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梅雨時期は雨の日が多いのですが、晴れた日は日差しが強く、屋外に出ると刺すような日差しを浴びてしまいます。建設業に携わる者としては過酷な季節がやってきてしまいました。最近ではオゾン層の破壊などから紫外線の影響が懸念されていますが、私の子供時代には夏の間にどれだけ日焼けしたのか評価され、日焼け具合を競うなどというイベントがありました。現代にこんなイベントを行えば大変なことになりそうですね。

さて、今回は「火災に強い構造」がテーマです。

世の中で怖いものといえば、「地震」「雷」「火事」「オヤジ」とよく言われます。地震や雷は自然災害であるので対策は難しいですが、オヤジは人災ですので対策も講じやすいのではないでしょうか。

もっとも、火事について言えば天災よりも圧倒的に「人災」が多いのです。人災である以上は、万が一火災が発生してもその被害程度はある程度予測もできます。人間の知恵や努力で被害を抑えることも可能なのです。

というわけで、今回は「もし物件が火災に見舞われたら」という観点から、建物と火災について触れてみたいと思います。オヤジ災害については……また別の機会にしましょう。

火災件数は激減している

近年では建物の火災件数は減ってきています。総務省消防庁のデータによると、日本で発生した昨年の火災件数は36831件であり、10年前と比較して16445件も減少しています。これは建物が燃えにくくなっているといってもよいのではないでしょうか。

出火件数と建物焼損床面積の推移(総務省消防庁 『平成29年版 消防白書』より一部抜粋)※クリックで拡大できます

近年では、建築基準法をはじめとする法律や条令により、建築物の仕様について規定が厳しくなっています。建築物に使用される建材について燃えにくいもの、または燃えないものの使用を義務付けるなど、多くの制限や禁止事項が盛り込まれています。

さらに、データによれば焼損面積も年々減少していることから、万が一火災が発生してもその火は燃え広がらない、一部分が燃えても他の部屋へは燃え広がらないとか、隣家に燃え移らないようになっているということがわかります。

火災の怖いところは火が方々に燃え広がることですので、被害を狭い範囲にとどめるということは非常に大きな意味を持ちます。

火災原因の1位は…

ところで、火災の発生原因として一番多いものは何かご存知でしょうか。

タバコ? コンロ? いいえ、違います。

実は「放火」なんですね。

出火原因数(総務省消防庁 『平成29年版 消防白書』より一部抜粋)※クリックで拡大できます

平成28年の総務省消防庁のデータによると、原因の2位はタバコ関連で3483件、3位がコンロ関連で3136件です。

一方、放火は3586件と最も多く、「放火の疑い」まで含めるとなんと5814件となり、2位のタバコを引き離してぶっちぎりの1位となります。

恐ろしいですね!

放火の被害に遭わないためにも、放火魔から見て燃えにくそうな建物にすることが対策になるかもしれません。

燃えにくい構造とは?

では、火災が発生しにくい建物構造はどれなのでしょうか。普通に考えれば、燃えにくい建材を多く使っている建物ということになります。これは当たり前ですね。

逆に燃えやすい建材といえば、多くの人が「木」を真っ先に思い浮かべるでしょう。躯体に木を使った木造建築は、ご想像の通り火災に強いとは言えません。

ただ、集合住宅に供される建築物では、木造建築であっても表面に「木」が剥き出しになっている物件は少ないでしょう。躯体は木でつくられていたとしても、外壁は不燃のサイディングや金属板で覆われている建物がほとんどです。

そして内壁についても、大抵の場合は下地として石膏ボード等が張られています。こうした建材は基本的に燃えませんので、火を近付けても火災にはなりにくいのです。ただし、周囲の可燃物が勢いよく燃えた場合には躯体である木に熱が伝わり、建物全体の火災へと発展していきます

では、鉄骨造やRC造はどうでしょう。鉄やコンクリートは、基本的に燃えません。そのため、躯体そのものが火をあげて燃えるという火災は起こりません。ただ、内装材に可燃材を使っている場合や、建物内に可燃物が多くあれば火災につながります。

特に注意したい構造は鉄骨造です。鉄骨造は文字通り、躯体が鉄骨でできているため熱には弱いと言えます。燃えることはないのですが、鉄骨が熱せられた場合、その強度は大きく下がります。具体的には、摂氏600℃程度になると強度が半減してしまいます。さらに温度が上がれば飴のような状態になり、ぐにゃりと曲がってしまうのです。

