米国に留学をしていた大学時代、大企業の御曹司やホテル創業者の息子など、多くの「富裕層」と知り合う機会があった。そんな一族の「創業の話」を聞くのが好きで、いつか自分も起業しようと夢見ていた。
商社への就職や貿易会社の起業など、多くの経験を経て不動産投資に出合い、現在は日米で年間家賃収入3800万円、総資産額5億円に。
2014年には永住権を得て家族で渡米し、かつて夢見たような生活を送っている、そんな石原博光さん。彼が成功をつかみ取るまでの半生、そしてあきらめることなく挑戦し続けてきたその強い意志の根源に迫った。
起業を夢見て、ビジネスチャンスを探す日々
自身の「原点」は、米国に留学していた大学生時代だ、と振り返る。周りには、ホテル経営者の息子や、従業員5000人を超える企業の御曹司がいた。
「彼らのお父さんやお爺ちゃんが一代で会社をつくったという話がすごく好きでした。戦後、焼け野原でくず鉄を集めて、売ってお金にしていた…とか。そういうところから会社を興して、成功を築くまでのお話に影響を受けていました」
米国では、身近なものをビジネスチャンスにできないかと狙う日々だったという。現地で安く仕入れられる時計が、日本でなら高く売れるかもしれない。バケツ1杯1ドルのワタリガニも、日本では高く売れるかもしれない。
「ワタリガニは生モノだから日本に送るのに運送費が高いな…とか、学生なので販路もないし、割に合わないな…とか結局ダメな部分もあったんですけどね。ただ、いろいろシミュレーションをしました。興味もありましたし、学生時代はカツカツの生活だったので、ハングリー精神だけは強かったですね」
いつか自分も起業したい―。そう夢見つつ、大学卒業後は商社に就職した。当時は、先輩に呼び出されてパワハラまがいの言葉を浴びせられた上、仕事自体も激務。過呼吸になったり、数カ月で7キロも体重が落ちたりといった環境だったが、厳しい社会を生き抜く力をはぐくむ大切な時間だったと振り返る。
その後、入社1年10カ月で退職し、会社を興すことにした。商社での経験を生かした輸入卸売販売業だ。
「友達からマッキントッシュの古いパソコンを10万円で譲り受けて、自宅の六畳一間で会社ごっこみたいな感じで始めました。初月の売り上げは8万円でしたね」
起業当初は、販路開拓のために飛び込み営業を行うなど、とにかくがむしゃらだったと話す。その苦労は実り、1年後には売上1億円を達成するまでになった。自社でプロテインやグルコサミンなどの健康食品を発売したこともある。
一方で、心の中には迷いも芽生えていた。「問屋業がメインなので、メーカーの商品を預かって商売をしています。ですが、商品寿命は短いのに、利幅は少なく、返品されることもある。そんな卸売業の先行きに不安がありました」。そんな中で出合ったのが、不動産投資だった。2002年ごろのことだ。
「死にはしないから、やっておこう」
初めて買った物件は、千葉県にある、当時築19年の木造アパートだった。購入するまでには、相当な苦労を重ねたという。
「毎日5時間以上ネットに張り付いて、全国の物件を見て、気になったものはすべて電話しました。岩手県にも奈良県にも北海道にも電話しましたよ。何がいいのかもわからなかったですが、不動産会社さんとの会話も自分の血肉になると思いました」
自分には融資が引けるのか、という知識もないままだったという。ようやく1棟目のアパートを買ったときの心境について、「価格は1600万円。今振り返ると、アパートとしては大した金額じゃないですが、当時はどきどきしていましたね」と述べる。
「だけど、最初はやっぱり物件を買わなくては始まらないし、やってみてからわかることもたくさんあるので。最終的には死にはしない、命までは取られないから、やっておこうと思いました」
収益力を重視した物件探し
そこから物件を買い進め、最大では7棟72室にまで拡大。4棟の売却を経験し、現在日本に3棟43室を所有している。自身のスタンスは、「『物件を増やすゲーム』には参加しない」ことだという。

日本に持つ物件の一つ
物件購入時には、資産性よりも収益力を重視するのが石原流。「収益力重視では、はじめは債務超過になりやすいのですが、その物件に稼ぎ出す力があれば、いずれ信用棄損は回復できる。そのあとで次のステージに進めばいいんじゃないでしょうか。もちろん、利回りが低くても資産性がある物件で、規模拡大を目指すのも一つのやり方だとは思います」
都心の場合でも、収益性が大事だと話す。「利便性がよければ入居者はつきます。最終的に家賃が回収できれば返済はできるので、資産性の低い築古や狭小地、2項道路に接道している物件、旗竿地、再建築不可もいいと思います。ニッチで勝負ですね」
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いまや誰もが憧れるような一流の不動産投資家たち。彼らはどのようにして成功を掴み、勝利を続けているのか?なぜ不動産投資を選んだのか、今の不動産投資市況への想い、先駆者としてのマインド…。不動産投資の「勝者」に共通する成功哲学を解明する。
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