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今回は「不動産会社の見分け方」を取り上げてみたいと思います。
32年間の経験をもとにした私自身の考えにすぎませんが、多少なりとも御参考になれば幸甚です。
物件探し編
○デメリットも伝え、自分で判断させてくれる会社
メリットだけでなく、デメリットもきちんと伝えてくれ、投資家自身に判断させてくれる会社は信用できます。
一見客のみを相手にしているのではなく、不動産経営者のことも考え、継続的なお付き合いを意識してくれている会社は、メリット・デメリット、双方をきちんと伝えてくれるのではないでしょうか。
「こんな優良物件、ほかにありませんよ!」
「すぐ買わないとなくなっちゃいますよ!」
などと焦らされる場合には要注意です。
土地の境界標が一部わかりにくい、接道が2メートルぎりぎりで狭め、建物が旧耐震基準、隣地の建物の屋根が一部越境している、建て直しの際にはセットバックが必要、裏に崖がある、現状は空室が多い、入居者の方は高齢者・生活保護の方が多いが家賃はきちんと払ってもらえている、この物件は融資受けが難しい…など、デメリットやリスクを早めに言ってくれる不動産会社は信頼性が増します。
○シミュレーションがきちんとしている会社
シミュレーションがいい加減な会社の例として、購入時の経費である、忘れた頃にやってくる不動産取得税が考慮されていないことがありました。
そのほか、運用時の固定資産税や都市計画税が考慮されていないこともあります。私の知っているきちんとした会社は、ある程度の修繕費、リフォーム費、空室率、家賃下落、金利上昇まで織り込んでくれる会社もあります。
また、シミュレーションがきちんとしているかどうかを判断するためには、自身でも知識をつけ、シミュレーションの穴を見抜けるようになりましょう。
○堅実なビジネスに特化している会社
転売差益のみを狙っているような会社は、融資の引締めなどが起きると資金繰りに困窮します。購入者も融資が付かないし、売るに売れなくなるのです。
バブルのころにあったような、僻地、リゾート、海外といった物件や、ホテル、ゴルフ会員権、絵画、小口分譲などにまで進出している場合には、破綻するリスクが高まります。
私自身も不動産会社倒産をいくつも見てきましたが、堅実なビジネスを行っている会社を選定するようにしましょう。
物件管理編
○修理、リフォームを自社や自社の関連会社のみで抱え込まない会社
管理会社に修理やリフォームをお願いした時、選択肢を提示することなく自社、または自社の関連会社にその工事を発注している場合には、その工事費が適正かどうか見極めましょう。そのためには、世間相場を調べておくことです。
緊急で重要な場合(鍵、エアコン、給湯器、ガス、トイレ、バス、洗面所などの工事)の場合はある程度仕方がないですが、そこまで緊急でも重要でもない場合には、自分の知っている他の会社に相見積もりを取ってみるのがいいですね。
少し違うケースですが、1つの方法しか提示してこない会社も多いです。以前、私の義母が所有する札幌の築古区分所有マンションで水漏れが起きた際、修繕のためには床を組みなおす必要があると、100万円の請求が来たことがありました。
図面を見てから、それ以外の方法もあるはずと思って見積もりをし直してもらったところ、結局10万円程度で済みました。最初の見積もりは何だったのだろうと思った次第です。
○損害保険加入状況もきちんと把握している会社
きちんとした会社は、物件の損害保険加入状況もきちんと把握しており、もし、水漏れなどの事故が起こったり、故障が発生したりした場合には、迅速に損害保険会社と連携を取り、極力、損害保険で対応してくれます。
ところが、いい加減な会社の場合には面倒臭いのか、損害保険加入状況も把握しておらず、ろくに知らべもせずに、すぐに所有者に請求してきます。
私も過去に、不動産会社が損害保険の加入状況を把握していなかったことがあり、調べてみたところ、損害保険会社、代理店共に、合併・業務変更等もあったとかで更新の案内を失念しており、結果的に契約が失効していたことがありました。
結局、水漏れの修理などで20万円程度の損害が出たと記憶しております。
○入居募集サイトを有効活用する会社
客付け会社にもいい会社の特徴はあります。
最近の入居希望者は、募集サイトを利用して、ある程度絞り込んでからやって来ます。したがって、入居募集サイトを有効活用してくれる客付け会社が良いと思います。
未だに店頭のビラやファックスのみに頼り、サイトを活用していなかったり、誰も見ていない自社のサイトのみに掲載していたりする会社もありますが、これでは、入居者が来るのは難しいです。自身でも、たまには募集状況をチェックしてみましょう。
○提携金融機関のある会社
提携金融機関があると、不動産会社・金融機関共に、システム・物件等の情報連携がしやすいため、融資が受けやすく、スピードも速いです。
昨今のアベノミクスミニミニバブルのような売手市場にあっては、スピードも命です。また、提携していると、一般金利よりも優遇される場合もあります。
提携金融機関がない場合には、自分で開拓せざるを得ません。紹介ならいざ知らず、飛び込みの場合には、門前払いになる可能性も高いです。
私は外資系金融機関に飛び込みで行って運よく借り入れができたこともありますが、結構大変です。
初心者で、特にサラリーマンの場合には、時間がふんだんにあるわけではありませんので、ある程度柔軟に対応してくれる金融機関はありがたいです。
もちろん、ある程度信頼できる金融機関との関係ができたら、そこを使うという手はありかと思います。提携していることでより高金利になってしまうことなどもあるかと思いますので、自身の状況によって使い分けましょう。
○ワンストップ型の会社
不動産会社と言っても、設計・施工・販売・仲介・建物管理・賃貸管理と幅広いものです。
ユーザーとしては、その幅広いものを一括に扱うワンストップ型であれば、責任の切り分けも不要ですし効率的です。不動産会社としても柔軟な対応ができ、リスク分散ができます。
逆に、造りっ放しや売りっ放しで、後のことは考えていないような会社には気を付けた方がいいです。
ただ、例えばリフォームが自社あるいは自社の関係会社名義の会社での発注のみだったり、キックバックを受けていたり、家賃保証で指定の修理、リフォームを強制されていたりということもあり得ます。
また、自社で設計・施工・販売・建物管理・賃貸管理全てをやり、管理組合から建物・賃貸管理を受託するというスキームの場合には、管理費や修繕積立金もぼったくり価格になっている可能性はあろうかと思われます。
そう言った場合には、世間相場を調べることも重要かと思います。
こんな会社には注意
○他人物売買、中間省略登記、三為業者、間に自社の役員・従業員を入れてくる会社等は、要注意
間に、不動産会社の役員・従業員を入れてくる不動産会社があります。両手仲介の手数料どころか、転売差益まで抜こうというものです。
こういった場合、売主が宅地建物取引業者(宅建業者)ではなくなるため、売買契約書の特約で、瑕疵担保責任まで排除してきます(売主が宅建業者の場合には、2年間の瑕疵担保責任は免れようがありません)。更には、トラブった際でも、クーリングオフは適用されません。
◇
いい不動産会社、金融機関と知り合い、いい条件の融資を付けて優良物件を割安価格で購入するということで、不動産経営の成功の8割が決まると言っても過言ではないかと思います。
逆に言えば、日本の不動産業界や金融業界などはまだまだ十分に整備されているとは言えず、悪徳な不動産会社や金融機関もはびこっています。
最後は誰も守ってはくれず、自己責任の世界です。一歩間違えれば、一発玉砕、自己破産、再起不能ということも起こりえますので、十分に気を付けて下さい。
(加藤隆)
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