物件の購入後に起こりうるトラブルのうち、「雨漏り」に悩むオーナーは少なくない。入居者のいる部屋に雨水が入れば家財などに被害を与えるだけでなく、浸入した水が躯体そのものへのダメージとなる可能性もあり、「たかが雨漏り」とあなどれない。

今回はそんな雨漏りと戦った経験のあるオーナーに、そのエピソードを取材。また、雨漏りに悩まないために、どのような物件を購入すべきなのか、専門家に意見を聞いた。

原因不明の雨漏り…2カ月止まらず

「雨漏りの原因が2カ月あまりわからず、しらみつぶしに調査するのでお金もかかり、本当に苦労しました」と明かしてくれたのは、飯野智司さん(仮名)。

首都圏に物件を持つ投資家だが、雨漏りがあったのは東京23区内に所有する鉄骨3階建てで、1階が店舗、2、3階が住居となっている物件だった。「1380万円で、2011年の3月に購入した物件です。その当時で築22年。雨漏りが発覚したのは、購入して半年くらい経った2011年の夏だったと思います」

1階に入っていた惣菜店から「水が垂れてくる」と話があり、雨漏りが起きているとわかったと話す飯野さん。調べてみると、共用部の2階に続く階段の天井付近からも水が染みていた。幸いなことに2、3階の居室部分への被害はなかったという。

飯野さんの物件共用部の雨染み

雨漏りの原因調査と修繕のため、店舗の客付けをしてくれた仲介会社を通じて業者に依頼。しかし、大変なのはここからだった。

「調査してもらうと2階の外壁に髪の毛ほどの亀裂があったので、そこから雨が吹き込むんじゃないか、と言われました。なのでコーキングで直してもらったんですが、それでも雨漏りは止まりませんでした」

次には屋上の防水がきちんとされているかどうかを調査してもらったが、不具合は見つからなかった。また、購入した当初に行ったアンテナ取り付けに問題があったのでは、との推測で調査をしても、異常は発見できず。さらに、最初に調査した外壁の傷以外の細かな傷が原因ではないかと疑って、前面のペンキ塗り直しも行ったが、それでも雨漏りは止まらなかったと飯野さんは振り返る。

「2カ月くらい足場を組んだままでしたね。雨が降るたびに業者さんに見に行ってもらい、直してはホースで水をかけてもらいながら、原因がわかるまで一つ一つ可能性をつぶしていきました」

その後、ようやく雨漏りが起きた原因が判明した。飯野さんの物件は3階の一部が斜線規制のために斜めにカットされており、雨が降るとその部分に集中して雨が下に伝っていた。そして、そこから伝った大量の雨水が1階店舗のシャッターと壁の境目から浸入してしまったことが直接の原因だったという。

「結局は劣化ということになるのかもしれませんが、シャッターの取り付け箇所のコーキングが甘くなってしまっていたので、そこをコーキングで補強してもらいました。また、下に流れる雨が集中しないように、新規で雨どいを取り付けて、ようやく雨漏りが止まったんです」

かかった費用は全部で60万円。購入したばかり、しかも「全面フルリニューアル」とうたわれていた物件だっただけに「5年、10年くらいは大きな修繕はないだろうと思っていた」という飯野さんにとっては、大きな出費となってしまったと話す。

20年、修繕していない外壁

マンションや戸建てを5つ所有する野上信二さん(仮名)は、おととし、石川県に所有していた築21年の物件で雨漏りを経験したという。重量鉄骨造、全12室のマンション。そのうち1室の入居者から「部屋の湿気がひどく、壁紙がかびてきた」と言われたことが発覚のきっかけだった。

「この物件は2012年ごろにオーナーチェンジで購入した物件なんですが、実はその時からすでに湿気がすごい状態だったようです」

築20年を超えていたため、そろそろ大規模修繕の時期か、と考えていたところだったという。「先延ばしになっていたんですけど、もう入居者さんに言われたんで、やらないといけないと調査を依頼しました」。業者は管理会社に依頼して手配してもらい、工事も実施してもらったという。

この入居者の居室は2階の1室。天井から下に向かって、壁紙にかびが生えていた。当初は屋上の雨漏りを疑ったが、調査で外壁のコーキングに傷があり、そこから雨水が浸入していたことがわかった。「外壁は本当に20年近く修繕してなかったんです。やらなきゃいけないとは思っていたんですが…」と野上さんは語る。

この雨漏りで、壁1面のコーキングを直したという。費用はおよそ30万円。運よく隣地が空いていたため、クレーン付きのトラックで足場を組むことなく工事を行うことができ、安く済んだという。

「塗装や屋上は今回やりませんでした。本当は外壁塗装はやったほうがいいと思ったんですが、500~800万円かかるといわれたので、躊躇してしまいましたね。今回は応急措置で終わらせました」。

野上さんはこの物件を昨年売却したが、この雨漏りで学んだことは多いと話す。「お金の余裕がどれだけあるかにもよりますが、先延ばしせずに、定期的に外壁塗装なり、防水工事なりをしたほうがあとあと困らないと教訓になりましたね。応急措置だけで問題ありませんでしたが、もっとひどければ、かなり大がかりな修繕が必要となり、費用も莫大になるところでした」

やせたコーキングに注意! 雨漏りの原因は?

