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不動産投資を始めて5年経ったころ、初めての売却が訪れることになりました。それまでは投資規模を拡大すべく、収益物件は購入一辺倒だったのです。

生活に困らない収入を自分で生み出す! 会社に頼らずとも」。つまり、セミリタイヤできる程度の収入を不動産から得ること。これが、当時私が掲げていた目標です。この目標を達成するために、日々私は不動産投資の勉強を重ねながら物件を増やし、投資規模を拡大していきました。

そう思うようになったのは、過去の苦い経験から。当時勤めていた会社の事業縮小(日本からの事業撤退)によって、私は転職を強いられることに。そんな突然の人員整理を経験したことが、私がそこまで不動産投資に夢中になった一つの理由でしょう。

その後も、外資系の会社に転職を繰り返したこともあり、「いつかまた、あの時のような経験をするに違いない!」、そう思っていました。そして数年後、それは現実のものとなるわけですが…。

そんなこんなで物件を買い進めた結果、不動産投資を開始して5年後には、区分4室・アパート4棟を所有していました。その後も物件数を増やしていくものと思っていましたが、あることに気付いてしまいます。それは、初めて購入した区分マンションの収益性の悪さです。

入居者が入れ替わるたびに家賃は下がり、当時その物件から得ていた家賃は2万5000円ほど。駅から近く、立地はまずまずだったものの、建物や設備が古かったため家賃を抑えるほかありませんでした

家賃を犠牲にして早期の入居、つまり稼働率を優先したということですね。その作戦は当たり、退去から1カ月もしないで次の入居者が決まったのですが、この家賃ではやはり儲からない…。管理会社への管理委託費と管理組合への管理費・修繕積立金を差し引くと、手残りは1万4000円ほど。

儲からなかった区分マンション

どうしたら、この物件の収益性は高まるだろうか?

そう考えた時に思いついたのが売却でした。売ってしまったら家賃収入が減ってしまうのではないか? そう思う人も居ることでしょう。そのとおりです。確かに、売った直後は家賃収入が減ってしまいます。しかし、売却した資金を新たな物件の購入に充てれば、収益性の低さに悩まされている物件は、間接的に高収益物件に生まれ変わる可能性を秘めていると考えられるでしょう。

当該物件から得られた総所得は、経費を差し引くと約60万円。それに対して、諸費用を含めた購入価格は約290万円。「単純に購入価格から総所得を差し引いた230万円で売れればいいか!」。そう思ったのは、以前、ある不動産会社に査定してもらった時の査定価格が190万円だったから。

そのことを考えると、トントンであれば御の字です。念のため周辺の売却価格の相場も確認してみましたが、その価格であれば十分に引き合いはありそうです。善は急げ、早速媒介契約を結ぶことに。

中国人投資家が日本の不動産に目を向け始めていたことや、2020年の東京オリンピックの開催が直前に決定したこともあって、当時、不動産価格はじわじわと上昇し始めていました。不動産価格の上昇トレンドは、東京オリンピックに向けてしばらく続くだろうという見方が大勢を占めていましたし、実際にそれは現実となっています。

もう少し値上がりするのを待ってから売ればよいのでは? そのような考え方もありますが、その物件に関して私は欲張らないことにしました。損をしない値段で売れるのなら、今のうちに売ってしまおう。そのような考えに至った背景には、「儲からない物件」という思いがあったからでしょう。

この物件は、不動産投資に関して素人同然の10年前の自分が購入したもの。購入後1年以上も入居者が決まらなかった悔しさが、私をここまで成長させてくれました。そんな、思い出も詰まった物件だったので、実際に手放すときは少々寂しく感じたことも覚えています。

一般媒介? それとも専任媒介?

自宅の売却も含めると、私が経験した不動産の売却は5回。いずれも専任媒介でお願いしてきました。ご存知の人も多いかもしれませんが、一般媒介専任媒介で何が違うのか、ここで簡単に説明いたしましょう。

複数の不動産会社に売却の依頼ができるのが一般媒介契約です。その一方で、専任媒介契約を結んでしまうと、それ以外の不動産会社に売却の依頼をすることはできなくなってしまいます。いろいろな業者に売却を依頼できるなら一般媒介契約の方が良さそうに思えませんか? ところが、一概にそうとも言えません。

一般媒介契約と専任媒介契約、一生懸命仕事をしてもらえるのはどちらか? それは、専任媒介契約です。一般媒介契約の場合、よその業者が成約させてしまうと、自分のところには収入が全くありません。

そう考えると、広告を打つにも消極的にならざるを得ません。一方の専任媒介契約では、頑張って成約させることができれば自社で報酬を得ることができます。そのため、営業活動も積極的に行えるというわけです。

他に、自分で買主を見つけること(自己発見取引)も認められない、専属専任媒介契約という形態もあります。私個人の意見ですが、専属専任にするメリットはあまり感じられません。自分で買主を見つけることができないという制約が増える分、デメリットの方が大きいのではないかと思います。

大手不動産会社では、専任媒介契約を結ぶことでさまざまな特典が得られることもあります。私が自宅を売却する際、大手不動産会社と専任媒介契約を結んだ時は、引き渡し後の設備の故障を一定額まで補償してくれるサービスと退去後のクリーニングサービス、どちらかを選ぶことができました。

投資物件の売却を大手不動産会社に依頼することは少ないかもしれませんが(投資物件を専門に扱う不動産会社に依頼するケースが多いため)、自宅を売却する際は、大手不動産会社がどのようなサービスを提供しているか、ホームページなどで確認してみてはいかがでしょう。

また、窓口を一本化できることも、専任媒介契約のメリットです。一般媒介契約には、同じことを複数の業者に対して説明しなければならないという煩わしさが伴います。次の表は、各媒介契約の特徴をまとめたものです。媒介契約ごとにどのような違いがあるか、確認してみるとよいでしょう。

 

一般媒介契約 

専任媒介契約

専属専任媒介契約

他の業者への依頼

×

×

自己発見取引

×

有効期間

なし

3カ月以内

3カ月以内

契約の自動更新

×

×

指定流通機構(レインズ)への登録義務

なし

7営業日以内

5営業日以内

業務の処理状況の報告義務

なし

2週間に1回以上

1週間に1回以上

儲からない区分マンションが化けたものとは

そうして私は、勤めていた会社からほど近い不動産会社に売却を依頼しました。専任媒介でお願いしたのが功を奏したのか、幸いにして3カ月という契約満了期間を待たずして、満額での買い付けをいただくことができました。買主は中国人投資家、チャイナマネーの台頭を再認識させられた瞬間です。

さて、区分マンションを売って得た約230万円はどうなったのか? 翌年、私自身初となる1億円超の物件の購入資金の一部として、投資されることになります。こうして「儲からない区分マンション」は、形を変えて儲かる物件へと再生を果たすことができました

その後、東京を中心とした不動産価格の上昇トレンドが顕著になったため、さらに2つの区分所有物件を売却することにしました。高値での売却が期待出来たことも売却を決意した理由の一つですが、他にも狙いがありました。1億円超の物件を購入する際、某金融機関から融資を受けたのですが、その金利をどうにかして下げたい。

そんな思いがあって、潤沢な現金があれば金利交渉を有利に進めやすいのではないかと考えたのです。交渉に応じてもらえなければ、他行への借り換えも視野に入れていて、その際、求められれば2件の区分マンションの売却代金は、預金担保として抵当に入れるという選択肢もあります。売却で得た現金は交渉の切り札として、その日が訪れるまで、しばし口座に眠らせておくことにしましょう。