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今回は「不動産賃貸業の損益分岐点」というテーマで考えてみようと思います。

損益分岐点とは、「売上」と「費用」が一致する点です。キャッシュフローではなく利益で考えるので、不動産に当てはめると少し分かりづらいかもしれません。

不動産賃貸業における「売上」は、主に家賃収入。「費用」は固定費と変動費に分かれますが、不動産賃貸業では、ほとんど固定費です。

固定費は売上(家賃)と連動しないもの(金額が固定という意味ではありません)で、例えば固定資産税、銀行への返済利息、減価償却費、光熱費、修繕費などです。変動費は売上と連動して費用が決まるもので、例えば管理会社に支払う管理費がそれに当たります(家賃の○%というケースが多いと思います)。

損益分岐点売上高は、下記のように計算します。

固定費/ {1-(変動費/売上高)}

中古鉄骨と新築木造を比較

イメージしづらいと思いますので、私が保有した物件A(高利回り/高金利/中古鉄骨)と物件B(低利回り/低金利/新築木造)で比較して考えていきます。

※実際の購入金額は若干異なりますが、イメージしやすいように合わせています

■物件A

立地:川崎市高津区

金額:1億円

構造:鉄骨(築20年)

利回り:10.8%

売上(家賃収入):1080万円

融資:1億円、金利4.5%、25年

変動費:0円(自主管理)

固定費:775万円(固定資産税50万円/金利447万円/減価償却費263万円/光熱費15万円)

■物件B

立地:世田谷区

金額:1億円

構造:新築木造

利回り:7.2%

売上(家賃収入):720万円

融資:1億円、金利1.2%、30年

変動費:0円(自主管理)

固定費:324万円(固定資産税30万円/金利 119万円/減価償却費160万円/光熱費15万円)

<共通点>

・融資金額(1億円)

・イールドギャップ(6%前後)

・残耐用年数(約20年)

<相違点>

・構造

・表面利回り

・融資金利、期間

<損益分岐点売上高>

物件A:775万円 実現するために必要な物件の稼働率=72%

物件B:324万円 実現するために必要な物件の稼働率=45%

※私は自主管理で変動費がないため、固定費と同額になります

つまり、物件B(新築木造)の方が低稼働でも利益が出やすい構造になります。主な理由は以下の2点です。

・同じようなイールドギャップでも低金利の融資の方が有利であること

・木造は調達価格が安く、減価償却費や固定資産税が少なく利益が残りやすいこと

ただ、この試算は修繕費や空室率・家賃下落率を加味していません。修繕費はBの方がかからないため、木造の利益が出やすいことに変わりません。では、空室率・家賃下落率は、構造による差は出るのでしょうか?

感覚的には木造の方が空室率・家賃下落率が高くなりそうです。それでも、例えば、同エリア・同築年数で比較したら、構造による空室率・家賃下落率の差は10%前後に収まるような気がします(確かなデータはないので、肌感覚です)。

空室率は、構造の違いより、そのエリアの需給バランスが重要です。適正家賃の差はあるとしても、RCだから決まりやすい、木造だから決まりづらいとは考えづらいです。

これらを踏まえて合理的に考えていくと、「不動産賃貸業で一番安定的に利益を出せるのは木造」という結論に至りました。あくまでインカムゲインを中心に考えた時で、キャピタルゲインは無視しています。仮にずっと保有し続けたとしても、解体費用は木造の方が安いですし。

あとは問題になってくるのが、実現可能性=融資の付きやすさです。仮に木造が利益を出しやすくても、銀行は低利回りで積算評価が出づらい木造物件に融資をしてくれません。

私の物件も、もれなく利回りや積算評価は銀行評価を下回り、頭金を1~2割入れて補てんしました。残念ながら銀行好みの物件は、私が考えている物件とは対極の「地方の広い土地+RC物件」です。積算評価も利回りも高いですからね。

それでも、私はある時期から銀行評価が出づらい「木造・新築・都内好立地」に焦点を絞りました。その「ある時期」は、明確にサラリーマンリタイアを意識した時です。

サラリーマンをリタイアしたい

→安定収入がなくなる

→よりリスクが低い手法で不動産収入を得た方が良さそうだ

→不動産のリスクって何だろう

→大きいのは「賃貸需要減に伴う家賃下落・入居率下落」「修繕リスク」の二つだろう

→やっぱり都内・新築が安心

→これをできるだけ安く仕入れるにはどうすれば良いか

→自分で土地から購入して、アパートを作ってしまおう

という考えで、物件を具体化していきました。

このスキームの問題点は、物件拡大が難しい点です。毎回、1億円の物件に頭金1~2割を注ぎ込むことは普通のサラリーマンには非現実的です。私が実現できた理由は、不動産を早い時期に始めたアドバンテージがあり、売却で得た現金があったためでした。物件を増やしたいけど増やせない人、欲しいけど買えない人は、小さくても実績を積んでいくことをお勧めします

私が好きな元ヤクルトスワローズの野村克也監督の名言を一つ紹介します。

「人生に近道なし、絶望なし、待ったなし」

サラリーマンリタイアの近道のために不動産を始めた私が言っても説得力はありませんが(笑)、それでも約10年の実績を積み上げました。今では低金利で資金調達でき、インカムゲインで得られる収入以外に、元本返済の速度が速いため、積算評価のギャップも時間とともに解消されていきます。地道な実績作りです。

それと、「待ったなし」! 私にはこれが一番響きます。有限の時間で、不確実性・不十分な情報をもとに判断・決断ができるかどうか。いつ、試合に出る(物件を購入する)チャンスが巡ってくるか分かりませんので、結果を出せるかどうかは、どれだけ準備をしていたかにかかっています

「良い物件」とは?

皆さんにとって良い物件ってどんな物件でしょう? 「良い物件があれば買いたい」では購入できません。

・物件が少しずつ下がってきているが、どのエリアに物件を買おうとしているのか?

・今どれぐらいの規模の物件を購入できるのか?

・そのためには頭金はどれぐらい必要なのか?

もし「良い物件」があっても、具体的に伝えられていない状態だと、目の前を素通りしてチャンスを逸してしまう可能性が高いです。判断軸を作って、その中で何を優先すべきかを決めておきましょう。

私の場合は、とにかく立地でした。

立地ありきで、あとは自分が買える時期に集中して物件を見て、相対評価で決めていました。不動産は融資前提で考えると、早期実行のアドバンテージがあるので、ベストを待つよりベターを選択して、自分の許容できるリスクの範囲で始めてみることも一つの選択肢かなと思います。

良い物件に巡り合った時にすぐに決断・判断できるように、良い準備をしておきましょう! 買い場が近そうです。