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すべての建物はまず骨組みからつくられ、その後、表面にさまざまな材料が張り付けられて完成する。最終的に建物の内側は隠れてしまうため、私たちの目に見える部分は表面に過ぎない。

物件の購入時、見えない部分に目を向ける人は多くないかもしれない。しかし、内部がどうなっているのかを知っておけば、維持・修繕に想定以上の費用がかかることを防げるし、どの程度のリフォームが可能なのかの判断基準になる。

本記事では、普段は目に見えない床や壁、天井の内部を解き明かしていきたい。解説は可能な限り写真・イラストでビジュアル化しているので、専門知識がなくともスムーズに読み進められるはずだ。

目に見えるのは「仕上げ」だけ

前提として建物を構成する物理的な要素は、大きく「躯体」「設備」「下地」「仕上げ」の4つに分類できる。

躯体(くたい):柱や梁、基礎といった建物の骨組みのこと。建物の性能上最も重要な部分。リノベーションなどのために内装をすべてはがし、躯体がむき出しになった状態は「スケルトン」と呼ばれる。RC造の躯体のつくり方には、柱や梁が構造を支える「ラーメン構造」、壁が構造を支える「壁式構造」がある(両者の違いについては後述)。「構造体」、あるいは単に「構造」とも呼ばれる。

設備:マンションにおいては、電気、ガス、給排水、換気などに関係する部分のこと。建物に住む人が空気や火、水、電気を使えるようにするためのものと考えると分かりやすい。エアコンや便器、換気扇など目に見える部分だけでなく、これらの機器を使うための各種配管など、人の目に触れない部分も設備に当たる。

仕上げ(材):建物のうち、表面にあって人目に触れる部分。床であればフローリングやクッションフロア、壁・天井であればクロス(壁紙)や塗装が仕上げ材にあたる。外部では屋根の瓦、外壁のサイディングなども仕上げ材だ。

下地(材):仕上げ材を張るためのベースとなる部分。基本的に仕上げと下地はセットで必要となる。下地と仕上げには相性があり、どんな仕上げにするかによって下地も変わってくる。

ほとんどのマンションやアパートで使われている下地材といえば「石膏ボード」。石膏を紙で包んだ板状の建材で、防火、防音、遮音性を備える。この上からクロスや塗装などの仕上げが施工される。加工しやすいが衝撃や荷重には強くないので、壁や天井の下地が主な用途

これらのうち、私たちがふだん目にしているのは「仕上げ」の部分だけだ。では、目に見えない躯体、設備、下地はどのように成立しているのだろうか。RC造マンションの一室を例に見ていこう。

床の構成は主に3種類

まずは「床」の構成から。

RC造や鉄骨造マンションの場合、どんな物件であっても床の最下層にあるのは「スラブ」と呼ばれるコンクリートの床である。スラブは地震など水平の力に対抗する役割ももっており、先述の分類では躯体に当たる。

スラブと床の仕上げ材の間がどうなっているかは物件によって異なる。その構成は大きく「直張り」「転ばし床」「置き床」の3種類だ。床がどの構成になっているかで、リフォームのコストや自由度が変わってくる。以降で、それぞれの違いを紹介する。

■スラブの上に直接仕上げる「直張り」

下地を省略し、フローリングなどの仕上げ材をスラブに直接張る方法。最近の新築マンションではあまり採用されておらず、主に築15~30年程度の中古マンションに多く見られる。下地材が省略されるため、施工費の目安は1.3万円/平方メートル程度と建築コストが安い点が最大のメリット。また床の厚みが減る分、天井が高く取れる。

ただし、デメリットも多い。まずスラブに直接仕上げ材が張られているため、そのままでは階下に音が響きやすい。そこで直張りに使われるフローリングには、裏面に緩衝材が付けられた製品が用いられるのが通常だ。

しかしこの緩衝材がスラブに張り付いてしまい、張り替えをする場合は手間がかかるほか、廃材が出るためコストもかかる。張り替えをせず既存の床をはがさずに重ね張りする方法もあるが、他の部屋の床と段差ができてしまうなど、不具合が生じることは覚えておきたい。

直張りに使われる緩衝材付きのフローリング。断面の下半分、グレーの部分がスポンジ状になっており遮音材の役割を果たす

このように接着剤で施工できるため手間はかからないが、張り替え時にはがすのは難しい

また、スラブの表面は厳密に水平にすることが難しく、そのままフローリングを直張りすると床が波を打ってしまうこともある。そこで、「ならしモルタル」と呼ばれる材料で平らな面をつくり、その上にフローリングを張って凹凸をなくす方法がある。ならしモルタルを施工する場合、施工費は目安として平米単価で3千円程度のプラスとなる。

フローリングを張る前に、スラブに「ならしモルタル」を施工した状態。スラブの表面には凹凸があるが、そこに液状のならしモルタルを流すことで表面が平滑になり、施工精度が高まる

