写真© tamayura39-fotolia

お金を残す不動産投資コラム。今回は、不動産投資で損失が出た時の繰り越しについて解説します。

不動産を運営していると、時に赤字(損失)になることがありますよね。特に物件を買った1年目は、登録免許税や不動産取得税など、一括で落とせる経費が多く計上されるので、赤字になりやすいです。

では、不動産運営で赤字になった時は、税金的にはどうなるのでしょう?

実は条件に該当すれば、個人でも法人でも、赤字を将来に繰り越すことができます。そして、その条件の基本は青色申告をすることです。赤字を将来に繰り越すことができれば、将来の利益と相殺することによって、税金を減らし、節税することができます。キャッシュフローにも大きな影響を与えるので、しっかりと活用したいものです。

個人は他の所得と合算してから

損失を繰り越せるといっても、その条件は個人と法人で変わってきます。

まず個人のケースですが、不動産所得が赤字になった場合、他の給与所得や事業所得と合算(損益通算)しても、まだ赤字になる場合に、その損失を繰り越すことができます。これを「純損失の繰り越し」といいます。

繰り越せる期間は、個人の場合は翌年以降3年間です。さらに、前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰り越しの代わりに、その損失額を前年の所得と相殺して、所得税の還付を受けることもできます。これを「繰り戻し還付」といいます。

ただし、投資用不動産を売却した際の赤字(譲渡損失)は、同じ年に売却した他の不動産の利益(譲渡所得)と合算はできますが、譲渡所得以外の不動産所得や給与所得、事業所得と合算(損益通算)することも、繰り越しもできないので注意が必要です。

一方、法人は個人のように「他の所得」という概念はなく、赤字(欠損)が発生すると、その金額を将来に繰り越すことができます。そして、繰り越せる期間は個人の3倍の期間となる9年です。これは、かなり長いですね。(平成30年4月1日以降に開始する事業年度からは10年)

不動産を売却した際の損失も、個人とは違って、すべて法人で発生した欠損金として合算して計算できますので、繰り越しができないということはありません。また、個人と同じように、欠損が生じた事業年度の欠損金額を、前年の所得と合算して繰り戻し還付を受けることもできます。

このように比較すると、不動産運営で赤字が生じた際は、法人の方がかなり有利なことがわかりますね。

青色申告の提出期限に注意

このように、不動産運営で赤字が発生すると、繰り越しや繰り戻しができるわけですが、すべてに通ずる基本条件は、青色申告をしていることです。青色申告は、個人も法人も「青色申告承認申請書」を提出することによってすることができますが、その提出期限に注意する必要があります。

▼個人

・青色申告をしようとする年の3月15日まで

例えば、平成30年分の確定申告から青色申告をしようと思えば、平成30年3月15日までに提出する必要がありましたので、もう今年は間に合いません。したがって、平成31年分の確定申告を青色申告にするために、平成31年3月15日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。

・新たに不動産の貸し付けをした場合は、その事業開始の日から2カ月以内

例えば、平成30年5月1日から不動産運営を始めた場合は、平成30年6月30日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。

▼法人

・青色申告をしようとする事業年度開始の日の前日まで

例えば、3月決算法人で、平成30年4月1日の事業年度から青色申告をしようと思えば、平成30年3月31日までに提出する必要がありましたので、もう今事業年度は間に合いません。したがって、平成31年4月1日の事業年度から青色申告にするために、平成31年3月31日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。

・新たに設立した法人は設立の日以降3カ月を経過した日と、事業年度終了の日のうちいずれか早い日の前日まで

例えば、4月決算法人で平成30年4月28日に設立した場合は、第1期の事業年度が終了する、4月29日まで(※末日ではない)に青色申告承認申請書を提出する必要があります。

したがって、法人を設立してボーっとしていると、すぐに提出期限がきてしまいます。冒頭にもお伝えした通り、物件を購入した第1期は赤字になりやすいです。その赤字が繰り越せないと、将来の税額にかなり差が出ますので、設立年の提出期限は特に注意するようにしてくださいね。