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前編から続く)

年々増加するサブリースのトラブルの内容を調査すると、いくつかのケースに分類されることが分かった。トラブルはなぜ起こり、そこにはどのようなカラクリがあるのか。サブリース業者の見極め方やトラブルの対応策も含め、サブリースで失敗しないために必要なことを考える。

サブリースに関する相談件数倍増

2007年以降、オーナーから寄せられる年間100件以上のサブリーストラブルの相談に乗り、解決に導いてきたNPO法人日本住宅性能検査協会。同協会が運営する「サブリース問題解決センター」理事長の大谷昭二氏は「近年、サブリースに関する相談件数が増加しており、2017年は前年の約5倍、今年は4月末時点ですでに300件を超えています」と語る。

サブリーストラブル増加の背景には、金融機関の融資姿勢も関係している。マイナス金利の影響で銀行は貸し出しの利ザヤが伸び悩み、少しでも収益をとるべくサブリース案件に積極的に融資するようになった。「とくに地銀は2017年3月の決算で半分が赤字。個人向けの不動産融資に目を向け、サブリース案件にフルローンやオーバーローンで貸していることが多い」(大谷氏)

金融機関が個人向けの不動産融資に積極的となれば、それを追い風に儲けようとする悪質なサブリース業者も増える。また2015年の税制改正で相続税の課税対象者が拡大したことに伴い、節税を目的とした物件購入が過熱したことでサブリース契約自体が増えたという見方もできる。

相続税対策を謳って提案

サブリースのトラブルは、大きく2つに分けられる。

まず、高齢の土地所有者にアパート建設を持ちかけるケース。業者は相続税対策などを謳ってアパート建設を提案し、アパート建設を請け負うと同時に、物件を一括で借り上げてオーナーに家賃を支払う。空室が出ても家賃収入は30年間保証(10年固定、その後見直しが一般的)するというのがサブリース契約の典型例だ。

「サブリースで家賃は保証され、フルローンやオーバーローンだから金銭の痛みもない。アパート建設のハードルが下がるわけです」と大谷氏。基本的には建設後、数年はあまり大きな問題は起きない。家賃固定保証期間の10年を過ぎると見直しによる賃料減額が想定されるが、10年以内にやってくることもある。「業者は『借地借家法』を盾に、保証期間内であっても賃料減額を迫ってきます」

借地借家法は、賃貸借契約において借主の保護を目的としたもの。サブリース契約ではオーナーが貸主、業者が借主となり、業者のほうを保護する構図が成り立つ。「借地借家法第32条を根拠に、10年固定の家賃は借主に不利とみなし、その契約を上回る強行規定として保証期間内でも賃料を減額してきます」

業者の要求を鵜呑みにする必要はないが、法律の知識がなければ言われるままに減額に応じてしまうオーナーも少なくないという。結果、家賃減額によって収支がマイナスに転じることも多い。また、家賃交渉が折り合わないとサブリース契約の解除を言い渡されることも目立つという。

「収支マイナスやサブリース解除となれば、アパートの売却も検討せざるを得ないでしょう。建設費に業者の利益が大きく乗り、相場より高値で購入させられているケースが多いため、売却したら赤字になってしまう。となると、売りたくても売れませんよね」(大谷氏)

新たな手口も

もう一つ、20~40代のサラリーマンにマンション投資を持ちかけるケースも多い。年金など将来に不安を抱える年代に対し、「ローン完済後は年金代わりになる」と謳って資産運用を目的に収益マンションの一室などを販売する。「将来の不安が大きい、年収400万円前後がターゲットになりやすい」と大谷氏は言う。

「業者は電話営業で投資用マンションをセールスします。東京などでは街頭で顧客を勧誘するやり方もあり、新人研修を装った営業マンに『名刺交換をさせてください』と言われて応じると、のちに電話がかかってくるのがよくあるパターンです」

大谷氏によると、最近はこのような古典的な方法のほかに、新しい手口も横行しているという。

「オーナーに対してはサブリースと説明しながら、契約書では通常の賃貸借契約になっているという悪質なケースです」。投資用マンションを販売した業者は、サブリースを装って10~15%の仲介手数料をもらい、子会社などに管理を依頼。物件が空室になったとしても、販売時に利益を大きく取っているため、そこから補てんすればいいというカラクリだ。

「業者が提示する書類を見れば、サブリース契約か賃貸借契約かは一目瞭然です。サブリース契約なら、オーナーと業者の間で転貸借を可とする文言が書かれているので、なければ単なる賃貸借契約と見ていい。その部分を多くの人が見逃しているか、書類自体に目を通していません」

