スマートデイズがセミナーで使用していた資料。「共用リビングがない」という点がかぼちゃの馬車の特徴の一つ

前編から続く)

かぼちゃの馬車のオーナーたちにとって、スルガ銀行の過剰融資責任の追及、スマートデイズへの損害賠償請求なども重要な問題だが、喫緊の課題は「物件をどうするか」。自主管理への変更や別の管理会社への管理委託、用途変更などさまざまな形で再建を目指しているものの、彼らの前にはさまざまな障壁が立ちふさがっている。

建築面でも問題が山積

「どう見ても設計の質が悪いと言わざるを得ない」

一般社団法人日本建築まちづくり適正支援機構代表理事の連(むらじ)健夫氏は、視察したあるオーナーの物件について「建物南側に窓がない」「玄関から台所が丸見え」「キッチン周りが狭すぎる」「居室のエアコン設置箇所が窓と重なっている」「共用廊下に自然光が入らない」など、利用者視点を欠いた設計上の問題点を列挙。さらに「天井裏に本来あるべき界壁(防火、防音)がない」「契約図面上は3面鏡だった洗面台が、実際はグレードの低い1面鏡になっていた」などと指摘し、「通常ありえないレベルの安物設計だ」と切り捨てた。

別のコンサルタントは「はっきり言って上物はほぼ価値がないのと同然で、この設計なら半分ぐらいの価格が妥当」と指摘。物件は早期に売却して損切りするという手段もあるが、オーナーたちは実勢価格にスマートデイズ側の儲けを大きく上乗せした価格で購入している分、売却しても借金を返済しきれず手元資金での穴埋めを覚悟せざるを得ない。「被害者の会」では売却した上で残債の免除を働きかける動きもあるが、実現可能かどうかは不透明だ。

早急な対応が求められる

連氏は「投資目的での購入なので建物自体に興味のない人が大半だと思うが、こうなった以上は建物をどう扱うか早めに考えないとまずい状況になっている」と強調。「選択肢は『売却する』『そのままシェアハウスとして活用する』『別の用途に転用して運用する』の大きく三つ。専門家の目線も入れて現状を把握し、例えば一つ二つ部屋をあきらめてキッチンにしたり、大きめのリビングを造ったりと、収益性や入居率を高めるリノベーションは可能」と語った。

株式会社協同住宅代表の高梨健太郎氏は「見に行ったエリアのかぼちゃの馬車は7平米で6万2000円だったが、これは周辺の賃料相場を考えるとかなり割高で、このままの運用だと厳しい」と述べた。「2つの部屋を1つにする手もあるが、ツーバイフォーだとそれも難しい。唯一良かったのは木造なので壊しやすいこと。3カ月以内に今の土地・建物をどうするか検討するべき」とした。

競争力を高めるには

シェアハウスを中心にコンセプト型集合住宅を企画・運営するLivmo(東京都)代表の源侑輝氏は、かぼちゃの馬車のハード面の問題点として、共用リビングがない点を指摘する。

「住民同士の交流に魅力を感じるタイプの入居者にとって、かぼちゃの馬車の共用部は貧弱すぎます。共用キッチンに隣接する1室を潰してリビングにすることで、物件の競争力を高めることにつながる。シェアハウスの稼働率というのは、おおむね75%〜90%くらいに落ち着きます。つまり12室あれば常に1室が空室なので、その部分を共用スペースに回すという考えです」

リビングを作ることは、物件の競争力向上に加えて、入居者募集のチャネルが増えるというメリットもある。「共用リビングがないかぼちゃの馬車は、シェアハウス専用募集サイトの掲載条件を満たしていませんでした。シェアハウス業界で募集サイトの二強とされ、ともに月間10万PVを超す『ひつじ不動産』『東京シェアハウス』で紹介されないのは致命的。積極的にシェアハウスを探している顧客から見ると、物件が存在していないのと同じだからです」(源氏)

一方、シェアハウス専用ではなく一般的な賃貸募集サイトでの募集は費用対効果が悪いと源氏は言う。「基本的にシェアハウスに入居したい人があまり利用しないサイトなので、マッチングに難があります。シェアハウス専門サイトなら数万円の事務手数料で済む客付けコストが、一般賃貸サイトを通すと仲介手数料1ヶ月+αになる。コスト的にもシェアハウス専用サイトに優位性があります」

募集ターゲットを絞ること

コンセプトを打ち出した訴求や、募集ターゲットの選定も重要になってくる。「今なら外国人実習生やシングルマザーなど、部屋探しに苦労している人たちにターゲットを絞るのも手だと思います。この層を受け入れる賃貸物件は不足しているからです。新築物件ならなおさらで、かぼちゃの馬車が新築や築浅であることが強みになる可能性があります」(源氏)。共用リビングやコンセプトで付加価値をつければ、1室3000円から5000円の賃料アップも狙えるとみている。

