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最近、人前で喋る機会や物件調査などが多くなり、非常に体調には気を使います。皆さんの体調はいかがでしょうか。来月には雨の多い季節がやってきて暑くなりますので、今の季節を十分楽しんでおきたいものです。

さて、今回はエレベーター付き物件についてのお話です。

高層建築物においてはエレベーターという昇降設備が必須となります。高級マンション等では4階建て程度でもエレベーターが付いている場合がありますが、通常は5階程度の建物になると必要になってくると考えます

このエレベーターというものは非常に便利な設備である反面、導入時費用と共に定期的なメンテナンス費用が必要になります。その額は不動産投資の収入に大きく影響します

そこで今回は不動産投資におけるエレベーターについて検証してみます。

エレベーターはお金がかかる!

エレベーターはご存知の通り、建築物などで上階または下階へと縦の動線で移動するための設備です。

1階や2階程度であれば階段を利用すれば済むのですが、5階や6階以上ともなると階段を利用した移動では時間がかかります。何よりも非常に体力を使うことになり、健常者や若者ならまだしも、障がい者や幼児以下の子供、高齢者にとっては非常に大変な移動となってしまいます。このようなときにエレベーターは、大変便利な移動設備となるのです。

たまに5階建てでもエレベーターの無い物件もありますが、高需要地域でない限りこうした物件の5階への客付けは難しいのではないかと想像します。

入居者へのアピールができることを考えると、4階程度の建物でもエレベーターを付ければ良いのでは? と考えがちです。しかし、エレベーターは設置費用がかなり高額になるのです。

またエレベーターには、常に専門業者によるメンテナンスが義務付けられており、更には25年~30年毎に更新工事が必要になります。これらの費用は大家が負担することになりますので収益に影響を及ぼします。

このような理由からエレベーターは、安易に導入はできない設備なのです。

とは言うものの5階建て以上の物件でエレベーター無しとする訳にはいきません。導入に費用がかかろうとメンテナンスに費用がかかろうと必要になります。

エレベーターの導入およびメンテナンスの必要性

では、新築でエレベーターを導入した場合、どれ程の予算が必要になるのでしょうか? 当然大きさや階数の違いによる差は出てくるものの、最低でも材工込みで1000万円以上は必要になると思われます。この金額を高いと見るか安いと見るかは感覚の違いでもありますが、個人的には高いなぁ、と感じます。

そして、実際の運用においてはメンテナンスが必要になってきます。エレベーターのメンテナンスは建築基準法第八条でも規定されております。

第八条
建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。

エレベーターは建築設備に該当しますので、「常時」適法な状態に維持させなければなません。ここで疑問に思うことは「常時」という言葉です。常時適法な状態を維持するには定期的なメンテナンスが必須です。具体的にはどれくらいの頻度でメンテナンスが必要になるのでしょうか。

通常は月に1度程度行っているケースが多いと思いますが、2カ月に1度や3カ月に1度という方もそれなりにいるようです。

ちなみに財団法人日本建築設備・昇降機センターの「昇降機の維持及び運行の管理に関する指針」によると、次のようになっています。

第12 定期点検・整備等
1 所有者等は、昇降機の維持及び運行の安全を確保するため、使用頻度等に応じて専門技術者に、おおむね1月以内ごとに、点検その他必要な整備又は補修を行わせるものとする。

これは法律ではなく民間団体によるエレベーターに関する運用指針です。そのため遵守されなくてもお咎めはありません。

しかし、こうした指針が出されている以上、これを無視して事故が起きれば問題になります。大家としては「やるべきことをやっていた」と主張するためには無視できないでしょう。

さて、メンテナンスの費用ですが、これも頻度・大きさ・駆動方式・メンテナンスの内容で金額が変わります。

具体的には、10階建て以下の数人乗り程度のエレベーターで想定します。メンテナンスの契約方法には大きくフルメンテナンス(FM)パーツ・オイル・グリスメンテナンス(POG)の2種類があります。

FMでは定期的な点検・清掃・給油・調整などを行い、劣化した機械部品や電気部品の取替修理、消耗品の交換を契約料金の範囲内で行います。

24時間対応の会社も多く、夜中に何か問題が起きても即対応してもらえるため、大家としては安心な契約となり、保険の役割もしてもらえます。しかし、契約料金は1カ月で約5万円程度になるため、やはり割高になることは否めないでしょう。

