トイレや洗面所、浴室の部分の床が、廊下や居室よりも一段高くなっているマンションは多い。これは、汚水管や排水管を床下に納めるためだ。

一般的なRC造マンションの洗面室。フローリングの床より一段高くなっているのは、床の下に給排水管が横方向に通っているためだ

マンションの部屋には通常、パイプスペース(PS)と呼ばれる空間がある。図面に「PS」と書かれているのを目にした事がある人も多いことだろう。このPSはマンションの住戸を縦方向に貫通している。1つの部屋内の排水は床下を通り、PSめがけて流れるようにできている。

つまり、スラブと仕上げ(フローリングなど)のすき間に、汚水管や排水管を横方向に通し、それをPSにつなげる必要がある。また排水がスムーズになるよう、配管には一定の角度(勾配)を付ける必要がある。そのため、スラブから仕上げまでの間に150〜200ミリのスペースを設けているマンションがほとんどだ。

間取りの刷新を伴う大掛かりなリフォームでは、水まわりの位置変更を検討することもあるかもしれない。しかし、前述のように所定の勾配をとりながら汚水管や排水管を納める必要がある。床下に隙間のな直床や転ばし床では、こうしたリフォームは困難だ。どうしてもという場合は床を上げて対応するが、汚水管や排水管があまり長くなると、汚物が流れにくくなるなどの不具合につながるリスクは増えることを覚えておきたい。

壁が構造を負担するか否かで、間取りは影響を受ける

次に、マンションの「壁」の内部について見ていこう。まず、マンションの壁には大きく分けて次の3種類がある。

外周壁:外部に接する壁、いわゆる外壁のこと

界壁(戸境壁):隣り合う住戸同士で共有する、各戸を区切る壁のこと

間仕切り壁:1住戸の中で部屋同士を仕切る壁のこと

RC造の場合、このうち鉄筋コンクリートでつくられるのは外周壁と界壁だ。間仕切り壁はLGSと呼ばれる軽量鉄骨、あるいは木材で下地がつくられ、その上に石膏ボードを張り、仕上げが施される。この間仕切り壁は躯体に当たらないため、撤去や移動が可能だ。

間仕切り壁、天井の下地施工後の様子。銀色の材料がLGS。縦方向のLGSは「スタッド」、横方向のものは「ランナー」と呼ばれる

間仕切り壁の下地にはLGSが使われる事が多いが、これは木材よりも軽量で変形が起こりにくいためだ(木材は乾燥によって収縮・変形することがある)。

ただしLGSの施工は通常、大工ではなく内装工など専門の職人が行う。別の工事などで現場に大工が入っている場合は、大工に依頼してLGSではなく木材で下地をつくることで、コストや工期を短縮できるケースもある。

ラーメン構造と壁式構造で壁の役割は異なる

RC造のマンションでは、主要な構造が柱と梁の「ラーメン構造」が主流だが、5階以下の低層マンションでは、壁で構造をもたせる「壁式構造」もある。

ラーメン構造のラーメンとは、ドイツ語で「枠、フレーム」のこと。その名の通り、柱や梁を互いに動かないように接合(構造用語で「剛接合」という)して強固な枠をつくり、地震など水平方向への力に対抗する。

柱と梁によるフレームで構造が完結するので、壁の部分が自由に使え、大きな窓もつくりやすい。一方、耐力を出すために柱や梁が大きくなるため、これが室内に表れるというデメリットもある。

ラーメン構造のRCマンションの室内。天井側にある出っ張りが「梁」、コーナーにある出っ張りが「柱」。このように躯体が室内に表れるのがラーメン構造の特徴だ (写真© maru54-Fotolia)

一方の壁式構造は、柱と梁ではなく面(=耐力壁)で建物を支えるというもの。地震で建物に水平の力が加わった際、壁が「筋かい」のような役割を果たす構造だ。

壁式構造では、柱型や梁型が室内に出てこないので部屋がすっきりとし、家具の配置もしやすい。また、もともと低層なので、ラーメン構造に比べると一般的には地震に対して揺れにくいと言える。

