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レオパレス21に対するオーナーの集団訴訟や、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」をめぐるオーナー700人・総額1000億円もの被害など、昨今は「サブリース」を巡るトラブルが後を絶たない。

もともとは安定的な収入が見込める仕組みのはずのサブリースだが、とかく不動産投資の「負の側面」として語られることが多くなった。はたして、サブリースはオーナーにとって「味方」になり得るのだろうか。サブリースで失敗した人、成功した人、複数の事例を紐解きながら、あらためて考えてみたい。

「家賃保証」という幻想

オーナーが購入した物件を一括で借り上げ、入居者を募って転貸する仕組みのサブリース。サブリース業者は借り上げた物件の入居者募集や管理を行い、手数料を差し引いた残りの家賃をオーナーに支払う。オーナーにとっては、空室が出たとしても一定額の家賃を保証してもらえる「家賃保証」が一番の魅力といえる。

契約の中身は業者によって多少異なるが、「30年一括借り上げ」とし、当初10年間は決められた家賃を支払い、その後2年ごとや5年ごとに見直しを行うといった内容が多い。家賃を固定で保証してもらえる間はひとまず安心と考えるはずだが、現実にはそうとも言い切れない。

レオパレス21ではサブリース契約について「当初10年間は(家賃が)不変とする」という契約書の文言があったにも関わらず、実際には10年未満で減額されるケースが多発してオーナーが集団訴訟を起こした。「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズは、30年間賃料を保証するサブリース契約で約800棟・1万室を展開していたが、スルガ銀行による融資がストップしたことで頓挫。今年1月にサブリース賃料の支払いが完全停止され、同社は4月に経営破綻した。

突然の契約解除通告

神奈川県在住の専業大家で楽待コラムニストでもある坂上雲さんは、サブリースで「成功」と「失敗」の両方を味わっている。

1996年、神奈川県西部の某所にマイホームとして約2000万円の戸建てを新築。同時に、その隣に新築戸建てを約1000万円で購入し、サブリース契約を結んだ。3LDK、約85平米の物件で、手数料など含めて金利2.7%でオーバーローンを実行。建物の建築とサブリースは一部上場のハウスメーカーに依頼し、保証賃料は月12万円、実質利回りは約5%だった。

坂上さんが購入した戸建て

しかし、直後から世の景気は急速に後退。「その影響で空室の期間が1年半続き、まずいなと思っていた矢先だった」と坂上さんは言う。「突然、営業担当が上司を伴って来訪し、全社方針でサブリースは廃止することになったと言われ、否応なく契約解除を通告されました。契約書に家賃10年固定を保証すると明記されていたのにも関わらずです。目の前が真っ暗になりました」

不況の嵐が吹き荒れる1998年。わずか2年でのサブリースの終了を余儀なくされたのだ。大手なら間違いないと思って契約を結んだのにもかかわらず、家賃を受け取れたのは約束の10年に遠く及ばない期間。「サブリース契約の解除も絶対にないと事前に確認したのですが、裏切られました」

その後、ローンの残債1500万円が重くのしかかる中、自主管理に切り替えて客付けに成功。家賃の値下げや大手ハウスメーカー製を前面に出すなどして、現在も安定運営を続けている。「のちにマイホームの戸建ても賃貸に回しましたが、そちらは需要があまりのぞめず売却。買い値より1000万円以上のマイナスとなってしまいました」

二度目の家賃保証打ち切り

坂上さんは、2007年に神奈川県内で挑んだ新築アパートへの投資でも痛い目に遭っている。

アパートは1K14室の2階建てで、土地建物合わせて約1億円を借り入れた。月の保証賃料は60万円で、返済は47万円。初の大規模物件に家族も自身も不安を覚えたため、再び10年間一定額の家賃が保証されるサブリースを選択した。一度失敗したサブリースに再び挑んだのは「運営の手間が少なく、億単位の融資も引きやすかった」という理由だった。

再びサブリースを選択した新築アパート

相見積もりをとって慎重に業者を決めたのだが、同じ轍を踏んでしまったのである。リーマンショックから2年後の2010年、未曾有の不況により、業者はサブリースの契約を解除して一般管理に切り替えることを懇願してきた。「このとき、親会社はすでに破産していました。苦しい台所事情だったのでしょう」

