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私はファイナンシャル・プランナー(FP)でもありますが、一般のFPとは違って、変わったFPだと思っています。
FPの守備範囲としては、ライフプランニング、資金計画、リスク管理、金融資産運用、タックスプランニング、不動産、相続・事業承継とあります。ただ、私は金融資産運用等、短期的・狭小的なものはあまり興味は薄く(ごめんなさい)、専ら、ライフプランニング、資金計画、リスク管理、タックスプランニング、不動産、相続・事業承継等、長期的・大局的なものが好きです。
借金は危ないもの?
ところで、FPの中には、「借金は悪」という考え方の人も多いものです。しかし、借金は鋏や包丁と一緒で、下手に使えば危なく、怪我をするかもしれませんが、うまく使えば便利なものです。
資金使途で言えば、「投資」「消費」「浪費」。不動産で言えば、「不動産経営用」「自己居住用」「別荘」といった感じです。
「投資」は不動産経営用であり、基本的には賃借人からの賃貸料でローン返済・諸経費支払いを賄おうというもので、リスクは高くはありません。
「消費」は自己居住用であり、基本的には自分が働いてローン返済・諸経費支払いをしなければなりません。つまり、減給・リストラ・倒産母さんのリスクがあり得ます。「浪費」は別荘等であり、何ら利益を生むものではありません。
基本、借金は「投資」にこそ活用すべきもので、せめて「消費」(住宅、教育費等)にまで。「浪費」(別荘、都心で必要性の低い車等)には使うべきではないと思います。「投資」においても、借り過ぎ等には注意は必要ですが。
借入金活用のメリット
借入金活用のメリットについて見てみたいと思います。
〇自分と物件をチェックしてくれる
現金購入の場合、舞い上がってしまい、ある程度自分と物件に難があったとしても、自分だけの判断で無茶をして購入してしまうリスクがありますが、借入金を活用する場合には、金融機関がある程度第三者的な目で、自分と物件を見てくれます。あまりに自分自身(資金繰り、財務内容等)や物件が酷い場合にはストップがかかります。
但し、金融緩和の昨今にあって、比較的融資基準が低く高金利(4.5%等)の金融機関等にあっては、多少の難があっても融資が通ってしまい、後で破綻してしまう場合も多いので、最後は自己判断することが重要です。
〇いいタイミングで、高額の物件も購入対象にできる
現金購入の場合、お金が貯まるまで購入できませんし、貯めた金額迄の物件しか購入対象にはできません。しかし、借入金を活用すれば、いいタイミングで、貯めた金額以上の物件も購入対象にできます。いわば「時間を買う」という発想です。
〇梃子の原理が活用できる
昨今の日本は、金融緩和で、低金利で資金調達し、高利回りで運用できます。つまり、投下自己資金当たり利回りが高く取れ、梃子の原理が活用できるいい時期です。
〇生命保険機能が活用できる
借入金を活用することにより、団体信用生命保険(団信)という生命保険機能を活用することができます。遺族には、借入金の無い不動産が残り、受取賃貸料がほとんどまるまる手残りとなります。
〇節税機能が活用できる
所得税・住民税においては、支払金利が原則として経費計上でき、節税も図れます。又、借入金(実額でマイナス)を活用して不動産(評価減)を購入しておけば、資産評価を圧縮できるので相続税節税にも繋がります。
〇インフレに強い
国家財政破綻・紙幣発行増等からインフレを想定した場合、相対的に借入金の実質負担は減り、数に限りのある実物資産(貴金属・優良立地の土地等)の価値は上がります。となれば、借入金を活用して良い立地のエリアの不動産を所有しておくと有利となります。
住宅ローン・教育ローンはなるべく活用する
一般の家庭では、住宅購入用や教育費に備えて、預貯金を貯めているかと思います。その際、仮に預貯金が貯まっていたとしても、なるべく住宅ローン・教育ローンは活用した方がいいと思います。
それは、住宅ローン・教育ローンは政策的な観点もあって借り易く、又、融資条件(固定金利)・融資期間・金利等の面で優遇されているからです。住宅ローンは、35年間固定金利で金利ゼロ%台、1%台といった感じです。
不動産経営用ローンだと通常は変動金利ですし、そんなに長期間・低金利のローンは難しいです。教育ローンに至っては、地方公共団体のものであれば無利子のものもあります(私も、区から無利子でお借りしています)。
住宅購入費・教育費に貯めた預貯金をそのまま使うくらいなら、お金があっても、敢えて住宅ローン・教育ローンを活用して、余剰資金は不動産経営に回しそれ以上で運用するとか、予備費として温存しておく方が賢いかと思います。
1.先に金融機関の内諾を得る
融資を上手に引くためには、不動産会社等の紹介等で、先に金融機関宛に自分の情報(「源泉徴収票」「確定申告書」等)を提供し、融資の内諾を得ておくと効果的です。自分の属性から、融資可能性・融資金額上限を確認しておくのです。
ところで、自分自身の財務諸表(「貸借対照表」「損益計算書」「資金繰り表」)は、できれば市販ソフトを使ったり、税理士に頼んだりするのではなく、自分自身で計算式を組み、作成しておきタイムリーに更新しておくといいです。
