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「不動産投資家は孤独な商売」。そういった話を耳にすることもあるだろう。そんな中で、特に初心者投資家は、自身の参考にできる先達の投資家、いわゆる「メンター」を探し、時には頼ることも少なくない。だがそんな中には、「初心者を食い物にする人間がいる」という。

「カリスマ大家と言われる人で、尊敬もしていた人だっただけに、本当にがっかりした」―。そう語る投資家が遭遇した手口とは? 被害にあわないために、気を付けるべきこととは?

「投資家サポート」面談で覚えた違和感

書籍も出版し、成功した大家として名高いA。だが、不動産投資家の新村誠一氏(仮名)は「Aはきれいごとを話していますが、やっていることは半分詐欺です。悪質だと思います」と告発する。

新村氏は、もともとはAの投資手法に感銘を受けていた一人。Aの登壇するセミナーには無料・有料問わず足を運び、メールマガジンも購読していたという。

「ある日、Aのメールマガジンに、『不動産投資家を育成するためにサポートをする』と書かれていたんです。チャレンジする投資家を募集するというので、私もすぐに登録しました」

この時、新村氏はすでに投資歴10年近くになっていたが、成功している有名大家の手法を学ぶことができるチャンスだと思ったのだという。相手からはすぐに返信が来た。「一度面談して、サポートできるか決まる」という内容だった。

指定された日、新村氏は指示された場所まで向かう。面談予定が詰まっていたらしく、新村氏の前の投資家の面談が終わり、時間より少し遅れて新村氏の順番が始まった。面談が始まってすぐに、新村氏は2つの違和感を覚えたという。1つ目は、新村氏はそれまでセミナーにも、その後に行われる懇親会にも何度も顔を出しており、Aと名刺交換もしていたにもかかわらず、Aが新村氏のことを一切覚えていなかったこと。

2つ目は、Aが面談にあたって何の準備もしていなかったことだ。

「面談前に、私の年齢や家族構成、金融資産、投資経験、所有物件、どの銀行からいくら借りているかなどの詳細をすべて、Aの要求に従いA側に提出していたんです。しかし、Aはその資料は一読もしていなかったようで、『なにさんだっけ?』から始まり、属性も何も知らなかった」

新村氏は、「私もそこそこ長いことサラリーマンをしていましたから、面談としておかしいな、と思いました。これで面談するっていうのは、いかがなものかと。この人は真剣じゃないんだな、とわかりました」とあきれる。しかし、本当にひどいのはこの後だった。

本当にサポートか…驚愕の入会申込書

「サポートと言いますが、どういう活動なんでしょうか」

面談途中で新村氏が聞くと、Aは次のように答えたという。

「新築のアパートを建てたい人をサポートします。土地は我々が見つけてきます。あなたにはその土地を買ってもらい、そこに我々が紹介した建設会社で十分利回りが出るようにアパートを建ててもらい、運営してもらいます」

この話を聞いた新村氏は、すぐに「土地を見つけてくるということは、サンタメ業者と同じような仕組みで取得費用に上乗せするんだな、建設会社を紹介するということは、その会社からキックバックをもらっているんだな」と気づいた。今までに付き合いのある建設会社で建てたい、と新村氏が要望すると、Aは「それは困る。できません」と返したという。

その上、サポートを受けるための入会申込書を取り出し、「明日までにサインして出してください。明日までに提出されなければ、あなたがサポートを受ける権利は失効します」と言い放ったのだ。

提示された入会申込書

上記の入会申込書を見ていただければわかる通り、「知識やノウハウは売買契約後に提供される」ことや、「会員は、事前に取り決めた条件に合う案件が出た場合、遅滞なく購入の決断をすること」など、A側にかなり有利な条件が書かれていることは明らかだ。

入会申込書に書かれている内容に、新村氏はひどく驚愕したと振り返る。「手元資金を用意してほしいと書いてあり、その資金を使い切ったらこの契約は終了しますとあるんです。つまり、自己資金が枯渇するまで買わせる、あるいは融資の限度枠まで買わせて、その枠が無くなったらお客さんにはならないからそれでおしまい、ということです。それは本当に投資家サポートなんでしょうか?」

「素人を食い物にする手法」

不審に思った点はそれだけではない。物件概要を求めると、「土地が見つかり次第なのでわからない」との返答があったこと。投資家の育成をうたっているにもかかわらず、知識やノウハウは売買契約後にしか提供されないということ。条件として書かれている「徒歩圏内」や「キャッシュフロー」などに、具体的な数値が一切ないこと―。入会申込書をよく読めばよく読むほど、疑問が湧き出てくる。

「条件があいまいなのに『遅滞なく購入を決断すること』だなんておかしいとしか思えません。徒歩圏内といったって、5分も20分も徒歩圏内でしょう。CFが見込めるっていうのも、1円でも手元にお金が入ればCFが出たって言える。こんな条件で買うことを義務づけるなんて半分詐欺みたいなもので、これをカリスマ大家と言われる人が自らやっているんですから、気を付けなくてはならないと思います」