一方、簡易宿所や民泊への転用は慎重になるべきだとアドバイスする。

「相談を受けた範囲では、民泊で運営するには厳しい立地の物件が多い印象です。一部の空室をAirbnbで埋めるとしても、女性限定で旅行客を募るのは反響がかなり限られますし、既存の入居者との調整も必要となります。民泊向きの条件を挙げるなら、好立地かつ全空の場合に限ってコンバージョンを検討すべき。それ以外のケースは、そのままシェアハウスとして運用したほうが収益が安定すると思います。稼働率を上げるためのマンスリー賃貸も有効です」

まずはキャッシュアウトを伴わない施策から

5棟34室のシェアハウスを自主管理するサラリーマン大家の「投資家ずん」さんは、共用リビングの改修は必須ではないという意見。「オーナーの中には来月の返済すら困難な方もいます。そういった方がリフォーム費用を工面できるかというと現実的ではない。何より工期がかかり、入居者がいる状況で工事がスムーズに進むかという問題もあります」

源氏と同様、ずんさんも物件にコンセプトを付与したり、ターゲットを絞ったりすることが大事だという見解だ。「一例として、ペット可にして付加価値を上げることが考えられます。他には、法人に寮として一棟貸しをする方法も、自主管理にそこまで手がかけられない人にはおすすめです。日本人学校の総務課へ営業して、学生寮のニーズを探るのも手ですね」

独自のコンセプトで高利回りを実現

かぼちゃの馬車のセールストークに疑問を感じ、独自のコンセプトで高い収益性を実現しているオーナーもいる。神奈川県に住む男性(50代)は「今から3年前、かぼちゃの馬車のセミナーや営業でビジネスモデルを聞いて投資を却下し、正反対のコンセプトのシェアハウスで15%以上の利回りを実現しました」と語る。

「相続で取得した104坪の土地に、認可保育園とシェアハウスを作りました。建物は解体や設計、設備を含めて2億円。25年のフルローン、10年固定で1.1%です。年間想定家賃は2000万円、推定利回りは10%強。満室まで半年ほどかかりましたが、現在は95%程度の入居率。保育園もシェアハウスより売上が上がり、2018年は大幅な黒字見込みです」

かぼちゃの馬車のセミナーに参加した際には「女性専用」「低価格」「共有スペースがない」「コミュニケーションが生まれない」「(当時の)建築坪単価で木造80万」といった点に疑問を感じた。「シェアハウスは異性がいる方が綺麗に使おうという意識になりますし、なぜ新築なのに低価格を売りにするのか。建築坪単価も、あの貧弱な作りでは60万程度でいいのでは、と思いました。どんな方法で集客するのかという点も疑問でした」

その後もかぼちゃの馬車の営業電話が多くかかってきたが、「馬鹿馬鹿しいので無視していた」という。2017年3月にオープンし、シェアハウスのポータルサイトに有料広告を出したが、かぼちゃの馬車が掲載されたサイトには広告を出稿しなかった。「同列にされたくなかったからです」

「私は金利10年固定1.1%で借り入れをしましたが、3%以上の金利で借りるとしたら、銀行のために賃貸経営をするようなものです」と指摘。今後については「別の会社にサブリースを依頼することはやってはいけない。壁の薄さや騒音問題、コミュニケーションの生まれにくさなど、建物に問題が多すぎるので同じ事の繰り返しになる」と語る。

さらに「リスケは抜本的な解決になりません。4万5000円前後で入居率80%なら、空いている部屋でリビングを作り、ポータルサイトに広告を出稿して自主管理するのがいいのでは」とアドバイスを送る。「都内で商店街に近い便利な立地であれば、補助金を活用した都市型軽費老人ホームへの転用も選択肢としてあり得ます」

本質を忘れない

再建の途を模索するオーナーたちだが、彼らを狙う二次被害にも注意が必要となる。複数のかぼちゃの馬車オーナーからは「助けを求めるためにある団体へ相談に行ったら、200万円のコンサル料を求められた」という話が聞かれた。NPO法人日本住宅検査協会理事長の大谷昭二氏は「窮地に陥ったオーナーの弱みに付け込むような形で、高額のコンサルフィーや交渉代行として法外な着手金を請求する業者や団体に注意が必要」と、かぼちゃの馬車オーナーを食い物にする「被害者救済ビジネス」へ警鐘を鳴らす。

「賃貸経営にウルトラCは存在しません」と投資家ずんさんは言う。「これまでに20人以上のかぼちゃの馬車オーナーの相談に乗ってきましたが、非常に優秀な人が多い印象。だからこそ知恵を寄せ合えば、誰も思いつかないような再生プランが確立できるかもしれない。低コストで質の良い住空間を提供するという本質を忘れなければ、入居者は見つかるはずです」。物件の現状を正確に把握したうえで、地道な取り組みを積み重ねることが状況の打開につながっていく。返済停止へ

○取材協力
投資家ずんさん(https://goodasset.net/)

(楽待新聞編集部・金澤徹)