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不動産投資をする上では、「出口戦略」をきちんと考えるべきだと言われる。もちろん物件を手放さず、インカムゲインを得続けることも可能だが、売却し、次の投資につなげることも可能だ。

ところで、売却先として投資家ではなく、実需、つまり実際に住むために購入する買主を検討したことはあるだろうか。

楽待新聞が4月に実施したアンケートで、「実需向けに売却をした経験がある」と答えたのは469人中わずか89人。だが、実需向け売却には意外と知られていないメリットがあるようだ。今回は実需向けに売却し、「成功した」と振り返る投資家3人に、その体験談と成功のためのポイントを取材した。ぜひ、次回の売却に向けて参考としていただきたい。

徹底リフォームの効果アリ

不動産投資歴8年というAさんは今年、北関東に所有していた築35年のRCマンション(区分)を売却した。この物件は、6年ほど前に190万円で購入した。

3LDKのファミリータイプで、家賃は4万5000円。所有期間中は、利回り20%を超える優秀な物件だったという。

「部屋がファミリータイプだったことから、購入当初から出口戦略として実需向けに売却可能と考えていました」というAさん。購入時とは仲介会社を変更し、実需向けにも強そうな地場の不動産会社に仲介を依頼した。だが、投資家へ広告してもらえるようにも依頼して、「両面作戦」をとったそうだ。

その結果、購入価格を上回る280万円で売却ができた。もともとは300万円の希望価格をつけていたが、指値がはいり、20万円の値引きで決着した。「実需だと、あまりきつい指値を入れる人が少ないと思います」とAさんは語る。

Aさんの区分マンションを購入したのは、リタイア済みの60代夫婦だったという。売りに出してから決まるまでは4カ月ほどで、相手と交渉していた期間は2週間ほどだった。

売却前、Aさんはリフォームを施した。クロスを全面的に貼り替え、一部をアクセントクロスとしたほか、照明をすべてLEDシーリングライトに変更した。また、水回りは徹底的に清掃したという。かかった費用は20万円ほどだが、「実は、同時期から売り出している同じマンションのほかの部屋はいまだに残っていて、ちょっとしたことですが、効果があったと思います」と話す。

Aさんはこの実需向け売却を「成功だったのではないでしょうか」と振り返る。「私自身が言うのもなんですが、投資家からすればこの物件は魅力的には思えず、自分ならもっと厳しい指値を入れていると思います」。

魅力的ではないというのは、住宅が供給過多の地域で、空き家率が5割近くにもなっている点や、築35年で設備や水回りの使い勝手があまり良くない点からだ。「今後賃貸として貸すとすれば、経営は難しい」とすら考えていたという。

そんなAさんは、出口戦略としての実需向け売却について「投資家向けだけでなく、リスクヘッジとして実需向けに売却することを視野に入れるべき」と話す。だが、その際には購入時からそのエリアで実需向けに販売されている物件の価格や立地をも調べて、相場より安く購入することも重要だ。

【POINT】

・実需だと厳しい指値が少ない傾向にある

・購入時から実需向け売却を視野に入れたリサーチを行う

近隣相場より高値で売却

Aさんと同様に、実需向け売却における「リフォームの大切さ」を説くのはBさんだ。札幌市に所有していた1Kの区分マンションを今年売却した。購入価格は60万円。相続がらみだったため、安く購入することができた。

一方、売却価格は3倍以上高く、約400万円。築40年近かったが、近隣の相場よりもかなりの高値で売却できたという。

「実需向けも視野に入れ、実需も投資用もどちらでも提案できる会社に仲介をお願いしました。結果、その選択は正解だったと思います。実需として使用するからこそ、相場よりも少し高くても決まったと思っています」(Bさん)

購入したのは子供の進学用に購入した夫婦だった。指値がはいったため、25万円ほど値下げすることになったが、Bさんは売却価格には満足している。

その一方、実需向けとして売却を成功させるために特に水回りのリフォームが重要だと指摘する。実際にBさんは床や壁の貼り替えのほか、キッチンを交換したり、風呂場では、シャワーホースを新しくしたりといったことを行った。

「実需では、やはり水回りや、目につく設備関係のきれいさを重視される方が多いです。特に女性目線だとなおさらで、今回はお母様も一緒に物件の検討をされていたので、顕著にそれがわかりました。設備も汚れが目立たないものに変えるとか、部屋の色使いも印象を変えたほうがいいと思いますが、床や壁の貼り替えだけであれば大きな金額もかからず行うことができるので、いい方法だと考えています」

【POINT】

・実需・投資どちらも扱える不動産会社に依頼する

・特に水回りのリフォームが重要

実需向け売却は、交渉から売却までが長い!?

