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首都圏を中心に女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開するスマートデイズが、オーナーに対してサブリース賃料の支払い停止を発表した問題は記憶に新しいことと思います。オーナーは数百人に上り、銀行から多額のローンを借り入れて1億円超の新築物件を購入した人が大半とみられています。  

スマートデイズは不動産投資に積極的かつ高金利で有名なスルガ銀行と提携、主力商品に対する「アパートローン」のほとんどをスルガ銀行が引き受けてきたようです。問題が浮き彫りになる以前は、スルガ銀行の支店内で同社による不動産投資セミナーが頻繁に開催されていたともいわれています。

スマートデイズのようなサブリース会社の破綻リスク、稼働率低迷リスク(収益悪化)等により、収支は赤字に転落、高金利ゆえ借入返済も儘ならず、こういった商品(不動産)を購入してしまった不動産オーナーの自己破産が懸念されるところであります。

このような事情により不動産オーナーが自己破産してしまった場合、どうなるか。ご存知の方も多いと思いますが、債権者(金融機関)が抵当権を実行し、不動産は競売にかけられることになります。

最近の不動産競売のある傾向

ここ数年、不動産競売物件情報サイト等で競売や公売案件等も見るようにしています。競売で不動産を取得するということがメジャーになる前は安く購入できた時代もあったようですが、最近は驚くほど高額(一般市場と変わらない、もしくはそれ以上)で落札されるケースも珍しくありません。

とはいえ、自分の希望価額で購入できる可能性もゼロではないので、欲しいと思える不動産には過去何度も入札をしてきました。昨年も15件ほどの競売案件に入札をしてきたのですが、残念ながら購入には至っていません。

僕の場合、入札する際には必ず、不動産の全部事項証明書を取得して、現在の所有者、債権者(融資銀行)、融資額、過去の履歴(所有権の移転、抵当権の設定・抹消など)をチェックします

気付いたことがあります。昨年検討した15件中5件ほどに、ある共通点があったのです。それは何かといいますと…

(1)融資銀行がスルガ銀行

(2)破綻した物件オーナーがサラリーマン投資家

(1)は全部事項証明書を見れば分かります。(2)がなぜサラリーマンだと分かるかというと、スルガ銀行は基本的に個人にしか融資をしませんので、全部事項証明書には個人の氏名・住所が記載されます。その個人名をSNS等で検索すると、有名企業に勤務するサラリーマンだったりするわけです。

ここ数年、競売案件をウォッチしてきましたが、スルガ銀行から融資を受けたサラリーマン投資家の破綻は「確実に増加している」と感じます。

昨年、実際に入札した競売案件で鮮明に記憶に残っている案件があります。全部事項証明書とSNSで調査しましたが、この案件の破綻者もスルガ銀行から融資を受けたサラリーマン投資家(以下Aさん)でした。

また、AさんのSNSを拝見すると、年齢は僕と同世代、勤務先は大手メーカー、しかも住所は東京都内でご近所さん、と共通点が多かったので記憶に残っています(他人事とは思えませんでした)。

参考までに、Aさんが購入した対象物件である一棟RCマンションの概要は以下のようなものです。

購入時期

平成26年末

築年数

25年(購入時)

戸数

シングル50超

融資額

約2億円(フルもしくはオーバーローンと推定)

金利

4.5%

融資期間

不明

表面利回り

当時の家賃収入に引き直して推測すると10.5%程度

なぜ、Aさんは不幸にも取得後わずか2年ほどで破綻してしまったのでしょうか? 理由は次の2つです。

まず、対象物件が極端な「依存物件」であったことです。対象物件は私立B大学の近隣に所在しています。対象物件の需要者はそのB大学の学生のみということになります。エリア・物件の構造上(シングル)、他からの需要は見込めません。

いま少子化の影響で大学は厳しい競争にさらされています。特に地方にある私立大学はその最たるものといえるでしょう。B大学も同様、学生数を確保するために、数年前に郊外にあったキャンパスを新幹線が停車する駅前に移転しています。全学部移転というわけではないのですが、既存の郊外キャンパスに残されたのは全体の3割ほどのみです。

B大学郊外キャンパス周辺には、学生用のアパマンが林立しています。もともと供給飽和状態にあったことに加え、大学移転により需要は激減、パイの取り合いにより賃料下落・AD増加、という最悪の負のスパイラルに入ってしまっているエリアです。

Aさんは購入時にこの事実を知らなかったのか、もしくは調査していなかったのでしょう。実際に地元の不動産会社にヒアリングしたのですが、Aさんは購入後に稼働率を上げようとデザインリフォームの実施、客付に強い管理会社への変更等を試みたようですが、稼働率は50%がやっとだったようです。

次に、対象物件を高稼働で運営できたと仮定しても、スルガ銀行の融資条件(特に金利)ではキャッシュフローは出ないと言えるからです。融資期間を法定耐用年数以上に延ばして見せかけのキャッシュフローを得ることも可能ですが、不動産投資を継続する上では、好ましいとは思えません。

常々、僕はイールドギャップ(物件の表面利回りと借入金利との差)は10%以上欲しいと思っています。この概念には融資期間が含まれないので、あくまでもざっくりとした指標となりますが、Aさんのイールドギャップは6%(表面利回り:10.5%-金利:4.5%)ですから、僕の投資基準にはマッチせず、即オミットとなるような物件及び融資条件です。

スルガ銀行について、昨今のニュースや高金利の影響でネガティブなイメージを抱いている方が多いと思いますが、その認識は一部正しくないと思っています。

なぜなら、スルガ銀行を利用して実践することは不動産投資の「特効薬」にもなりえますし、反対に「劇薬」にもなってしまう可能性もあるからです。すべてはスルガ銀行を利用する不動産投資家サイドの問題なのです

スルガ銀行を利用する際のメリット・デメリットは下記のようなものです。

○メリット

・融資エリアが広い

・融資までの審査スピードが早い

・物件の評価が出やすい

・耐用年数が短くても長期ローンが組める(スルガ銀行のみの利用)

○デメリット

・金利が高い

・法人には融資しない

・耐用年数が短くても長期ローンが組める(他行からみて信用毀損)

スルガ銀行の融資基準や上記のようなメリット・デメリットを理解した上で、自己の投資基準に照らし、マッチするものであればスルガ銀行を利用する、マッチしなければ購入を見送るもしくは他行にシフトする。ただそれだけのことなのです。

僕は、スルガ銀行を利用したから不動産投資に失敗した(破綻した)という認識は間違っていると思っています。実際に不動産投資を始めようと思っていた5年前はスルガ銀行から融資を受けても潤沢なキャッシュフローが出る不動産がありましたし、何度か融資承認をいただいたこともあります(他者にさらわれて購入できませんでした)。

当時、スルガ銀行に持ち込んだ物件の表面利回りは15~20%ありましたので、金利が4.5%でもまったく問題がなかったわけです。このように、メガバンク並みの融資エリアを持ち、審査スピードが極端に早いスルガ銀行は、スペシャルな物件が出た場合の「特効薬」となる可能性があるのです。

この点、現在の不動産市況ではスルガ銀行から融資を引いてもキャッシュフローが出そうな不動産がないので(スルガ銀行を利用した場合、劇薬となるので)、僕の場合は利用しないだけのことです。