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今、外は春です。今年は降雪量が多く、雪の被害が出たところもあり、心を痛めていました。それでも、必ず春は来ます。人生も同じですね。

先日、春日部市のアパートの入居者トラブルで、その方の親戚が住むという北海道・札幌市まで行ってきました。ちょうど雪まつりの日でたくさんの雪が積もっていました。親戚の方の住所がわからなかったのですが、何とか探し当てて問題解決してきました。この件の詳細に関しては、また書かせていただきます。

さて、本題に入ります。今回のテーマは「売買交渉術」についてです。これからもいろいろなテーマについて書かせていただくことがあるでしょうが、このお題が私にとって一番苦手な問題です。なぜかというと、賃貸物件をたくさんほしいとは思っていないからです。会社(賃貸業)を大きくしたいとも思っていません。

「建物と私とのご縁があれば買わせていただく」と、いつもそのような気持ちでいます。無理に物件を買うこともなく、捨てることもありません。それでも、いつもアンテナは広げています。世の中の動きを理解しておくことも大切です。情報は命ですからね

賃貸物件を購入する前にやるべきこと

建物を購入する前に、皆様は何をしますか? 物件を買う時には、どなたと一緒に見に行きますか? 一人で見に行くのでしょうか? ご夫婦一緒でしょうか? もちろん不動産会社さんとは一緒に行くでしょうが、不動産会社さんは契約を結び、決済してなんぼの仕事ですから、必ずしも「購入者の味方」ではないと思います。

だからこそ、 アパートを購入する前にやるべき仕事、それは「良きパートナー」を見つけることです。そのパートナーと一緒に物件を見に行ってください。講演でこの話をすると、大家さんから「パートナーとはどんな方ですか? パートナーを探すのにはどうしたらよいのですか?」と聞かれます。

私はパートナーを探すときには「自分と気が合う人・波長が合う人」が大事だと思っています。パートナーには嘘をつかず、自分の良いところだけでなく、欠点や金銭面でも正直に話ができるような相性の良いパートナーを見つけることです。さらに、「賃貸管理や物件・賃貸情報にある程度精通している」方だったら鬼に金棒です。

パートナーを探していて「この人にパートナーになってもらいたいと思う人が現れたらどうしたらよいのでしょうか?」聞かれることもあります。質問された方が男性でしたら「奥様に初めて会った時の事を思い出してください」と言います。「『この人を奥さんにしよう』と思った時、何をしましたか? 『好きだよ、愛してるよ』と意思表示しましたね。プレゼントもしましたよね。また、デートにも誘いましたよね」と、お話しします。

賃貸のパートナーも同じです。「私はあなたを頼りにしています。よろしくお願いします」と態度で示さないと相手には伝わらないのです。「言わなくてもわかるだろう」はないのです。口に出して話をしないと相手には伝わりません。(奥様にも同じことです「愛してるよ」と言葉に出して態度で示してくださいね)

物件を見に行くときは

自分の考えをよく分かっているパートナーと一緒にその物件を見に行ってください。もちろん、その物件を紹介して頂いている業者さんにも一緒に行きますね。その際、業者さんは、物件に関する良い情報を説明してくれるでしょう。

それでは、パートナーには何を相談するのでしょうか? それは「この物件を買ったら、どんなことに気を付けたらいいの?」と聞いてみてください。物件の良いところは仲介していただいている業者さんがいっぱい教えてくれます。そこでパートナーにはこの賃貸物件のデメリットを聞いてみてください。そのためのパートナーです。

パートナーは購入するときだけでなく、賃貸経営のパートナーとして一緒に賃貸経営のトラブルや困りごとを解決していくことになります。パートナーは一人でよいということではなく、できるなら2~3人いるとすごく助かります

私のパートナーには、大家業の師匠・司法書士の師匠・弁護士の3人がいます。この3人の師匠を頼りに大家業でなにか困った時に相談に乗ってもらっています。賃貸物件を購入する前に、パートナー(師匠)をぜひ見つけてみてください。

それでは、物件の購入について話を進めていきたいと思います。この考え方は私流の考え方なので、皆さんの考え方と一致するかはわかりませんが参考にして読んでくださいね。

皆様は「良い物件をなるべく安く購入したい」と思っていますね。購入する側は、ほとんどの方がそう思っています、反対に売る側は「なるべく高く売りたい」と思っています、これは当たり前の考えだと思います。

ちょっとその輪の中から離れて、輪の外側から見てみると分かることがあります。それは、「いい情報が自分にだけ特別に回ってくる」と思っている方が多いということです。実際は、自分だけに良いものをということはあまりないと思います。しかし、もしもそのような物件が出たときのために、情報と資金を常に用意しておくことです。

あと必要なのは、物件を見分ける目と度胸です。なぜ度胸が必要かと言うと、賃貸経営は他の商業と違って投資金額を回収する時間もかかります。まして、そこから儲けるということは大変な時間がかかるのです。

10%の利回りで購入したら、資本金を回収するだけで10年かかります。資本金を10年かけて回収して、そこからが儲けになるのです。それも1日も空室がないということを前提として計算した場合です。でも、そんなことはありえません。ですから、一度購入した物件とは長いお付き合いをしていくことになるのです。

「良い物件」とは?