新村氏は、当然ながらこの話を断った。「実態がわかる前に購入をしなくてはいけないわけですから、ひどい条件だと思います。しかも、そのあとの面倒を見るなんてことはきっとないんでしょう。買えなくなったら退会させられるんですから…」

今、Aに対して思うことはなんだろうか。

「投資家や仲間を食い物にするというのは、いかがなものでしょうか。カリスマと言われている人だったのに、がっかりです。結局は物件次第ですから、中には買ってよかったという人もいるかもしれませんが、ノウハウを学ぶ前に契約するだとか、用意した物件を買わないという判断は許さないとか、そういうのは素人を食い物にする手法としか思えません。偉そうにセミナーをやったり、投資家育成をうたったりしないでほしいです」(新村氏)

投資塾主宰者が提供、良くない「塾生限定物件」

首都圏で不動産投資を実践する本田和久氏(仮名)は、投資家のBについて教えてくれた。Bはここ数年で投資規模を数十億円以上拡大、投資塾も主宰している人物。本田氏は「Bの塾には100人以上の塾生がいますが、『塾生限定』のような形で物件情報を流しているようです」と話す。

もちろん、Bが流す物件情報がいいものであれば、塾生にとってはメリットしかない。しかし、「利回りや立地など、パッと見てよくない物件の情報です。Bが買っている物件の情報も明かされていますが、そもそもそれ自体がそんなにいいものではない。塾生には、それ以下の物件情報しか来ないことは明白です」(本田氏)。

Bがこうした物件情報を流す理由は、販売会社からキックバックを受け取っているからだ、というのが本田氏の見立て。それだけではなく、「管理会社ともグルになっているようです。想定家賃を吊り上げ、利回りを上昇させれば、販売金額も上がる。3者で結託しているんではないでしょうか」と推測しているという。

前出の新村氏もBについて「Bも業者からキックバックをもらっていることは有名です。こうしたことも含め、コンサル関連業で1億円くらいの年収があるらしいですよ」と打ち明ける。

「責任を自分でとる覚悟がなければ、投資してはいけない」

「有名な大家さんに物件を紹介されて、無条件にその物件を買ってしまう人というのは、自分で物事を考えるくせがついておらず、『お金を投資する』ことの意味をちゃんと理解していない人だと思います」と新村氏は指摘する。

「投資というのは、自分の責任でやらないといけない。リターンとともに、そのリスクも自分に返ってくることを十分に自覚した上で、やるならやりなさい、と思います。誰かにセッティングしてもらって、自分では考えない。それがよくない物件をつかまされてしまう一番の原因ではないでしょうか」

特に初心者の投資家に向けて、新村氏は次のようにアドバイスする。

「物件を紹介してくる人はまず疑った方がいいと思います。善意の第三者が、無償でいい物件を紹介してくれるなんて、決して思わないこと」

当然だが、物件を紹介すること自体は「悪」でも「違法行為」でもない。「自分は物件を紹介してフィーをもらう仕事だ」と事前に言っているのなら、それはまっとうな商売だ。だが、不動産会社からのキックバックがあることを黙って物件を紹介するような投資家には十分注意が必要となる。

「おいしい話をタダで提供してくれる人は基本的にいない。インターネットでも使えば情報はいくらでも得られますから、『投資リテラシー』を高めて、ジャッジは自分でする。責任は自分でとる。その覚悟がなければ投資をしてはいけないですよね」(新村氏)

いつまでたっても騙されてしまう人は

Bについて教えてくれた本田氏もまた、「コンサルティングと物件紹介がセットになっているような場合は、気を付けるべきです」と警鐘を鳴らす。

「例えば、高い入会金や、年間100万円という会費を払ってでも、その会や塾で1つでも2つでもいいノウハウや情報が得られるのであれば、それはまったく問題ないと思います。しかし、そこに物件紹介がセットになってしまっていればやはりそこは注意すべき。高いお金を払って物件を紹介してもらうと、『高いお金を払ったんだから、この物件はいいはずだ』という思い込みで、判断を誤る可能性もあります。物件を紹介してもらうような投資塾やコンサルは、自分できちんと判断できるようになってから訪れるべきです」

本田氏は、投資塾や大家の会に入る人には2種類いる、と指摘する。

「魚の釣り方を習いたい人と、魚が欲しい人。釣り方を習いたい人は、ノウハウを習いにいくわけですから、入会は有効だと思います。一方、『騙される』人というのは、魚という物件そのものが欲しい人。だから、いつまでたっても騙されてしまう」

「物件紹介するから、仲介手数料から1%をもらいたい」

不動産投資歴10年以上という浅川康大氏(仮名)は、自身が受けたコンサルの話を明かす。コンサルを依頼したのは地方でRC物件をメインに購入している有名大家のC。浅川氏自身は「その時は無料だったので、『とりあえず聞いてみるか』くらいの興味本位で相談に行った」という。

