知識ゼロから43歳で不動産投資を始めて以降、ハイスピードで規模を拡大し、5年後に目標だったサラリーマンリタイアを実現。現在は総投資額11億円、年間家賃収入7600万円に上り、区分から一棟、海外不動産など幅広い投資ノウハウを伝えるため年間200本以上のセミナーに登壇する。「日本一臆病な投資家」と語る自身ならではの投資戦略、そしてリタイアに必要な目標設定と「ストーリー」の考え方を紐解く。

人生を変えた3つの出来事

「やりたい仕事にとにかく没頭していて、お金や投資には全く興味がないまま過ごしていたんです。42歳のあの時まで」

大学時代から興味のあったエンターテインメント業界に新卒で飛び込み、約20年にわたってメディアディレクター・メディアプロデューサーといった華やかな肩書でがむしゃらに働いてきた。31歳で結婚、38歳でマイホームを手に入れ、仕事、プライベートともに順風満帆な日々。「寝る間もないほど忙しかったですが、昔から大好きな仕事だから毎日が充実して楽しかったんです」

しかし42歳の時、人生を考え直すきっかけとなる3つの出来事が起こった。

1つ目はリーマンショック。メディア業界も大きな打撃を受け、ボーナスカットのうえに基本給も削られ、周りのスタッフが次々にリストラされていった。「何よりつらかったのが、仕事の予算が減ったことで会社が利益のみを追求する方針になってしまったこと。やりたいことができなくなって、仕事が楽しめなくなってしまったんです」

立て続けに、唯一株を所有していた企業が経営破綻。当時は投資の知識に乏しかったため有効な手を打てず、200万円分の株式が紙切れになった。さらに、前日まで元気だった母親が心筋梗塞で突然この世を去り、このことをきっかけに「自分もいつか突然死んでしまうのでは」という不安がよぎった。

「この3つの出来事があって、ちゃんと自分の人生を考えないといけない、お金の勉強を始めよう、と思ったんです」

「不動産はエンタメ」

株やFXではなく不動産投資を選んだのは、「不動産はエンターテインメント」と感じたからだ。「人との触れ合いがあって、人に住むところを提供する、これも一つのエンタメですよね。それと思い知ったのは、株やFXは何かが起こった時に自分の力でコントロールすることはできないということ。不動産は何かが起こっても、自分の力でなんとかできるはずだと思ったんです」

「まったくお金の勉強をしてこなかった42年間を取り戻す」という思いで、中古書店で不動産投資に関する本を買い漁り、仕事の合間を縫って参加できるセミナーは全て参加した。「セミナーに行くとけっこう若い子が多いので、『うわ、オレ勉強始めたの遅いな…』とか思って肩身が狭かったんですが、必ず週1回以上は参加するようにしました」

「7年後、50歳で独立する」という目標を立て、その時に今のサラリーと同額のキャッシュフローを得るために何をすべきか考えた。「明確な目標があったから必死に走り続けられたんだと思います。そのためには何歳でこうして、何歳でこういう物件を買って…とストーリーを組み立てていきました」

1戸目はスピード決済

最初に購入したのは2010年7月、三宿の築浅区分マンションだった。「5社ぐらい区分のセミナーに参加したんですが、1社だけすごくフィーリングの合う会社があったんです。普通はセミナーの最後に物件を紹介するのに、その会社は不動産投資のメリット・デメリットを淡々と説明して、『興味のある方は後日相談に来てください』だけ。紳士的な態度が印象的でした」

セミナー直後に相談して物件紹介を受け、3日後にその担当者と現地で待ち合わせ。それから5日後に契約し、「実働3日」でオーナーになった。物件価格は1700万円で、表面利回り6.5%。頭金100万円を入れて融資を受けた。

「自分は『日本一臆病な投資家』なので、とにかく空室が出ない物件を探すことが差別化戦略。この物件は国道246号沿いで三軒茶屋徒歩6分、渋谷駅にもバス1本で行ける。ここなら大丈夫だと確信しました」。実際にこの物件は、3年後に売却するまで安定した入居が続いた。

1戸目の手残りは月2万円程度。「20戸まで増やせば40万円になる」と考え、区分に絞って1年半で13戸というハイペースで規模を拡大していった。大井町や渋谷、赤坂など乗降客数の多い「鉄板」の駅から徒歩10分以内で、キャッシュフローが出る物件を選んだ。

