スマートデイズの本社が入るビル=東京都中央区

首都圏を中心に女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開するスマートデイズ(東京都)がサブリース賃料の支払い停止を発表した問題で、10人ほどのオーナーが同社役員や関係先を相手取って損害賠償請求の集団訴訟を起こす見込みであることが分かった。原告のオーナーは10人程度で、近く記者会見をして正式発表する見通し。

原告側代理人となる加藤博太郎弁護士は、スマートデイズが建築会社から高額なキックバックを受け取った疑いを示す証拠書類を入手しており、損害賠償請求に加えて詐欺容疑での刑事告訴も視野に入れて情報収集に当たっている。

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「裏」の契約書の存在

加藤弁護士が指摘するのは、昨年秋にかぼちゃの馬車のオーナーが首都圏の建築会社と締結した工事請負契約に関する資料。都内のかぼちゃの馬車1棟の建築に関して、オーナーと建築会社との間で約5500万円の請負契約が結ばれていた。

加藤弁護士はこの「表」の契約書締結のわずか5日前、スマートデイズと建築会社との間で結ばれた「裏」の契約書を入手した。

それは、建築会社からスマートデイズに対する「業務委託契約書」という名目で、「本物件に関するコンサルティング業務その他これに付帯する入居者準備業務を委託する」という内容。建築会社側はスマートデイズに対する報酬として着工時、上棟時、竣工時の3回にそれぞれ数百万を支払うと明記されており、3回の合計額は工事請負代金5500万円のちょうど半額となっていた。

加藤弁護士は「まずスマートデイズが建築会社にコンサルティングするという業務の内容自体が意味不明で、実体のないキックバックのための架空契約だと考えられる」と指摘。つまり建築費だけで50%もの裏金がスマートデイズに流れていることを示しているという見方で、「不動産業界では100万、200万のキックバックなら珍しくないが、これは明らかに異常な額」と語る。

加藤弁護士はさらに「おそらく土地についてもキックバックか中間省略で抜いている可能性が高い」とみている。「ほとんどすべての案件で、こういった水増し行為が行われていたはず。素人はシェアハウスの値段がいくらぐらいか分からないし、返済より保証賃料が高ければいいと思ってしまうわけです」

不透明なカネの流れ

スルガ銀行から投資家、投資家から建築会社に金が渡り、建築会社を介してスマートデイズに裏金が流れているという見方だ。「1億2000万円の物件であれば、少なく見積もって4000万円が抜かれていると思われる。それが約800棟ということは、投資家の信用で引っ張った320億円ほどが消えていることになる」(加藤弁護士)。一部ではこの裏金が反社会的勢力に渡っているという噂もあり、加藤弁護士は「このカネの流れは裁判で明らかにしていきたい」と話す。

「スマートデイズは30年家賃を保証すると言っているわけで、5年、10年経って『ダメでした』ならまだしも、これだけの短期間で飛ぶのは悪質と言わざるを得ない。今回のケースでいえば、スマートデイズは保証だけをして負債を負う『空箱』のようなもの。価値のない不動産と多額の借金だけを残し、裏で抜くだけ抜いて飛ぶという計画的な手口といえます」

楽待新聞編集部が報酬額の妥当性についてスマートデイズに質問状を送ったところ、「個々の具体的な契約内容については答えられない」という回答だった。

「法律の穴」を突くスキーム

加藤弁護士は「日本は投資詐欺が多いので、人の金を集めるスキームに関する法規制が厳しい。そういう意味で、今回の一件は巧妙に法律の穴を突いている」と語る。

スマートデイズはオーナーに物件を購入させており、複数の投資家から金を集めているわけではないため出資法違反に当たらない。さらに不動産収益を複数の投資家で分配していないため、不動産特定共同事業法も対象外になる。また投資家から直接金銭を得ずに裏から抜く形を取ることで、詐欺が成立しにくいようにしているという指摘だ。

加藤弁護士は損害賠償を求める民事訴訟と並行し、刑事告訴の道も探っている。「金を集めたときに飛ぶ意図がないと詐欺にならないので、犯罪行為の立証は難しい。ただ、極めて投資家を損させることが明らかなスキームなので『詐欺まがい』であることは間違いない。最初から金を抜くだけ抜いて飛ぶつもりだったとしたら、詐欺容疑で立件できる可能性もある」とみている。

「キックバックが50%で、裏にそれだけ多額のカネが流れているなら誰もその不動産は買わない。重要な事実を偽って相手方が財産的処分行為をしたと認められれば詐欺が成立する。多額のキックバックが支払われていたことを告げないで建築請負契約を締結したり、将来保証した家賃が支払われないことを分かっていて勧誘していたとしたら問題です」

オーナーが取るべき対策とは

複数のオーナーによると、スマートデイズ側は「スマートデイズに損害賠償請求などを一切行わない」と約束させる「合意解除契約書」をオーナーに送付していた。加藤弁護士は「この契約書の内容で解除してしまうと損害賠償請求ができなくなる可能性があるので、内容証明を送って債務不履行解除をするべき。相手の言われた通りにすればドツボにハマる」と注意を呼びかけている。

加藤弁護士は相談を受けたオーナーたちについて、あるやり方で救済を図っている。民法613条の規定を活用し、合意契約を解除せず入居者に直払い請求を行う方法だ。

民法613条
1.賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
2.前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。

 

今回のケースでいえば、転借人(入居者)は賃貸人(オーナー)に対して直接義務を負うことになる。つまり、賃貸人(オーナー)は賃借人(スマートデイズ)が何らかの理由で賃料を支払うことができなかった場合、転借人(入居者)に直接賃料を請求できる、という解釈だ。

「この直払い請求によって、合意解除契約をしていなかったあるオーナーについて、1、2月分の賃料を取り立てることができました。スマートデイズ側に有利な合意解除契約には絶対に応じてはいけません」

加藤弁護士が入居者に送った賃料の直払いを求める連絡状(画像の一部を加工しています)

スルガ銀行の過剰融資責任追求も

かぼちゃの馬車のオーナーたちは実勢価格よりはるかに高い価格で購入しているため売却もできず、共用リビングがないことから大手のシェアハウス募集サイトに載せられず運用も苦しい状況。加藤弁護士は「価値がない建物に多額の融資が付けられ、スマートデイズが建築費を水増ししてキックバックを受けた分がそのままオーナーの借金になっている。まさに魔法のようにお金を吸い上げるスキームで、やられた方はたまったものではない」と語る。

加藤弁護士はスマートデイズと同様のスキームで問題になっているサブリース運営会社・ゴールデンゲインに対しても集団訴訟を準備。また「実際の不動産価値と乖離した価格の物件に多額の融資をしたスルガ銀行にも問題がある」とし、スルガ銀行の過剰融資責任も追及する考え。「不透明なカネの流れを含めて不正を暴き、法廷の場でこのスキームの全容解明を目指していきたい」と話している。オーナー13人が提訴

(楽待新聞編集部・金澤徹)