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少子高齢化で年金はあてにできない。かといって年収は思うように上がらない……。こうした背景から、将来に希望が持てないという20代は少なくない。そんな若い世代が、副業や投資に関心を持つのはごく自然な流れかもしれない。

そこで今回は、20代で大家となった3人の投資家を取材。若くして不動産投資を始めることにはどのようなメリット・デメリットがあるのか、また実践している投資手法などについて話を聞いた。

非正規社員のハンデを乗り越え22歳で大家さんに

1人目は、楽待コラムニストでもある奈湖ともこさん。アパートを2棟、戸建て3戸を所有し、現在のキャッシュフローは月30万円というOL大家さんだ。20歳でお母さんとともに不動産投資セミナーに参加、そして22歳のときに初めての物件を購入している。現在は不動産投資を始めて5年目だ。

「投資を始めたきっかけは、タワーマンションでの一人暮らしに憧れたことです。それを母に相談したところ『贅沢すぎる』と大反対されました。でも私は言いだしたらきかないタイプ。過去には高校を中退したり、その後せっかく大検を取って進学した大学も辞めてしまったりと、親の言うことをぜんぜん聞いていませんでした(笑)」

そこで、お母さんから「賃貸に高いお金を出すなら物件を買った方が得だから、まず不動産投資の勉強会に参加してみない?」と不動産投資セミナーに誘われた。

「そのときは投資に興味がなかったのですが、いずれ購入することもあるかもしれないと考え、一応勉強しておこうと思って話を聞きに行ったんです」

奈湖さんが参加したのは「サラリーマンから不動産投資家になる」というテーマのセミナー。当時、大学に通いながら仕事もしていた奈湖さんは、遠い存在だと思っていた投資家に自分もなれる、ということにそのとき初めて気付いたという。結局、タワーマンションへの引っ越しは諦め、実家に戻って不動産投資の勉強を続けることになる。

その後勉強を重ね、いよいよ物件購入へと動き出した奈湖さんだったが、そこに立ちはだかったのが融資の壁だった。

「私の場合、高校を卒業してすぐに働きはじめていたので、勤続年数の面では一般の大卒サラリーマンに比べて有利でした。一方で非正規社員であるというハンデを負っていたので、思い通りに融資を受けることが難しい状況でした」

自分の属性が決して高くないと感じていた奈湖さんだったが、それでもどうにかして物件を買う方法がないかと模索してゆく。そしてたどり着いたのが、土地の値段だけで建物まで含めて購入できる、いわゆる「土地値物件」だった。築古のボロ物件でも、土地値があればそれを評価してくれる金融機関があるのだ。

「私の場合、購入する物件は自宅から通える範囲のエリア(主に神奈川県)と決めているため、インターネットで地域を絞ってひたすら検索して探すことにしたんです」

こうして戦略的に物件探しを続け、ついに念願の1棟目との出合いを果たす。

金融機関から「こんな若い子に貸して大丈夫なのか」

1棟目の物件は横浜にある築19年の木造アパート(1R×6戸)だ。価格は2200万円と横浜市内にしては安かったものの、6戸中3戸が空室でリフォームもされていない状態だった。そこで奈湖さんは指値をし、2100万円で購入。物件価格2100万円にリフォーム費用100万円を加えた2200万円のフルローンを組むことができた。

「日本政策金融公庫で15年2.1%の金利で融資を受けることができました。不動産業者が売り主だったため仲介手数料はナシです。諸費用70万円は自己資金で賄いました」(奈湖さん)

こうして念願の大家となった奈湖さん。一見、順調に購入できたようにも思えるが、日本政策金融公庫では「こんな若い子に貸して大丈夫なのか」と、融資に慎重な声もあったのだそう。それでも「担当の方ががんばってくれたおかげで融資が実現した」と奈湖さんは振り返る。

22歳という年齢は、その支店では最年少融資だったそうだ。おかげで大家さんデビューができた奈湖さん。空室は半年ほどで埋まり、1棟目の物件は毎月7万円のキャッシュフローを産んでくれるようになったという。

融資だけでなく、物件探しに際しても20代前半という若さがハンデになった、と奈湖さんは話す。

「不動産会社に電話しても相手にしてもらえず、母に代わりに電話してもらったり、物件調査も母といっしょに行ったりしていました。さすがに20代半ばになってからはちゃんと対応してもらえるようになりましたが、最初のころは『親を連れてきなさい』と子ども扱いされることもありましたよ」

奈湖さんの女性大家さん仲間によると、主婦の方であれば「ご主人を連れてきなさい」と言われることもあるのだとか。これは20代というよりは、女性大家さんにありがちな話かもしれない。

生活を見直して「とにかく貯金」を

不動産投資をはじめたころは土地値物件を中心に買い進めてきた奈湖さんだが、最近では貯まったキャッシュフローで再建築不可物件や地方物件など、より安く収益性の高い物件を買っている。