それでは良いと思う物件をどうやって探すのでしょうか? そもそも良い物件とは何でしょうか? それは一人一人違います。購入者の大家レベルによって違うと私は思っています。考え方によっても違います。

初心者の大家さんは、レベルの階段を一段ずつ上がっていくことが重要です。私のようにボロ物件を得意とする方や、新築を得意とする方、マンションを得意とする方…。いろんな大家さんがいます。

私の知っている大家さんに、とても有名な方で、マンションを多く手掛けている方がいます。その大家さんは、一棟物よりも区分マンション専門で購入しています。

古いマンションを一部屋ずつ購入していて、そのマンションで区分の売りがあると、必ず自分のところへ情報が入るようにしているということです。そして1番に買い付けを入れるということでした。最終的には、日本にあるマンション全部を自分名義にしたいと話していました。

この考えも面白いと思います。私はというと、マンションは苦手です。私の住んでいる羽生市にはマンションが3カ所しかありません。羽生市ではマンション1室の値段と戸建て1棟の値段を比べると、戸建ての方がいくらか安いように思います。

それなら賃貸を探している方のたいていは、戸建てを借りると思います。もちろん対象がファミリー層と単身世帯か、また、単身世帯でも男性か女性でも違ってきます。

このように、その地方や場所によって賃貸の入居者によって違ってくるのです。自分のテリトリーの状況をよく見て、自分に合ったレベルの物件の情報を得るようにしてください。

購入金額についても、あなたの購入者レベルがどこの位置にあり、どの程度のリスクを取ることができるのかによって違ってきます。もちろん自分のレベルだけでなく、パートナーと組むことによってこのレベルも上がってくるので、よきパートナーを探すことはとても大事になります。

物件購入の金額は、初心者の方ほど少し無理をしてしまうのではないかと思います。私もそうでした。時間をかけて、自分で探してこれだ、と思う物件をみつけたときには「どうしてもこれしかない。これを逃がしたら後はない」と思ってしまうものです。そこで、少し無理をしてでも購入してしまう。それはダメだと思うのです。

無理をするということは、その物件はあなたと「ご縁がない」ということだと思います。厳しいことを言いますが、賃貸経営が必ず成功するとは限らないのです。

これがダメでも、あなたに合った物件は必ずあると思います。ただし、それが見つけられるのが明日か、それとも1年後か、こればかりはわかりません。ですが、必ずあなたとご縁がある物件は向こうから来ます。それを見逃さないことです。

賃貸経営は、最初の1~5年がうまくいくのは当たり前です。10年経った時にどうなっているかを予測することが大切です。7~10年経つと、設備も古くなってきて設備への投資が始まります。また、外壁などの大きな塗り替えや修理などを考えなくてはなりません。

返済額が大きいと、その金額の貯蓄を用意することも大変です。入居者が退室するとお部屋をリフォームすることになります。すぐにリフォームが終わって、お部屋のクリーニングまで完了するには10日間ぐらいかかります。

その間、家賃は入ってきません。いくら良いお部屋でも1カ月ぐらいの空室はあると思ってください。この空室期間も考えておかないといけないのです。

購入するときの金額で私が大事にしていることは、自己資金を半分入れることです。なぜかというと、たとえば家賃が下がってきて収入が今までの半額になっても、なんとか経営していけるようにするためです。

大家さんの一番のリスクは何だと思いますか? 空室でも家賃の滞納でもなく、そのお部屋で人が死ぬことです(自然死・自殺を含む)。事故物件になると家賃を下げることになり空室も続きます。羽生市ではなかなかの厳しさになると思います。

そんなリスクを考えて50%の自己資本にしています。それがダメなときは、ご縁がなかったと思って購入しません。大家さんによって考え方は違いますが、こんな考えもあるのです。

例えば、利回り12%の物件でも、ずっと空室が無いわけではありません。表面利回りの数字に対して、空室も考慮した利回りを低めに見積もって計算することはありません。そこは今までの経験と本人のレベルによると思います。

どこまでのデメリットなら、自分が引き受けることができるのか。どんな大きな頼れる会社(パートナー)でも絶対倒産しないということはありません。最後の責任は自分です

現在の所有者の話を購入判断に生かす

良い賃貸物件を探すときにもうひとつ、現在の所有者がどんな気持ちで賃貸経営をしてきたかについても少し気にかけてみてください。今まで、全部業者任せにしてきたのか、または大家さん自身で管理をしてきたのか。また、なぜ売ることになったのか。こういったことを少し気にかけてみてください。

これは少し難しいのですが、一言でいうと現在の所有者が「入居者さんとどう向き合っていたのか」ということです。ビジネスライクに割り切った付き合いをしているのであれば、それはそれで良いと思います。

入居者一人一人の性格や今までの関係性を気にしているのであれば、それも良いのではないかと思います。そういった所有者から聞いた話をもとに、購入の判断に生かすといいのではないかと思います。

利回りだけが全てではないということです。今後、物件を経営していくことに関して参考になる事もあると思いますので、売主さんにどんな思いで経営をしていたか聞いてみてください

あとひとつ大事なことは、今、購入しようと思っている物件の周辺状況をよく知ることです。 たとえば自宅の隣にある物件なら、今までの入居状況やどんな資質の持ち主が入居していたのか、今入居している方のこともわかりますね。そのような情報は、購入するときには大きな情報になります。

自宅の周りから始まって、町→市→県とだんだん自分のテリトリーを広げていくことが大事です。状況がわかる物件だけを購入するので、私はどんなに良い物件があっても、車で1時間以内の賃貸物件を購入すると決めています。

最後に、購入した賃貸物件をどうするのかについても考えておく必要があります。10年経ったら、15年経ったら? その物件を売るのか? 子どもたちに相続するのか? などをパートナーと相談してやっていくことをお勧めします。1年に1度は、今の賃貸経営状況を見直すことも必要なので、「賃貸経営の棚卸」をお勧めします。

私の考えは会社が大きくなるための方法ではありません。不動産投資で安全を最優先した方法だと思っています。今まで私が賃貸経営を行う中で、心がけてきたことです。皆様の賃貸経営の参考になりましたら幸いです。