多くの行員が融資時の不正を認識していたことが明らかになったスルガ銀行の本店=15日午後、静岡県沼津市

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズ(東京都)が経営破綻した問題で、大半の融資を実行したとされるスルガ銀行(静岡県)は15日、審査書類の改竄二重売買契約などの不正を相当数の行員が認識していた可能性があるという調査結果を発表した。

米山明広社長は、融資審査の過程で「営業幹部が審査部に圧力をかけるような状況も生じていた」などと説明。「増収増益の継続」という過度なプレッシャーの中で、審査機能が正常に機能していなかった問題が浮き彫りになった形で、第三者委員会を設置して真相究明と改革に乗り出す方針を示した。

「相当数が不正を認識」か

この日は2018年3月期の決算発表に合わせ、経営陣がシェアハウス関連融資に関する調査結果を公表。かぼちゃの馬車などの融資について営業部門約500人を対象に内部調査を実施した結果、オーナーの年収や預貯金に関する資料の改竄、金額の異なる2種類の売買契約書を作って銀行融資額をかさ上げする二重売買契約について「相当数の行員が認識していた可能性がある」と報告した。

あるかぼちゃの馬車オーナーの預金通帳。原本(上)の残高は3万4000円だが、スルガ銀行に提出された資料(下)は6600万円に改竄されていた=オーナー弁護団提供

今回の一件では支店の担当者が通帳などの原本確認を省略し、ネットバンクでは画面の印刷資料のみで確認を済ませていたと多数のオーナーが証言しており、それが改竄の温床になっていた面がある。米山社長は「原本確認は銀行員の常識だが、急いで融資実行までもっていかなければならないという意識の中でそれがなくなってしまったのだと考えている」と述べた。

一部ではスルガ銀行側が販売会社に資料改竄を指示していたという情報もあるが、米山社長は「そういった事実は確認できていない」と説明。第三者委員会による調査で真相を究明するとした。

過剰融資の裏の「恫喝」

この日の会見では、部門間の歪んだ力関係を背景に無理な融資が実行された可能性も浮上。危機管理委員会の調査結果で「営業部門の幹部が融資実行に難色を示す審査部担当者を恫喝し、審査部門が抗し難い状況が生じていた」とする内容の指摘があったことが公表された。

米山社長は「今期も増収増益をしないといけないというプレッシャーの中で、営業部門に力が入りすぎてしまい、審査部より営業部門の方が強い体制が出来上がってしまった」と分析。審査部が担保評価や属性などを踏まえて否決した案件について、支店長らが「何とかならないか」などと申し入れるケースがあったことを明かした。

スルガ銀行はこのように目先の成績を追求する中でコンプライアンス意識が低下したことを問題視し、本年度から個人の営業実績にウエイトを置くのではなく、定性評価項目の割合を拡大した人事評価を導入したという。

スキーム破綻の認識遅れ

スマートデイズ(旧社名・スマートライフ)は2014年4月から、30年間賃料を保証するサブリース契約で女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開し、多い時には月50棟ほどを建築していた時期もあるとみられている。急拡大していたスキームが破綻への道を歩み始めたのは、ほとんどの案件で融資を引き受けていたスルガ銀行が昨年10月に方針を転換したことが契機。これによってスマートデイズは予定していた販売ができず資金繰りが悪化し、今年1月にオーナーへのサブリース賃料支払いが完全に停止された。

米山社長は、融資方針を転換した昨年10月ごろまでこのスキームの問題の大きさを認識できていなかったと説明。「延滞や苦情が発生することもない案件だったので問題ないと感じていたが、昨年秋ごろから、棟数も増えて空室も目立つというように過熱感が高まっていることを把握した。それを受けて実際の入居率を調査し、やや機械的な面があった評価基準を見直して厳密に審査をするように方針を変えた」と述べた。

かぼちゃの馬車への融資に関する認識などについて説明する米山社長(中央)ら=15日午後、静岡県沼津市

今後の融資姿勢は

この日の説明によると、スルガ銀行のシェアハウス関連融資はスマートデイズ以外の案件も含め1258人・2035億円。今回の一件で焦げ付きリスクが高まったことから貸倒引当金を積み増したことが影響し、18年3月期の連結純利益は前期比50.5%減の210億6500万円と大幅な減益となった。

かぼちゃの馬車のオーナー弁護団は、行員が審査書類の改竄に関与した疑いがあるとして近く刑事告発する方針で、スルガ銀行を取り巻く環境は厳しい。今後の不動産投資に対する融資姿勢については、多くの投資家が注視している。

米山社長は「通常のアパートローンと違い、今回のシェアハウスのような特殊な案件についてはリスク分析が十分できていなかったという面がある」とした一方、「シェアハウス以外にも新たな取り組みがさまざま出てきているが、リスクアセスメントをしっかり行った上でニーズに応えていくことがリテールバンクの責務。お客様の期待に広く対応していく姿勢はこれまでと全く変わらない」と述べた。

今回の問題が発生した根本原因は何だったのだろうか。米山社長は「リスクに対する認識が不十分だった面はあるが、問題の根っこは銀行員としての『良識』、社会人としての『常識』が欠如していたこと。最高益を連発する成長の過程で忘れてしまったものは何かということを明らかにした上で、ゼロから再生を目指していきたいと考えている」と語った。

(楽待新聞編集部・金澤徹)