先月は「今、私が初心者だったらこう動く」というテーマで、不動産投資家の方々にリレーコラムを執筆いただきました。本テーマでのコラムは今回が最終回となります。
最後の執筆者は、これまで数多くの失敗談を楽待新聞に寄せていただいた堀之内名人さん。過去の失敗談を振り返り、導き出した結論は「新築の木造戸建て+カーポート+太陽光」だそうですが…。
◇
みなさんこんにちは。堀之内名人です。今回は「今、私が初心者だったらこう動く!」というテーマで書いていきたいと思います。不動産投資に成功した方なら成功体験を活かして財産を築いていけばいいのですが、そこは堀之内名人、活かす成功体験がない!
というわけで今回は、成功体験ではなく、これまで積み重ねた失敗体験を活かして本テーマについて考えていきたいと思います。
不動産投資を始める際の着眼点
結論を書く前に、そもそも物件購入を検討する際、どのような点に着目すべきかについて私の考えを書いてみたいと思います。
◎利回り
物件広告等で見かける利回りとは、満室時の年間賃料収入を物件価格で割った「表面利回り」というものです。表面利回りが10%の場合、単純計算すれば10年で投資額が回収できる計算になります。
ところが実際には、購入時に仲介手数料や司法書士に支払う手数料が必要になります。また、不動産取得税や固定資産税、火災保険料、リフォーム代などさまざまな費用が発生します。これらを織り込んで算出したものが「実質利回り」となります。物件購入時は、この実質利回りも意識しなければなりません。
◎価格
現金で購入して、手元にも現金が残っている方であれば話は別ですが、ローンを利用して購入する際には特に慎重にならなければいけません。
「ローンが通ったから」「表面利回りがいいから」という理由で安易に手を出すと、思わぬ事態になりかねません。私のように手取り年収200万円台の人間が1億円の物件を購入すると、数か月後に不動産取得税の納付書が届いた時点で終了…。
◎建築年月
ローンを利用する際には、法定耐用年数によって借入期間が決められてしまうので、あまりに古い物件だと短期間で無理な返済を強いられたり、ローンの審査が通らなかったりなんてこともありえます。また、物件が古くなればなるほど、修繕やリフォームなど想定外の費用が発生するリスクが高まります。
ただ、新築となると価格が高額になるため、利回りが低くなったり、ローンの支払いが厳しくなったりするので、必ずしも新築が有利とはいえませんが。
◎構造
木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造など、建物にはいくつかの構造による分類があり、それぞれメリット、デメリットがあります。
ちなみに現在私は軽量鉄骨造の物件を所有しているのですが、とにかくメリットを感じられないのです! 所有しているからこそ実感できる不平不満ストレスうっぷんイライラが蓄積しています!
そもそも鉄骨造に間違ったイメージを持っていた自分が悪いのですが…。鉄骨造は鉄だから「強そう」だと思っていました。木造より鉄筋コンクリート造に近いイメージだったのですが、軽量鉄骨造の場合はどちらかというと木造に近いと思います。コストは木造より高く、耐震性・耐火性・防音性は鉄筋コンクリート造より劣るので、どれもこれも中途半端な印象。安い軽量鉄骨造の建物を新築するくらいなら、木造にお金をかけたほうがよい気がします。
◎競争力(立地・賃貸需要)
需要が見込める場所かどうか。出口戦略が描きやすい立地かどうか。
あたり一面のどかな田園風景が広がる中にSRC造の大型マンションを建築しても意味はありません。スーパーや学校、病院、駅が近いかどうかを確認しておく必要があります。
ただ、私の地元徳島県のように駅よりも駐車可能台数が重要視される場合もあるので、地域によって着眼点は変わってくると思います。また、周辺エリアの空室状況なども調べておいたほうがいいでしょう。人口が多いエリアだったとしても、供給過剰エリアでは設備投資や家賃減額で競争力を高めないと賃貸需要が見込めなくなります。ただし、特定の大学や企業の賃貸需要を狙って近隣に建築してしまうと、移転や規模縮小で空室リスクが高くなるのでオススメできません。
◎物件
投資対象となる物件には様々なものがあります。
【区分所有マンション】投資用として販売されている新築ワンルーム物件や、ファミリータイプの居住用分譲マンションなど。必ず、家賃収入から管理費や修繕積立金などの費用を差し引いて、実質利回りを計算しておかなければいけません。
【一棟アパート、マンション、シェアハウス】このあたりは、サブリース契約付きの新築物件投資も多いですね。なんやかんやあって、サブリースも信用されなくなってしまいましたけど。
【戸建】転勤などで引っ越して空家になる自宅を賃貸する場合や、投資目的で中古住宅を購入する場合、賃貸用のシンプルな戸建を数棟建築する場合などがあります。私が2棟目に購入した通称「不二子ちゃん」が中古の戸建でした。今となっては固定資産税を徴収される粗大ゴミですが…。
【駐車場】以前は土地所有者が必要に応じて舗装、塗装した土地を月極駐車場として賃貸するケースが主流でした。最近では、メンテナンスを任せて運用するコインパーキングが増加しています。徳島県では市街地で増加の一途をたどっていますが、供給過剰感が否めません。
【太陽光発電】売電価格が下がって太陽光バブルは終わったという話をよく耳にしますが、徳島県では雑草だらけの荒れ地が今でも太陽光発電パネルに変身しています。うらやましい!! …というのも、私が6月から勤務している会社は太陽光発電設備の販売や民泊を経営しているのですが、社長個人が太陽光発電投資を積極的に行っているので、今さら興味がわいてきました。
