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前編から続く)

賃貸物件と同様、民泊運営も「集客が見込める立地」が重要だ。交通の便、駅からの距離、周辺環境などに加え、外国人観光客数が多いエリアが理想だろう。加えてもう1つ、民泊を成功させるために絶対に無視できない要素がある。自治体が独自に制定する「条例」の存在だ。

自治体によっては、新法で定める180日の営業日数制限にさらに上乗せする形で規制をかけていることがあり、なかには民泊そのものが禁止されているエリアもある。新法の下で民泊を運営する場合、年末年始や夏休みなどハイシーズンの収益が成否の鍵を握る。この時期に営業ができないとなれば絶望的だろう。

民泊新法特集2回目となる本記事では、主要な自治体の条例を調査、独自の指標でランキング化した。もちろん、条例の緩いエリアなら確実に勝てるというわけではないが、少なくとも「勝てないエリア」は存在することを覚えておいていただきたい。

「上乗せ条例」がもっとも厳しいエリアは?

2018年5月現在、18の都道府県に民泊に関する条例が存在している。都道府県レベルで条例を設けているケース、市町村単位で設けているケースなどさまざまだが、内容としては、住居専用地域や文教地区など特定の地域において営業日数制限を上乗せしているものが多い。

民泊に関する条例が存在する都道府県(2018年5月現在)。都道府県のほか、市区町村レベルで細かな条例を制定している自治体もある

自治体からすれば、治安悪化の防止や地域住民への配慮などからこうした規制を実施しているわけだが、民泊のプレイヤーにとっては条例がそのまま足かせとなって収益を圧迫することになる。

下表は、現時点で公式に発表されている自治体の条例を元に、編集部が独自に作成した「条例の厳しさランキング」である。いくつかピックアップして見ていこう。

編集部が調査した民泊に関する条例が厳しい自治体のトップ10

勝てる要素がない?競合ひしめく京都民泊のいま

最も厳しいのは京都市だ。一部の町屋物件を除き、住居専用地域での民泊営業を閑散期である1~2月の60日間のみに限定。さらに市内全域で、現地対応人(住宅宿泊管理業者など)は、物件まで10分以内に到着することができる場所に事務所を置かなくてはいけないという「駆け付け要件」も課すという徹底ぶりである。市内の観光名所の多くは制限のかけられた住居専用地域にあることを考えれば、非常に厳しい制限と言える。事実、本稿執筆時点で京都市の民泊届出が受理された例は1件もない。

また京都市の場合、さらに細かいレベルで独自のルールを設けているエリアもある。京都市在住のある男性は、「最近、町内会が民泊に関する独自のルールを定めました。ゴミ出しや事業者への連絡方法を定めた書類提出などを義務づける内容です」と語る。

市の条例でも、民泊を運営する際には届け出の20日前から住所や連絡先、氏名などを掲示する必要があり、さらに近隣住民向けに説明会の開催や告知をしなくてはならないと定められている。さらに民泊に反対する住民がいることも配慮すれば、開業にこぎつけること自体が難しそうだ。

訪日外国人をメインターゲットとする民泊では、そのエリアの観光客数も収益を見定める大きな要素の一つだが、外国人観光客の多い京都市では当然、競合となる宿泊施設も多い。

前出の男性も「毎日何件かの民泊の前を通りますが、稼働していない日がほとんどです。市内では毎月のように宿泊施設がオープンしていますので、競合が増えすぎて稼働率が下がっているのではないでしょうか。1年くらい前と比べると、スーツケースを転がしながら歩く外国人も減ってきた印象です。駅周辺に宿泊施設が増えたからかもしれません」と話す。新法以降、京都市内で新たに民泊を始め、収益を上げることは極めて困難といえそうだ。