市販ソフトや税理士のみに頼ると、会計・税務を理解しにくくなるかと思われます。自分自身で作成することにより、会計・税務等の仕組みを理解し易くなりますし、対策が立て易くなります。
そして、日々、自分の状態を把握できておけば、不動産投資における今後の対策が立て易いものです。また、借り換え・新規案件・税務申告等といった際にでも、金融機関・不動産会社・税務署等にタイムリーに情報提供できます。
私も、財務諸表(貸借対照表・損益計算書・資金繰り表、確定申告書等)はMicrosoft Excelで、計算式も含め作成しました。そして、タイムリーに更新しております。1986年、不動産経営を開始した初年度の確定申告の時だけ、不動産会社紹介の税理士の先生に教わりましたが、その後は自分で作成しています。
もともと簿記3級は所有していましたので、財務諸表の基礎的な仕組みは理解していましたが、最初にMicrosoft Excelで、計算式も含め作成する際は手間暇がかかりました。それでも税務調査に2回入られたときの応対は大変でした。現在も対応中ですので、こちらはまた別途、御紹介させて頂きたいと思います。
2.金融機関の融資対象物件条件を確認しておく
次に、金融機関から融資対象物件の条件を確認しておきます。
金融機関・支店・担当者によっても若干異なりますが、例えば首都圏(一都三県:東京都、神奈川県・埼玉県・千葉県)の場合、地方中核ブロック都市、政令指定都市、都道府県庁所在地、人口30万人以上の都市、地震・津波等自然災害リスクの低いエリアなどが条件になります。
他にも、新耐震基準(1981年6月以降建築申請)の物件、再建築不可・建蔽率容積率オーバーは不可、借地権は不可、シェアハウス・ゲストハウス・民泊は不可、入居率3分の2以上…いったような感じです。
3.金融機関と自分の条件の中からマッチング物件条件を絞り込む
その上で、金融機関と自分の条件の中から、対象物件条件を絞り込みます。
例えば私の場合は、以下のようにしています。
●立地は、東京・地方中核ブロック都市(博多・札幌・名古屋)・政令指定都市(京都・千葉)
●在来線・新幹線双方が通っているエリア(博多駅・札幌駅・名古屋駅・京都駅の傍)
●自然災害リスクの低いエリア(博多・札幌)
●所有権(×敷地権)
●×再建築不可
●新耐震基準(1981年6月以降建築申請)
●居住用(×商業用)
●×ホテル・シェアハウス・ゲストハウス・民泊
●入居率3分の2以上
4.希望物件情報を、不動産会社・金融機関等に流す
そして、絞り込んだ希望物件情報を信頼できる不動産会社・金融機関等に流します。並行して、自分自身もサイト等から条件検索設定し、情報収集します。
5.物件購入・資金調達に動く
不動産会社・金融機関から具体的なマッチング対象物件情報が来たら、即、判断と決断し、不動産会社・金融機関に並行して動きます。売り手市場の昨今にあっては、なかなか1番手は取れませんが、融資内定で迅速な融資実行決済が可能であれば、逆転することも可能です。私の場合も2012年末のアベノミクス以降は、何れも1番手は取れず2番手以降でしたが、この御陰様で逆転でき、購入できたものです。
低収入・低属性の人・未経験者の人等、融資が引き締まってから始めたという話も聞こえてきていますが、融資が流れて、こちらに話が回ってきて購入できた場合もありました。
ところで、融資割合はなるべく高めて、自己資金はできるだけ温存しておいた方がいいと思います。優良物件を、相続・決算期・売り急ぎ等の理由による割安価格で購入する場合や、共同担保を付する場合にはフルローン・オーバーローンも可能です。
繰上げ返済はしない
FPは、よく「繰上げ返済しよう」等といいます。しかし以上のように、借入金は折角獲得したお宝です。「期限の利益」もあるのです。敢えて、お金ができたからといって繰上げ返済はしない方がいいです。
不動産経営には、修理費、空室、敷金返還、リフォーム、フリーレント、家賃値下げ、広告費(AD)等、不意の出費も多いものです。キャッシュフローには余裕を持たせ、ある程度の資金を手元に置いておくことが重要かと思います。
又、金融機関はお金を持っていない人には貸したがらず、お金を持っている人に貸したがります。借り換え、リフォーム資金調達、次の不動産経営用物件購入等も視野に入れた場合、ある程度、現預金・流動資産(外国為替・貴金属・株等)を持っておくことも効果的です。
私自身の固定資産(不動産)以外の流動資産(現金・預貯金・外国為替・貴金属・株等)としては、5000万円程度です。不動産経営においては、修理費・空室時の敷金返還・リフォーム費用・空室フリーレント時の家賃無し・広告費・家賃下落等もあります。
注意点は…
昨今、立地・環境がイマイチなエリアの築古大規模一棟マンションを、比較的高金利(4.5%等)で、フルローン・オーバーローンで資金調達、その後、空室・修理費等で資金繰りが悪化。かといって資金繰り・財務内容等がイマイチの為、金利引下げや借り換えもできず、売却もできず、実質破綻する例が散見されているようです。充分、留意して下さい。
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