PHOTO: iStock.com/kieferpix

最近、某不動産会社・某金融機関による、サブリース、家賃保証トラブルが社会問題にまで発展しています。

某不動産会社は事実上倒産。計画倒産ではないかという声も聞こえてきます。某金融機関は、本件シェアハウススキームから撤退しました。

私も遭った家賃保証トラブル…恥を忍んで御紹介

私もこれまで、何度か書類偽造・サブリース家賃保証トラブルに遭遇してきました。

同じような被害者が出ないよう、敢えて、恥を忍んで、そのときの状況を御紹介します。

今から32年前の1986年(当時28歳)、私は東京・東長崎に新築区分所有マンションを購入し、不動産経営を開始しました。

その後は中古区分マンションにシフトし、上北沢・博多・千歳烏山・初台と買っていきました。

これらの設計・施工・販売・建物管理・賃貸管理は、すべてA社によるものでした。

東長崎・上北沢・博多の物件については、サブリース・家賃保証にしていました。契約更新毎に5%ずつ家賃アップ、という謳い文句でした。

A社はその後、リゾートや海外不動産・絵画などにまで手を広げていましたが、1990年、平成バブルが崩壊すると、そのあおりを受けて倒産してしまうのです。

どんどん条件が悪くなり…

とはいえ、色々な会社に事業譲渡・吸収合併等されながらも、しばらくは区分所有マンションの管理業務のみを細々と継続していました。しかしその間、契約更新毎に数千円ずつ、私の物件の家賃は下げられていきました。更には、家賃が当月払いから翌月払いになり、振込手数料が受取人負担になり…と、どんどん条件が悪くなっていきました。

修理やリフォームも、原則として割高なA社の仕様に沿って行わなければなりません。従わなければ契約打ち切りです。

他にもこんなエピソードがあります。ある日、エアコンが壊れたのでまとめて5室分交換してもらったことがありました。しかし、その直後にA社は定額制の修理・リフォームプランを始めました。毎月定額を払えば、その都度の修理・リフォーム費用は不要というプランです。「早く言ってよ」って感じです。

ところがそのプランも、いざ始まってみると実際にはあれも駄目、これも駄目。ほとんどの修理やリフォームが例外で、その度に追加でお金を取られていました。

結局、この物件はまだ持ち続けていますが、こういったこともあったのです。

これは別の物件の話になりますが、以前、札幌・ひばりが丘駅そばの中古区分所有マンションを購入しました。

この物件は、設計・施工・販売・建物管理・賃貸管理まで、一切をB社が請け負っていました。管理組合はありませんでした。

しばらくは順調だったのですが、やがて不景気を理由に家賃の値下げ要求が来たり、滞納が始まったりしました。

当然私からも連絡をしましたが、「社長が不在だ」「体調不良だ」等と言って、なかなか解決しません。宅地建物取引協会に相談してB社に連絡を入れてもらうと、一時的には入金があるものの、またすぐに滞納が始まりました。

その後、結局は夜逃げ・倒産母さんという結果に。このままでは滞納した家賃が回収できません。

そこで、札幌の別の管理会社C社にお願いしてB社の残影を探してもらいつつ、今後の家賃は私に直接払ってもらう旨、一筆を書いてもらったうえで、入居者の方に事情説明、今後の家賃を保全しました。

結局ある程度の家賃は回収できましたが、敷金や過去の家賃の一部は回収不能でした。額としては10万円ほどです。少額のため、訴訟をしてもペイできないと思い、そのままにしてあります。

その区分マンションは現在、C社の社員の方に買戻し特約付きで譲渡しています。管理組合を立ち上げるためには所有者でなくてはならなかったので、いずれ買い戻すつもりの、形だけの譲渡です。

そのC社社員の方が他の所有者に呼びかけて管理組合を立ち上げ、建物・賃貸管理会社をC社に変更してもらい、その後の運営が軌道に乗るようになりました。

融資ドタキャン、訴訟で6000万円の損失

冒頭の某金融機関についても融資資料の改ざんが問題となっていますが、私の場合は、某金融機関から融資正式承認を得て「金銭消費貸借契約」を締結、白紙解約期限が経過した後の融資実行・決済の1営業日前になって、特段の理由もなく融資ドタキャンを食らってしまいました(詳しくはこちらこちらのコラムに書いています)。

裁判でも争いましたが、そのせいで、手付金不返還、違約金(2割)、仲介手数料、更には弁護士費用・裁判費用・遅延金利(年6%)等で、6000万円の損失です。

本件事件後8カ月経ってから、某金融機関・某金融機関のお抱えコンサルティング会社は、私の知らないうちに「手付金領収書」「重要事項説明書」「売買契約書」等をコピーの上、金額を多めに改竄し利用していたことも判明しました。そして、それをこちらのせいにしてきました。

トラブルから得た教訓

以下は、こうしたトラブルを経験してきた私自身の反省の意味も込めての教訓です。

●何事も時間に余裕を持たせて、焦らない。

信頼できる不動産会社・金融機関を選ぶ。
(業歴の浅い会社、管理中心で売買に慣れていない会社、焦らせる不動産会社や金融機関、シミュレーションの甘い会社、他人物売買・中間省略登記・三為業者・役員従業員を売買に入れてくる会社、また、高金利の金融機関は要注意)

●優良なエリア・物件を選ぶ。

●サブリース家賃保証が無くても運営できる物件を選ぶ。

●近隣の家賃相場を調べておく。

●不動産会社のシミュレーションは、甘いものと考えておく。
(不動産取得税、固定資産税、都市計画税、空室、家賃値下げ、金利上昇等も考慮しているか?)

●「預貯金通帳」「手付金領収書」「重要事項説明書」「売買契約書」等は、原本(コピーではなく)を金融機関宛に、(不動産会社経由ではなく)直接手渡す。

●重要な事(手付金・売買金額・白紙解約期限・決済日、融資金額・期間・金利等)については口頭だけではなく、書類・電子メール・音声録音等を残しておく。

●金融機関では担当者のみとではなく、上司等、複数と会う。

そして最後は自己責任であり、いざトラブっても、警察・消費者庁・宅地建物取引協会・金融庁・裁判所等、誰も助けてはくれないと覚悟しておくことが大切です。

(加藤隆)