不動産価格が高止まりする昨今、購入費用が安く高い利回りが期待できるとし、築古の戸建てをはじめとする『古家』を購入してリフォームを施した上で賃貸に出す不動産投資家が増えている。

ただ、本当に古家にニーズがあるのか、リフォーム費用がどのぐらい必要になるのか、高い利回りを得ることができるのかなど、古家再生経験がない投資家にとっては見えない部分も多い。今回は古家再生不動産投資に取り組む物件オーナーなどに現状を聞いた。

築40年以上の物件で12~15%程度の利回りを確保

築古民家の再生や収益化のサポートに取り組む一般社団法人全国古家再生推進協議会®の大熊重之理事長に話を聞くと、全国的に不動産投資の対象として古家購入を検討する人は増えているという。しかしながら物件供給数はほぼ横ばい状態のため、結果的に徐々に物件が品薄傾向になりつつあるという。

「私が所有する物件では、リフォーム費込みで関西だと14~15%、関東でも12~13%の利回りを確保しています。中には築40年以上経過したテラスハウスもありますが、このぐらいの利回りは確保できていますね」

大熊重之理事長

それでも市場に古家物件が少ないと思われるのは、 「相続で古家を所有することになった人が放置したり、不動産投資市場では敬遠されがちな再建築不可物件など売却しにくいものが多いから」と大熊理事長。理事長自身、築40年以上が経過した戸建てを数10軒、築30年以上経過した鉄骨アパートも2棟ほど所有しているが、収益的には戸建ての方が安定しているという。

古家再生不動産投資は、きちんと取り組めば低リスクな投資になる

物件オーナーでもあり、同時に古家を再生して不動産投資を始めようとする物件オーナーのサポートにも取り組む大熊理事長は、「古家はどうしても相続で急きょ所有することになったり、再建築不可の物件が多いためにとっつきにくかったりする印象があります。でも物件価格が低く競合も少なく、共有部分がないので管理費用が低いにもかかわらず、戸建ては家賃が安定しているので、上手にやれば低リスクな投資となり、不動産投資初心者にこそおすすめなんですよ」という。

では、築古戸建てをリフォーム前提で選ぶ場合、最初にチェックすべきポイントどこか尋ねると、「躯体そのものですね」とのこと。

「躯体が傾いたり、傷んだりしていないかを確認します。家全体を形作っている躯体に手を入れるとなると相当の費用が必要になり、利回りが下がるどころか投資費用を回収できないリスクも出てきます」

あとは「いかにコストを掛けずに、他物件と差別化するかがポイント」と大熊理事長。「基本的に畳敷きの和室は残します。これによりリフォーム費用が下がり、和室の存在が差別ポイントになります。しかも、古家に住みたいと思う人は和室のニーズも高いんです。また、壁面も壁紙を貼り替えるのではなく、より低コストにするため塗料を上塗りします」

和室は和室のままに、ふすまも生かす

壁は「上塗り」で対応

明確なターゲット設定が重要な理由

また、いかにターゲットを明確に設定するかも重要だそう。

「古家のリフォームは決して最高のものを作ることが目的ではありません。想定したターゲット層の入居希望者が満足してくれれば良いのです。例えば、家賃5万円と想定した場合、希望家賃5万円の入居希望者が『こっちの方が良いね』と思ってくれればOKで、決して希望家賃8万円や10万円の人を満足させる必要はないのです」

肝心のリフォーム費用だが、大手企業の見積だと1000万円、普通の工務店でも400~500万円の見積が出る場合でも、150~200万円程度に抑えている。

「これは家賃相場から改修に掛けられる費用を算出しているから。該当エリアでターゲットとする家賃設定にするには、どの点をどの程度改修する必要があるかという視点から改修箇所を決めていきます。特に、電気ブレーカーは最優先で手を入れます。古い物件はブレーカーの容量が少なく、入居後のクレームや火災原因の元になります。また、ベランダの防水も優先順位が高いです。