一級建築士かつ宅地建物取引士で、情報サイト「All About」で建築・リフォームについてガイドも務める大野さんは、雨漏りの原因について「やはり『つなぎ目』が多いと思います」と解説する。

「つなぎ目」とは、例えばサイディング材のつなぎ目、窓枠とのコーキング、バルコニーと外壁のつなぎ目など、そういった部分のことだ。これらの箇所から雨水が浸入するケースが非常に多いと大野さんは話す。

「鉄骨造の場合もやはり、鉄骨の躯体の外側に外壁材を貼っているケースが多いと思うので、こういったつなぎ目が危ないですね。RC造ではコンクリートの亀裂から水が入ることもありますし、また、陸屋根の屋上などでは、防水層がきれているというトラブルは多いんじゃないでしょうか」

外壁のクラック

大野さんによると、どの構造でもやはりコーキング箇所が劣化し、ひび割れているなどして水が入る場合が多いのだという。そのため、中古の物件を購入しようとする際には、コーキングの劣化具合をきちんと確認することは大事だ。

「外壁の傷み具合を見るときに、触ってチョーキングがつくかどうかを確認する方も多いんですが、それよりも気にしてほしい箇所がコーキングです。通常は弾力性のあるコーキングが、紫外線にさらされるなど、経年劣化で細くなり始めていたら、そろそろ修繕の時期だな、と考えておいてほしいですね」

劣化したコーキング箇所は硬化し、やせ細ってくるのだという。物件を購入するときだけではなく、定期的に触って確認することも大切のようだ。

劣化したコーキング部分

こんな箇所もチェック

物件購入検討時のチェックポイントは、まだまだある。

「バルコニーや共用廊下のある物件では、床面を見ることは鉄則です。床に水がたまった形跡があったり、床面にクラックが入っていたりすると、そこから雨が浸入しやすくなります」

また、バルコニーでは排水溝が砂ぼこりや枯葉でふさがっていないか、あるいは防水工事をきちんとやっているかということも見るべきだという。屋上でも同様に、排水溝がふさがっていないか、排水溝の数は適切か、防水層が必要な箇所に、適切な寸法で施工されているか、などのチェックポイントを指摘する。

「もし戸建てや木造2階建てで、屋根材がスレートの場合は、経年劣化で表面がけば立っていたり、割れていたりしないかも確認してほしいですね。その際には、日の当たり方など、東西南北でまったく状況が違うことも十分あり得るので、物件を一周してみてほしいと思います」

ほかにも、雨どいを必要とする物件では雨どいが劣化していないか。雨どいやアンテナ、給湯器などを固定しているビスや金具がぐらついていないかといった点も見るべき要素だという。ビスや金具の取付穴から水が浸入する可能性も高いためだ。

雨漏りしやすいデザイン

雨漏りしやすい物件のデザインなどはあるのだろうか? 大野さんは次のように述べる。

「このデザインが絶対にダメ、ということはありませんが、最近のトレンドでいえば、軒が出ていない建物が増えていますね。そうすると屋根と外壁のつなぎ目が直接雨風にさらされやすくなり、水が入るリスクが高くなります。また、天窓がある物件はデザインとしてはおしゃれですが、雨仕舞(建物内に水が入らないようにする構造など)は不利になるケースが多くみられます。気を付けていても、定期的にメンテナンスしないと水が入りやすいですね」

また、収益物件で屋上に太陽光パネルをつけているオーナーもいるが、「取り付ける時に、固定するための専用金具取付穴の防水処理が甘ければ、そこから水が入っていってしまいますから、こういった金具がぐらついていないかということも確認してほしいです」と大野さん。

物件を購入する際、前オーナーの修繕履歴をほとんどの場合確認すると思われる。しかし、この時、防水工事が行われているかどうか、は案外抜けやすいポイントだと大野さんは指摘する。

「『塗装』の中に防水工事が含まれているケースと、含まれていないケースの両パターンがあります。例えば前のオーナーさんがリフォーム工事のことをあまり理解されておらず、塗装工事に防水工事も含まれていると勘違いしてしまい、さらに業者も塗装だけを依頼された、すなわち防水工事はしなくてよい、と誤った認識・解釈をしてしまい、お互いの説明不足からコーキングも防水もそのまま、ということもあり得ますから、きちんと確認してください」

だが、もしクラックがある物件や、防水工事がされていない物件であっても、購入してはいけない、ということではない。その修繕費用を見込んだ額分、安く購入することができる可能性があるからだ。その指値の根拠とするためにも、購入を検討する際には雨漏りが起こりそうかどうか、きちんと確認することが重要となる。

建物の長寿命化のために必要な「5年に1回」とは?