ほとんどは1戸目を購入した不動産会社からの紹介で、担当者からは「7年後の独立が目標なら、なるべく自己資金は残しながら着実に物件を増やしていく方がいい」とアドバイスを受けた。そのため自己資金はなるべく使わず、複数の地銀やノンバンクなどから2億円近い融資を受けた。「サラリーマンとしての属性を生かすことができたし、買い進めてきた物件の実績も評価されたと思います」

区分の物件選びについては「担当者から物件を紹介された後、必ず1人で見に行くことが重要」と考えている。「物件より先に駅を見ます。周りに牛丼のチェーン店や24時間営業のスーパーがあれば、独身サラリーマンが多いはずなので区分投資に適したエリアと判断できる。1人で駅から物件まで歩いてみるといろんなヒントが見えてくるし、あとはマイナス面も隠さず伝えてくれる業者と付き合うことが大切です」

突如止まった融資

50歳でリタイアという目標に向けて順調に買い進めていったようにみえたが、13戸目を買って以降にピタッと融資が止まった。融資に積極的な地銀でも断られ、「どこか貸してくれるところはないか…」と探していて行きついたのが海外の銀行だった。「マレーシア・ジョホールバルの開発に投資するセミナーに出て、プレビルドで1500万円ぐらいのコンドミニアムを買いました。去年完成したんですが、5年後ぐらいに値上がりするだろう、というキャピタルゲインも視野に入れた投資です」

マレーシア・ジョホールバルで購入した新築コンドミニアム

その半年後には同じくジョホールバルで戸建ても購入したが、「海外投資は別にオススメしません」と強調する。「僕が投資したのは、ジョホールバルという街に惹かれたからです。今では年2回ぐらい行っていますが、見渡す限りジャングルだった場所が大規模開発でみるみるうちに変貌を遂げていく。それに自分が参画できている、という面白さがあるんです。海外投資はあくまでも『夢』を追っているようなものです」

リタイアに向けて戦略転換

その後、区分を買い進める戦略で目標を達成するのは厳しいと判断し、一棟ものへの移行を決断した。業者からあるメガバンクを紹介され、すべての資産と区分物件の現状を説明。これまで一切取引経験のない銀行だったが、「次のステップで一棟ものに挑戦したいから全部売却したい。そのときに融資をお願いできませんか」と依頼したところOKが出た。

「区分はほぼ満室経営でキャッシュフローの出る優良物件に絞って買っていたので、高い評価を受けることができた。それで次のステップを後押ししてくれたんだと思います」。13戸中7戸を売却したが、好立地で売却タイミングも良かったことから、ほぼ全ての物件を購入時より高い値段で売却することができた。

初の一棟ものは2012年12月、練馬駅徒歩5分、築3年の鉄骨マンションだった。価格は1億1500万円で利回りは8%。現在保有している中で唯一サブリースをかけていて、月40万円のキャッシュフローを安定して得られる優良物件だ。

練馬の4階建てRCマンション

信頼されるには「サラリーマン力」

「この物件を紹介された業者とは人づてで知り合って飲みに行くような関係になり、「いい物件が出たら紹介してください」とお願いしていたんです。やはり『人』の重要性を実感しました。これだけの不動産投資ブームの中で勝ち残る方法はただ一つ、『人脈』だと思っています。『ほかの人よりあなたに物件を買ってもらいたい』という業者を1人でも多く持てる人が勝つ世界になってきています」

そのために重要だと考えているのは「サラリーマン力」だ。「サラリーマンの当たり前を同じようにやればいいだけです。メールは24時間以内に必ず返信する、携帯電話に着信があればすぐ折り返す、盆暮れ正月は贈り物をする。紹介された物件が興味なかったからといってノーリアクションだったら、二度と紹介してもらえません。『ありがとうございます、でもこういったポイントが少し違うので、またよい物件があればお願いします』と24時間以内に返すのは当然。自分から情報を発信しなければ情報は集まりません」

2013年3月に中野坂上の中古RCマンションを1億7000万円のフルローンで購入した。利回りは9%で、満室時キャッシュフローは40万円。

練馬の物件の紹介を受けた業者から水曜日に物件紹介のメールが届き、「いい物件だ」と感じた。しかしその日は残業が長引き、会社を出られたのは午後10時。一瞬迷ったが、「行くしかない」と自宅と反対方向の現地に向かい、物件を見て「買い」と判断。その日の夜中に買い付けを入れた。「翌日の木曜日になったらほかの業者が動き出して買えなかったかもしれない。この物件で保有資産が3億8000万円になり、規模拡大のスピードが上がりました」