「こうした物件は融資は使いにくいため現金で購入しています。つい最近は横浜市内の倉庫を250万円で購入しました。住居とは違い水回りが不要なので原状回復費がかかりませんし、短期退去も少ない傾向にあります。また、倉庫はランニングコストも電気代だけですから、収益率が高いことで知られています。現状はまだ空室ですが月額3万円で貸し出す予定です」

奈湖さんが購入した250万円の倉庫物件。敷地は25平方メートルほどで、もともとは地主さんが書庫として使っていたらしく電気は引かれている状態

最後に20代で不動産投資をはじめたい人へのアドバイスを聞いた。

「20代の投資家に足りないのは勤続年数や年収ですが、これはいきなり増やすことはできません。そこで重要になるのは貯金です。私は不動産投資をはじめるにあたって300万円を貯めましたが、そのためにそれまでの生活を一変させました。1人暮らしをやめて実家に戻り、ケータイ代は節約のためにプランを見直し、美容院も安いところに変えました。まずは生活を見直してお金を貯めること。まとまったお金を持てばキャッシュ購入もできますし、融資を使う際も有利です!」(奈湖さん)

属性を活かしたレバレッジ投資を行うサラリーマン投資家が多いなか、非正規社員ゆえ、しっかり現金を積みあげていくやり方を実践した奈湖さん。大きなレバレッジをかけられない分スピードは落ちるものの、年齢が若いということで投資に時間がかけられるのが強みだという。

高属性を捨てて専業大家の道を選んだ29歳

続いては大阪府在住の冨田弘明さん(仮名・29歳)。不動産投資をはじめたのは2015年のこと。元々は誰もが知る大手企業に勤めるサラリーマンだった。

それまで株式投資をしていたという冨田さんだが、他の投資についてもいろいろと調べているうちに、不動産投資にも興味を持ちはじめたという。

「最初は新築の区分マンションからはじめようと、ネットで物件を探していました。それで、たまたまクリックしたバナー広告の会社で新築区分マンションを買うことになったんです。融資審査も済んで契約も終わっていたのですが、決済前のタイミングで購入をやめました。別の不動産業者から止められたからです。冷静になって調べてみると確かに利ざやが小さく、30年後にローンが終われば1000万円で売れる、というセールストークも疑わしく思えてきたんです」

結局、すでに支払っていた手付金10万円を放棄して、新築の区分マンション購入をやめた冨田さん。10万円は手痛い出費だったが、後悔はなかったと言う。

「むしろ安い勉強代だったと思っています。そこで損をしなかったら、その後に本気で勉強することもなかったでしょう。そこからは地方を中心に高利回りの物件を買い進めることにしました」

冨田さんが1棟目を購入したのは2015年のこと。栃木県にある築25年の軽量鉄骨1棟アパート(1K×6戸)だ。価格は2500万円だった。

冨田さんが1棟目に買ったアパートの外観

「2500万円というと、都内の新築区分マンションとほぼ同じ金額です。同じ2500万円でも新築区分マンションは利回り5%程度、それが地方1棟アパートは利回り12%ですから驚きました」

「若さ」が挑戦を後押し

1棟目の物件は当時の市況からいうと決して安くなかったうえ、年齢的に融資もラクではなかったと冨田さんは振り返る。

「僕の勤め先は大手企業だったのですが、年収は500万円くらいなので使える金融機関が限られました。それでも1棟目の融資は日本政策金融公庫の20年1.89%で、33歳までの若者優遇が受けられました」

その後、順調に物件を買い進め、約2年で地方を中心に6棟51室を取得。昨年の冬に晴れてサラリーマンをリタイヤした。

「退職した理由はいくつかありますが、強いて挙げるとすれば『今ならばチャレンジしてみてもいいだろう』って思えたからでしょうかね。何年かやって失敗しても十分やり直しがきく年齢、それが20代なのだと思います」

当時、そりの合わない上司の下、監獄に閉じ込められたような気持ちで働いていたという。職場と家をただ往復するだけの生活からついに抜け出すことができたのだ。退職時の収入は満室想定で月額キャッシュフロー50万円。一人暮らしであれば充分な金額だ。

現在は仲間の大家さんが多くいる大阪に転居。貯まったキャッシュでボロ戸建てを購入し、自身で再生を手がけているほか、大家さん仲間の物件のリフォームを手伝うなど、大家ライフを満喫しているそうだ。

「不動産投資は一攫千金ではなくて、時間をかけてじわじわ進めていくビジネス」というのが冨田さんの考え。早めにスタートできれば、それまでに費やした時間が自分の強みになるという。

最後に同世代へのアドバイスも聞いた。

「不動産投資は実践してみなければわかりません。やってみてはじめて、どれくらいのリスクがあるのかがわかります。『次も買いたい』と思うか、『もう勘弁してくれ』と思うかは人それぞれです。続けて買っていくならば、買えば買うほど経験値が蓄積されていきますし、その人なりの手堅い買い方が見つけられると思います」