土地自体を実需向けに売却した投資家もいた。不動産投資歴3年というDさんは、関西地方にあった165万円の土地(約100平米)を、任意売却で購入した。駅から徒歩8分の立地だったため、上物を建てて運用するか、駐車場として利用し、その後実需として売却するイメージを描いていたという。

検討の結果、月極駐車場として利用することにしたDさん。約25万円をかけて整地を行い、募集をかけ始めたころに「この土地を買いたい」と地場の自営業の一家から声がかかった。

「自宅兼事務所として利用したいということでした。価格面の折り合いがつけばということで、交渉をはじめました」

結局、交渉を重ねて350万円で売却することができた。近隣の相場や移動費などを考慮して370万円の売却希望価格をつけていたが、20万円の値引きですんだ。「買主さん側は購入前提の値下げ交渉でした。なるべく安く買いたいが、断られるのは避けたい、という思惑だったんでしょう」とDさんは話す。

だが、問題だったのは売却までの期間が長かったことだ。交渉から売却まで、2カ月半かかったという。

「現金決済でしたから、投資用であれば1カ月もあれば終わったと思います。今回は実需だったからなのか、確認事項もさみだれ式に送ってきてまとめていただけず、また、口頭でOKをいただいてからもおじい様が『あの場所はそんなに高いはずがない』と注文をつけてきたこともあり…仲介会社さんも『この日までにまとまらなければ断りましょう』とおっしゃるような状況でしたね」

そんな状況だったが、最終的にはなんとか合意に至ることができた。さまざま苦労はあったものの、全体的には今回の売却はうまくいったと考えている。その理由は「タイミング」だ。

「いったん上物を建ててしまったり、駐車場でも賃借人がいたりすれば、実需向けにかじを切るタイミングは難しくなります。私の場合は募集をかけ始めたところだったので、よかったですね」

そのためには、やはり購入当初から出口戦略をどうするか、のイメージを数パターンにわたってきちんと検討しておくことが重要になりそうだ。Dさんも「成功のためには、タイミングを逃さないことですね」と語る。

【POINT】

・交渉から売却まで時間がかかるケースが多いことを覚えておく

・「タイミング」を逃さないために、購入当初から出口戦略を意識する

実需向けに売却しづらい物件はあるのか?

これまで3件のケースを見てきたが、実際、今所有している物件が果たして実需向けに売却できるかどうかが気になるところだ。実需向けに売却しやすい、あるいはしにくい物件はあるのだろうか。

Aさんは「現在は核家族がメインなので、2世帯以上住めるような物件は売却まで時間がかかっていると思います。近隣の売りづらい家の特徴は、6LDKなど、2世帯以上で住んでいたと思われる大きな間取りですね。また、築40年を超えて、大規模なリフォームをしていない物件は長く売れ残っているようです」と指摘する。

逆に3LDKなどの家は、価格や築年数次第ではあるものの、「あっという間に売れる」ことも多いそうだ。

Bさんは単身者用物件の場合について「バス・トイレ別が1番かもしれません。ただ、最近は築年数が経っていても綺麗であればそれなりの金額で販売されていると思います」。

一方、Cさんは「物件種別等は問わず、要リフォーム物件は実需の方は手が出しづらいので、投資家が購入し、再生して実需向けに売却というスキームはハマりやすいと思います。実際、そのような事業をしている企業様も増えていますし」と語った。

昨今の融資の引き締めで、物件を購入できない投資家が増えていると言われている。そんな中で売却先を検討するときには、「実需向け」も検討してみてはどうだろうか。その際は適切なリフォームをすることが重要だが、そもそも出口戦略までしっかりと見据えた物件購入が成功の秘訣となる。

(楽待編集部 浜中砂穂里)