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米軍基地の周辺には、「軍関係者向け」という特殊な賃貸需要が存在する。基地内にも住居は用意されているが、その数が十分でないなどの理由から、基地外で一般のマンションや戸建物件を借り、軍関係者が住まいとして利用するケースがあるのだ。

こうした米軍向け賃貸物件は相場よりも家賃が高く設定でき、また入居率も高いと言われる。果たして真偽のほどはどうなのか。米軍向け物件を扱う不動産会社と、実際に物件を所有する投資家に話を聞いた。

横須賀だけで1万人以上の入居者候補

首都圏で最も米軍基地数が多い神奈川県。なかでも海軍施設がある横須賀市には多くの軍関係者が居住している。市のWebサイトによると、市内居住の軍人はおよそ8000人、その家族なども合わせると1万人以上にのぼる。これはそのまま、米軍向け賃貸物件の入居者候補と言い換えることができそうだ。

魅力はこれだけではない。横須賀市に店舗を構える不動産会社によると「通常の家賃相場より1.2~1.5割ほど家賃を高く設定できる」のだという。

なぜ高い賃料を設定できるのか。理由はズバリ、「高額な住宅手当」があるからだ。米軍関係者が日本に赴任し、こうした賃貸物件に住んだ場合、等級によって異なるものの、下士官兵の三等軍曹でも18万9000円、家族がいる場合だと20万円など、日本の一般的な賃貸住宅の家賃相場を上回る住宅手当が米軍から支給されるのだ。

米軍向け賃貸物件の例(提供:ウスイホーム)

5年ほど前の米軍向け賃貸物件では、貸主が希望賃料を提示した後、米軍の査定を受け、査定官が視察したうえで賃料を決めていたが、現在は相場を踏まえてさえいれば、貸主が提示した希望賃料が採用されることが多いという。

例えば日本人に2LDKの部屋を貸し出した場合10~12万円程度の賃料だったものでも、最低賃料が18万円程になることもあるのだとか。とはいえ、物件のランク毎に賃料の上限が決められているので、あくまでその範囲内での提案であることが原則となる。

貸し出すための条件「ベース契約」とは

もちろん、誰もがすぐに物件を貸し出せるわけではない。軍関係者に住宅を提供するためには「ベース契約」を結ぶ必要があるのだ。

「ベース契約とは、一言で言えば米軍からの査定に合格した証のことです。規定の査定依頼書に記入して家賃希望額を設定し、査定官の査定を受けて合格すればベース契約成立となります」(前出の不動産業者)

査定に通るための主な条件は以下のとおり。査定期間は早ければ1~2週間ほどで、遅くとも1カ月程度で終わるという。

【ベース契約の主な条件】

・窓、ドアに防虫網戸が設置されていること

・風呂場、台所等に給湯器が設置されていること

・トイレは水洗式であること 

・各部屋に照明器具が設置されていること 

・賃貸借契約書は米軍の指定する仕様(和文・英文)に従う 

・広さ50平米以上(2DK以上と決まっているため)

・最低3年以上賃貸が可能な物件であること

・階段に手すり(屋内・屋外)が設置されていること

・米軍基地から10~20キロメートル圏内にあること 

魅力はやっぱり「高い家賃」

ここで、実際にベース契約を結び、米軍向け賃貸物件を所有する投資家の話を紹介しよう。楽待コラムニストの「地主の婿養子大家」さんだ。

もともと横須賀で戸建物件に投資をしており、「せっかく横須賀に物件があるのだから」と考えて米軍向け賃貸に参入したのだという。物件は横須賀市の米軍基地のすぐそばにある築23年の一戸建てで、購入価格は1250万円、表面利回りは18.14%だ。

「ベース契約にはいくつかの制限があるのですが、細かいところだと和室がNGなんです。そのため、私が所有している物件では和室の床にホームセンターで購入したカーペットを貼り付け、洋室に変更して査定を通しました。階段の段数も50段以内という制限があります。緊急時に呼び出しがあったとき、素早く出動できるからでしょうね。その意味では、平屋の物件の方が査定は通りやすいかもしれません」(地主の婿養子大家さん)

地主の婿養子大家さんが所有する物件の内部

契約までに多少のハードルはあっても、通常の家賃相場より高めに、かつ長期間に渡って貸し出せるのは魅力だろう。前出の地主の婿養子大家さんは次のように語る。

「私が所有している2LDKの物件は、米軍関係者向けに18万9000円で貸し出しています。通常ならば12万~14万程度で貸し出している物件ですから、非常によい条件です」

現在貸し出しているのは下士官向けだが、より上級の士官クラスに向けた賃貸物件はさらに賃料も高くなるのだとか。ただし、その場合は求められる条件もさらに厳しくなる。

「駅近くのタワーマンションや、一等地で駐車場が2台付いていることなどが条件に加わるようです。上級兵だけをターゲットにしている人もいるそうですが、その参入障壁は高いですね」(地主の婿養子大家さん)

急な退去は避けられない?

一方、米軍向け賃貸物件にはデメリットもある。前出の不動産業者によると、まず日本の賃貸物件とは違い、退去予告期間は「10日前まで」となり、急な退去連絡がくることがあるという。船の出入港スケジュールによって賃料の遅延が生じる可能性もあるのだとか。マンションのテレビまたは音楽のボリューム音が大きいなど、騒音とゴミ出しのクレームも多いという。

「独身の水兵さん向け物件は、船の入港のタイミングでは空室が出る場合もある」と話すのは地主の婿養子大家さん。独身者でも長く住むケースもあるが、平均的には3年程度だそうだ。一方、家族持ちの既婚者は上級兵で、平均的には5年〜日本にいることが多いという。これも知っておいて損はない情報だろう。

「敷金は退去のときに立ち会って、全額現金でその場で支払うという規定もあります。金額が大きいだけに資金繰りには注意したいですね。私は興味もあったので自主管理をし、入居者と直接やりとりしていましたが、なくなっていたリモコンの蓋の精算などをその場で交渉したりしましたよ」(地主の婿養子大家さん)

手続きは基本英語で行うこともあり、管理を管理会社に任せている方も多いようだ。横須賀など米軍基地の周辺には、米軍向け賃貸物件に特化した仲介会社が存在している。

米軍基地周辺に2LDK以上の物件を所収している場合、ベース契約さえ乗り越えられれば誰でも参入できる可能性はありそうだ。

協力:

ウスイホーム
http://www.usui-home.com/

地主の婿養子大家さん
https://www.rakumachi.jp/news/archives/author/mukoyoushiooya

(楽待新聞編集部)