2017年12月、埼玉県川口市の人口が60万人を突破したことが報じられた。川口市と聞いて、かつて「NK(西川口)流」と呼ばれた違法風俗店が集まっていた西川口エリアを思い浮かべた方もいるだろう。2000年代半ばには、違法風俗店を取り締まる動きが活発化し、西川口駅前の風俗店は軒並み潰れていき、ゴーストタウン化した時期もあった。

そんな暗黒期を経て、昨年頃から川口市、とりわけ西川口を取り巻く話題が目立つようになった。前出の人口増もだが、「街がリトルチャイナタウン化」している、という情報が出始めていたのだ。そんな話を聞くと、違法風俗店が跋扈していた時期が遠い昔の話に思えてしまう。

このように、川口市は変化のさなかにある。4月には中核市に移行することも踏まえると、投資候補エリアのひとつとして検討しても良いのではないか――。

なぜ川口市の人口は増え続けているのか、何が魅力なのか。川口市の不動産事情に詳しい専門家や不動産会社、街へ住む人などに話を聞くとともに、噂の西川口エリアを実際に歩き、レポートする。

外国人の転入数は日本人超え

川口市の人口統計資料(人口・世帯数・人口動態の年次推移、昭和54年~)から人口増加を紐解いてみたい。人口自体は増え続けているが、対前年の人口増加数は昭和63年の+9908人をピークに、減少傾向にある(平成23年~24年の鳩ヶ谷市との合併時期を除く)。平成28年〜30年にかけては+3479人、+2811人、+4555人と数百〜千人単位での増減を繰り返している。

人口増加数(前年比)(※平成24年は鳩ケ谷市との合併) (出典:http://www.city.kawaguchi.lg.jp/kbn/04013010/04013010.html

日本人・外国人別に見ると、日本人の対前年年にかけては+1101人、+463人、+1265人という具合だ。一方、人口増加数は総数とほぼ同様の動きで、減少傾向が見られる。平成28年〜30年、外国人の対前年人口増減数は+2378人、+2348人、+3290人という風に日本人の増加人口を上回っている

なぜ川口市において、外国人の人口増加が顕著に見られるのか。不動産コンサルティングや資産運用事業などを行う三光ソフラン取締役 平野智弘さんはこう話す。

「川口市芝園町(最寄駅は蕨駅)にある川口芝園団地(UR賃貸)へ、外国人入居者が増えている実態があります。UR賃貸は礼金ナシ・仲介手数料ナシ・更新料ナシ・保証人ナシで、外国人にとって一般の賃貸よりも入りやすい賃貸です。

昭和53年に管理を開始した芝園団地では、今や建物の築年数が40年を超えています。構造はしっかりしていますが、やはり相当古くなったことは否めません。日本人の退去が相次いだタイミングで、外国人がどっと入居し、2015年には外国人の人口比率が日本人のそれを上回りました」(平野さん)

芝園団地

外国人向け不動産会社が川口に進出し、流れが変わった

芝園団地には古くから、華僑といわれる中国人が住んでいた。その地へ住みついた同胞が、暮らしやすい場所だからと同胞を呼び、次第に特定の国の民族が増えていく流れもあるという。川口のお隣・蕨(わらび)に、在日クルド人の半数近くにもなる1000人超のクルド人が暮らし、「ワラビスタン」と呼ばれるまでになった事例がわかりやすいだろう。

団地の一角で見つけた貼り紙には中国語も

芝園団地の管理住戸個数は2454戸。川口市に流入し続ける外国人をカバーしきれる数ではない。一般の賃貸物件も開放しなければ、彼らが川口市に住むことはできないだろう。

騒音やゴミ出しなどのトラブルが起こりやすいことから、外国人入居者を拒否する大家も少なくないが、川口では外国人への賃貸付けがゆるやかになっていることが予想できる。

外国人が川口市で一般の賃貸物件を借りやすくなったのは、「麒麟不動産」と「GTN(グローバルトラストネットワークス)」の働きが大きい。三光ソフラン第一資産コンサル部 小平剛司さんが教えてくれた。

麒麟不動産

「主にアジア圏から日本へ働きにくる外国人に賃貸物件を手配する不動産会社・麒麟不動産が約5年前、西川口駅前にできました。それを機に、西川口とお隣・蕨を中心とした一般の賃貸物件にも、外国人入居者が増えていったんです」(小平さん)

前出の人口統計資料を見ると、麒麟不動産が創業した平成24年、対前年人口増加数は464人。平成25年以降は10人、1370人、2305人……と推移している。実際にこんな声もある。

