今回のご相談者は、千葉県にお住まいの佐藤しおりさんです。都内に好立地の投資物件を所有されていますが、アメリカでの不動産投資も視野に入れているそうです。さて、そんな佐藤さんのお悩みとは?

お名前

佐藤しおりさん(仮名)

性別

女性

自己資金

500万円

ご職業

会社員

ご年収

約1000万円(本業+家賃収入)

居住地

千葉県

ご自宅

自己所有でローン有

所有投資物件

区分1、戸建1

不動産投資経験

約3年

はじめに

留学経験のある佐藤さんは語学力を活かし、アメリカで税理士をされています。しかし、日本人向けの米国不動産投資に対しては疑問を抱いているそうです。日本で暮らしつつ、米国不動産で資産を増やすにはどうすればいいのか、不安もつきまといます。さて、まさに現地で奮闘している石原さんのリアルタイムなアドバイスとは?

米国不動産の節税以外の魅力は何でしょうか?

石原

佐藤さんのアメリカでのお仕事は税理士、すごいですね! 少し前、アメリカはタックスリターン(確定申告)の時期で、私も日本と同時進行で進めていました。CPAですか? それともEA?

佐藤

私はEAです。今は、会社勤めをして税務の仕事をしています。ちなみに私は日本の税理士資格は持っておらず、アメリカのみです。

Point1 CPA/EA

CPAは監査を行い、EAは税務を行うという棲み分けがある。CPAが州ごとの資格であるのに対し、EAは米国の連邦政府から交付されるため、州に制約されることなく業務を営むことができる。

石原

東京にお住まいですか?

佐藤

自宅は東京にあるのですが、諸事情で貸し出しており、今は千葉の実家に住んでいます。その他、物件は都内に区分マンションを所有しています。多少の出入りはありますが、駅から近くロケーションがいいので家賃12万円で貸しています。今年の1月に新しい人が入ったので、これから安定していくと思います。

石原

それはいいですね! 佐藤さんはアメリカに住まれていた経験があるのですか?

佐藤

はい。留学をしていました。日本では節税目的で米国不動産に投資される方が、ここ2~3年で急増している印象です。業者さん主催のセミナーも盛んに行われています。しかし私にはどうしても本来あるべき利回りではないように感じています。

もともとアメリカのプロパティータックス(固定資産税)は高いものですが、アメリカ南部の有名な投資エリアではとくに高く感じます。結局、家賃収入からプロパティータックスを引いて、物件自体の減価償却が27.5年なので、それでほぼ消えてしまいます。

石原

管理費も高いですからね。

佐藤

はい。さらにHOAが掛かる物件だとマイナスです。投資家さんの中には4~5年後に売却する方も出てくると思います。その際に日本の譲渡税はさておき、米国でどのようなことが起こるのか……。それを税務的に理解されている方があまりいらっしゃいません。

アメリカの非居住者であれば最初に買い手を通して源泉徴収(一定の条件下で)されますが、それも「売却益」ではなく「売却額」に対してなので、キャッシュフロー的に厳しくなります(その後短期・長期の要件ごとに譲渡税の計算がなされる仕組みです)。果たして米国の不動産投資は、出口ではどうやって着地するのでしょうか?

Point2 HOA

HOAはHome Owner Association(住宅所有者組合)の略。ビルのメンテナンスや大規模修繕のために組合に対して毎月費用が発生する。

石原

おっしゃる通り、目先の節税ばかりにフォーカスし過ぎていますね。目の前に迫る日本国内の大きな利益を消すには重宝するかもしれません。しかし、たっぷり減価償却を使ってしまったら、その物件が高く売れたとしても大きな税金がかかってきますから。

佐藤

資産形成としての米国不動産投資であれば、まだメリットはあるかもしれません。アメリカの建物の価値は数年で10~20%上がってはいるものの、それほど短期間で大きく上がるものでもありません。やはり、長く保有してキャピタルを狙うのも有りかもしれません。ただ、そうすると日本での節税ができなくなります。

石原

佐藤さんのおっしゃる通り、利回りが低すぎる物件で経費倒れするかしないかのギリギリのところで海外投資をするのは厳しいと思います。固定資産税も管理費も保険も高いですし。僕自身もアメリカで物件を保有していて思うのですが、何かと日本の物件よりも修繕の頻度が高いような気がします。

佐藤

そうなのですか?

石原

入居者からすぐクレームやリクエストをあげられます。その頻度が日本の物件に比べると多い気がします。ただ、それらを受ける、受けないはこちらの判断を求められるのですが。

佐藤

アメリカに住んでいない日本人からすれば、米国への投資は、節税メリットが第一になりますが、その他に米国不動産投資の魅力とは何でしょうか?

石原

やはりインフレ率を上回って、常に目に見えて不動産の価値が上昇しているのが魅力でしょうね。消費者物価指数(CPI)の上昇率よりも、不動産の上昇率は平均的に上回っていて、中には数倍の勢いで上がっているエリアもあります。

アメリカの消費者物価指数は2016年と2017年にはそれぞれ2%を超えていて、今年に入ってさらに勢いも増してきました。たとえばベーカーズフィールドの物件は同時期に3%を優に超えていて、個別で見ていくと2012年以降、前年比で5~8%も上げ続けているエリアと価格帯(〜20万ドル)があります。

ちなみにアメリカで利回りと呼んでいるのは、日本でいう実質利回りです。ところが日本では表面利回り、実質利回りと分けて呼びます。アメリカでは実際にかかる経費を、すべて差し引いて計算した利回りをキャップレートというのですが、投資家はキャップレートでの利回りの話しかしません。

大都市の利回りなど1~2%しかありませんが、僕の住んでいるベーカーズフィールドは5~6%あります。これは戸建ての話です。最近はアパートを見てきたのですが、12~13%で回る一棟ものがあり驚きました。

Point3 実質回り(ネット回り)

運営にかかる経費(固定資産税・共益費等)を差し引いて計算した利回りを実質利回り(ネット回り)という。経費を考慮に入れているため、表面利回り(グロス利回り)に比べ、より実態に近い利回りとなる。

 

Point4 表面利回り(グロス利回り)

投資した金額に対して儲けがどのぐらい出るかをおしはかる指標のひとつ。年間の家賃収入(満室想定)を物件価格で割って算出する。ポータルサイトに記載されている利回りは、ほとんどが表面利回り。

 

Point5 キャップレート

キャップレートは「資本収益率」「還元利回り 」「収益還元率」「NOI利回り」とも呼ばれる投資指標。キャップレートは不動産の純収益(NOI、総家賃収入から管理費や修繕費などを控除したもの)を不動産価格で除した率。キャップレートが低いほど物件の価格は高くなる。

佐藤

それはすごいですね。

石原

僕が所有する物件を、アメリカの不動産ポータルサイト『Zillow(ジロー)』に住所を打ち込んで資産価値を調べると、けっこう上がっています。それが密かな楽しみではあります。ただ実際は相対取引ですから、買ってくれる人が決める話です。あくまで参考程度ですが、その参考値がずっと上がっていけばいいと思います。

このように節税に代わる魅力として「資産形成」があります。先進国で法整備がしっかりしていて、情報公開も明確でフェアな取引が可能です。物価の成長率を常に上回って成長しているのが明確にわかるようなエリア、もちろんそうでないエリアも含めてアメリカですが、可能性のあるところを選んで、さらに有利な価格帯を狙うことで、確かな資産形成が望めます。

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