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今年4月から本格的に経営大学院に通い始めました。能力向上と人的ネットワーク構築が目的で、不動産賃貸の収入の一部を別の事業に振り分けるための準備をしています。その講義の中で、「生存バイアス」という考え方が興味深かったのでシェアします。

例えば、前提は戦時中。「今、被弾して戻ってきた戦闘機があります。この複数箇所に被弾した戦闘機をみて、あなたならどの部分の装甲を厚くしますか?」という問いです。

目の前に複数箇所を被弾した何機かの戦闘機があるとイメージしてください。被弾した戦闘機を目にすると、被弾した共通箇所を探し出して、その装甲を厚くするのが良いのでは? と考えてしまうのではと思います。少なくとも私はそんなことを考えました。皆さまなら、どの装甲を厚くして次に備えますか?

実はこの問いの模範解答は、「被弾していない箇所の装甲を厚くする」でした。

なぜ被弾している箇所ではなく、被弾していない箇所の装甲を厚くするのか。それは、サンプルがあくまで「帰還した戦闘機」のみを対象にしているためです。目の前にある戦闘機以外に「帰還していない戦闘機」が多数あったはずで、それらは被弾箇所が致命傷となって戻って来ることができなかった。つまり、「帰還した戦闘機の被弾箇所は致命傷にならない」「装甲を厚くすべきなのは、今見えている被弾箇所とは別の箇所」というわけです。

撤退してしまった人の意見を

目の前に生き残ったサンプルがあると、そのサンプルから色んなことを分析しようとしてしまいがちですが、それまでにどんな脱落したサンプルがあるかを考えないとアクションを見誤る、というのが「生存バイアス」の考え方です。今、私が書いている大家のコラムもある意味、「一部の生き残った大家」が書いているコラムに過ぎないので、本質的には途中で不動産から撤退してしまった方の意見を聞かないといけないのかな、とも感じました。

また別の視点で、コラムニストを比較してみると良いと思います。一つは、自分とコラムニストを比較すること。コラムニストの属性と自分の属性が合っていないと、同じスキームでやろうとしていてもできないことが多いです。それから、コラムニスト同士の共通点を探し出すというのも面白いと思います。

コラムニストもそうですが、ビジネスで成功している人は共通して「3つの目」を持っているように思います。

1.虫の目

地面に近いところで生きる虫のように、「現場で何が起こっているのか」を細部に渡って見る目です。「現場力」と言い換えても良いかもしれません。

私はもともと生産技術系のエンジニアで、多少の設備トラブルにも何とか対応できる最低限のノウハウはあったので、自主管理をしていました。エレベーターの軽微な故障などは、業者から壊れた部分について詳細に聞いて最低限のメンテナンスで乗り切り、新品交換はよほどのことがない限りしませんでした。設備系のトラブルは知識がないと業者の言いなりになってしまい、新品交換になりかねないので注意が必要です。

金額は単価×数(or頻度)なので、まずは当然、単価を下げるために相見積もりをします。エレベーターの点検などは、毎月フルメンテナンスでやっていたものを3カ月に1回に頻度を下げました。また最後の一押しとして、「年間分をまとめてすぐに払うからにもう一段階値引きしてほしい」と交渉すると、結構下げてくれたりします。

結局、現場を知らないと誰にも明確な指示ができないですし、指示をした内容がとんちんかんだと、指示を受けた人からも信頼されずに煙たく見られてしまいます。完全にお任せしてしまうと、それはそれで適切な相場を知らずに余分な利益を抜かれるだけになってしまうので、適切な売上・経費を知るためにも丸投げではなく、現場を知ることは重要です。

2.鳥の目

高いところから獲物を探す鳥のように、一歩引いて業界を俯瞰し、何が起きているのかを把握する力も必要です。企業でいえば、自分の業界の中で自社の立ち位置、他の業界の中での自分の業界の立ち位置を知ることも大切でしょう。

注意しなくてはいけないのは、この立場はただの「評論家」になりがちなので、実践を積んだ「虫の目」があってこそ成り立つ目だと思います。私の場合は、別の事業と比較しながら、その中での不動産賃貸業の可能性を見極めているところです。

例えば、太陽光やコインパーキングなどを検討しました。太陽光は中途半端にやると、不動産を増やすために邪魔になりそうなのでやりませんでしたが、コインパーキングは事業として成長していますし、少額で始められるので運用してみました。

