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女性専用シェアハウスを運営する不動産会社「スマートデイズ」が経営破綻したことに絡み、シェアハウスのオーナーにお金を貸したスルガ銀行の融資審査に問題がなかったかどうかが焦点となっています。

シェアハウス投資で約束された賃料がオーナーに支払われなくなった、所謂「かぼちゃの馬車」問題で、金融庁は3月16日、スルガ銀行に対して銀行法に基づく報告徴求命令を出しました

シェアハウス投資では融資が受けやすくなるよう、源泉徴収票や金融資産を多く見せるために、これらの属性資料を改竄していた等の不正が多数確認されているようです。スルガ銀行はこれらの不正に対して自主調査を始めたようですが、同行を監督する金融庁としても実態を詳しく把握する必要があると判断したのでしょう。

また、金融庁は融資の大半を行ったスルガ銀行に対し「不正を見抜けなかった審査体制」などを踏まえ、実態把握に乗り出したようです。この命令への同行の対応は、行政処分を出すかどうかの判断材料にもなりそうです。

かぼちゃの馬車問題が不動産投資に与える影響

昨年から不動産融資が厳しくなり始めています。追い打ちをかけるように、かぼちゃの馬車問題が他の不動産投資に対する融資に影響を与えるのは間違いないでしょう。

興味本位ではありますが、付き合いのある地方銀行の担当者に今回のかぼちゃの馬車問題の影響についてヒアリングしてみました。昨今、不動産価格が高騰しすぎて購入に値するような不動産が枯渇していたため、僕自身、金融機関へのアプローチが減っていましたので良い機会となりました。

○某地方銀行 担当者A

「当行内部でもこの問題の動向について注視しています。スルガ銀行さんは3月あたりから不動産に対する融資をストップしていると聞いています。過去、当行もスルガ銀行さんと新規顧客の取り合いになったことがありますが、審査スピードでいつも負けていました。

しかし今後、スルガ銀行さんが融資をしなくなるからといって、代わりに当行が積極的に融資していくということはないと思っています。今回の問題で本部が慎重になっていますし、今後は融資審査がより厳しく、保守的になっていくものと予想します」

○某地方銀行 担当者B

「新聞や週刊誌レベルの話は現場でもありますが、本部から具体的な指示が出たということは今のところありません。

しかし、当行は超保守的な金融機関ですので、他行がこの問題を重視し、不動産投資に対する融資を締めるということになれば、当行も『右に倣う』という可能性も大いにあります。

個人的には、これまで不動産融資に積極的だったスルガ銀行さんが市場から撤退してくれれば、当行としても大きなチャンスだと思うのですが、歯痒いところです」

上記のように問題の捉え方は違いますが、両行とも今回のケースを問題視していると言えます。今後はより一層、不動産融資に対する姿勢が慎重かつ保守的になることは間違いなさそうです。

スルガ銀行の特徴、同行を利用することによるメリットやデメリットについては、前々回のコラムに書かせていただきました。

ここで、今回のケースを契機としてスルガ銀行が不動産融資から撤退もしくは縮小した場合、どのようなことが起こるのか考えてみました。

スルガ銀行が不動産市場を融資の面で牽引してきたことは紛れもない事実ですから、同行が撤退もしくは縮小すれば、これを受けて不動産価格は間違いなく下落するでしょう。特に他の金融機関が融資したがらない地方物件については影響が大きいと思っています。

では、具体的にどのようなことが考えられるか…。

まず、スルガ銀行を利用して不動産を購入してきた個人投資家(サラリーマン大家等)は、当然ながら物件が買えなくなり、スルガスキームを多用して荒稼ぎしていた不動産業者(三為業者等)は取扱数の激減により売上が上がらず淘汰が進みます。他方、スルガスキームを利用して地方不動産の高値売却を狙っていた投資家にとって、今回の問題は誤算だったはずです。

全国を融資エリアとする金融機関は、スルガ銀行を除けばメガバンクや政府系金融機関しかありませんから、東京や大阪等の都心部在住の比較的属性の高い個人投資家等への出口(高値売却)が塞がれることになります。

次に、既述のように金融庁から「不正を見抜けなかった審査体制」を指摘されていますから、不動産融資を継続したとしても、これまでのように柔軟かつスピーディーな融資審査はなくなると予想します。