仕方なく一般管理に切り替えるも、入居率70~80%と空室がなかなか埋まらない事態に直面。そこで信頼できそうな大手の管理会社に変更したが、「この管理会社が期待に反して力不足で…」。最終的には自主管理とし、DIYで部屋をきれいにするなどして自力で満室へと導いた。「その後、満室のまま売却し、購入価格より約800万円プラスになったのは幸いでした」

戸建て、アパートともに、突然の家賃保証打ち切りを経験した坂上さん。「結果的に難局を乗り越えられましたが、その渦中は胃が痛くなる毎日。二度と同じ思いをしたくない」と振り返る。

業者をどう見極めるか

一方で、「私はサブリースで地獄を見ただけじゃない。サブリースに救われた物件もあります」と坂上さんは言う。

その物件は、神奈川県某所の1K15室、約1億円で入手した新築のアパート。2008年に完成し、リーマンショック以後の不況に加え、防水性能など建物の質が悪く、一般管理であれば入居付けが厳しい状況だった。しかし、サブリースを依頼した業者の頑張りで90%以上の稼働率をキープし、現在も稼働率97%を確保しているという。

「サブリースにはメリットもあります。ただ家賃保証や管理委託の利点を十分に享受するには、業者を慎重に選ばなければならない。会社の規模やブランドなどは関係なく、サブリースを機能させる力を持っているかどうかを見極めることですね」

どのように業者を見極めればいいのだろうか。「ある程度の期間安定して事業が行われているか、客付け力はあるか。各社員の真面目さや正直さ、例えば世情による家賃変更の可能性を正直に説明してくれるかという点なども重要になります。可能であれば、他の物件の収支明細を見せてもらいたいところです」

1億6800万円の借金で実質利回り1%台

「業者が試算したサブリースプランの実質利回りは1%台。要望とは大きくかけ離れた利回りの低さに驚きました」

地方都市在住の専業大家で、同じく楽待コラムニストでもあるゆたちゃんさんが、そのシミュレーションを提示されたのは2017年9月のこと。ゆたちゃんさんは現金購入を基本として地方の築古アパートをメインに複数棟を所有し、諸経費を差し引いて実質利回り20%を実現している。「アパート建設を計画し、大手の業者に話を聞こうと思ったのが発端です。要望したのは実質利回り10%。それが1%台ですから…」

業者が提示したのは、地方某市の1000平米の土地に、2LDK・10世帯の木造アパートを建てるプラン。土地建物を合わせた価格は約1億6800万円で、「サブリースで手元に残るのは月15万円程度。億を超える借金を背負うのにも関わらず、あまりに実入りが少ない。当然、お断りしました」。

さらに数日後、業者が別のプランを持ってやってきた。地方某市の1500平米の土地に、2LDKと1LDK混合の16世帯の木造アパートを建てるもので、土地建物合わせて約2億円だった。「サブリースでの実質利回りは微増にとどまり約2%。もはや言葉もありませんでした」

以降、業者とは疎遠になったが、サブリースの実態を知ることができた経験だった。「一番のネックは建築費の高さだと思います。私の試算では、外構工事だけでも相場と約1000万円の開きがありました。建築費で利益を抜き過ぎるから、必然的に利回りが低くなってしまうのでしょう」

金利が2%上がったらクラッシュ

「想定されたシミュレーションよりも家賃が減額されたり、借入の金利が上がったりしたら、破綻は免れなかったと思います」

高知県在住の専業大家Mさん(60歳)が、友人のケースとして明かす事例だ。遡ること約20年前。フルローンで2億6000万円を借り入れ、手残りが年500万円余りというサブリース案件について相談を受けたMさん。地元中心都市に車で約30分の開発地域に、4棟30室(2DK中心)のアパートを新築するという内容だった。

友人に見せられたシミュレーションは、ローンの金利が30年固定の2%台、家賃は固定保証期間を経た10年目に5%下落することが見積もられ、11年目以降は2年ごとに見直しと記載されていたという。

「真っ先に忠告したのは金利上昇のリスク。仮に2%上がったら持ち出しが出ることを伝えました」。借入金2億6000万円の2%は520万円。年500万円のキャッシュフローがマイナスに転じ、ローン返済は立ち行かなくなってしまう。「11年目以降の家賃も見直しによってさらに減額されれば収支はマイナスに陥る。業者の見積もりの甘さを指摘し、賛同することはできませんでした」

