PHOTO: iStock.com/joel-t

お金を残す不動産投資コラム。今回は、これまで度重なる改正で厳しくなっている、収益不動産を購入する際の消費税還付について解説します。

不動産投資をしたい人、あるいは既にしている人は、「消費税還付」という言葉をどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。

消費税還付とは

ここでは、まず「消費税還付」を知らない方のために、簡単に消費税の仕組みから解説します。

消費税は、受け取った消費税(課税売上にかかる消費税)から支払った消費税(仕課税仕入にかかる消費税)を差し引き、残った分を税務署に払います。

この消費税8円はお客さんから預かっている消費税ですので、1年間にこの取引しかないと仮定すれば、この8円を確定申告で税務署に納付します。

次に消費税還付の仕組みを簡単に解説します。

この32円の消費税は払いすぎている消費税ですので、確定申告をすれば32円の消費税が還付されます。

物件を購入する際の消費税還付の仕組み

それでは、続いて不動産投資の消費税の仕組みを解説しましょう。

資産管理会社(12月決算)が12月に自分の土地に1億800万円のマンションを建築したとします。

【建築費の税抜価格】    1億800万円÷1.08=1億円
【建築費に含まれる消費税】   1億800万円-1億円=800万円

先ほど説明した消費税の仕組みだと、確定申告をすればこの消費税分が還付されますよね。

でもアパート・マンションの大家さんが入居者から受け取る家賃収入は消費税が課税されない取引(これを非課税売上と言います)なので、この消費税800万円を「課税売上割合」というもので按分しなければいけません。

それでは、1億800万円の建物を建築する資産管理会社に、他に駐車場の賃貸収入が108万円(税込)あったとしましょう。

この駐車場の賃貸収入は、消費税の課税されない入居者からの家賃(非課税売上)とは違い、消費税が課税される取引(課税売上)になります。

そして、この「課税売上」と「非課税売上」の割合を計算し、課税売上の割合分だけ消費税が還付されることになるんですね。

仮に12月に建築されてすぐに入居した入居者からの家賃収入が100万円あったとすると、還付額は次のように計算します。

この状態で消費税の申告をすることで、建築費に含まれる消費税400万円から、駐車場の賃貸収入の消費税8万円を差し引いた金額392万円が還付されることになります。

【消費税還付額】400万円-8万円=392万円

このように消費税の還付を受けるためには、建物を建築する年度に課税売上がなければいけません

そして課税売上割合の割合が高くなれば高くなるほど、建築費に含まれる消費税が還付される金額が大きくなることがわかりますね。

そこで、従来利用されてきたのが「自販機スキーム」でした。

物件の引き渡しを受ける際に、非課税売上である居住用家賃を受け取らず、課税売上である自動販売機からの収入を計上することにより、課税売上100%にして、消費税還付を受けるというスキームです。

平成22年3月の消費税法改正以前は、消費税の課税事業者になるための「課税事業者選択届出書」を税務署に提出するだけで、簡単に消費税還付ができていました。

改正の内容を解説する前に、消費税の調整計算について解説しておきます。

実は3年間で、先ほど解説した課税売上割合が1年目と比較して著しく変動すると、還付された消費税を将来戻すことになってしまいます

なぜ、図のように課税売上割合が著しく変動するかというと、1年目は自販機の売上と、日割り家賃の放棄で課税売上割合100%にできたとしても、2年目からは非課税売上である居住用物件の家賃が多く入ってくるので、課税売上の割合が小さくなってしまうからです。

そして、1年目の課税売上割合と、3年間トータルの課税売上割合を比較して、著しく変動していれば、その差(上図だと【1年目】100%-【3年トータル】1%=99%)に消費税還付額を掛けた金額を戻すことになるわけです。

こうして3年間の課税売上割合と比較することを調整計算といいます。

これに適合すると、せっかく還ってきた還付金を、また税務署に納税することになってしまうんですね。

2度の税制改正で、何がどう厳しくなった?

では、続いて消費税還付に対する税制改正について解説しましょう。

消費税還付に対する改正は、平成22年と平成28年に入り、消費税還付をすることが難しくなりました。

平成22年の改正は、課税事業者選択届出書を提出後、2年以内に不動産を購入、建築した場合は、その後3年間、免税事業者や簡易課税の選択をすることができないという内容でした。

これによって、不動産購入時に消費税還付をしても、調整計算の対象となるように改正されたわけです。

しかし、課税事業者選択届出書を提出後、2年間何もせずに、3年目に入ってから不動産を購入することで、まだ消費税還付が可能となっていたんですね。

それを受けて、平成28年の改正は、簡単に解説すると、建物などの高額資産を買ったり、建てたりした人は、3年間は消費税の免税事業者になることもできなければ、簡易課税も選択することもできません、という内容になりました。

(条文をわかりやすく簡素化していますので、詳細は国税庁ホームページをご確認ください)

この改正により、不動産購入時に消費税還付をすると、必ず調整計算の対象となるようになったわけです。では現在は、どのようにすれば、消費税還付を成功させることができるのでしょう?

ポイントは、調整計算をされたとしても、還付された消費税を戻さないようにできればいいわけです。そして、そのために重要なことは、課税売上割合を著しく変動させないことです。

実は「著しく変動している」とは、1年目と3年間トータルの課税売上割合の差が50%以上になっていることを言います。

課税売上割合:【1年目】100%-【3年トータル】1%=99%
 ⇒ 著しく変動している
課税売上割合:【1年目】100%-【3年トータル】51%=49%
 ⇒ 著しく変動していない

そして、「著しく変動していない」状態にするには、2年目以降も課税売上が非課税売上である居住用家賃より多ければいいわけです。

この状態にすることは個人では難しいでしょう。既存の法人でもできますが、ベストは新規法人で、加えて課税売上をコントロールできれば可能になります。

また、店舗やオフィスビルなど、課税売上となる賃料が発生する不動産については、課税事業者となることで、現在でも消費税還付は普通に受けることができます

架空売上で消費税還付を否認

消費税還付を成功させるためには、物件購入時に課税売上を発生させて、課税売上割合を高くすることが必要になりますが、過去には消費税還付が否認されたケースもあります。

平成25年に起こった事件ですが、ある会社の社長が自身の資産管理会社で購入した不動産を購入する際に、架空の車の売上を計上して、約2千万円の消費税を不正還付しました。

この事件は、裏に指南役がいましたが、消費税法違反の疑いで逮捕されています。架空売上の計上などは、脱税になりますので、絶対にしないようにしてくださいね。

不動産購入時の消費税還付は、現在でも可能ですが、税務署も厳しい目で見ていますので、それなりのリスクを覚悟の上、もしチャレンジする際は、消費税還付に長けた税理士にご相談されることをお勧めします。

(叶温)