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2018年初となる記事です。本年も大家さんからの様々なご相談にお答えしていきたいと思っています。お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

さて、今回のご相談は、最近耳にすることが多いサブリースに関するトラブルです。

サブリース会社から大幅な賃料の減額を要求されて、これを断ったところ、サブリース契約を解除されてしまった。さらに、解除後には入居者が激減してしまったが、それにはサブリース会社の関与が疑われるという、もし本当ならきわめて悪質なケースです。

家賃の見直しの際に大幅な減額を要求され、断ったところ、サブリース契約を解除されてしまいました。さらに解除後、20戸中14戸が入居していたのに、一気に5戸まで減ってしまいました。おそらく、その会社が管理している別の物件に入居者を転居させたものと思われます。どうにか、この会社に損害賠償を請求できないでしょうか?

サブリース契約のセールストークを鵜呑みにはできない

サブリースとは、アパートやマンションなどを借り上げて、これを第三者に転貸する事業のことです。多くの場合、サブリース会社は、オーナーにアパートやマンションを建てさせ、それを一括して借り上げます。

その際、「賃料○年間保証」「○○年間一括借上げ」「管理も一括してお任せ」「相続税対策にも最適」などのセールストークでオーナーを勧誘し、オーナーは将来も安定して賃料が入ってくることを期待して契約します。

実際に、サブリース業者に支払う手数料を引いても、適正な家賃が長期間安定して入ってくるのであれば、空室リスクを避けられるうえ、面倒な管理業務からも解放されるので、いいこと尽くめのように見えます。

しかし、サブリース業者の用意した契約書をよく見てみると、落とし穴があることがほとんどです。

とくに問題なのは、サブリース会社から賃料の減額を要求されたり、途中でサブリース契約を解除(中途解約)されたりするリスクがあることです。そして多くの場合、オーナーは契約時にこうしたリスクがあることについて十分に説明を受けていません。

「一括借上げ」とか「○年間家賃保証」といったセールストークやサブリース業者の用意した事業計画をみて、それならリスクはないと信じて契約し、いざ賃貸が始まって何年かしたのち、サブリース会社から賃料減額の要求を受ける、ということになるのです。

サブリース契約には借地借家法の適用がある

サブリースの契約関係は、オーナーとサブリース業者との間の転貸借を目的とした賃貸借契約(借上げ契約)と、サブリース業者と入居者との転貸借契約との組み合わせで成り立っています

オーナーとサブリース業者との間の契約は建物賃貸借契約ですから、借地借家法の適用があるとするのが判例の立場です。

そうすると、賃料の増額や減額請求をする権利を認める借地借家法32条1により、賃借人であるサブリース業者からのオーナーに対する賃料の減額請求は法的には可能ということになります。そして、借地借家法32条1項は強行法規、つまりこれに反する特約は無効になると解されています。

したがって、仮に契約書で「○年間は○○円の賃料を支払う」などのように一定期間、定額の家賃が支払われるようになっていたとしても、合理的な理由による賃料減額請求は違法とはいえないのです。

しかも多くの場合、契約書には「乙(サブリース会社)は、経済状況の変化、近隣の賃料相場の変動等により、賃料の額が不相当となった場合は、甲(オーナー)・乙協議のうえ賃料を改定することができる」などのように、将来の賃料の改定を予定した条項が入っています。

つまり、家賃が保証されているといっても、それは契約時に定めた家賃の額がそのままずっと続くということを意味するわけではないのです。

注意していただきたいのは、サブリース会社からの賃料減額請求が可能だということと、実際に減額請求をされたとき、それが認められるか、認められるとしても減額される金額がどの程度かは、別問題だということです。

サブリース会社は知識と経験などの点でオーナーに格段に勝っていることが普通で、情報量や交渉力で圧倒的に優位な立場にあります。そのサブリース会社が自ら作成した事業計画等をオーナーに示し、一括借上げ、賃料保証などのうたい文句でオーナーを勧誘し、当初賃料も決めたのですから、賃料減額が認められるかどうかは、家賃保証の特約があればその存在、事業計画(収支予想)、勧誘の際の説明などの事情を十分に考慮して判断すべきです。

つまり、仮に近隣相場と比較して賃料が高かったとしても、それだけで賃料の減額請求が正当ということにはならないのです。

契約の解除を主張されることもある

サブリースの契約書では、単に賃料を減額できるというだけでなく、たとえば、「乙(サブリース会社)が経済状況の変化、近隣の賃料相場の変動等を考慮して賃料の改定を求めたにもかかわらず、甲(オーナー)がこれに応じないときは、乙はただちに本賃貸借契約を解除することができる」などと、家賃の値下げに応じないときは契約を解除できると定めているものもあります

一般には、契約で、一定の場合には契約を解除できると合意することは否定されません。ですから、このような条項をただちに法的に無効ということは困難かもしれません。

しかし、賃料の減額請求がそもそも認められないようなものであったり、あるいは要求された減額の幅が過大であったときは、そもそもオーナーには家賃の減額に応じる合理的な理由がありません。

それなのに、契約書に賃料改定ができなければ契約を解除できると書いてあるからといって、賃料減額の調停など正当な手続を踏むことなく一方的な契約の解除が認められてしまうのでは、オーナーはサブリース会社の言いなりになるしかないことになってしまいます

オーナーは、長期間サブリース契約が継続し、家賃収入が保証されると信じたからこそ、ときにはローンを組んでアパートやマンションを建築して、サブリース契約を交わすのです。

したがって、契約書に「オーナーが賃料の改定に応じないときは契約を解除できる」などと定めてあっても、この条項によって解除できるのは、オーナーによる賃料改定の拒否に合理性がなく、当事者の信頼関係が失われたときなどのように制限的に解釈すべきです。

理不尽な契約解除に対しては、解除は無効だとして賃料の支払いを求めたり、損害賠償請求をするなどして対抗するしかないでしょう。

ご相談のケースについて

ご相談のケースでは、すでに契約の解除を通告されてしまっていますが、その解除が有効とは限りません。とくに、契約を解除した後で、サブリース会社が入居者に働きかけてオーナーの物件から次々と退去させたことを証明できるなら(実際にそうした例はあるようです)、サブリース会社のそうした悪質性を強調することもオーナーに有利に働くでしょう。

サブリース契約は、その契約内容がさまざまで、勧誘時の状況もケースバイケースですから、一概に結果を予想することは困難です。しかし、賃料の減額がそもそも認められなかったり要求された減額の幅が理不尽な場合、損害賠償の請求が認められる可能性は50%以上と考えます。