かぼちゃの馬車の一室。広さは7平米しかない

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社であるスマートデイズが、民事再生法の適用を東京地裁に申請したと発表しました。

今回はこのスキームの問題点、そしてオーナーのリカバリー方法について考えてみます。

皆さん既に事件の概要を把握していると思いますが、簡単におさらいします。

「スマートデイズが運営するシェアハウスを投資家がスルガ銀行からの融資で建設し、スマート社が物件を一括借り上げしたうえで女性限定として転貸する」というスキームでした。しかし、市場を無視した高い賃料でサブリースをしたためスマート社の経営が立ち行かなくなり、所有者への賃借料の支払いが止まったため、融資先であるスルガ銀への返済が滞る所有者が続出しているというものです。

かぼちゃの馬車の不動産価値について

では、かぼちゃの馬車を「不動産の価値」という観点で見た場合、どのくらいの価値があるのでしょうか?

不動産の価格を求めるには3つの手法があります。かぼちゃの馬車の不動産価格を求めるには、3手法のうち「積算価格」と「収益価格」という手法を適用します。

積算価格は「土地の価格+建物の価格」、収益価格は「年間賃料÷利回り」で求めます。

実際に計算してみると分かるのですが、かぼちゃの馬車の積算価格は、収益価格に比べると異常に低いのです。

収益価格>積算価格

この差が大きいということです。

これは何を意味しているのでしょうか?

ひと言でいうと、「無理やり収益が出るようにしている」ということです。

本来であれば、2階建てしか建たない住宅地にアパートを建てても収益はそれほど見込めず、積算価格の方が収益価格よりも高くなるのが普通なのです。なのに、かぼちゃの馬車のスキームは収益価格の方が高く出た。つまり、

・一部屋が異常に狭い

・賃料が相場よりも高い

・共用部分が小さい

ことが原因だと思います。

もともとシェアハウスはお風呂やトイレが共同のため一部屋の専有面積は小さくて済むので、利回りは普通のアパートよりも高くなりがちです。

かぼちゃの馬車はそれに加え、賃料が高めに設定されていて、共用スペースもほとんどないため、収益価格が高く出るのです。改めてかぼちゃの馬車の物件価値を評価した場合、積算価格により近い価格になる、つまり購入価格に比べると大きく下がることが考えられます。

戸建を建てる立地に無理やりシェアハウスを建てているのですから、価値は戸建とほぼイコールだと言えます。ざっくりシェアハウスの方が戸建よりも1.5倍~2倍程度高いと思います。逆に言うと、本来の価値の1.5倍~2倍高く購入していることになるのです。

では、かぼちゃの馬車を買ってしまったオーナーはこの後、どのようにリカバリーしていくべきでしょうか?

これはとっても難しい問題です。私のところにも何人もの方が相談に来られています。上記で述べたように、物件の価値は今よりも3割から5割低くなります。

策は限られていますが、考えられることを挙げてみます。

■社員寮として一括賃貸もしくは売却する

近くに大きな病院や会社がある場合は、社員寮として一括賃貸もしくは購入を打診するのがいいと思います。シェアハウスはそのまま社員寮や看護師寮として使えます。同じように学生寮としての使い方もあります。でもどのくらいで借りてくれるのか、買ってくれるかという問題は残ります。

■自分でシェアハウスを運営する

シェアハウスのまま運営して利益を出すには、オーナー自らが自主管理する必要があります。シェアハウスのサイトなどに登録して入居者を募集しますが、共用スペースを広げるなどのリフォームが必要になる可能性もあります。

■融資を受けた銀行に返済猶予を打診する

このスキームはスルガ銀行が融資をしたからこそ成り立ったスキームです。スルガ銀行の金利は3.5%と高めです。金利をほぼゼロに近い数字まで下げてもらう交渉をすることも、方法としてあると思います。

その他、確実に売却できる方法としては、時間をかけて返済をし、更地価格まで残債が減った時点で売却するというのがあります。シェアハウスの稼働率を高めて赤字にならないようにする必要があります。

最後の手段としては、シェアハウスを任意売却することです。スルガ銀行から同意を得る必要がありますが、同意が得られれば市場の相場で売却することができます。その後は無理のない範囲で分割して支払うことになります。

個人的には、オーナーにとってはつらいことですが、任意売却する方法が一番妥当で早期解決に結びつくのではないかと思っています。

今後、どのような展開が予想されるか

スマートデイズは経営が立ち行かなくなって破綻しました。今回のスキームの陰の主役は「スルガ銀行」です。シェアハウスという利用形態では、他の銀行は融資をしませんでした。その中で「スルガ銀行」だけが融資をし続けたのです。しかも普通のサラリーマンに対して、1億円を超える物件を何棟も融資しました。

購入した投資家にももちろん非はあります。不動産投資についてちゃんと学び、シミュレーションなどの計算ができれば、決して手を出さない物件でした。「自分も銀行から億の単位でお金を借りられるくらいになったんだ」とか「銀行が融資をするくらいなんだから間違いのない物件だろう」など、安易に考えたこと自体が間違いだったといえます。

でも、融資のプロの銀行員であれば、「この人がこの物件を買えば近い将来立ち行かなくなるだろう」というのはすぐに分かったはずです。本来であれば借りられない人に貸してしまった責任は大きいと思います。

スルガ銀行は今回のシェアハウス以外でも、普通のサラリーマンに地方の不動産購入に対して金利4.5%で貸しています。利回りが下がっている現在、この金利で成り立つ物件は本当に少ないのです。地方RC造のマンションを金利4.5%でスルガ銀行から融資を受けた投資家の将来も、今回のかぼちゃの馬車の投資家と同じくらい心配です。

スルガ銀行の実態が明らかになったことで、今後、無理な融資をする銀行は鳴りを潜めると思います。でも、かつてスルガ銀行から融資を引いて地方のRC造マンションを購入した投資家の出口はほぼ断たれる状況となったのです。シェアハウス投資家だけではなく、これらの投資家に対しても金利を下げるなどの措置を取ることが妥当だと思います。