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日本は少子高齢化が進み、賃貸需要が先細りする可能性がある一方で、アジアの新興国などでは若い世代が多く、今から平均収入が上がる国も多いといわれている。賃貸経営のリスクを分散するためにも、日本だけでなく海外に自分の物件が欲しい―。海外旅行が好きだったり、海外に憧れたりする人の中には、そう思う人もいるのではないだろうか?

しかし、日本国内の物件を持つことに比べ、融資はどうするのか、どのように物件情報を手に入れればいいのか、といった疑問は多い。どうすれば海外に不動産を持つことができるのか、実際に海外不動産を所有している大家さん2人に話を聞いてみた。すると、海外区分ならではの注意点も見えてきた。

フィリピンにプレビルドの区分購入

1人目は、フィリピンに物件を持つT・Yさん(40代)。夫婦で海外が好きで、いつか移住したいというのが2人の夢だという。

2010年にプレビルド(建築前)の区分所有2戸をフィリピンで購入した。1つは860万ペソ(約1720万円)の1ベッドルーム・タイプ、日本でいう1LDK(キッチン&リビング1室と寝室1室)。もう1つは440万ペソ(約880万円)のスタジオ・タイプ、日本でいうワンルーム(キッチン付きベッドルーム1室)だ。

フィリピンでは、プレビルド物件の売買契約時に予約金を支払い、その後、一括払いか分割払いで支払っていくことが多い。そして、デベロッパー(開発会社)は資金を集めながら建築していくので、初期に購入するほど物件価格は割安で、建築が進むにつれ販売価格が上がる。

その上、同国では高い経済成長によって、物件の資産価値も上がる計算だ。そのため、キャピタルゲインを狙う場合は、プレビルド物件を初期の段階で一括払いで購入し、完成後に売却するのが王道と言える。ただ、計画初期に購入した場合、完成しない危険性もはらんでいる。

工期が遅れ損切りする羽目に…

T・Yさんの当初の計画としては、完成後に1ベッドルーム・タイプを売って売却益を得て、その利益をスタジオ・タイプの返済に回すつもりだった。ところが、翌2011年4月に完成する予定が1年半も遅れてしまった。完成するまで2戸分の分割払いを続けていくと資金繰りが厳しくなるため、仕方なく、完成前の1ベッドルーム・タイプの売買契約を解除し、損切りすることにした。

損切りを決意する前に、フィリピンの銀行の東京支店に融資の打診に行ったが、金利4%、35年間のローンなら組めると言われ、それでは利益が出ないため損切りを選んだという。

「2戸のうち維持する方をスタジオ・タイプと元々決めていたのは、1ベッドルーム・タイプは部屋が1つ多い分家賃が高くなり、高額所得者でないと借りてもらえないからです。スタジオ・タイプの方は賃料が手頃なため、借り手が見つかる可能性が高いと踏んでいました」と語る。

返済途中にデベロッパーとの契約を解除して物件を返した場合、既支払額は契約違反としてデベロッパーに没収される。ところが、デベロッパーが特別の対応として1ベッドルームに払い込んでいた金額をスタジオ・タイプの返済分の追加として振り替えてくれたという。

「デベロッパーのこの対応は、フィリピン人の知人であるマリアさんが何度も担当者に働きかけてくれたお陰です。既に1ベッドルームは物件価格の約2割(約170万ペソ)を払い込んでいましたから、彼女には大変感謝しています」

ただ、T・Yさんは次のようにも語る。「海外不動産投資の場合はやはり言葉が問題です。マリアさんが間に入って交渉してくれたのですが、ニュアンスが上手く伝えきれず難しかったです。また、物件のあるマニラのマカティと言う地区は賃貸需要が底堅いエリアなのですが、頼れる仲介業者やリフォーム業者は数少なく、日本の様に不動産環境が整っているとは言えません」

実はT・Yさんは日本から不動産投資を始めたのではなく、フィリピンの区分所有から始めた。理由は、夫婦で外国に住みたいと思っていたことと、万が一日本に何かあった時、外国に住むことができる場所が欲しかったからだという。さまざまな視点から投資対象国を検討していたところ、日本から近く、親日家の国のフィリピンが最適だと判断したとの事。