その際にはどの戦略がいいか、というような話で終わったというが、後日、浅川氏のもとにCから連絡が来た。物件を紹介するという内容だった。

「Cは地方の築古RCを購入して規模を拡大している人です。なのに、私に対して紹介してきたのは、首都圏の新築アパートでした。表面利回りは8%以下。キャッシュフローも見込めません。それを金利3%の35年ローンとセットで紹介してきたんです」

浅川氏は「儲からない」と判断し、この物件の紹介をその場で断った。Cからの連絡はその後ないという。

「実は、この話があった後、付き合いのある業者さんにCのことを聞いてみました。すると、その業者さんのもとにもCから連絡があったそうなんです」

Cは、その業者に「物件があれば、自分が持っている客に紹介する。ただし、紹介料として、仲介手数料3%のうちの1%をもらいたい」と持ち掛けてきたのだという。物件価格が高くなればそれだけ仲介手数料の金額も上がるため、Cは「2億円以上の物件はないか」などとも話したという。業者は「それを抜かれたら商売にならない」と断ったそうだ。

「有名大家の物件だから大丈夫」という盲信

実は、浅川氏の知人はCから紹介された物件を購入していた。Cから紹介された物件は供給過剰エリアにあり、知人の物件は4カ月間空室が埋まらないのだという。
だが、浅川氏によるとその知人はまったく焦っていないそうだ。心配になった浅川氏が「4カ月も空室が続いて大丈夫か」と尋ねても、「Cが動いてくれるはずだから問題ない」と答えているという。浅川氏は「Cにとってメリットがないのだから、動くはずがないのに…」と歯がゆい思いを抱える。

「このケースに限った話ではないですが、こういう状態で失敗する人は、いわゆる有名大家に心酔してしまって、自分で思考したり、行動したりということが全くないんだと思います。知人の場合も『有名大家さんの物件だから大丈夫』と盲信してしまっている。有名大家さん側も、自分のブランディングが非常にうまくて、『私のやり方をあなたが真似れば絶対に成功できます』と言って徐々に取り入っていくんです」(浅川氏)

「1~2年でのセミリタイアに注意」

浅川氏は「1~2年でセミリタイアした、というような売り文句の人はちょっと信用できないです」と持論を語る。「私も不動産投資歴は10年以上になりますが、1年、2年で専業になれるほど、不動産は甘くない。そういう人は自己資本比率がかなり下がってしまうので、物件が買えなくなって、コンサルや、物件紹介をしてお金を稼ぐ、というようになっていくんです。それに、投資歴1~2年なんていう人は、売却経験がない場合が非常に多い。売却は購入より難しいですから、売却経験がない人はメンターとしてはふさわしくないと思います」

また、浅川氏はこうも付け加える。「コンサルをしている投資家は、タダで物件を紹介するメリットがないですよね。やはりそこには何らかの理由がある。本当に自分が買って儲かる物件なのかどうか、考え抜いて購入したほうがいいと思います。物件を探す努力を怠ると、失敗する可能性が高まるんだと思います」

紹介する物件は、「自分がいらない」物件

「現在、物件を買えていない不動産投資家の話は、まったく説得力がありません」
そう語るのは、年間家賃収入約2億円という投資家・瀬尾昌行氏(仮名)。瀬尾氏は、不動産投資家でコンサルティング業も行うDについて、「数年前にはガンガン物件を増やして、利回り15%、20%ということを言っていましたが、現在はそういう市況ではないので、Dは物件を買えていないんです。そういう中で儲ける手段として、自身のノウハウを商品にしています」と述べる。

瀬尾氏によるとDはノウハウを伝えるだけでなく、コンサル生に物件の紹介も行っているという。だが、Dの所有物件はほとんどが築浅のRC物件であるにも関わらず、会員向けに紹介するのは木造の築古で、金利も高い銀行もセットになっているということだ。

「Dのように自身がやっていることと言っていることがまったく違う人もいますし、そもそも昔買っていた時代のノウハウは、現在の時勢にそぐわず、あまり意味がない。そういうコンサルがいるということも認識したほうがいいと思います」

瀬尾氏は「仮に私が投資家兼コンサルだったとして、まず、一番自分が物件を欲しいんです。だから、紹介する物件は、私がいらない物件のはずなんですよね。もしコンサルをやるのであれば、そこは一線引かないといけないんではないでしょうか」と指摘。また、話を聞く側の投資家にも問題があるという。

「リスクのないところにリターンはないというのが投資の原則。しかし、それを忘れている人もかなり多く、結局そういう人たちが失敗してしまうだと思います」

4人の投資家に話を聞いたが、口を揃えて指摘するのは「物件を紹介してくる投資家には気を付けるべき」ということだ。

投資家の中には、自身の体験やノウハウを伝え、仲間や後輩が成功できるように導きたい、と熱い思いを持っている人ももちろんいる。だが、そこに「物件を紹介する」という行為を伴うなら、疑ってかかるべきだ。

「投資は自己責任」。業界内ではよく言われる言葉だ。当然、相談してきた投資家に黙ってキックバックをもらい、儲からない物件を売りつけるような投資家は駆逐されるべきだろう。今一度その言葉の意味を振り返り、投資家自身でも防御策をとりたい。

(楽待新聞編集部)