物件の床が直張りであるかどうかを簡単に確認する方法として、床の上で足踏みしてみるという方法がある。直張りの場合、フローリングの下に空洞がないので鈍く重い音がするはずだ。また、玄関の土間部分と室内の床にほとんど段差がない場合は直張りである可能性が高い。

現在の新築物件では「置き床」が主流

■スラブと仕上げの間に木材を挟む「転ばし床」

転ばし床は、床スラブの上に「転ばし根太(ねだ)」または「大引(おおびき)」と呼ばれる木材で下地をつくり、その上にフローリングなどを固定する方法。こちらも現在の新築マンションではあまり採用されておらず、築30年程度を経過した中古マンションなどで見られる。

木材を挟むことで、玄関土間と室内床との間には数十ミリ〜100ミリ程度の段差ができる。床スラブの凹凸を木材で吸収できるほか、根太の間に断熱材を入れることができるので防音性が高まる点がメリットだ。また、居住者にとっては足裏から伝わる踏み心地が柔らかくなる。

スラブとの間に空間ができるため、直張りとは違い床下に通す配管の融通も多少は効く。他に、性能をより高めるために、根太と仕上げ材の間に防音材や防振材を挟み込む「浮き床工法」と呼ばれるつくり方もある。

スラブの上に木材を置き、この上にフローリングを固定していく。スラブと仕上げの間に空間ができるため、細いものであれば配管や配線を通すことができる

■現在の主流は支持脚を使った「置き床」

現在の新築マンションで主流となっているのがこの「置き床」。二重床とも呼ばれる。スラブの上に支持脚(支柱)を立て、パーティクルボード(小さくした木片を接着剤と混合して成形した板)などのパネルで平らな下地をつくり、その上に床仕上げ材を固定する方法である。

支柱はボルトになっており、回すことで床の高さを調節できるほか、支持脚にはゴムなどの緩衝材が取り付けられているので、床の衝撃音を和らげる働きもする。

隙間に配線や配管を通すことができるので、フローリングの張り替えやメンテナンス、リフォームがしやすい。施工費の目安は1.6~1.7万円/平方メートル程度と直張りに比べて手間やコストはかかるが、性能面やメンテナンス面の配慮から、現在の分譲マンションではこの置き床が主流になっている。

スラブと仕上げ材の間に空間ができる「置き床」。この空間を利用して給排水管を通すことができる。リフォームもしやすく、現在主流の工法

水まわりの移動を伴うリフォームはなぜ難しい?

トイレや洗面所、浴室の部分の床が、廊下や居室よりも一段高くなっているマンションは多い。これは、汚水管や排水管を床下に納めるためだ。

一般的なRC造マンションの洗面室。フローリングの床より一段高くなっているのは、床の下に給排水管が横方向に通っているためだ

マンションの部屋には通常、パイプスペース(PS)と呼ばれる空間がある。図面に「PS」と書かれているのを目にした事がある人も多いことだろう。このPSはマンションの住戸を縦方向に貫通している。1つの部屋内の排水は床下を通り、PSめがけて流れるようにできている。

つまり、スラブと仕上げ(フローリングなど)のすき間に、汚水管や排水管を横方向に通し、それをPSにつなげる必要がある。また排水がスムーズになるよう、配管には一定の角度(勾配)を付ける必要がある。そのため、スラブから仕上げまでの間に150〜200ミリのスペースを設けているマンションがほとんどだ。

間取りの刷新を伴う大掛かりなリフォームでは、水まわりの位置変更を検討することもあるかもしれない。しかし、前述のように所定の勾配をとりながら汚水管や排水管を納める必要がある。床下に隙間のな直床や転ばし床では、こうしたリフォームは困難だ。どうしてもという場合は床を上げて対応するが、汚水管や排水管があまり長くなると、汚物が流れにくくなるなどの不具合につながるリスクは増えることを覚えておきたい。

壁が構造を負担するか否かで、間取りは影響を受ける

次に、マンションの「壁」の内部について見ていこう。まず、マンションの壁には大きく分けて次の3種類がある。

外周壁:外部に接する壁、いわゆる外壁のこと

界壁(戸境壁):隣り合う住戸同士で共有する、各戸を区切る壁のこと

間仕切り壁:1住戸の中で部屋同士を仕切る壁のこと

RC造の場合、このうち鉄筋コンクリートでつくられるのは外周壁と界壁だ。間仕切り壁はLGSと呼ばれる軽量鉄骨、あるいは木材で下地がつくられ、その上に石膏ボードを張り、仕上げが施される。この間仕切り壁は躯体に当たらないため、撤去や移動が可能だ。

間仕切り壁、天井の下地施工後の様子。銀色の材料がLGS。縦方向のLGSは「スタッド」、横方向のものは「ランナー」と呼ばれる

間仕切り壁の下地にはLGSが使われる事が多いが、これは木材よりも軽量で変形が起こりにくいためだ(木材は乾燥によって収縮・変形することがある)。

ただしLGSの施工は通常、大工ではなく内装工など専門の職人が行う。別の工事などで現場に大工が入っている場合は、大工に依頼してLGSではなく木材で下地をつくることで、コストや工期を短縮できるケースもある。

