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最近の私は、朝6時前に家を出て、21時以降に帰宅、月間の休日は3~4日程度という生活を送っています。さらにその少ない休日も、セミナー講師や物件調査依頼、書籍の原稿執筆に使っています。

一見すごくハードな感じに見えるかもしれませんが、本人は結構充実しています。これも不動産投資という、事業のような趣味のような存在のおかげです。楽しみがあるからめいっぱい活動できるのでしょう。もし私が不動産投資と出会っていなかったら、生気のないメタボ中年になっていたかもしれません。私にとって不動産投資はお金のためだけのものではないようです。

さて、今回は「建設業に関連する職種」がテーマです。

なぜこのコラムでこうしたテーマを紹介するのかというと、建設業界の構造を知ることが、結果的に「リフォームなどの工事費を抑えること」につながるからです。遠回りに思えるかも知れませんが、どうぞ最後までお付き合いください。

 「建築士」も実はいろいろ

建設業に関連する職種は非常に多く、しかも細分化されています。さらには請負形態も1次、2次、3次と階層化された「重層下請構造」になっています。これは建設業の特徴でしょう。客先から直接発注を受けた元請会社では、下層の下請け業者を全て把握するのは難しいほどです。

以降では、そういった複雑な建設業界に携わる職種について触れてみたいと思います。

まず、建設業に欠かせない職種の1つである「建築士」について。建築士は国家資格保有者であり、「建築士法」という法律に基づいて業務を行います。

建築士には大きく一級、二級、木造という種類があり、携わる建物の大きさや種別によって表のように分類されています。例えば延べ床面積300平米(高さ13メートル以下かつ軒9メートル以下)のRC造アパートは二級建築士でも設計及び監理ができるけれど、延べ床面積301平米のRC造アパートは一級建築士でなければ設計も監理もできません。

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一級建築士は最上位資格ですから、二級建築士より建築物に詳しいと思われがちです。実際、一級建築士の方が資格受験難易度は高く、多くの経験をもち、実際の建築物について勉強もしますので、相対的にはほかの建築士資格保有者より知識があると言ってもよいでしょう。

しかし、二級建築士は木造物件を多く扱うことから、RC造や鉄骨造ばかりに接している一級建築士よりも、木造建築物については詳しい場合もあります。延べ面積300平米以下の木造アパートを建てる場合は二級建築士の方がよいケースもあるかもしれません。

さらに言えば、建築士は建築物全てに精通しているわけではありません。意匠(いわゆるデザイン)設計を専門に行う者、構造設計を専門に行う者、設備設計を専門に行う者などその専門分野はさまざまです。現場工事施工を専門に行う私のような建築士もいます。

医者で言う外科、内科、整形外科のように、建築の世界でも専門が分かれていると言えばわかりやすいでしょうか。つまり、一口に建築士といってもすべての建築物について何でも知っているというわけではないのです。

建物を新築する場合、増築する場合、またある一定規模の改修工事を行う場合など、その施主となる者は、これから建てようとする建築物が各種法律に適合しているかどうかを確認する「建築確認申請」を行わなければなりません。

工事内容によっては必要ない場合もありますが、その条件は煩雑ですのでここでは触れません。とにかく新築や増築ではほぼ必要になると思ってください。

この建築確認申請ですが、以前は提出先が地方公共団体の建築主事のみでした。ところが平成11年5月1日施行の建築基準法改正により、建築確認の業務が民間にも開放されたのです。この改正により、現在では建築確認申請は「指定確認検査機関」と呼ばれる民間機関でも対応できるようになりました。基本的にどちらへ提出しても問題ありません。

では、従来通り地方公共団体へ提出する場合と指定確認検査機関へ提出する場合はどう違うのでしょうか。

まず、申請にかかる費用が違います。指定確認検査機関は営利団体であることが多いので、金額はまちまちです。地方公共団体は基本的に非営利団体ですので、担当役所による大きな差はありません。民間、地方公共団体のどちらへ提出しても行われることは同じですが、一般的に地方公共団体の建築主事へ提出する場合の方が安価で済むようです。

そして建築確認の審査期間ですが、これは指定確認検査機関の方が圧倒的に早いです。地方公共団体では1か月以上必要なこともありますが、指定確認検査機関では1週間かからないことも少なくありません。

工事を急ぐ場合は多少費用が高くても指定確認検査機関へ提出すべきでしょう。民間に開放された理由はここにあり、メリットも大きいと感じます。

現場を支える人々も職種は多様

建設業、とりわけ施工に携わる職種は非常に多く、すべてをここで紹介するのは難しいでしょう。私も建設業の世界に入るまでは「ここまで細かく分かれているんだ!」と驚いたほどです。

例えば鉄筋コンクリートの基礎を施工する場合、関わる職種は、コンクリートの打設前に鉄筋を施工する鉄筋工、型枠大工、生コンクリートをポンプとホースで送り出す圧送工、最後に見た目をきれいに仕上げる左官工等さまざまです。

型枠大工と聞いて「大工がなぜ基礎工事に関係あるのか」とお思いかもしれませんが、コンクリート工事には多くの場合、コンクリートが余計なところへ流れ出さないように「型枠」というものが必要になります。いわゆるコンクリートとめ板です。この型枠施工に型枠大工と呼ばれる職人がかかわるのです。