また冨田さんは、「さまざまな情報に飲まれることなく、まずは小規模な物件を買ってみることをおすすめします」とも。まずはスモールスタートで実践して、自分の不動産投資への適性を見る……という考え方だ。たとえ自分に合わないとわかっても、小さくはじめていれば手じまいもしやすい。これは投資全般に当てはまる考え方でもある。

マイホーム探しがきっかけで大家になった3児の父

最後に紹介するのは、北関東在住の坂田誠次さん(仮名)。28歳にして3児のパパという、若くても頼もしい一家の大黒柱だ。もともとは東京都在住であったが、転勤で北関東のK市に引っ越したことが不動産投資をはじめるきっかけになったという。

「転勤先でマイホームを買おうとインターネットで物件を探していたところ、なぜか検索結果に投資用のアパートが出てきたのです。オーナーチェンジの物件でしたが価格は2000万円。それまで見ていた自宅用の戸建てが3000万円~4000万円だったので、『こんなに安くアパートが買えるのか!』と衝撃を受けました。それが3年前、25歳のときです」

そこから不動産投資に興味を持ち、勉強を開始。さまざまな手法があるなかで、地方高利回り投資に行き着いた。

「それからは利回り重視で物件を探しました。K市だけだと物件数が少なかったためエリアを広げたところ、同じ県内でメゾネットタイプ利回り15%の2戸アパートを700万円で見つけたんです。年齢が若すぎるのか融資が全く通らず、最終的にキャッシュで買いました」

これが2014年のこと。それから順調に買い進め、現在は5棟50室を達成した。なんと平均利回りは15%。坂田さんの目標は「30歳までに月額キャッシュフロー100万円」だが、現在のキャッシュフローは80万円。目標達成まであと2年あることを考えれば充分に間に合いそうだ。

そんな坂田さんの趣味は古いバイクの再生だそうで、その器用さを活かして物件のDIYに取り組んでいる。

「はじめてのDIYは自宅の外壁を全部塗りました。実家の屋根を塗ったこともありますよ。最近は 250万円で購入した築35年30平米の小さな戸建てを、材料費30万円かけてDIYしました」

高利回り物件に加えてリフォーム費用も安くあげることができれば、こんな強みはほかにないだろう。最後に20代で不動産投資をはじめるメリット・デメリットを聞いた。

「メリットは体力があること、そして時間を味方につけられることでしょうか。不動産投資は時間をお金にかえる商売ですから、早くはじめたほういいでしょう。デメリットはやっぱり年収がついてこないこと。18歳から社会人をしていますが、なかなか年収が増えないのでそこが融資の際に壁となります」

そうはいいながらも、現在坂田さんは地元の金融機関を中心に1億円程度の借り入れを行っている。1棟目からは厳しくても、実績を積んでいけば融資の道は徐々に開くことは可能だとか。

今回の3人は年齢こそ20代と共通しているが、境遇も属性も物件の買い方もまったく違うタイプ。そんな3人の共通点は、年齢が若いために融資が通りにくいこと、または融資が通っても金利条件などが年収の高い30代や40代に劣るということだ。

3人の投資家たちはそれぞれどのようにして壁を乗り越えていったのか。高属性サラリーマンから専業大家となった冨田さんは次のように語る。

「僕の場合、最初は収益性を重視して、途中から積算価格を意識しました。収益性だけを追求すると債務超過になるため、銀行から評価されやすい高積算の物件を組み合わせたのです。

そうして、融資の力を最大限活かしましたが、これは自分の属性というよりは、たまたま融資の出やすい市況だったというのが大きいと思います。昨年から融資が引き締められて厳しくなったといわれていますが、今年、同じように融資が受けられるかといえば、きっと無理でしょう。

融資が出るということは物件価格も高騰します。それでもタイミングを捉えて物件が買えたことは良かったと思っています。今は逆にキャッシュが強い市況なのかなと思います」

キャッシュを持つことの大切さについては、1人目に紹介したOL大家さんの奈湖さんが力説してくれたが、初めての物件をキャッシュで購入した坂田さんも次のように同じ考えを述べている。

「最初の1棟を現金でスタートできたのは大きかったです。よく700万円も持っていたねと言われますが、もともとお年玉は使うより貯めるタイプの子どもで、借金は大嫌いでした。16歳からアルバイトもしていましたし、20代前半で貯金は300万円ぐらいあったと思います。そんな感じで不動産投資を始める前からコツコツ貯金をしていました」

その後に大切なのが行動力だ。坂田さんの場合、不動産投資関連の書籍を「読みまくって」勉強を重ねたという。

「共感できる本を見つけたら、その著者の投資家さんに直接会って学ぶということをしています。本を読むだけではダメで、行動をしなくてはいけません。将来に夢をもってお金貯めて、行動する……。これじゃないでしょうか。物件を買うためにも、また運営するにも行動力は欠かせないものです」

そのためにも不動産投資を行える環境に身をおくことも大事だという。大家さんの集まりに参加したり、冨田さんのように大家仲間とリフォームをしたりするのも「行動」の1つといえるだろう。

○取材協力
奈湖ともこさん(https://ameblo.jp/nako78/

(楽待新聞編集部)