ラーメン構造と壁式構造で壁の役割は異なる

RC造のマンションでは、主要な構造が柱と梁の「ラーメン構造」が主流だが、5階以下の低層マンションでは、壁で構造をもたせる「壁式構造」もある。

ラーメン構造のラーメンとは、ドイツ語で「枠、フレーム」のこと。その名の通り、柱や梁を互いに動かないように接合(構造用語で「剛接合」という)して強固な枠をつくり、地震など水平方向への力に対抗する。

柱と梁によるフレームで構造が完結するので、壁の部分が自由に使え、大きな窓もつくりやすい。一方、耐力を出すために柱や梁が大きくなるため、これが室内に表れるというデメリットもある。

ラーメン構造のRCマンションの室内。天井側にある出っ張りが「梁」、コーナーにある出っ張りが「柱」。このように躯体が室内に表れるのがラーメン構造の特徴だ (写真© maru54-Fotolia)

一方の壁式構造は、柱と梁ではなく面(=耐力壁)で建物を支えるというもの。地震で建物に水平の力が加わった際、壁が「筋かい」のような役割を果たす構造だ。

壁式構造では、柱型や梁型が室内に出てこないので部屋がすっきりとし、家具の配置もしやすい。また、もともと低層なので、ラーメン構造に比べると一般的には地震に対して揺れにくいと言える。

しかし、界壁のほか間仕切り壁にも躯体の役割を持たせていることが多く、この壁は取り除くことができない。そのため、間取り変更を伴う大掛かりなリフォームは不可能なことがある。

仮に構造に影響がないとしても、外周壁や界壁はマンション全体の共有部分であるため、勝手に穴を開けたり、壁を削って窓を大きくすることはできない。部屋にエアコンを設置したいときも同様だ。外周壁に室外機とつながる配管を通す穴(スリーブ)が開いていない場合、管理組合に穴を開けてよいかどうかの確認をとる必要があり、マンションによっては認められない場合がある。

天井は「空洞あり」と「空洞なし」の2種類

最後に天井の内部について見ていこう。

天井は、上下階(最上階住戸の場合は外部)を隔てるスラブから天井材を吊って仕上げる「二重天井」と、床スラブに直接仕上げ材を張る「直張り天井」の2種類がある。

二重天井では、上階のスラブにボルトを打ち込み、「野縁(のぶち)」「野縁受け」と呼ばれる格子状の下地を吊り下げる。野縁の下側に石膏ボードを張り、その上にクロスなどの仕上げが施される。二重天井であれば、空いたスペースに梁を隠すことができ、配線や配管もここに通すことができる。

二重天井の下地の例。写真のように木材でつくられることもあるが、現在はLGSを使うのが主流

一方、直張り天井の場合、床スラブの下面に直接クロスなどの仕上げを施す(下地として石膏ボードを張る場合もある)。天井を高くできるが、配管や配線を通すことはできない。リフォーム時に照明器具の位置を動かすことも難しくなる。また、居室では直張り天井とされていても、キッチンや浴室などでは排気などの配管を通す必要があるため、部分的に二重天井とされているマンションも多い。

なお、天井のスラブに壁紙を直張りとした場合、結露による問題が生じる点も覚えておきたい。スラブは躯体とつながっており、冬季になれば外気が伝わって冷える。そうなれば室内とスラブとの温度差で結露が生じ、壁紙が濡れることではがれやすくなる。

古いマンションでは上階の配管が天井裏にあることも

建築年が昭和40年代など古いマンションでは、上階の住戸の配管が下階住戸の天井裏に回っていることがある。

上階の配管が下階の天井裏に隠れている例

こうした天井はリフォームの自由度が下がるため注意が必要だ。

古いマンションでは天井高が低く抑えられていることが多く、リフォームでは二重天井を取り払って「天井を上げる」ことも多い。このとき、上階の住戸の配管が床スラブを貫通して下階の住戸に現れていると、上階がトイレなどの排水をするときに下階の住戸に音が響き渡って不快な思いをすることになる。

物件の内見時、天井裏に点検口が設けられている場合は、脚立と懐中電灯を持参して天井裏をチェックし、配管の有無を確認したほうがいいだろう。

天井裏に限らず、古いマンションでは工事に入って仕上げを剥がしてから初めて明らかになることもあることは致し方ない。傷みの激しい配管を一部交換する、出てきた配管を再び二重天井で隠すなど、予期せぬ追加工事が発生することも見越して、リフォーム時には金額や工期の余裕を見ておきたい。

ここまでRC造マンションの一室を例に、目には見えない「内側」を紹介した。こうした知識は不動産投資にすぐに役立つものではないかもしれないが、冒頭で述べたようにリフォームの可否判断や物件の性能見極めには大いに役立つはずだ。

不動産投資の「主役」である建物の見えざる部分を知ることは、長い目で見れば強力な武器となるのではないだろうか。

○取材協力・写真提供/リフォーム工房 アントレ(http://entrez.jp

(楽待新聞編集部/加藤純)