こうした高属性の個人オーナーたちの「信用」によって、さまざまなリスクを肩代わりさせてきたという面がある。

なぜ、このように属性が高い数百人ものオーナーが、このビジネスモデルの欠陥に気づかず被害に遭う結果となったのか。取材を進めていくと、彼らを惹きつけた「社会貢献」というキーワードが浮かび上がってきた。中編へ続く)

○取材協力
投資家ずんさん(https://goodasset.net/

(楽待新聞編集部・金澤徹)