中野坂上の5階建てRCマンション

その後、2014年3月に浅草の築6年のRCマンションを購入した。1億5700万円で利回りは7.5%。この物件を購入できたことでついに年間キャッシュフローが年収を超え、サラリーマンから独立する準備が整った。目標の50歳を前にした47歳の時だった。

浅草の4階建てRCマンション

「管理状態が悪い」なら買い

一棟物件の購入を判断する際は、エリアの入居率を重視している。「現地に行って周りの物件のメーターやポストをチェックし、だいたい入居率95%以上なら買いと判断する。帰りには駅前の不動産屋に顔を出してエリアの入居率について探りを入れれば、だいたい良いか悪いか分かってきます」

物件の管理状況も意識するが、「管理が悪いから買わない」という判断はしない。「むしろ僕は管理が悪い方が好き。そういう物件を安く買い、リフォームして高く貸すほうが全然いいので。現地見学では『この物件の一番悪いところはどこか』という観点で指値の根拠を探します。例えば雨の日にゴミ捨て場や駐輪場に水がたまるとか、普段気づきにくいポイントは価格交渉に使いやすいんです」

投資家としてのスキルアップを目指して

会社を退職したのは2014年10月。48歳の誕生日を迎えた後、目標より2年前倒ししての独立だった。退職を前に、川崎市内の昭和50年代築の木造アパートを購入した。14室中11室が空室で、管理状態の悪さを交渉材料に使いながら6000万円弱を5000万円まで下げ、利回りは12%となった。

ガラボロ物件にチャレンジしたのは、空室対策のスキルアップのためだ。「今までは空室に苦労しない優良物件に絞って買っていました。でも独立して不動産メインで仕事をしていくなら、リフォームのノウハウや自分の力で空室を埋めるスキルが必要だと考えたんです」

想定より残置物が多く、リフォームに500万円ほど要したため利回りは10%代に下がったが、12月から11室の募集をスタートさせた。3月に残り3室までこぎつけ、「繁忙期のこのタイミングが勝負」と判断。3月中に入居すれば2万円分の電化製品または商品券をプレゼントする「新生活応援キャンペーン」を実施するなど、地道な努力が実を結んで満室を実現した。このアパートで保有資産は6億円を超えた。

「入居付けで重要なのは、内見すら来ない状況なのか、内見には来るけど決まらないのかをはっきりさせること。内見すら来ないなら家賃設定を適正にする。内見で決まらないのなら部屋に問題があるはずなので、ヒアリングして対策を立てる。あとは例えば家賃が7万円なら『6万8000円までなら下げてOK』と、あらかじめ管理会社にバッファを伝えておくこと。『6万8000円ならすぐ決める』という人がいたときに、僕に聞かずに現場で価格交渉の答えを出せるようにするためです」

独立した後、最初に取り組んだのはローンの借り換えだった。「たまたま参加した地元の商工会議所のパーティーで、お互いにポツンとしていたのである男性に話しかけたら、なんと地元の地銀の支店長だったんです。その支店の担当者が妻の大学のサークルの後輩だった、という偶然も重なりました」

その支店で一棟物件2棟と区分6戸の3億8000万円分の借り換えが実現した。金利が平均0.4%下がり、年間キャッシュフローが100万円以上改善。今では信頼できるメインバンクになった。

現在の総融資額は14億円ほど。不動産以外のプロデュース業などの事業内容が評価されていることもあるが、「まずはいろんなツテをたどって金融機関とのパイプを作っていくことが重要」と語る。「例えば住宅ローンの借り換えの営業電話などがかかってくることがあると思いますが、これは大きなチャンス。電話の相手に『ちょっと相談したいことがあるから行きます』と言ってパイプを作った金融機関もあります。あとは実家が地方だったら、家族が取引のある地銀にも行ってみること。『取引予備軍』の金融機関をたくさん作っておくことが大事です」

ペット可の新築にチャレンジ

「今までやっていないことにどんどんチャレンジしたい」という思いから、現在はペット可物件の新築を手掛けている。「最初は普通のワンルームの予定だったんですが、たまたま川沿いの立地で近くに公園もあり、ペットの散歩に最高の場所だと思ったんです。せっかくイチから手掛けるなら面白いことをしたいので、1階が犬、2階が猫、3階が犬…という共生マンションを考えています」