トラブル回避に必要な4つの心得

こういったサブリースのトラブルに遭わないようにするにはどうすればいいのか。そして、万が一トラブルに発展した場合はどうやって解決すべきなのか。大谷氏は4つのポイントを挙げる。

1.収支計画書を厳しくチェック

業者はサブリース案件を持ちかける際、さまざまな書類を提示する。その中でも、アパート建設では「長期事業収支計画書」を厳しい目でチェックする必要があるという。

「家賃は30年間高いまま維持され、入居率も100%のまま変わらない。毎年プラス収支で最終的にはこれだけ儲かる―。常套手段としてそんな非現実的な数字が並んでいるのですが、豪華な建物のパンフレットを見せられたりすると、舞い上がってしまう人は少なくありません。しかし、バラ色のシミュレーションはあり得ない。冷静に精査すべきです」

家賃の下落、入居率の変化、10年ごとの大規模修繕の費用などを織り込み、現実に即したシミュレーションを提示してもらうのが正しい。複数の業者に見積もりを依頼し、比較検討することも大切だろう。資産運用を目的とした投資用マンションの購入でも同じで、収支計画書などのチェックは欠かせない。

2.自身で賃貸ニーズを調べる

サブリース契約であれば空室でも家賃を保証してもらえるため、本来必要な賃貸需要を見極める視点が抜け落ちてしまうことも少なくない。所有の土地を活用するケース、土地・建物を購入してアパートを建てるケース、マンション投資を行うケースのすべてに該当。投資用マンションでは物件を見学せずに購入する人もいるが、非常にリスクの高い行為といえる。

大谷氏は「立地が悪いなど賃貸ニーズの低い物件は、サブリースの家賃見直しが早まる可能性も出てきます。業者は家賃を安くすることで空室率を下げようとするからです」と指摘。「そもそも、アパートでもマンションでも建設費で利益を大きく取るので、業者にとって賃貸ニーズの良し悪しは二の次。ですからセールストークを鵜呑みにせず、不動産ポータルサイトなどを使って賃貸ニーズを自分で調べることが不可欠になります」

3.業者の良し悪しを見極める

サブリース業者の中には、悪質な業者も少なからず存在する。大手だから安心、中小だから不安とは限らない。業者を見極める目も持つ必要があるという。「会社の経営状況や事業手法、営業マンの対応など、情報収集は可能なはず。アパート建設でもマンション投資でも、長期のローンを組んで大きなリスクを背負うのですから、パートナーとなる業者は慎重に選ばねばなりません」

例えばかぼちゃの馬車のケースでは、融資審査を通すためにオーナーの金融資産改竄などの不正行為が行われていたとみられている。「そういった常識では考えられないことを営業マンが持ちかけるような会社は完全にアウト。オーナーに有利な計らいでも絶対に受け入れたらダメです」

また、スマートデイズのように、サブリース業者が経営破綻してしまったら元も子もない。会社の財務状況などに目を光らせ、継続性も読まなければならない。「サブリース業者との付き合いは30年や35年にも渡ります。それだけ長い間、その会社が続くかどうかを見極めるのは難しいですが、少なからず業績はチェックすべきです。きちんと利益を上げているか、赤字に陥っていないか。中小のサブリース業者が増えているので、財務諸表のチェックは欠かせません」

4.トラブルには調停や仲裁も活用

サブリース契約後のトラブルで多いのが家賃の減額請求だが、これには安易に応じてはならない。「サブリース業者の営業マンは多数のオーナーを抱えている。その中で、減額を強気に拒否する人は避け、落としやすい人を攻める傾向が強い」と大谷氏は言う。

減額請求を受けて困ったら、第三者機関に相談することが望ましい。「相談していることを業者に話すことで、相手にプレッシャーをかけられる効果もあります」。不当な減額請求は最終的に裁判で争うことになるが、裁判には多額な費用がかかり、業者との関係修復も困難になる。「裁判の前に、調停や仲裁などのADR(裁判外紛争解決手続き)を選択することも視野に入れるべきでしょう」

サブリースに関するトラブルが多発していることを受け、国交省は今年3月、サブリース契約の相談事例や契約時の注意点などに関する文書を公表。サブリースを含め賃貸住宅管理業の順守すべきルールを設けた「賃貸住宅管理業者登録制度」の認知度向上を進めるなど、トラブル防止に本腰を入れている。

さまざまな問題が表面化しているサブリースだが、最終的には投資を決断したオーナーの自己責任という面は否めない。しかし、契約書の内容が簡単に反故にされるようなケースが横行している現状では、トラブルを未然に防ぐために制度設計自体の見直しが必要という声もある。オーナー側、業者側の双方にとって正しい形のサブリースとは何なのか、考えるべき時に来ているのかもしれない。

(楽待新聞編集部)