実際にフィリピンで不動産を買おうとして、日系の仲介業者が案内する物件の内覧にも何度も行ったそうだ。ところが、ある物件はオフィス街に建つ予定で、説明では景色がいいと聞いていたが、実際現地で図面と照らし合わせると窓の向きが隣のビルに向いていて実際に住むにはどうかと思えるものだった。

また、同じ1棟内で内装や家具のセットも全室ほぼ同じの区分が約400室と大量に販売される予定となっており、後日売却したくても値崩れする可能性が非常に高いものなどもあったという。

「この時妻が、『オフィス街だと買い物する場所がなくて不便ね』と言ってくれたおかげで入居者目線に気付くことができました。夫婦2人で不動産投資をしていると、1人が良くないと感じると、1人が留まることができます。妻の存在はとても貴重で、資産を共同に作り上げていく良きパートナーなのです」とT・Yさんはいう。

仲介業者も信頼できない

取得したスタジオ・タイプの区分は、売買契約してから入居者が住むまでに3年かかったが、賃貸を始めて5年経った現在1カ月3万ペソ(約6万円)で貸している。利回りは7~8%ぐらい。便利な場所なので物件の価格も下がっていない。プレビルドで買ったので、売却した際には売却益を得ることができるだろうと考えている。

T・Yさんの物件の寝室

T・Yさんの物件のトイレ。日本の物件と比べても遜色はない

海外不動産投資を始めるにあたってのアドバイスを聞くと、「まず現地のコネクション作りが必要だと思います。信用できる人たちとつながりを作ってから、投資を行うのです」。

T・Yさんの場合、現地のATMで出金されずに困っているところを助けてくれたマリアさんと知り合い、家族ぐるみの付き合いをしているうちに彼女も不動産投資家だとわかったそうだ。

現地に住んでいない外国人にとって、そのエリアが本当に賃貸の需要がある地域なのか、建てたデベロッパーはしっかりした会社なのか、を見極めることが難しい。だからこそ、現地の知人との交流を通じて、自分で調査する努力が必要になる。

そしてもう1つ、T・Yさんがフィリピン不動産投資を成功させることができた理由として、仲介業者を通さずに、直にデベロッパーから区分所有の物件を買っている。

「現地の日本人の仲介業者もいますが、儲かるのは彼らであって、私たち不動産投資家ではない場合があるので注意が必要です。特に、分割払いの小切手をデベロッパーに直接渡さず、仲介業者に預けるのは一番してはいけない事ですね。持ち逃げや倒産する可能性がないとは言い切れませんから。私は毎回領収書をもらって確認していました。また、仲介業者に任せきりにせず、建築途中に現場を見に行った方がいいですね」

アジア圏での工事の不備

内装工事についても、日本の工事の質の高さに比べるとアジア圏では不備がよくあるそうだ。「私は何度も現場に行って、シャワーの水が溜まる場所や排水管の詰り、床がひずんだまま内装工事が終わっていたところなどを見つけ、やり直しをしてもらいました」と語る。

また、新興国でのプレビルドの物件は、停電でエレベータが停まる等の理由で実際に建つまでに時間がかかり、計画通りに物事が進まないことが多く、完成するまで待てずに損切りしてしまう不動産投資家も多いと指摘する。

「物件を選別する目は自分で養うしかありません。買った物件はマカティのグリーンベルトという人気エリアで、近くに大学もあり、買い物も便利な場所です。しかしそもそも土地が少なく、建築できるエリアが限られているため、今後は新しく物件を建てることが難しいという希少価値のあるところです。ですから、物件だけを検討するのではなく、その物件が建つ街の歴史や発展、住宅エリアや商業エリアなどについても考えて購入することがコツだと思います」(T・Yさん)

「フィリピンでは家具付きで物件をレンタルに出すのが通例なので、約40万円の家具を自分達で買って備え付けました。完成が遅れたので、マリアさんに預かってもらって迷惑をかけましたが(笑)」と話すT・Yさんだが、「苦労はありましたが、海外から不動産投資を初めて大きな問題もなくうまく回っているのは協力してくれた方々のお陰です」と微笑む。

医療専門職としてハードな毎日を送っていたが、日本国内での家賃収入も上がり、この春に晴れて退職し、家族で海外不動産視察兼旅行の時間がとれる生活になるのが楽しみだそうだ。

