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中古不動産の購入時、何か気になった点はございますか?

 

「そうだな……。

げんじょうゆうし、だっけ?

どういう字だったか忘れたけどさ、

なんか、『見たままですから、今の状態でオーケーと言うことで、

よろしいですか?

って、何度も何度も聞いてきたな。

まぁ、特に問題なかったし、『それでいいよ』

って言ってさ、

『それでは、こちらに署名と捺印を』

って、言われて何か所もサインしたっけ。

あれって、なんだったんだろ」

 

げんじょうゆうし、とは現状の有りのままの姿と書いて、

現状有姿という四文字熟語でして、

不動産、特に中古不動産の重要事項説明時に頻繁に出現する専門用語です。

 

「ワンルームのオーナーチェンジ物件だったからさ、

何も見ることできないし、そんなもんかと思っていたけど、何かヤバイの?」

 

維持管理が組織的になされている区分所有物件であれば、

さほど問題はないでしょう。

ただ……

 

「ただ、何?」

 

戸建物件やアパート、そして一棟物の賃貸マンションや更地の場合、簡単に現状有姿を認め、特別条項である瑕疵担保責任の免責事項に合意すると、あとでホゾを噛むことになるのでお気をつけ頂きたい。

 

「かし、なんちゃらってどんな意味なの?」

 

瑕疵とは隠れた傷という意味でして、瑕疵担保責任の免責事項とは、購入後に隠れた傷が分かったとしても、買主は売主に文句を言いませんよという特別に設けた条項に合意することを意味します。

 

「えっ!? それって、違法じゃないの?」

 

新築物件の場合、住宅の品質確保の促進等に関する法律、いわゆる「品確法」という法律があり、新築時から10年の間、建物が傾いたり、雨漏りが発生した際には、補償を受ける制度があるので、瑕疵担保責任の免責事項とは無縁です。

しかし中古不動産の場合、売主が宅建業者であれば、瑕疵担保責任から逃げられませんが、売主が個人であれば、瑕疵担保責任の免責事項は有効となりますので、軽く受け流すべきではありません。

「で、瑕疵ってどんなものがあるの?」

 

そうですね、

○家の傾き

1000分の8の傾き、1mで8mm傾いた家屋は瑕疵と認定した裁判例があり、それ以下の傾きであっても認められる可能性が高い。売主が長年居住していて気づかないはずはなく、現状有姿であっても、瑕疵担保責任が認められる可能性が高いとされています。

○シロアリ

季節要因があり、冬場に購入して春から夏にかけてシロアリの発生に気づくこともある。現状有姿であっても瑕疵担保責任が認められる可能性が高いとされています。

○雨漏り

雨漏りの補修履歴を隠し、購入後に雨漏りが発生した場合、売主の瑕疵担保責任が問われます。

○事故物件

殺人事件に自殺、そして孤独死など。

心理的事故物件の履歴は5年や10年で、重要事項説明義務がなくなるわけではありません。こうした心理的事故物件を売主が知らぬはずはなく、瑕疵担保責任は免責されません。

○地中埋設物や残存杭

売主が撤去したと主張し、購入後に買主が発見した場合、売主の瑕疵担保責任は免責されません。主な瑕疵としては、以上です。瑕疵に対しては、購入目的が達成されない場合は契約解除、もしくは損害賠償請求できます。ただし、請求期間は、買主が瑕疵の事実を知ってから1年間です。

 

「ふ~ん、でもさ

訴訟とかさ、めんどくねぇ?

そういうヒマって、ないんだよね。

なんか、ないの?」

 

そう、そうした、リスクヘッジ姿勢は、とても大切です。

ポイントは、重要事項説明までに聞き倒すことです。

例えば……

「聞きたいんだけど、いいかな。

家の傾きってあるの? あるとしたらどの程度?

それから、過去に雨漏りってあった。あるなら補修した年月日と場所。

あとね、シロアリって出たことあるかな。

あるなら、出た時期と場所、それに駆除業者の住所氏名。

今、思いつくのはそれだけだけど、書面にしてくれるかな」

 

一般流通物件で仲介業者がいらっしゃるなら、彼らは売主の要望に応える必要があります。聞かれたのに、ウソを言ったり、ごまかしたりしたなら、彼らも売主と同様の責任を負わなければなりませんので、真剣に対応してくれることでしょう。

さらに申し上げれば、このように、重箱の隅をつつくようにリスクヘッジを励行する買主に対して、売主も仲介業者も、ウヤムヤにはしないものです。

 

「なるほど……、他に何かない?」

 

瑕疵ではありませんが、以下の質問をすると、より良いでしょう。

○水道管の材質の質問

昭和築の物件の水道管は鉄管である場合が多い。鉄管はサビや水漏れが起こりやすく、露出管で引き直すには50万円前後かかる。

○基礎の種類の質問

建物の基礎全体をコンクリートで覆ったベタ基礎でなければ、シロアリの発生可能性が高い。

○上水管・排水管・給湯管・ガス管・配電管の経路図の有無を質問

物件引き渡し時に貰えるはずの建築確認図面だけでなく、実施設計図と地下や床下や壁下、そして天井裏に敷設された各種管の位置図面の有無を確認するべき。リフォーム時に間違いなく施工する為に必要。

貸家は、健やかなるときは、家賃をもたらしてくれるのですから、病めるときには、貸家に手を差し伸べなければバチがあたります。以上のリスクヘッジは、皆さんの手に委ねられた貸家のカルテの収集作業と、ご認識頂ければ幸いです。