対応割れる23区

続いては多くの民泊物件が集積する東京23区。各区の民泊に対する姿勢は多様で、条例の内容もそれぞれ異なる。

23区のうち特に厳しい制限がかかるのは千代田区だ。家主居住型であってもエリアによっては平日は禁止、また家主不在型で「半径700メートル以内かつ10分以内の駆けつけ要件」を満たせない場合はすべての期間で禁止となっている。

中央区、江東区、目黒区の3エリアにも厳しい制限がかかる。これら3エリアでは、区内全域で平日の民泊営業を禁止。また、都内屈指の観光地・浅草を要する台東区も、家主不在型は平日禁止と厳しいルールが設けられている。

国家戦略特別区に基づく、いわゆる「特区民泊」の取り組みを行ってきた大田区でも、住居専用地域や文教地区などで全期間にわたって禁止されている。

なお、江戸川区、北区、墨田区、葛飾区では独自の条例を設けていない。

大阪では民泊巡り「デモ」も

同様に特区民泊を実施してきた大阪市でも、住居専用地域における民泊を全期間で禁止。小学校の敷地の周囲100メートル以内の区域では平日の民泊が禁止されており、さらに周辺地域の住民や施設に対して、民泊を運営する旨を適切に説明する義務が課せられている。

だが、ここでも周辺住民の理解を得ることが大きな課題。5月某日には同市・御堂筋で大規模な民泊反対デモが行われた。集まったのは、主催者発表で3000人以上の旅館業関係者や一般市民らで、「民泊に迷惑している」「犯罪に利用される恐れがある」などと訴えた。

またお隣の兵庫県は、県として条例を制定したことに加え、西宮市、神戸市、尼崎市で独自の条例を設けた。住居専用地域ですべての期間事業の実施ができず、周辺住民に対して説明会を開催することなどを求める厳しい規制が敷かれている。

その他、厳しい条例を設けている自治体は下表の通りだ。

南と北の激戦区「沖縄」と「北海道」の民泊事情は?

沖縄と北海道は、東京・大阪・京都に比べるとメディアに取り上げられる機会も少ないが、民泊事情はどうだろうか。

・沖縄の場合

那覇市在住の尾上洋二さん(仮名)は、那覇空港から20分ほどの場所で、平屋の戸建て物件を民泊として運営している。観光施設や商業施設もあり観光客も多数訪れるエリアだ。利用者は中国や台湾などアジア系外国人旅行客が多くを占めるという。

もともと賃貸にと考えて購入した物件だったが、周辺の民泊物件の稼働率が高かったこと、またいつでも賃貸に戻せることから民泊として運営を始めた。週末や週末から月、火にかけての利用が多いという。

「間取りは4LDKで、ダブルベッドやソファーベッドを置いて最大3人まで泊まれるようにしています。宿泊料は1泊1万円、追加1名あたり3000円のプラス料金です。去年の5月から始めて、稼働率は60%程度です」

しかし、6月の新法以降はこれまで通りというわけにはいかない。沖縄も上乗せ条例を設けており、物件のある住宅専用地域では平日は民泊の運営ができないためだ。

「住居専用地域なので、旅館業法で運営することもできません。マンスリーや時間貸しと併用するしかないでしょうね」

尾上さんは沖縄県の上乗せ条例について、思うところがあるという。

「沖縄県だけに限りませんが、私から言わせればこうした条例は、宿泊施設の不足を民泊で補う、また昨今問題になっている空き家問題の解消という国の思惑に相反するものだと思います。現在、観光客の増加でホクホク顔の沖縄県ですが、宿泊施設の不足から売り手市場になるのは明らか。宿泊代も高騰するでしょう。リピーター客の減少を考慮できていないんです」

尾上さんによると、県内では新法施行をにらみ民泊から撤退する動きが加速しているという。「家具家電の転売が増えているようです。ただ、逆に減少をビジネスチャンスととらえ、旅館業が取得可能な物件を県外企業が買い漁っているという噂もあります」