「うちでは賃貸の窓口に来られるお客さまの3割が外国人の方です。外国人の方をNGとしていると空室リスクもあるため、それよりは外国人の方にも入ってもらおう、と貸し出す大家さんも増えています」(西川口駅前の創業約60年の不動産会社B)

さらに小平さんが、不動産会社Bのコメントを裏付ける説明を続ける。

「さらに外国人専門の賃貸保証会社・GTNが埼玉にも進出。外国人入居者が家賃保証を受けやすくなると、大家さんも物件を貸しやすくなり、外国人の入居を拒まない大家さんが増えている実感があります。

大家さん目線で言うと、大宮や浦和、川口などの主要駅にある賃貸は、経済的に余裕のある方や転勤族の方などで、空室が出たらすぐに埋まると言っても過言ではありません。その間にある西川口や蕨は空いてしまう時期は空いてしまう。

でも、麒麟不動産やGTNなどの働きかけにより、長く空室にしておくよりは、外国人でもきちんとした方、属性が安心できる方だと入居してもらおう、という流れへ変遷していっていると感じています。

外国人目線で言うと、川口や浦和、都心などは家賃が高くて住めないものの、その間にある西川口や蕨は狙い目エリアになっています。リーズナブルに住めて、30分で都心へ行けるという利便性が人気の理由です」(小平さん)

部屋に仲間を呼んで夜中にどんちゃん騒ぎをする、いつの間にか勝手に友人を住まわせている、ゴミ出しのルールがわからなくて守らないなど、過去に外国人を入居させて、コミュニケーションがとれず、大変な思いをした大家さんもいるかもしれない。

ただ、外国人専門の保証会社が間に入り、入居者に対し賃貸借契約の内容やルールなどを外国語で伝えてしっかり理解させることができれば、日本流・賃貸マナーを守って暮らしてもらうことが期待できる。

リトルチャイナタウン化? 噂の「西川口」を歩く

川口市内で外国人人口の増加が目立つエリアのひとつに、リトルチャイナタウン化していると噂される西川口があることがわかった。かつて違法風俗店が密集していた西川口駅西口を歩く。

「違法風俗店の一斉摘発が行われ、風俗店経営者らが逃げるように出ていったのは、今から10年以上も前の話です。当時、西川口駅前のテナントはガラ空きとなり、街はゴーストタウン化していました」(平野さん)

退去手続きも何もあったものではないため、テナントは風俗店仕様のまま残された。当時、テナントのオーナーたちが頭を抱えたことは想像に難くない。

「しかし時の経過と共に、かつて空いていたテナントに、中国人による中華料理屋やマッサージ店、保育園が入るようになり、街がリトルチャイナタウンへと生まれ変わっていったのです。川口芝園団地で同胞が同胞を呼び寄せたのと同様に、西川口にも中国人を中心とする外国人が集まるようになりました」(平野さん)

日本人は元風俗店だった物件を敬遠する傾向があり、出店したがらない。その結果、確かに街は中華料理店だらけである。中国人をメインターゲットにしているであろう、中国語で店名が記された看板を掲げる飲食店も少なくない。

本場中国にありそうな中華料理店に入って食事をしてみたところ、店員も他の客も皆中国人で、中国語が飛び交っていた。日本にいながら日本にいる気がしない、異国の地にいる感覚があった。

とはいえ、昼間歩いている限り、いたって普通の街だ。都心の中華料理店よりリーズナブルに楽しめる中華料理店をはじめとする飲食店が多く、チェーンのファミレスやカフェも充実し、とくに単身者向きの街だと感じた。

西川口を候補に入れる人、入れない人の違い

現在、西川口における賃貸のトレンドはどうなっているのか。人口増加に伴う家賃相場の変化や投資用物件の動きなどは気になるところだ。

西川口を通る路線は京浜東北線。北は埼玉の大宮から、南は神奈川の大船までをつなぎ、上野や東京、品川、横浜などのターミナル駅を通る利便性から、賃貸ユーザーにとって人気の高い路線のひとつ。

その中で西川口駅は、赤羽、川口、西川口、蕨、南浦和、浦和……大宮というふうに、川口や浦和、大宮などの主要駅の間に位置している。

西川口はもともと家賃が高いエリアではありません。お隣・川口と比べると家賃は1割ほど下がります。主要駅ではないこと、未だに西川口=風俗街のイメージが消えていないこと、その西川口のすぐ隣であることから、西川口・蕨というように、ふたつの駅はセットで扱われることが多いです。

西川口・蕨を昔から知っている人の場合、京浜東北線沿いに住みたくても、『西川口と蕨以外で探してください』とおっしゃることもあります。イメージの悪さから、ファミリーや堅めな職業に就く単身者からは避けられる傾向はないとはいえません」(小平さん)