状況や内容によってはさらに関わる職種が多くなる場合もありますが、逆に少なくなることもあります。

もう1つ、設備配管の例を考えてみましょう。配管工事とその配管を保温する施工は別の職人が担当します。配管の保温とは、お湯であれば配管内のお湯が冷めないように断熱効果のある材料で巻く処理であり、外部の水配管などは冬の寒さで凍らないよう、保護するために処理をするものです(比較的細い配管などは最初から保温材が巻いてあるものを使うこともありますので、必ず保温工事が発生するという訳ではありません)。

「重層下請構造」の弊害

このように多職種に分かれている建築工事の全容は、なかなか把握しづらいものです。

そして建築現場で働く方々は、冒頭で説明した「重層下請構造」に身を置いていることになります。客先から直接工事を請負うゼネコン(総合建設会社)は「元請」、その工事の工種別にゼネコンから工事発注を請け負う会社は「1次下請け」と呼ばれます。

よくあるのは、ゼネコンの下で「サブコン」という、電気、空調、衛生など各種設備を担当する総合設備会社が1次下請けになるパターンです。さらにその下請けとして各工種が入っていきます。大きな工事になると5次、6次下請けなどという深い階層の組織になる場合もあります。

下層へ行くほど低賃金で働いてもらうことになり、品質悪化や安全作業意識の低下してしまうのが現状です。できるだけ浅い階層にすべきなのですが、現状はなかなか難しいのです。

一方、収益物件で建設工事業者が必要になる場面といえば、新築や増築よりもリフォームやリノベーションが多いのではないでしょうか。新築や増築はさておき、リフォームをやったことのない大家さんはまずいないでしょう。

リフォームでも請負形態はさまざまですが、管理会社に一括発注してしまえば、管理会社が必要な工種を揃えて工事にあたります。発注者である大家さんは見積もられた工事費を払えば工事は無事終了します。

しかし、この方式だと元請になる管理会社の経費が乗るので割高です。そして各工種を請負った会社がさらに下請けを使えば、そこでも経費が発生するのです。

もうお気付きですね。工事を安く済ませたい方は、重層下請構造にならないような工事発注をすればよいのです。

工事を行う会社に直接発注すれば、余計な経費を省けます。ただし、工事打合せ、各工種間の調整や品質の見極めはご自身で行わなければなりませんので、工事費が安い反面、大家さんの手間は大きくなることは覚悟すべきでしょう。

「軽微な建設工事」が抜け穴に?

建設業を行おうとする場合、建設業法第3条に基づき、建設業の許可を受けなければなりません。建設業許可は各職種ごとに分けられており、その数は29あります。そのうち「土木一式工事」と「建築一式工事」の2つは一式工事(通常、元請となり、総合的な立場で工事を進めていく)、残りの27種が専門工事として分類されています。

ただし、「軽微な建設工事」のみを請負う場合、必ずしも建設業の許可を受けなくてもよいこととされています。

この「軽微な建設工事」の基準は、建築一式工事については請負代金の額が1500万円未満の工事、または延べ面積が150平米未満の木造住宅工事とされています。建築一式工事以外の建設工事については、請負代金の額が500万円未満の工事とされます。

たとえば請負代金が1600万円の軽量鉄骨アパートを建築する場合、建設業の許可を得た建設業者でなければ工事を請負うことはできないのです。

近年では建設業許可を得る条件が非常に難しくなってきていることから、この許可を取得せずに工事を請負っている業者が多く、問題視されています。

なぜこうした業者が出てきてしまうのでしょうか。

建設業法を逆手に取れば、一式工事以外で500万円未満の工事は無許可業者でも合法になります。ここがポイントで、リフォームや小規模のリノベーションであれば500万円に達しないことも多いのです。すると、ほとんど実績のないモグリのような業者でも工事ができてしいます。

中にはこれから工事実績を増やし、条件を整えて建設業許可を得ようとする業者も存在しますが、とりあえず儲かりそうだからと半分詐欺のような仕事をしている業者も少なくないのが実情です。

そういった詐欺のような業者に工事を任せて後悔しないためにも、知らない業者に工事発注する際には、500万円未満の工事であっても、最低条件として建設業許可を持っている業者を選ぶことが望ましいでしょう。例えば配管工事を行うときには「管工事業」許可を取得している業者が望ましいのです。

以上のように、建設業に携わる職種は多く存在します。建築物は全く同じものは存在しません。大量生産品ではなくオーダーメイド、いわゆる受注生産品であることが要因でしょう。

大手建設業者による企画建築物やプレハブ建築物のように似たような建物はありますが、それらも全く同じというわけではなく、所々が違っているうえに完成精度も異なるのです。ここが車や家電のように画一的な生産体制を取れない原因にもなっています。

建築物は高価です。それゆえ誰もが良いものを作ってもらいたいと期待します。そのような希望を少しでも実現するためには、施主も建設業界のことを知っていて損はありません。むしろ建設業界を知ることによってより良い建物を作るためのヒントも見えてくるのではないでしょうか。

(戸田匠)