しかしながら友人は決断して実行。13年たった現在、結果的に想定を超える金利上昇はなく、逆に1%台への借り換えが叶った。家賃は10年目に契約通り5%下落したものの、立地の良さから11年目以降の見直しはなく、想定の範囲にとどまっている。CFは月35万円、年420万円だ。ただ、借入金はまだ1億8000万円残っている。「今後も想定を超える金利上昇と、家賃の下落がないことを祈るばかりです」

家賃保証以外の落とし穴

サブリースでは、家賃保証以外でも見逃せない落とし穴がある。

東京都在住のサラリーマン大家Yさん(60)は、「サブリースで問題なのは原状回復にかかる費用の高さ。意外と見落としている人が多いのではないでしょうか」と指摘する。

母親が約30年前に建てた都内の木造アパート(2K・6世帯)を4年前に相続し、サブリースを継続して管理は業者にお任せ。当時は仕事に追われて忙しかったため、業者から原状回復にからむ工事の見積もりをもらっても、ほぼノーチェックでOKしていたという。

しかし2年前、時間に余裕を持てる職場に移ったことで状況が変わり、先の工事の見積もりをきちんとチェックできるようになった。「調べてみたら、相場よりかなり割高なことに気付いたんです。クロスの張り替え費用でいえば、1平米あたり900円程度が一般的ですが、その1.5倍、1350円でした」

また、テレビモニター付きインターフォンなど新しい設備導入の提案にクビをかしげることも。「築古のアパートに最新設備を入れて家賃を回収できればいいですが、今はそんな時代じゃないですよね。むしろ家賃を少しでも下げたほうが客付けにはつながりやすい。結局、オーナー目線を持ち合わせていないわけです。サブリースの契約に工事業者の縛りがなければ、自分で安い業者を探して依頼するのも手ですね」

手間なし、ほったらかしでOKの利点

もちろん、サブリースを選んで正解だったと感じているオーナーもいる。

「何といっても、手間がかからない。やることといったら、年に1、2回通帳を見て家賃の貯まり具合を確認するくらいですよ」

山口県在住のサラリーマン大家Kさん(47)が、新築のアパートをサブリースで購入したのは6年前。場所は土地勘のある広島県某市。1LDKと2LDK半々の14世帯が入り、土地建物合わせて約1億3000万円だった。家賃は当初10年固定で、ローン等を差し引いた手残りは年約500万円だ。

「金利は当初の1.8%から1.1%に見直してもらいました。また、アパートの屋根に太陽光発電のパネルを無料でつけてもらい、屋根を貸すリース料として年7万円の実入りも。おかげで収支がどんどん良くなっています」

この6年余り、高い入居率を維持。空室が出ても業者の客付け力が強く、「1~2カ月で埋まるので安心」とKさんは言う。他県にサブリース契約ではない中古アパートも所有しているが、「中古アパートの場合、あちこち修繕が必要になってお金もかかり、客付けにも苦労します。かたや新築アパートだとしばらくは修繕の必要がなく、サブリースなら修繕から客付けまで業者にお任せでいい。新築サブリースは正解でした」と語る。

岡山県在住のサラリーマン大家Kさん(50歳)もサブリースに肯定的な意見で、「サブリースを始めて9年経過しましたが、ほぼほったらかしで順調に回っています」という。相続した地元の約500坪の土地に、約1億5000万円かけて3棟のアパートを建設。最近、金利1%以下の借り換えに成功し、最終の手残りは年約500万円になった。

「これまで大きな問題はなく、今後訪れる11年目以降の家賃見直しも頭に入っています。不安な部分もありますが、仮に見直しで大幅な減額を提示されても、そのまま受け入れなければいい。交渉して適正水準に戻すつもりです」

Kさんのサブリースプランは、家賃収入の15%という少々高い手数料を取られるが、原状回復や修繕にかかる費用を業者が負担する内容。それに備える必要はなく、ほぼ手がかかっていないという。

「私の場合、担当者と意識的に良好な関係を築くようにしています。空室が出たら担当者に会ってお願いするなど、普段からのコミュニケーションが重要。そうすれば優先的に客付けしてもらえて、高い入居率を維持できるので、結果的に業者が賃料減額を迫る可能性は低くなります」

サブリースに絡むトラブルは年々増加しているが、当然、サブリース=悪ではない。信頼できるサブリース業者を選び、契約内容に関するリスクを把握しておけば、手をかけず安定収入を得ることができることが分かった。では、いまだに悪質な業者が横行する中、サブリースで失敗しないためにはどのような考え方が必要なのだろうか。(後編へ続く)

(楽待新聞編集部)