また、仮に今回の件で、属性資料の改竄をスルガ銀行が見抜けなかったことについて落ち度がなければ、現オーナーや不動産仲介業者への損害賠償請求や期限の利益喪失による一括返済を求めるということも考えられます。

さらに、今回の問題でスルガ銀行に対して、家賃収入を得られないオーナーから返済猶予、債権放棄、金利引き下げ等の要求が出てくることが予想できます。これは別の側面から見ると、金融機関と債務者間だけの問題ではなくなってきます。

なぜなら、スルガ銀行は東証一部に上場している企業であり、これらオーナーの要求に応じるということは株主利益に相反するからです。近い将来、株主代表訴訟が提起される可能性もあります。

このような側面から見ると、スルガ銀行が窮地に追い込まれることは必至、スルガスキームは終焉を迎えるのかもしれません

不動産バブルの崩壊

今回のかぼちゃの馬車問題、スルガ銀行の今後の融資姿勢は、間違いなく不動産投資に影響を及ぼすでしょう。しかし、大所高所から俯瞰した場合、この問題が日本経済全体を揺るがすような問題とも思えません。私見になりますが、今回の問題とは関係なく、数年前から続く不動産バブルの崩壊は近いと思っています。

言うまでもなく、景気は循環しながら好況と不況を繰り返しますが、ここ30年ほどの記憶に新しいバブル崩壊を挙げると以下のようになります。

1991年:バブル経済崩壊

2000年:ITバブル崩壊

2008年:リーマンショック(世界的金融危機)

2018年~:○○○○

ご覧のように、約10年スパンで不況の波が押し寄せているのです。歴史は繰り返すと言いますが、直近のリーマンショックから早いもので10年が過ぎようとしており、そろそろ次の不況の波がやってきてもおかしくないと思っているのは僕だけでしょうか。

不況の波に飲み込まれると、途端に金融機関の融資姿勢が消極的になります。リーマンショック時もそうでした。金融機関の貸し渋り・貸し剥がしに遭い、黒字倒産した企業、リファイナンスできずデフォルトした不動産ファンド等をたくさん見てきました。

一見、バブル崩壊は悲劇ともいえそうです。本当にそうなのでしょうか?

不動産投資家としての僕の見解はNOです。金融機関の融資が消極的になるということは、一方で不動産価格が下落することを意味します。現在では考えられないような割安かつ良質な不動産がゴロゴロと転がっているような状況をイメージしてください(実際にリーマンショック後はこのような状態でした)。不動産投資家としては垂涎ものです。

このような状況下で不動産を購入できた投資家が「真の成功者」になれるのだと常々思っています。なぜなら、不動産投資も投資の一種ですから、マーケット底値で物件を購入できれば、将来の勝利は約束されたようなものだからです。

不況時は多くの金融機関の融資の窓が閉じますが、閉じる金融機関があれば、逆に開く金融機関も必ず出てきます(リーマンショック後、多くの銀行が閉じる中、リスクテイクして台頭してきたのがスルガ銀行です)。

次回の不況時には、どのような金融機関が開くのか台頭してくるのかは判りませんが、過去の金融機関の動向、今回のかぼちゃの馬車問題等を踏まえて、以下のようになることが予想できます。

(1)エビデンスチェックの厳格化

借入希望者から提出される属性資料(保有金融資産、源泉徴収票、確定申告書等)の改竄問題を受けて、厳格なチェック体制が敷かれると思います。

(2)フルローン融資は不可

現在のようにフルローンを出すような金融機関は激減します。融資基準・内規が変化し、担保価格の7~8割までの融資(2~3割の頭金を要求される)となると思います。

(3)より強くなる顧客選別

金融機関は付き合う相手を選びます。当然ながら、不況時にはこの顧客選別が一層厳しくなるのです。一見さんお断りが横行すると思います。

不況時はこのように融資ハードルがグンと上がります。「割安な不動産があっても融資が受け難くなるから、不動産投資の実践は現実的じゃないのでは?」との声が聞こえてきそうです。

しかし、僕は逆にチャンスだと思っています。今のうちから、(1)筋肉質な属性資料を作りこみ(2)頭金2~3割を入れても購入できるようなステータスになっておき(3)付き合う金融機関の数を増やしておく、等をしておけば不況時でも融資を受けられるはずです。

不動産投資の成否はすべて戦略で決まります。今のうちから来るべき日に備えて粛々と準備しようではありませんか。