逆に外壁塗装の優先順位は低いです。外観は家賃に影響するといわれますが、築古に住もうという人は、外観をあまり気にしません。言えるのは、改修費を2倍掛けても家賃は2倍にならないということですね(笑)」

だからこそ、古家の不動産活用には目利き力が必要、と大熊理事長。「周辺の家賃相場と家屋の状態、入居ニーズを高めるリフォーム知識という3つの知識がないと古家再生不動産投資はうまくいきません」

築古の戸建て空き家を一括借り上げするサービスも登場

近年は、増加する古い空き家を再活用するさまざまなサービスが登場している。例えば、『空活(あきかつ)』は、関西を中心に戸建ての空き家を一括借り上げするサービス。『空活』を提供する株式会社ウィンウィンウィンの鞆谷貴大社長によると、このサービスは社会貢献の一環として生まれたサービスだという。

鞆谷貴大社長

「放置状態で特定空き家に認定されると税金が上がったり、解体するにも費用が掛かります。しかも長年空き家だと家は傷み、近隣からクレームも発生しかねません。なにより『空き家減少=人口増』となるので、地域の活性化につながる。所有者の方にも地域の方にも喜んでいただけるサービスなんですよ」

まだサービス開始して間もない『空活』だが、すでに一括借上げを行った古家は25軒を超えた。

「『空活』は、空き家時と入居時で支払金額が異なる変動制サブリースとなっています。物件オーナー様には、6カ月のフリーレントを付けてもらい、当社で10年間の一括借り上げを行います。借り上げ当初のリフォーム費用は当社負担ですが、オーナー様の希望収益によっては初期費用として一部ご負担いただく場合もあります」

生活スタイルの変化に伴い空き家となった自宅、相続で突然所有することになった家屋など、物件オーナーが空き家を所有するきっかけはさまざま。しかし、多くの物件オーナーは「解体すると費用が掛かり税金も上がる。しかも、売りたくてもなかなか売れない」という悩みを抱えているという。

もちろんオーナーが手にする家賃は通常の賃貸収入よりも低くなるが、それでも最低限のリスクで持てあましていた空き家が、リフォームされて収益物件に変わるため感謝されることが多いそうだ。

「空き家を減らすことは、その地域や日本全体の活性化につながります」と鞆谷社長は言う。

高い戸建て賃貸の需要ニーズを生かすポイントは

だが、長年空き家だった物件をリフォームするには、数百万円単位のリフォーム費用が掛かる。それを最低限のリフォーム費用で賃貸物件として蘇らせることができる秘密は、マーケットの細分化と視点の切り替えにある。

「まだまだ戸建ての賃貸住宅は、供給不足なのが現実です。ですから住空間
として賃貸できる場合は、ペット可、DIY可、大家族、シェアハウスなど、今まで賃貸物件には不向きとされていた方を入居者ターゲットにします。また、住空間としての賃貸が難しい場合は、貸しスペース、民泊施設、店舗兼住宅、事業所、趣味用のガレージなど、『第二の住居』用途に特化した空間にリフォームします」

キッチン・入浴設備等がないため、バイク置き場や事務所、セカンドハウスなど「第二の住居」向けに(大阪市生野区)

リフォーム費用については、通常の賃貸住宅向けリフォームで約300~500万円程度が必要となるが、『空活』では、通常では考えられない手法を用いることでリフォーム費用を抑えている。

「プロの職人に依頼する部分は必要最低限に抑え、DIYできる部分は一般の方にアルバイト代を払ってお願いしています。例えば、壁面は仕上がりの差が出にくい珪藻土などを使用し、一般の方に塗ってもらっています」

こうした方法で、1軒あたり約10~100万円程度の費用でリフォームを完成させる。また、物件オーナーの希望家賃によっては、オーナーから投資という形で費用を入れてもらい、さらに物件をリフォームすることもあるという。