コインパーキングの土地は自己所有ではなく転貸で、その借地の土地にコインパーキングを設置しています。管理などは業者任せなので手間はかかりません。経費も不動産に比べてかからない印象です。約300万円の初期投資で1年を通した実質利回りは約25%でした。ただ、経費率を出す前提となる売り上げが不動産ほど一定ではないので、銀行は融資を出しづらいのではと思っています。

一方で不動産賃貸業の規模感は1棟1億円・実質年間利回り3%前後ですが、それでも不動産の方が良いですね。利回りだけ見るとコインパーキングをもっと増やした方が良さそうですが、私の場合、不動産の融資が多過ぎて、公庫がコインパーキングに融資をしてくれず、現金を投入しないと買えません。あとはコインパーキングの土地が転貸なので、出口(売却時)が限られてしまいます。だったら、不動産を所有して残債を減らしながら売却時に現金化させるのが効率的かなという結論です。

見かけの利回りだけでなく、売却までの出口を見据えて判断することが重要です。

3.魚の目

あまり力を入れずに川の中を泳ぐ魚のように、自分が力を入れなくても流れ(トレンド)を見極めることで、業界が勝手に成長してくれます。大きな流れが出来上がってからその川に飛び込むのではなく、大きな流れが出来上がる前にアンテナを高くしてトレンドを見極め、多少のリスクを負って早く始めることが大切なのかなと思います。

私の場合はリーマンショック時にFXで大打撃を被りましたが、不動産が冷え込んでいた同年に1棟目を購入しました。貸してくれる銀行がいなかったので、S銀行の金利4.5%です。

「参入時期」という考え方でいえば、「みんなのマインドが下がっている時期」でしょうか。現在、かぼちゃの馬車問題で市場が冷え込んでいるので、買う立場からするとよい傾向だと思います。ただ、結局は融資が厳しい時期なので、散財せず地道に現金を蓄えていた人にチャンスが回ってくるのではないでしょうか。

私は自分の負えるリスクで一歩踏み出し、そこから、東京オリンピックが決まれば物件を都内にシフトさせましたし、中古の流通物件が高くなってきてからは土地からの新築にシフトしています。低金利で金融機関の貸し出しが始まれば、S銀行から借り入れた物件を売却して、低金利の金融機関にシフトしています。

毎日ポータルサイトなどを見て、定点チェックを欠かさなかったことは良かったと思います。アベノミクスの前も、新築一棟を建売で買うと利回り7%ぐらいというイメージがあって、それが中古で買ってもその程度にしかならないんだったら、新築をやろうとすぐに決めました。

将来の予測は外れるものなので、先のトレンドはそれほど読んでいません。過去から現在で何か変化点を感じたら動き出すという感じなので、今できることを積み上げています。一つの成功体験に満足せずに、先のトレンドを見越して変化し続けたことがよかったかなと思います。

ただ、今後の不動産系のトレンドは読みづらいです。Airbnbなどは参入時期が遅れて、結局労力をかけた割にトントンだったり、簡易宿所を運用しようとして土地を買ったら、その土地を買いたい業者が出てきて、結局土地の転売で終わってしまったり、もろもろタイミングを逸しています。

不動産価格の値上がりはあまり期待できませんが、低金利での資金調達は魅力的なので、1年に1~2棟ぐらいのペースでゆっくり物件を買い増し、買い替えしていきます。私の狙いは相変わらず次のような物件になりそうです。

・土地値重視

・長期間インカムゲインを得る前提

・低金利で借りる

・5~10年ぐらいのスパンで残債を減らした状態で売却し、内部留保されていた資産を現金化する

そのために、流動化しやすい都内好立地の物件中心で購入する方針も変わらないです。あとは、全く方向性を変えて、空き家対策ですかね。参入業者も増えていると思いますので、レッドオーシャンかもしれないですが…なんでも新規に参入するタイミングは難しいですね。

以上、まとめますと

・コラムニストは成功者が多いが、その陰で途中で挫折している大家がいることを忘れてはいけない

・コラムニストと自分の共通点を探して、似た属性の人のまねをすることが成功の近道

・成功している人は、虫の目鳥の目魚の目を持っている

まずは「虫の目」を養うことが重要だと思います。それが皆さんの強みになっていくのではないでしょうか。

(溝口晴康)