今後は着実に区分を買い増していく投資戦略を考えている。「2020年以降を考えたとき、やはり需要の面で一番安心なのは23区内の区分だと思っています。利回りが低くても立地のいい『鉄板の区分』を買っていけば、長期的に見て安定経営につながるはずです」

目標までのストーリーを明確に

これから不動産投資への参入を考えている人たちに対しては、「何年後に月どれぐらいのキャッシュフローが欲しいか」という目標を明確にし、そのためのストーリーを組み立てることの重要性を訴えている。「サラリーマンリタイアが目標ならいずれは一棟ものに行くことを考えるべきだし、そうではなくて退職後に年金プラス10、20万円の収入がほしいなら区分を増やしていく戦略でいいかもしれない。まず自分の将来像をはっきりさせてから一歩を踏み出すことだと思います」

現在の夢は、自分の劇場を作ること。「不動産もエンターテインメントも、人を喜ばせる、人をワクワクさせるという点では一緒だと思います。自分が得た経験やノウハウを人に伝えながら、これからも必死で走り続けていきます」

プロフィール

大阪府出身。長くメディア業界に身を置き、2010年、43歳の時に不動産投資を開始。1年半で13戸の区分マンションを購入、その後一棟物件に切り替え、48歳で家賃年収がサラリーマンの収入を超えて独立した。現在は年間200本を超えるセミナーに登壇する人気講師。著書に『6億円サラリーマンになる方法[入門編]』(平成出版)など。

ぶっちゃけ本音トーク

2017年に登壇したセミナーは239本でした。リタイア後、好きなように子供と遊んで、好きな本や映画を見たりして過ごしていましたが、2カ月で飽きちゃいました。やっぱり人前で話すのが好きなんです。今はセミナーを通じて不動産投資の面白さを伝え、失敗する人を少しでも減らし、自分のようにリタイアして次の夢を追う人を応援したいという思いがあります。

正直、忙しさはサラリーマン時代とそれほど変わっていません。でも、大きく変わったのはストレスがゼロになったことです。自宅から駅まで毎日バスに乗って向かうんですが、サラリーマン時代は心の余裕がなくて、運転手さんにあいさつなんてできなかった。でも今では元気に『おはようございます』と言えるんです。毎日が楽しく充実している証拠だと思います。

こんなこと聞いてみました

Q. 朝は何時に起きますか?

A. 朝6、7時に起きてメールのチェックや自分の会社の財務管理などをした後、セミナーの準備のために新聞やネットで情報を集めたり…。セミナーは今年12月まで決まっています。人前で話すためには新しい知識をどんどん吸収しないといけないですが、その勉強は自分の投資にもすごく生きてきます。

必ず月に2日か3日は「今日は一日外に出ないで休もう」という日は作るんですけど、結局PCに向かって仕事をしてしまうんですよね。でも、今は本当にストレスが全くないんですよ。

Q. 座右の銘は何ですか?

A. チャップリンの「Life is a tragedy when seen in close-up,but a comedy in long-shot.」(人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ)」です。会社でも不動産投資でも、つらいこと、苦しいことはたくさんあるけど、長い人生で見れば笑えるだろう、と。

2年ほど前、すごく欲しい物件があったんですが、5つの金融機関回って融資が下りなくて、6つ目に行く直前に売主から「もう待てません」と言われて買えなかった。その数カ月間は人間として世の中から否定されているような気分でつらかったですよ。そういうときでも「セミナーのネタになる」と考えれば楽になるんです。

Q. 好きな本は何ですか?

A.『レゴはなぜ世界で愛され続けているのか』(デビッド・C・ロパーソン、ビル・ブリーン)です。

レゴは子供のころから大好きで、ワインを飲みながらレゴをいじっている瞬間が至福の時です。レゴもブロックを組み立てて作っていきますが、不動産も同じで徐々に形になっていくところが好き。自分の劇場を作ること以外にもう一つ夢があって、それはお酒を飲みながらレゴを楽しむ「レゴバー」を作ることなんです。

実はレゴ社も決して順風満帆に歩んできた企業じゃなくて、レゴの開発をやめて別のおもちゃに移行しようとした時期もあるんです。それでも全部ダメで、最終的にレゴに戻った。経営者としても勉強になる部分が多いので、たまに読み返しています。

限定モノのレゴ商品(未開封)。レゴバーをオープンする夢が叶ったら飾る予定だという