マレーシアの区分をシェアハウスに

もう1人の大家さんはマレーシアとインドネシアに区分所有等を所有している辻村竣さん。その中でもユニークな取り組みなのが、マレーシアの区分所有をシェアハウスとして運用していることだ。

区分所有で買ったコンドミニアムは1戸130万リンギット、当時の円換算で約3000万円。5年前にマレーシア人のパートナーと共同で、2戸同時に購入した。辻村さん達は、建設前のプレビルドはリスクが高いと考えていたので、完成済みのコンドミニアムを購入した。売り出し開始から2年が経過した時点で、デベロッパーが保有していた市場価格で約4000万円のコンドミニアムを約3000万円で入手することができた。

最初の2年は普通の賃貸として貸していたのだが、1戸180平米という広いコンドミニアムなので、7000~8000リンギット(日本円で約20万円)という高額の家賃で借りてくれる層が限られ、なかなか次の借り手が見つからなかった。そのため、1戸を3つに区切った形に改装してそれぞれ貸す案を考えたが、物件所有者の理事会で否認されてしまった。

試行錯誤の末、シェアハウスに変更。このコンドミニアムは4LDKで、元々トイレとシャワーが4つずつあったので、4LDKのうち1部屋を2部屋に区切り、トータル5部屋とリビングルームに改装した。

辻村さんの物件の改装前間取り図

リビングの様子

そのため、3部屋にはそれぞれトイレとシャワーがあり、2部屋に区切った部分だけがトイレとシャワーが共同という間取りになっている。共有リビングルームもとても広い。かかったリノベーション費用は、2戸合わせて約300万円だ。

このシェアハウスは「クアラルンプールの銀座」と呼ばれるブキビンタンという便利なところにあるにもかかわらず、日本円にして3~6万円という手頃な家賃で住めることで人気を博している。辻村さんによると、クアラルンプールの賃料は日本の3分の1ほどで、普通のサラリーマンなら支出できる家賃が3万円ぐらいとのことだ。

ここの住人は人種や年齢が様々で、60代後半の単身日本人男性がマレーシアに滞在するときのセカンドハウスとして、現地で働く20代のメキシコ人女性やパキスタンの20代男性などが借りてくれている。通常は6カ月以上の入居を原則にしているが、同じマンション内のオーナー夫婦から、自分達の区分所有をリノベーションするための仮住まいとして3カ月間住ませてほしいと頼まれたこともあったという。

また、辻村さん夫婦も年3回マレーシアに滞在しているが、「自分達が行く時期にシェアハウスに空き部屋があれば、オーナー兼シェアメイトとして一緒に生活するのがとても楽しいのです。パキスタンの男性は途中で結婚したのですが、そのまま夫婦で住んでくれています。結婚式にパキスタンからご両親が来た時は、その部屋に家族全員が泊まり、みんなで和気あいあいとしていました」と微笑む。

シェアハウスの普段の運営は、マレーシア人の共同パートナーが自主管理してくれている。日本のシェアハウスの場合、管理会社に高い運営手数料を支払わないといけないが、辻村さん達のやり方は、家賃総収入からシェアハウスにかかる実質的な経費を引いて、その利益をお互いに分配するため、運営手数料はほとんど発生しないそうだ。

マレーシアを選んだ理由は「会社法」

辻村さんは一部上場企業の会社に長年務め、そんな中で区分マンションを買ったことから不動産投資に目覚め、50歳で早期リタイアを果たした。サラリーマン時代に企業内留学をして、アメリカでMBAも取得している。

マレーシア人の共同パートナーとは、早期リタイア後にマレーシアの投資クラブに所属し、知り合った仲間だと言う。投資クラブで付き合ううちにきちんとして信頼できる人間だと感じ、一緒にマレーシアの現地法人も立ち上げたそうだ。辻村さん自身も「マレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2H)ビザ」※1を所持している。

なぜマレーシアを選んだのか聞くと、「マレーシアは昔の宗主国だったイギリスの影響を強く受け、アジア諸国の中でも会社法がきちんとしているところが魅力なんです。日本のエージェントは撤退してしまうことがありますから。現地に信頼できる知り合いや友人がいる事は非常に重要です。何か問題が起こった時に対応することができるからです。同じ日本人だからと言って、現地の日本人業者に安心しすぎることは良くないと思っています」

