BNF氏が売却した「チョムチョム秋葉原」外観

学生時代に貯めた160数万円を元手に株式投資をスタートし、約8年間で200億円超にまで資産を増やしたとされる個人投資家のBNF氏。2005年、株式市場が大混乱となった「ジェイコム株誤発注事件」を機に注目を集め、天才株トレーダーとして一般にもその名が知られている。

一時は雑誌やテレビ取材に応じることもあったが、2009年以降は表舞台から姿を消し、現在ではメディアに登場することはなくなった。そのBNF氏が不動産にも投資していたことは楽待新聞でも既報の通りだが、先日、所有する物件の1つを売却したことが判明し、TwitterなどSNS上で大きな話題を呼んだ。今回のビル売却にはどのような背景があるのだろうか。複数の専門家から話を聞いた。

売却価格は推定120億円!?

今回BNF氏が売却したのは東京・千代田区の「チョムチョム秋葉原」。今から約10年前、2008年に90億円で購入したとされる地下1階、地上10階建ての商業ビルである。売却先は私募リートの「東京海上プライベートリート投資法人」で、ネット上では登記簿の画像も出回った。

まずは売却先である東京海上プライベートリート投資法人に電話取材を試みた。取材に応じた担当者によると、「(元の所有者がBNF氏であるという)物件の特殊性などについては一切考慮していない。個別の案件についてこれ以上コメントすることは控えたい」とのこと。あくまで同社の投資基準を満たした物件であったことが理由だということのようだ。

では、BNF氏はこの物件をいったいいくらで売却したのだろうか。秋葉原周辺の不動産事情に詳しいある不動産会社は次のように語る。

「売却価格は100億円から130億円ほどではないかと推察します。BNF氏が購入した当時の価格は90億円と言われていますが、その当時、利回りは7%程度(年間賃料約6.3億円程度)だったと思われます。あれから10年が経っていることを踏まえても、あのビルには16店舗のテナントが入居し、延べ床面積は約1512.5坪。また周辺賃料坪単価が平均約3.5万と言われておりますので、現在の年間家賃収入も当時とはさほど変わらないと考えられます」

100億を超える価格であったとしても「利回りが約5%程度あれば現状の物件相場を考えると十分に買い手がつくのでは」と前出の不動産業者は言う。秋葉原駅から徒歩1分で年間6.5億円の賃料収入、しかも角地であることから、少なくとも100億、場合によっては130億円もあり得るというわけだ。

続いて不動産鑑定士にも予想額を聞いてみたところ、「120億円程度」との予想。

「BNF氏が購入した当時の賃料収入は月5000万円、年間6億円程であったと聞いています。表面利回りで換算すれば6.7%であったことになります。現在の賃料収入が当時と同じぐらいだと仮定して、表面利回り5%で売却価格を計算すると120億円です。もちろん、現在の賃料が上記よりも高ければ、120億円よりも高くなる可能性はあります」(西原不動産鑑定・西原崇氏)

この予想が正しければ、BNF氏がこの10年間に「チョムチョム秋葉原」で得た利益は、賃料だけで60億円超。さらに売却益で30億円もの利益を得たことになる。

「不動産バブルがついに崩壊か?」の声も

今回の一報を受け、ネット上では「いよいよ不動産バブル崩壊か?」との声も多く見られる。では、ベテラン不動産投資家たちは今回の件をどう捉えているのか。

東大卒MBAホルダーの投資家で、首都圏を中心に多数の物件を所有する岸登さん(珠さん)は次のように語る。

「彼の投資スタイルから考えても、今回の件は『市況を読んで売却した』という話ではないと思います。単純にそろそろ利確したいと考えていて、そこにちょうどいい話があったから売却した、といったところではないでしょうか」

珠さんは「不動産バブル崩壊が近い」という見方についても懐疑的だ。「個人的には、多少落ち着くことはあっても大きく下げる可能性は低いと見ています。オリンピック後に不動産価格が暴落すると見る人もいるようですが、私はそうは思いません。ロンドンオリンピックでもそのようなことはありませんでしたよね。むしろオリンピック後を待っていてはいつまでたっても買えない、なんてこともあるかもしれませんよ」

 一方、不動産投資の市況についてはやや悪化していると珠さんは見ている。

「例の『かぼちゃの馬車』事件が引き金となって、融資は現在、昨年より渋くなっています。私の周りでは、年収700~800万円、自己資金を500~1000万円用意できるようなサラリーマンでも否決されるケースが増えていますね。いま融資が引けているのは、地銀や信金を地道に開拓して、時間をかけて関係を築いてきたような人たち。これから不動産投資を始めたい人からすれば、新規参入のハードルは高い状態と言えるでしょう」

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