大野さんが物件購入時や平時に建物の劣化具合を確認すべきだと強調するのは、いざ雨漏りが起こってしまってからの苦労が非常に大きいからだ。飯野さんの例にもあったように、専門家であっても原因追及にはかなりの労力を要し、また、建物のすべての弱点を拾い上げることも非常に難しい。起きてしまったあとでは、「修繕しなくては」という焦りで、悪質な業者の営業トークに乗ってしまう恐れもある。

雨水によって躯体が腐朽してしまっている

「RC造では15年を一つの目安として建物外部のメンテナンスを考慮してほしいですが、木造の中古物件では10年持たない外壁もよくあります。理想的なのは、コーキングは『5年で1回疑う』ことです」

大野さんが言うのは、5年に1回コーキングを打ち直すということではなく、5年に1回はコーキングの劣化を疑い、状況確認をしておいてほしいということだ。

「建物外周の劣化箇所点検であれば、専門の業者に依頼してもおそらく10万円前後くらいで対応してくれるでしょう。また、今後のお付き合いも考えて、修繕する前提で業者に見積り依頼をかければ、もっと安くすることはできると思います。あるいは、素人目線でもいいので、オーナーさん自身で窓回りや外壁のコーキングの劣化やヒビがないか、疑いながら確認するだけでもかなり建物の寿命は変わってくると思います」

もし業者に依頼するのであれば、大野さんのおすすめは「修繕計画を立てたいから、修繕の緊急度合いを3段階くらいに分けて、教えてほしい」と依頼することだという。

「点検の際に、○年○月○日時点の調査でこのような状態だったから、ここは今回やるべき、ここはその次、こちらは10年以内、というように考察を書いてもらい、また、写真にも撮ってもらう。そうやってきちんと修繕を計画に組み込むことで、安定的な収益と同時に安定的な経費の見込みが立ちますから、必要以上に焦ることも少なくなるはずです」

さらに、こうした書類をきちんと残しておけば、売却を考えた際にも、指値を入れられないための根拠にもなりえると大野さんはアドバイスする。

半分以下の費用で修繕した工法とは?

優良な業者の選定に時間を割き、工費を安くすることに成功した投資家にも話を聞いた。佐山恭祐さん(仮名)は、昨年、湘南エリアに所有する4階建ての重量鉄骨造のマンションで雨漏りが発覚。業者に調査してもらったところ、原因は壁や屋上、窓枠の亀裂から雨水が浸入していたことだった。

「購入したのは2013年ごろです。前のオーナーに修繕の記録は聞いたんですが、外壁塗装を1度行っていると言っていたので、恥ずかしながらそれ以上の確認はしていませんでした。その当時で築25年くらいでしたが、現地で見てもボロボロという感じでもなかったので、築30年を超えたら大規模修繕を考えようと思っていたんですが、その前に来てしまいましたね」

雨漏りを発見したのは佐山さん自身だったという。「雨の日にたまたま物件に行ったところ、エントランスの天井のボードがぶよぶよしていて、水が入っているかもしれない…と思ったことがきっかけです。すぐに入居者にヒアリングしてみると、一番ひどいところでは壁紙がカビだらけで、ビリビリだった部屋もありましたよ」

長年住んでいた入居者だったためか、カビの発生を経年劣化だと思い、さらに水が居室内に垂れてくるわけでもなかったため、これらの事実をオーナーに告げていなかったのだという。たまたま佐山さんが物件に行かなければ、しばらく気づかなかった可能性は高い。「業者の調査でも、雨漏りはおそらく数年前から発生していただろうとの話でした」という。

発覚後、修繕のために見積りをとったという佐山さん。ほとんど壁1面、しかも屋上もすべて亀裂などを直すことになったうえ、4階建てであることもあり、足場を組んでの修繕は約300万円かかる想定だった。しかし、佐山さんはエリア内でもう1社、別の業者にも見積りを依頼していた。