投資家としてのスタンスとして、すべてを日本の会社に任せてしまうと自分でリスクをコントロールできなくなることを辻村さんは懸念している。また、その会社が販売後もずっとマレーシアで営業を続けているかどうかも未知数なので、現地の知り合いを重要視しているのだ。

マレーシアの公用語が英語なので英語が通じるということと、マレー系や中華系など様々な人種がいるため外国人でも住みやすいというのもメリットと考えている。デメリットはイスラム教国のため、お酒が高いことらしい。

想定利回りは3~4%だが…

マレーシアは最近の法改正で、外国人が購入できる区分所有の最低金額が100万リンギットに上がり、日本円で最低3000万円が必要になるそうだ。想定利回りは3~4%。

しかし、辻村さんの物件のように広くて便利な場所でも、高い家賃を払ってくれる層にうまく貸し続けることができるか、もしくは、売り抜けることができるかが肝だろう。シェアハウスとして運営している辻村さんの利回りは約7%だ。

辻村さんは2戸とも現地の銀行で融資を受けており、1戸はHSBC、もう1戸はスタンダードチャータードのマレーシア支店で、それぞれ17年ローンだ。ちなみに、MM2Hビザを取得していない人でも、条件は悪くなるが融資の相談はできるそうだ。

辻村さんの海外投資に対するスタンスは、必ず現地を見て確認して買うこと。それは日本の不動産でも海外でも同じだという。海外の新興国の物件は基本的にキャピタルゲインを狙っているので、シェアハウスも大人気でうまく稼働しているが、いずれは売却する予定だと言う。マレーシアは地下鉄もでき、郊外から通ってくる人も多くなっているので、2020年には先進国入りすると辻村さんは考えている。リンギットが上がってきたら、売却したいそうだ。

夫婦の夢を叶え、楽しむ不動産投資

現在、日本での年間家賃収入3000万円を得ながら、辻村さんは夢だった「世界中に仲間を作って、一緒に活動する」ことを実践している。投資をする場所は自分達が好きな国や地域で、何度でも滞在したいと思えるところを選んでいる。年3回滞在するマレーシアでは、近所のスーパーマーケットやレストランの店員とは顔なじみで、スタッフが「おかえりなさい」と言って迎えてくれるのが嬉しいという。

夫婦で行くので治安が良いことも重要だ。MBA留学したアメリカも好きな国なので検討したが、日本から遠く、時差も大きいので、安価で何度も行けるマレーシアが非常に気に入っているそうだ。そして、「とにかく楽しむ」が信条の辻村さんは、日本の物件の最上階にライブハウス兼セミナールームを作り、プロのミュージシャンを招いてジャズ・ライブをプロデュースしたり、不動産コンサルタントとして不動産セミナーを行うなど、夫婦で行う不動産投資を楽しんでいる。

辻村竣さん

海外の不動産投資を成功させるには

海外投資を成功させている2人の投資家の話を総合すると、成功の要因は購入に踏み切る前に現地に何度も行って、物件視察だけでなく、街の歴史や今後の発展の可能性などを詳細に調査することの大切さが改めてわかる。

また、デベロッパーや仲介業者など販売することによって利益を得る立場の話を鵜のみにせず、現地で生活している友人や同じ方向を目指して利益を追求していくパートナーを見つける努力をすること、購入後も慢心せずに工事の進行状況や質をチェックし、入居率アップのための改善や時流を見てリノベーションを図ることなどが重要だ。

文化や国民性の違う国での不動産投資は日本とは大きく違うので、その違いに注意しながらも、自分達が大好きで何度行っても楽しむことができる国で行うのが最適だろう。そして、夫婦が協力して一つの目標に向かうことが、海外不動産投資では特に大事といえる。

※1「マレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2H)ビザ」とは、最長10年マレーシアに滞在することが可能になるビザ。年齢制限はないが、経済的な証明をする必要がある。取得条件は予告なく変更されることがあるので、詳細は要確認。

〇取材協力
夫婦で成功させる不動産経営
https://ameblo.jp/shun-tsujimura/entry-10770248294.html

(野原ともみ)