しかし、界壁のほか間仕切り壁にも躯体の役割を持たせていることが多く、この壁は取り除くことができない。そのため、間取り変更を伴う大掛かりなリフォームは不可能なことがある。

仮に構造に影響がないとしても、外周壁や界壁はマンション全体の共有部分であるため、勝手に穴を開けたり、壁を削って窓を大きくすることはできない。部屋にエアコンを設置したいときも同様だ。外周壁に室外機とつながる配管を通す穴(スリーブ)が開いていない場合、管理組合に穴を開けてよいかどうかの確認をとる必要があり、マンションによっては認められない場合がある。

天井は「空洞あり」と「空洞なし」の2種類

最後に天井の内部について見ていこう。

天井は、上下階(最上階住戸の場合は外部)を隔てるスラブから天井材を吊って仕上げる「二重天井」と、床スラブに直接仕上げ材を張る「直張り天井」の2種類がある。

二重天井では、上階のスラブにボルトを打ち込み、「野縁(のぶち)」「野縁受け」と呼ばれる格子状の下地を吊り下げる。野縁の下側に石膏ボードを張り、その上にクロスなどの仕上げが施される。二重天井であれば、空いたスペースに梁を隠すことができ、配線や配管もここに通すことができる。

二重天井の下地の例。写真のように木材でつくられることもあるが、現在はLGSを使うのが主流

一方、直張り天井の場合、床スラブの下面に直接クロスなどの仕上げを施す(下地として石膏ボードを張る場合もある)。天井を高くできるが、配管や配線を通すことはできない。リフォーム時に照明器具の位置を動かすことも難しくなる。また、居室では直張り天井とされていても、キッチンや浴室などでは排気などの配管を通す必要があるため、部分的に二重天井とされているマンションも多い。

なお、天井のスラブに壁紙を直張りとした場合、結露による問題が生じる点も覚えておきたい。スラブは躯体とつながっており、冬季になれば外気が伝わって冷える。そうなれば室内とスラブとの温度差で結露が生じ、壁紙が濡れることではがれやすくなる。

古いマンションでは上階の配管が天井裏にあることも

建築年が昭和40年代など古いマンションでは、上階の住戸の配管が下階住戸の天井裏に回っていることがある。

上階の配管が下階の天井裏に隠れている例

こうした天井はリフォームの自由度が下がるため注意が必要だ。

古いマンションでは天井高が低く抑えられていることが多く、リフォームでは二重天井を取り払って「天井を上げる」ことも多い。このとき、上階の住戸の配管が床スラブを貫通して下階の住戸に現れていると、上階がトイレなどの排水をするときに下階の住戸に音が響き渡って不快な思いをすることになる。

物件の内見時、天井裏に点検口が設けられている場合は、脚立と懐中電灯を持参して天井裏をチェックし、配管の有無を確認したほうがいいだろう。

天井裏に限らず、古いマンションでは工事に入って仕上げを剥がしてから初めて明らかになることもあることは致し方ない。傷みの激しい配管を一部交換する、出てきた配管を再び二重天井で隠すなど、予期せぬ追加工事が発生することも見越して、リフォーム時には金額や工期の余裕を見ておきたい。

ここまでRC造マンションの一室を例に、目には見えない「内側」を紹介した。こうした知識は不動産投資にすぐに役立つものではないかもしれないが、冒頭で述べたようにリフォームの可否判断や物件の性能見極めには大いに役立つはずだ。

不動産投資の「主役」である建物の見えざる部分を知ることは、長い目で見れば強力な武器となるのではないだろうか。

○取材協力・写真提供/リフォーム工房 アントレ(http://entrez.jp

(楽待新聞編集部/加藤純)