「エリアや物件の状態はもちろん、オーナー様の希望収益なども考慮し、1軒ごとに手の入れ方や掛かる費用が異なります。手間は掛かりますが、物件オーナー様だけではなく、借り手の方、さらには周辺地域の方も喜んでくれる物件にしたい。特に周辺地域の方は、空き家が治安に大きな悪影響があると実感される方も多く、空き家が埋まると大変喜んでくれますね」

まさに「貸主良し、借主良し、地域良し」の三方良しを実現している。

和の雰囲気を残しつつ改装(大阪市生野区)

キャッシュ不足でリフォームできない物件にもチャンス

空き家の借上げサービスを利用する物件オーナー藤井恒夫さんは、戸建て中心に現金で物件を購入してきた。

藤井恒夫さん

「戸建てや長屋など約20軒とスナックビルを所有していますが、『空活』さんにお任せしているのは3軒。どれも築30~40年経過している戸建てやテラスハウスです」

不動産投資での収入はインカムゲイン主体なので、自分でリフォームする際は、費用を掛けて細部まで完璧なリフォームをして賃貸に出しているそう。ただすべてキャッシュで賄うため、納得のいくリフォームをするには現金が心許ないタイミングも出てくる。

「これまではキャッシュが心許ない時、貯まるまで空き家のまま放置していました。そんな時に、物件によっては借上げしてもらい、中途半端なリフォーム費用を掛けずに収益を生む方が良いだろうと考えました」

藤井さんご自身がリフォームを手掛けた築古戸建ては平均15~30%の利回りだが、『空活』活用時の利回りはこれよりも低いという。

「それでもリフォーム費用という初期投資が不要なのと、10年間収益が出る点は大きなメリットです。また、『第二の住居』という切り口やターゲット設定は、私にはない感性でとても勉強になります。古家不動産投資は確かに大きな利益はもたらしませんが、継続的に利益を積み上げていくことができる。私はそういった部分が気に入っています」と藤井さん。

長期的視野で取り組めば、しっかり収益をあげられるのが古家不動産投資

古家不動産投資をしっかりとビジネスの中心に据えている方々が口を揃えていたのは、「短期で大きな利益は生み出さないが、低リスクで着実に利益を積み上げることができる」という点。

大熊理事長は「古家不動産投資は、性格的にコツコツ型の人に向いている」という。

「大きなキャピタルゲインは狙えませんが、逆に底堅い投資。しかし、物件を見る目、リフォームや家賃設定の決め方、入居者が入ってからのコミュニケーションなど、大家として必要なスキルは十分に磨かれますし、適正な家賃設定とターゲット選定をすれば、空室期間も短い上に長期間入居し続けてくれる場合が多い。古家不動産投資を始めたら、複数の戸建てを所有するようになる人が多いですね。それだけ始めてみたら安心できる投資だと実感するからだと思います」

藤井さんも「投資用マンションなどはローンを組みやすいが、都心部でも10%以上の利回りを出すのは難しいですよね。しかも時代の流れが速い昨今、時代が大きく変化し、長期の空室が発生するケースも十分考えられます。長期間の負債は皆さんが思うよりもリスクが高い」と、フルローンしか考えない安易な投資に警鐘を鳴らす。

「戸建ては民泊などを含めて、ニーズはさらに高まっていくでしょう。古家不動産投資も、修理などで突発的な出費が必要になることも多いため、利回りだけを追求していたら机上の空論になりがち。しかしながら、投資のリスクや不動産投資の本質を学べるという点からも、不動産投資初心者の方におすすめの投資だと思います」

古家不動産投資は初心者が本物の不動産オーナーとなる上で、必要なスキルを学び得るのに最適だと言えよう。2018年は、古い空き家での不動産投資も視野に入れてチャレンジしてみてはいかがだろうか。

(楽待編集部/中直照)