収益物件購入の勧誘をされたとき、「そんなに儲かるなら自分でやればどうですか?」と思うのですが、太陽光発電に関しては勤務先の社長が率先して投資しているので、本当に儲かるんだろうなと思いました。今後は中古市場も活発になるのではないでしょうか。
さて、私が実際にこれまで何を重視してきたのか、優先順で書いていきたいと思います。
1.競争力
「自分が便利だと思うんだから、みんなにとっても便利だよな!」って感じの軽いノリで、周辺エリアの空室状況など確認せず、スーパーや学校、病院、駅が近いかどうか生活環境ばかりを気にして物件を探していました。これは、返済に困ったときに売却しやすいだろうと考えての行動でした。実際にはローン残高と想定売却価格が折り合わず、売るに売れない状況になってしまいましたが…。
2.価格
物件価格ではなく、収入に見合ったローンかどうかということです。1棟目は全室空きになっても耐えられるように考えていましたが、調子に乗って購入した2棟目で資金繰りが急激に悪化しました…。
3.建築年月
昭和56年6月1日以降に建築確認済証が交付された建物、いわゆる新耐震基準かどうか。いつもふざけたコラムばかりだったので、今まで詳しく触れなかった部分です。
現在、南海トラフ沿いのプレート境界を震源とする巨大地震が危惧されている状況です。最悪の場合、静岡県から宮崎県までの広範囲にわたって最大震度7の巨大地震が発生し、10メートル以上の津波が到達すると想定されています。
過去の判例を参考に考えると、建物に欠陥が無ければ法的に問題はないということになります。しかし、法律さえ守っていればどうなってもかまわないというのは乱暴な考え方だと思います。
気をつけなければいけないのは、昭和56年6月1日以降に建築された建物がすべて新耐震基準に適合しているとは限らないということ。マンションなどの場合、建築に時間が必要となるため、昭和56年6月1日より前に建築確認済証が交付されている可能性もあります。
ちなみに、木造住宅は平成12年にも建築基準法が改正されているので、平成12年6月1日以降に建築確認済証が交付されていれば、より安全だと考えられます。もちろん、新耐震基準であれば絶対安全ということではありません。この数年間に発生した地震で倒壊した建物もありますが、倒壊リスクは減らせると思います。
私が今、初心者だったら
大変お待たせいたしました! ようやく本題にたどり着きました!「さっきと順位が変わっただけじゃん!」とか言わないでください。やっぱり中古の一棟アパートか一戸建を購入します、なんて言わないから!
1.建築年月
前述したように、ここだけは考え方を変えようとは思わないので、今後も意識を変えることはないと思います。今になって順位が繰り上がった理由は、2棟目に購入した戸建物件が影響しています。
昭和58年築の新耐震基準で、購入時点では賃貸中だったこともあり、室内を確認しないまま購入しました。退去(というか、夜逃げ&強制執行)後に室内を確認したところ、雨漏りやシロアリが発生した形跡がありました。また、1階がほぼワンフロアの状態で柱の少なさに違和感があったり、後から継ぎ足したであろう真新しい柱の存在も気になりました。建築確認番号は発行されていますが、ただただ、ただただ不安しかありません…。
2.価格
今までより安い物件を購入しようという意味ではなく、無理なローンにならないように返済計画を立てたいと思います。ローンを支払うための転職なんてしたくない!
3.競争力
競合物件との競争力や、賃貸需要を意識して検討していきたいと思います。一棟目のアパートは生活環境ばかりを意識していましたが、実際には競合物件が多数あり、供給過剰エリアでした。
結論
建築年月、返済計画の立てやすさ、競争力を意識して出した、今回のテーマに対する結論は、【もっとお金を貯めてから】【新築】【木造】【一戸建】【カーポート付き駐車場2台】【売電用太陽光発電設備】です。
【新築】建築年月、返済計画の立てやすさ、競争力のすべてを兼ね備えるとなると、やはり新築になります。
【木造】建築コストの安さで木造にします。築古物件であれば耐震性に不安がありますが、新築であれば耐震性に優れた住宅も数多く販売されていますので、不安は軽減されると思います。
【戸建】一棟アパートを新築となると金額が大きくなってしまうので、一戸建にします。また、競争力を考慮しても一戸建に軍配が上がるのではないかと思います。
【カーポート付き駐車場2台】徳島には電車がありません。トロッコです。ウソです。ディーゼル気動車という聞き慣れない車両が走っています。ディーゼル気動車については各々で検索してください(丸投げ)。
徳島県にも鉄道はありますが、1時間に2本ぐらいしか運行されていません。極端なクルマ社会で、車を複数台所有している家庭も数多くあります。当然、賃貸物件でも駐車場は必須の条件となり、ファミリータイプともなれば2台分は必要になります。
【太陽光発電設備】限られたスペースで運用効率を上げると同時に空室リスクのダメージを軽減するため、住宅とカーポートの屋根に太陽光発電設備を設置します。太陽光発電設備に関しては設置コストが上乗せされることになりますので、実質利回り次第といったところでしょうか。
有言実行したいのですが、お金がありません。【もっとお金を貯めてから】実行したいと思います。
(堀之内名人)
プロフィール画像を登録