実際の火災では600℃以上の温度に達しますので、生身の鉄骨は火災に耐えられないことになります。そこで、鉄骨材には「耐火被覆」という処理を行うのです。鉄骨材にロックウールという不燃材を吹き付けて、火災の熱から鉄骨を保護します。

ただし、火災時の温度によっては耐火被覆も完璧ではありません。実際、火事でその熱が1000℃に達すると鉄骨造や木造では即倒壊となるようです。かたやRC造であれば、2時間程度は持ちこたえると言われます。ただ、RC造においても大きな火災で燃えたり壊れたりすることは少ないものの、熱によって構造が脆くなる場合があることは付け加えておきます。

本当に怖いのは「延焼」

火災で本当に怖いことは延焼による被害かもしれません。広大な敷地で1つの建物が燃えた場合、最悪、その建物が燃え尽きてしまえばそれで終わりです。しかし建物が複数あり、その間隔が狭く、燃えやすい建物が多い場合、一度火災が発生すれば被害は広範囲に及んでしまいます。

記憶に新しいところでは、2016年12月に新潟県で発生した糸魚川大火災があります。この火災は一軒のラーメン店が火元となり、周囲に燃え広がりました。147棟が焼け、延焼した範囲はおよそ4万平方メートルに達したそうです。

大きな火災となった原因は、周囲に木造家屋が多かったこと、建物が密集していたこと、火災当時の風が強かったことなどが挙げられます。この火災で注目すべきことは、火災に見舞われた地域でも耐火構造の建物は大きな被害にならなかったということです。材料が木であっても、建物を耐火構造にすれば防火になるのです。

そしてもう1つ注目すべき点は、建物どうしの間隔が狭かったことです。

建物間の道路は幅1メートル程度のところもあり、一般的には再建築不可とされる建物も多くありました。こうした建物密着地域では延焼によるもらい火の被害に遭ってしまううえに、消防活動時に有効に使える道路がないということになるのです。

延焼による被害は深刻です。しかし、現法に則った形での建築が進めば糸魚川大火災のような大火は減るでしょう。現法では基本的に幅4メートル以上の道路に接していなければ建築はできません。隣地との境界線から1階に関しては3メートル、2階以上では5メートル離れていない場合、その外壁は防火のための対策を行わなければなりません。

このような現法で建てられた建築物であれば例え強風時に火事が発生しても、広範囲に及ぶ大火に至ることは少なくなっていくと思われます。また、住宅密集地や商業地域では防火地域なども設定されており、そういった地域では建物構造も耐火性能を有した建築物等としなければなりませんので、火災に強い地域となるでしょう。

木造は火災に弱いと言われますが、実際には木材は表面が燃えた後、内部までは燃えにくい性質があります。そのため火災規模によっては、木材の芯の部分が燃えずに残り、意外に倒壊しにくい構造なのです。対して鉄骨造は前述したように著しく強度が落ちますので、倒壊の危険はむしろ木造よりも大きいのかもしれません。一概にどの構造が火災に強いのかという判断は難しいと言えます。

耐火建築物はコストがかかる!

火災に強くしたいなら耐火建築物にすれば良いではないか! と思われる方もいるでしょう。それはその通りです。全ての建物を耐火建築物にすれば火事の被害は大幅に減少するでしょう。しかし、そのためには費用もかかります。ここが問題になってくるのです。

住宅密集地などの防火地域で賃貸集合住宅を建てる場合、こうした地域は賃貸需要も多いので家賃も高めに設定できます。収益が上がるのであれば耐火建築物で多少建物に費用がかかっても仕方ないという考え方もあります。しかし、防火地域ではない地域であえて費用の増大する耐火建築物を選択する投資家は少ないでしょう。こうした理由から、全ての建物を耐火建築物にするのは難しいと考えます。

自分だけが気をつけていても、火災による「延焼」リスクは排除できません。また賃貸物件では、入居者の火の不始末まで管理することはできません。火災はどのような形で発生するのかわかりませんので、やはり火災保険にしっかりと加入しておくことが最大の対策となりそうです。

(戸田 匠)