・北海道の場合

続いて、札幌市で複数の物件を民泊として運営した経験をもつ、楽待コラムニストでもある「お宝トミー」さん。民泊にしたのは8畳程度のワンルーム物件7戸で、もともとは賃貸物件として貸し出していたが、思うように入居が付かなかったことから民泊に切り替えたという。

「周辺の家賃相場は2万円前後で、私の物件も1.9万円程度で募集していました。それでもなかなか入居が付きませんでした。そこで民泊に切り替えたところ、繁忙期は1部屋で月に15万円くらいの売り上げが上がるようになったんです」

お宝トミーさんによると、札幌のハイシーズンは6~8月。雪まつりがある2月を除けば、秋冬はほとんど需要がないという。閑散期は2000~3000円、繁忙期は10000円ほどに宿泊料を設定し、繁忙期に客が付けば、7戸合わせて年間で400~500万円ほどの収入になった。賃貸物件の空室を民泊に活用し、事業は順調に思えたが、ある日事件が起こる。保健所から手紙が届いたのだ。

「民泊の営業をすぐにやめるように、という内容でした。同じく民泊を運営している仲間のところにも同じような手紙が来ていたようなので、『ついに来たか』という感じでしたね」

そうしてある時期から民泊から撤退することになったが、6月以降は合法的に続けていくように既に住宅宿泊事業の届出は済んでいるとお宝トミーさんは話す。

「180日の制限は、はたから見たら厳しいように映るでしょうが、本来札幌は年に3~4回ほどしか繁忙期がありません。留学生向けマンスリーなどを併用すれば十分回していけると考えています」

6月15日以降は「超好立地」でなくても勝機はある

新法後、新たに民泊に参入する場合、エリア選びはどのように考えればよいだろうか。不動産関連ビジネスの許認可を専門とする行政書士の石井くるみさんによると「180日の制限下では、都心よりも地方にチャンスがある」という。

「都心の場合、そもそも賃料が高いので、年180日の民泊では採算が合わないケースが多いでしょう。一方、地方では、宿泊料は都心とそれほど大きく変わらないものの、賃料が安いので、年180日でも十分採算が取れる可能性があります」

また最近は都市部より地方の方が宿泊者数の伸び率が高いと指摘。「都心では宿泊施設が急増し競争が激化しています。逆に地方ではインバウンド需要の伸びに比べ、宿が十分足りておらず、民泊が人気を集めています。具体的には、福岡や大分、それから金沢、ニセコ、白馬、東京近辺なら富士五湖周辺エリアなどが人気です。ホストにとって、今までは民泊仲介サイトでの集客がメインでしたが、今後は合法化されて日本の旅行サイトでも民泊を扱うようになる。それによって地方の民泊需要はさらに増えていくでしょう」

その他、民泊の運営代行会社「Zens」の担当者によると、これからはいわゆる「超好立地」でない場所でも勝機はあるという。

「例えば東京の葛飾区、足立区などは独自の上乗せ条例を設けていませんが、観光客が多いわけではないので一見すると勝算がないエリアにも思えます。しかし、6月15日以降は物件数そのものが激減することが予想されます。一方で、港区や新宿区など、民泊ニーズの多い超好立地エリアは規制が厳しい。そうなればその受け皿として、やや中心から外れたエリアでも十分に集客できるでしょう」

また、取材に応じたある投資家は、民泊新法にのっとった「事業者登録」は非常にハードルが高く、申請にすらたどり着けない部屋が半分以上にのぼる、と見ている。

「最悪、現在の民泊物件のうち3分の2が『消滅』するのではないかと予想する人もいます。そういう意味では、届出ができる力があるオーナーさんは、もしかしたら、どんな物件でもおいしいタイミングになるかもしれません」

少なくとも新法施行直後は、既存の違法物件が一気に減少し、受け皿としての民泊需要は拡大すると言えそうだ。

次回、民泊を始めるにあたって必要となる手続きについてレポートする。

後編に続く)

(楽待新聞編集部・坪居慎太郎/浜中砂穂里)