「その業者は『無足場工法』でやってくれるという業者でした。大家仲間から、無足場工法は足場代がかからないので安いよ、とちらっと聞いていたのを思い出して、エリア内で対応している業者に見積りを依頼したんです」

無足場工法とは、その名の通り足場を組むことなく、屋上から下したロープを利用して作業する工法のことだ。足場代がかからないため、その分安くなるケースが多いといわれている。陸屋根などの物件で施工可能で、また足場から不審者が浸入するといったこともなく、防犯性にも優れている。ただし、特殊技術のためすべての業者で施工できるわけではなく、またその分人件費がかかることもあり得る。

佐山さんに出されたこの工法による費用の見積りは、約137万円。半額以下だったこともあり、こちらに修繕を依頼することに決めたという。

特殊技術での修繕、しかも工事中はオーナーが現場を確認することもできないが、不安にはならなかったのだろうか。

「初めてお願いした業者さんでしたが、会社のホームページを確認すると、これまでの実績がきちんと掲載されていました。また、実際にお会いして、お話をしても誠実さを感じたので、大丈夫だろうと判断しました」

足場がないため自身で現場を確認すること自体はできずとも、下から眺めたり、屋上に登れたりと確認する方法はある。また、施工の報告書は写真付きで提出されたという。「私はいい業者さんに会えたと思います。きちんと自分で会って、話して選んだほうがいいですね」

無足場工法で修繕する様子(佐山さんの施工完了報告書より)

佐山さんは「2階建てくらいだと無足場でもあまりメリットがなく、3階建て以上がいいようです。何百万円と覚悟していましたから、助かりました」と振り返る。もちろん、100万円を超す費用は少額ではない。しかし、佐山さんは「考え方を変えれば、30年迎えた時にやろうと思っていた大規模修繕を、少し早めにやったという感覚ですね」と前向きだ。

「窓枠のコーキングがやられやすいことはあまり知らなくて、細かく気にしていなかったんですが、物件を買うときにはきちんとチェックして、定期的に確認することは必要だなと思いました。劣化していると判断したら、すぐに直すべきですね。また、陸屋根も定期的にやったほうがいいようです」と教えてくれた。

雨漏り物件も「かわいく」高利回り…スゴ腕女性大家

「雨漏り物件でも気にしません」

そう語るのは、DIY大好きだという菊地美佳さん。軒天が飛んでいる、2階のベランダの接合部分が劣化している、などの理由で雨漏りしており、しかも修繕されていない物件でも気にせず購入してきたという。築30年~50年くらいの戸建て物件をおおむね300万円以下で買っているそうで、平均利回りは20%ほどだという。

菊地さんが購入した、軒天が飛んだ物件

「その傷みの程度と、立地などを総合して買うかどうか判断していますね。雨漏りがあっても躯体がしっかりしていて、値段が安ければ買ってしまうこともありますし」

菊地さんはこうした戸建てを購入し、「サーファー向け物件」に仕立てているのだと話す。サーフィンは夫婦の趣味でもあるそうだ。「物件のエリアは千葉の房総なんですが、東京の人に高く貸すことができるので、『かわいくなる!』と自分たちで思える物件なら買っちゃいます(笑)」

菊地さんは購入した物件の雨染みなどを自分で塗り直し、安く済ませていると語る。例えば和室の柱に雨染みがあった物件では、柱の色より若干濃い色のステインを塗ったところ、ほとんど目立たなくなった。

雨染みが残ってしまっている(before)

雨染みも自分で塗りなおし、サーファー向けにリフォーム(after)

「塗り方のコツは、『雑に塗ること』です」と菊地さんは笑う。物件自体が古いため、きれいに塗りすぎてしまうと周囲から塗り直した部分が浮いてしまう。少しかすれ気味になるように塗ったという。

「雨漏り物件はダメという人もいますが、雨漏りだけなら20万円もせずに修繕することができます。それに加えてDIYをすれば、仕上がりでいえばもちろんプロのほうがいいんでしょうけど、物件に愛着がわくし、楽しいからOKですね」

雨漏り物件でも菊地さんのようにあえて安く購入し、DIYも含めたリフォームを行って高利回りを狙うということも可能のようだ。

雨漏りと戦ってきたオーナーの話を聞くと、やはりたかが「雨漏り」と軽視することはできないとわかる。しかし、必要以上に恐れる必要もないことも、同時に理解できるのではないだろうか。

まずは「雨漏り」は起こりえるものだということを念頭に置き、物件購入時や、あるいは普段も、外壁や屋上の劣化具合を自身で確認することが重要となる。そして、予想外の出費に泣くことのないよう、きちんとした修繕計画の策定を心掛けたい。

(楽待編集部 浜中砂穂里)