
PHOTO: iStock.com/CharlieAJA
昨今のマイナス金利の影響で貸出金利は低下し、不動産投資業界には追い風が吹いています。資金調達をする際に金利が低い事はキャッシュフローにプラスに働くので、とてもありがたい事。
一方、この低金利がどこまで続くのか。固定期間更新の時に不安になった事はありませんか?
私はあこがれのマイホームを低金利のおかげで手に入れる事ができました。しかし、その2年後に金利上昇の恐怖を味わう事になります。今回はその時のお話をしたいと思います。
今から13年前、32歳の時に新築一戸建てを購入しました。そして購入して間もない2年後、固定期間が終了し、更新の局面を迎えた時に金利が上昇、その恐ろしさを痛感したのです…。
年収400万円時代に買ったマイホーム
私は30歳の頃、業界最大手のハウスメーカーに転職しました。当時、転職市場は厳しかったのですが、幸運な事に大企業に入社できた事で、「安定」を手に入れる事に成功。心身ともに満たされた気持ちになっていました。
そんな中、新婚の時から住んでいる賃貸アパートを卒業し、新築一戸建てを夢見るようになりました。持ち家比率の高い愛知県の三河地域。新聞の折り込みチラシを見ては、展示場などに足繁く通いました。
しかし、当時の私の年収は400万円に満たないレベル。購入できる金額は限られています。普通なら勤務している会社のブランドで建てるのでしょうが、上物だけで4000万~5000万円もする家を建てる事は不可能でした(笑)。
しかし、仮に自社で建てる事ができたとしても、私はローコスト住宅の方が長い目で見ると理にかなっていると考えていましたから、負け惜しみでもなく、そこはなんとも思っていませんでした。
総工費は、土地建物合わせて3250万円、資金計画は自己資金150万円、援助500万円、銀行融資予定額2600万円です。
私は転職したばかりで、金融機関からの信用もなく、お金を借りたくてもどこも相手にしてくれませんでした。不動産投資の駆け出し時と同じで、断られまくりです(苦笑)。
その時は、不動産会社が銀行開拓をしてくれていたので、心理的ダメージは直接断られるより低かったですが、それでもショックでした。俺にはマイホームは無理なんじゃないかと…。
でもそんな中、1行だけ融資をしてもいいと言ってくれた銀行がありました。誰もが知るメガバンクです。担当者はかなりやり手な方との事で、難しい案件も通すという実力者。想定外の満額回答を頂きました。
条件は金利1%、融資期間35年、2年固定、月々の返済7万3000円、ボーナスなし(金利優遇含む)。
不動産投資もマイホームも、担当者次第で右にも左にも振れるんですね(笑)。そして、あこがれのマイホームを手に入れる事ができました。とても嬉しかった事を昨日の事のように思い出します。
固定期間の終了で金利が2倍に!
そして、1年半ほど経った時に、固定期間の満了、金利見直しの時期も近づき、更新後のレートを見た時にびっくりしました。同等の低金利で更新できると思っていた私。倍近いレートに目まいがしました。
原因は2006年のゼロ金利政策の解除でした。(景気回復が続き、物件の下落圧力も低下した事から、2001年3月以来、5年4か月ぶりにゼロ金利政策が解除されました)
同じ固定期間を2年とったとして、金利2%近い倍の数字。当時、月々の返済が7万3000円だったのが8万円半ばになってしまいます。少ない給料の中から家賃レベルで抑えられるならと思って家を購入しましたが、金利上昇による返済金額の負担増は全く考えていませんでした。
「こんな自分でも買えるなら絶好のチャンス!」
購入当時はそう思っていました。それが2年も経たないうちに苦境に立たされてしまう事になったのです。
長期間、返済を安定させるために、長く固定期間をとろうと10年を選べば、なんと金利は約4%。返済金額は毎月11万5000円ほどに跳ね上がります。単純に1.6倍です。
短期の固定期間で低金利を選び、更新のたびにビクビクするのか、高金利を払って10年間安心するのか、選択にとても頭を痛めました。
他の金融機関も右に倣えで、借り換えるにも同じような水準になってしまいます…。
そんな中、モーゲージ型で、30年固定、2.8%の住宅ローンを見つけました。(モーゲージとは、不動産を担保とする貸付債権に有価証券性を付与したもの。借入金額記載の約束手形、火災保険証書など、書類一式が担保にできる)
家内と相談し、毎月の返済金額が1万円ほど上がってしまう事と、ボーナス併用する事をやむなく受け入れ、長期安定を選ぶ事にしました。
「10年固定の4%と比較すれば、ずいぶん返済が楽だろう。その方がマシだ」という事で、納得せざるを得ませんでした。
当時、住宅ローンの返済原資は私のサラリーだけです。家内は専業主婦だったため、働けばなんとかなるので多少の負担増はカバーできます。最悪の場合でも、ローン返済に対するストレスに耐えられるわけです。
仮に、私と家内の合算収入のアッパーでローンを組んでいたら…。相当苦戦していたに違いありません。
不動産投資で置き換えてみると
では、不動産投資に置き換えてみたらどうでしょう。
不動産投資の返済原資は家賃収入です。ご存知の通り、家賃を上げる事は至難の業です。毎月かかるランニングコストは確実に出ていきますから、削減する事はこちらも不可能です。
もし、現在の低金利水準でぎりぎり収支が合うような購入の仕方をしていたらどうなりますか? キャッシュフローは完全にショートしますよね。
新築も中古もしっかりリスク金利(3~5%)で収支計算をし、どこまで耐えられるかを把握しておく必要があります。
それから、金融機関との関係構築です。金融機関は、優良取引先とはずっとお付き合いしたいものです。固定期間更新や金利上昇局面で、なるべく現状維持でお話できるような関係を作っておく必要があります。
もし、応じてもらえないようであれば、肩代わり(借り換え)を好条件で応じてくれる金融機関の開拓もしておいたほうが良いです。
私は現在、9行の金融機関と取引し、固定期間更新時に金利を下げてもらう交渉に成功しています。もし、応じてもらえないようなら他行で肩代わりしてくれる環境も整っていますし、それを望んでいる金融機関もあります。
不動産投資を始める前に、住宅ローンで金利上昇のリスクを思い知らされ、それが教訓になっています。今回の事例を参考にしていただければ幸いです。
(安藤新之助)
この連載について
バックナンバーを見る-
66
「大手だから安心」の神話はすでに崩壊している
2018.7.20
65
2年で2倍に…侮れない「金利上昇」のリスク
2018.6.25
PR
プロフィール画像を登録