POGでは定期点検・清掃・給油・調整を行い、一部の消耗品の交換やオイル、グリスの補給などは契約料金に含まれることが多いです。高額にならない油類やボルト、照明、電気部品程度は差額無しで対応してもらえるようです。契約料金は1カ月で2.5万円程度であり、FMの半額程度になります。

上記の料金は、独立系のエレベーターメンテナンス会社の想定料金です。これがメーカー系の直営メンテナンス会社であると契約料金は高くなります。概ね3~4割程度は高額になるようです。

もちろんケースバイケースでこの金額には差が生じますので、あくまで参考程度としてご理解ください。

エレベーター更新工事の3方式

エレベーターの法定耐用年数は17年とされています。ただし建築物と同じように、実際の寿命は更に長期となります。当然使用頻度等によってもその寿命は変わるわけですが、通常25年~30年程度と言われています。

これ以上の年数に達しても修理を重ねればまだまだ使うことはできるようですが、年数経過と共に故障頻度が増え、修理費も大きくなっていきます。結果的には、ある程度早めに更新を行った方が安上がりになることもあるのです。

基本的にエレベーターの更新工事は、大まかに分けて次の3方式になります。

○全撤去
文字通り、全構成機器を撤去します。そして同スペースに新機種のエレベーター設備を入れる方法です。要はエレベーターシャフトと機械室を空にして総入れ替えを行います。

工事期間は1カ月程度で建築確認申請が必要になりますので、大がかりな工事となります。費用も1000万円以上は覚悟しなければなりません。撤去費が加算される分、新築で計画するよりも高額となります。

○重要部大更新
エレベーターを上下させるための機器類であるマシンビーム・カウンターウェィト・ガイドレールなどは状態によりそのまま残し、巻上げ機・制御版・ロープ・カゴ・扉等を新品に取り替えます。

この方式の工事は、そのまま残して使える機材も多くあるため、工期も全撤去に比べて10日ほど短縮できますが、通常建築確認申請は必要になります。費用は1000万円弱といったところでしょうか。

○制御系中心の部分更新
エレベーターの動きを制御する電気機器類や経年劣化した部品を取り替える工法です。この工事方式は、エレベーターの状態に合わせて最小限の部品を交換するやり方です。

工事期間は約1週間のため、エレベーターが1台のみの場合はこの方式が適するでしょう。建築確認申請の必要もありませんので負担は減ります。費用は500万円程度といったところでしょうか。

以上のようにエレベーター更新は非常に大きな費用を覚悟しなければなりません。築25年を超えたエレベーター付きの物件を所有している方はそろそろ更新も視野に入ってきますので、計画的に資金計画を立てていくのが良いでしょう。

25年で部品が無くなる?

エレベーターのメーカーでは、使われている部品類を「25年間は供給する」としています。逆に言えば25年以降は部品が無くなるということです。

この辺の事情からも築25年を超えたエレベーターは更新を視野に入れなければなりません。あらかじめ更新を行っておけば故障は減り、住人への迷惑もかかりません。

しかし、寿命を迎えそうな設備を無理して使っていて故障が発生した場合、しかもメーカーの部品供給が終了していたらエレベーターは更新しなければ使えません。この時点から更新を検討したのであれば見積もりを検討する時間も取れず、工事費が高くても即対応せざるを得なくなります。

費用がかかる程度であればまだ良いですが、エレベーターは人命に関わる設備です。エレベーターのロープが切れてカゴが落下…などという事故はまず起こらないでしょうが、扉に挟まれてたままカゴが動いてしまった、といった事故は過去にも実際に起こっています。こうした事故を防ぐにも早め早めのメンテナンス及び修理は、必須と考えます

最後に

エレベーターは入居者には便利な設備です。しかし、物件を所有する大家にとっては費用の掛かる設備です。

メンテナンス費に加え、更新も必要な物件もあるでしょう。メンテナンス費用も更新時の工事費も交渉で値引きもできますので、時間をかけてでも安くできる方法を探すことが無駄な出費を削減することにつながります。

また、物件購入時には費用対効果をよく検討するのもひとつの対策です。4階建てで戸数が少ない物件ではコスパが悪すぎます。逆に10階建て以上で総戸数が多ければメンテナンス費は、気にならない金額となります。

一概にエレベーター物件はNGというわけでは無いので、どの程度の物件であればエレベーターも許容できるのか検討されるのが良いのではないでしょうか。

一級建築士であり、ご自身で不動産投資も行う戸田匠さんに、執筆いただきたいコラムテーマを募集します。 「耐用年数について詳しく教えてほしい」「構造の違いは?」 など、記事下のコメント欄にぜひ投稿してください。