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無縁社会が叫ばれるなか、自死はもちろん、誰にも看取られずに命を落とす人が増えている。楽待新聞でも以前、孤独死が起きたと見られるアパートの一室で特殊清掃の現場を密着取材した。

高齢化が進む日本では、高齢者の孤独死対策が急務。自治体や民間企業が「見守りサービス」などを展開しているが、解決の目処は立っていない。孤独死はどのように起きるのか。そして数多あるこうした見守りサービスはなぜ普及しないのか。

第一発見者しか知らない「現場の壮絶さ」

「多くの場合、第一発見者となるのは私たち不動産管理会社や大家さん。その精神的ダメージは計り知れないほど大きいです」

管理会社に勤務し、千葉県内を中心に2000軒以上の物件を管理している藤原忠義さん(44歳・仮名)はため息交じりにこう語る。

「20年以上この仕事をしていますが、入居者が亡くなっている現場を何度も見てきました。自然死は数知れず、自死も5件ほどありました。特殊清掃をお願いした『事故物件』は10件ほどでしょうか。2年に1回のペースです。最近では独特の異臭で判断できるようになりましたので、すぐに警察を呼ぶようにしています」

藤原さんがいままで一番つらかったのは、入浴中にお亡くなりになったケース。溶けるように腐食が進み、浴槽の中でどろどろの状態になっていたのだという。

「他に、室内がゴミ屋敷状態になっているケースもありました。ビールの空き缶やコンビニ弁当の容器が地層のように重なっているのですが、一番上にあったのは栄養ゼリーのゴミの層で、その上にご遺体があったんです。栄養ゼリーしか食べなくなったら末期、ということなのかもしれません」

ゴミの上で亡くなっていたお年寄りの変わり果てた姿が、いまだにフラッシュバックすることもあるという。

孤独死は男性に多い

日本少額短期保険協会の調査によると、亡くなってから発見されるまでの期間は、男性の場合は平均20日、女性は7日ほどだという。

女性の方が男性よりもコミュニケーション能力が高い事が多いので知り合いも多く、発見が早くなるのだそうだ。内閣府の調査でも、高齢の男性のほうが地域との接点が少ない傾向にあるという結果が出ている。

「私が経験した中では、発見が遅れたケースはすべて男性でした。高齢になると、特に男性は付き合いそのものが億劫になるのかもしれません。女性の多くは、家族や友人からここ数日見かけないと連絡があって住まいを訪ねるのですが、独居の高齢男性の場合はこのような連絡はまずありません」(藤原さん)

孤独死の現場は後処理も大変だ。遺体は市役所に引き取ってもらうが、入居者の所有物は大家が引き取ることもあるという。藤原さんの管理物件で孤独死が起きた際、亡くなった入居者の所有物に奥さんのお骨や仏壇、位牌のようなものもあった。そのときは、知り合いのお寺に収めさせてもらったそうだが、これ1つとっても手間がかかって大変だったという。

急落する事故物件の資産価値

自然死、自死ともに特殊清掃を依頼するような重篤な「事故物件」のケースでは、物件の資産価値低下によるダメージも大きい。

発見が早い、あるいは寒い時期の病死で部屋にダメージがまったくなかったとしても、他の入居者が「気味が悪い」と退去していき、空き室になることもある。部屋の汚れといった目に見えるダメージだけではなく、アパート全体の評判が一気に下降するのだ。

「事故物件も、都会なら2~3割家賃を下げれば、医療関係者とか葬儀関係者の方が入居するなんていう話もあります。しかし私の管理物件があるエリアでは、家賃を下げてもなかなか入居者は見つかりません」

こう藤原さんが言うように、事故による空き室リスク、資産価値低下は都会よりも郊外や地方のほうが深刻なようだ。

また、住人が亡くなった以上、部屋の整理をはじめとする原状復帰にかかる費用、その後の事故物件としての家賃設定など、問題は山積み。リフォームが必要な場合はなおのことだろう。

少額保険で窮地を脱した大家

アパートやマンションの管理を管理会社に委託していても、事故物件化してしまえばお金の問題はどうしてもつきまとう。まして個人オーナーの場合だと、泣き寝入りということも少なくない。

西東京市を中心に4棟のアパート経営をする鏑木克彦さん(58歳・仮名)も数年前、所有物件で孤独死が発生。リフォーム費などの費用が回収できなかった大家の1人だ。

「保証人は引っ越して行方知れず。八方手を尽くして探し出したのですが、生活が苦しくてとても払えない、ということでした。その保証人の元を尋ねると築古の風呂なしアパートに住んでいて、たぶんお金がないというのは本当なんだろうなと思いあきらめましたが」

お金も手間もかけて孤独死があった部屋の後処理をし、なんとか一歩を踏み出せたのは「保険のおかげだ」と鏑木さんは言う。孤独死に特化し、一戸あたり月々300円の掛け金で原状回復費補償100万円、事故後の空き室、値下げ家賃保証200万円などがカバーされる保険に加入していたのだ。

「自分の物件に限ってこういう事件は起きないと思っていたのですが、あるものですね。金額的には数十万円ほど足が出ましたが、保険に加入していなければかなり厳しい状況になっていたと思います」

孤独死による損害をカバーする保険には、火災保険の特約として付加されるもの、また少額短期保険(ミニ保険)などいくつかの種類がある。補償内容は、原状回復費や家賃損失、遺品整理費などが多い。基本的には1棟全戸で加入する必要があるが、保険会社が提携する見守りサービスとの連携などを条件に一戸から加入できる保険商品も登場している。