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2019年10月から消費税が8%から10%に増税されます。消費税増税は、消費者や事業者にとってコストアップになるので、正直両手をあげて喜ぶ人はほとんどいないと思います。
景気に与えるダメージは相当大きいでしょう。でも、もう過去に2回延期になっているので、また次回も延期になる可能性も。二度あることは三度あるとも言いますし(笑)。
自社で建てなかったマイホーム
今、消費税増税前にマイホームを建てようと計画している人が、多く住宅展示場に訪れているようで、住宅業界は期待感にあふれています。
私のリタイア以前、つまりサラリーマンの時は、業界最大手のハウスメーカーに勤務していました。過去の消費税増税前の「かけこみ需要」はとても旺盛で、大忙し。業者は寝る間も惜しんで、猫の手も借りたいくらいな状態でした。
一生に一度の大きな買い物であるマイホーム。せっかくなら、一流メーカーで建築したい。そんな思いのお客様から、多く支持されていました。
私が入社して2年目くらいの時です。上司から「そろそろ家を建てたらどうだ?」と、そんなアプローチを受けたのが32歳。実は私、マイホームの計画をしていました。大手ハウスメーカーに勤めている私ですから、自社で建てるのが普通です。しかし、私の家は自社で建てることはしませんでした。
では私がどこで自宅を建てたかというと、全国に展開する「ローコスト住宅会社」です。
「ローコスト住宅」のメリット
ローコスト住宅とは、建物のオリジナル規格に合わせて建築部材メーカーに部材を大量発注、仕入れコストを下げて販売している住宅です。低コストになることで建物価格も下がります。
ローコスト住宅といっても使っている部材は、ちゃんとした名のあるメーカー品なので品質は問題ありません。
規格から外れると他の住宅メーカーと変わらなかったり、割高になったりするデメリットもありますが、自分の実現したい新築物件がそのメーカーの規格にうまくはまれば、お値打ちに家が建てられるのです。
自宅の新築時、自社のハウスメーカーで建てるのを辞めた主な理由は以下の3つです。
○建築コストが高い
ハウスメーカーだと坪60~100万円程かかるが、ローコスト住宅であれば坪20~30万円で建てる事ができる。
○住宅建材 設備の性能の差がほとんどない
ハウスメーカーオリジナルと一般メーカー品とで、住宅建材、設備の性能は、通常使う機能を考えればほぼ変わらない。
○ハウスメーカーはオリジナル性が高く、修繕時の部品調達に困る
ハウスメーカーはオリジナル性が高く差別化が図れるが、修繕の時に部品が生産完了してしまっていると、ホームセンターなどで手に入れることができないことが多い。また、他で手に入らない分、メーカー側の言い値になってしまう。
この3つに共通することはコスト面です。
もちろん、マイホームはステータスシンボルでもありますから、「一概にコストだけで判断するというのはいかがなものか」というのも理解できます(笑)。
ただ、大手のハウスメーカーで建てるのとローコスト住宅会社で建てるのでは、建物の大きさにもよりますが1000万円以上、建築コストが変わってきますので、金利を含めるとかなりの金額になってしまいます。
私は、住宅業界を建築から取り壊しまで見てきましたが、新建材を使用した家は20年も経てばかなり傷んでしまい、リフォームするにも1000~2000万円の費用がかかってしまいます。小さい家なら1軒建ってしまうくらいです。
だったら、最初にローコスト住宅を建てて、20~25年で完済したころに新しい設備の備わった新しい家を建てればよいと考えました。
そのころにはライフスタイルも変わり、子供も独立して大きな家はいらなくなりますし、もし同居するようであれば2世帯住宅を建てればよいわけです。そのころにはローンの残債が少なくなり、完済していればその分の選択肢が増えます。この部分にスポットを当てると、私としてはハウスメーカーよりもローコスト住宅に魅力を感じていました。
「大手だから安心」神話は崩壊
一般的なローコスト住宅のイメージで考えると、「安いけど、本当に大丈夫なの?」という不安が付きまとうと思います。私も例外ではありませんでした。
そのため、ローコスト住宅の会社を何社か現場から完成まで厳しい視点で見学しましたが、ほぼ、問題ありませんでした。1社「安かろう悪かろう」の会社もありましたが…(苦笑)。
職人から営業、現場監督、アフターサービスまで一連の流れを経験してきたのが私の強みなので、そこはシビアに見ていました。私の属性を知ると、会社側からはとても警戒されましたが、冷やかしでもなく、フェアに話をしたので逆に安心してくれたようで、親身になって質問に回答してくれました。
ローコスト住宅といっても、地元で実績がある工務店がフランチャイズ(FC)で施工していることが多く、そういった工務店は厳しい審査を受けてFC認可を受けています。
そういった意味でも、職人魂を持ったメンバーが作る家なので安心です。心配の多いアフターサービスも、FCとして看板を背負っており、システムができています。
例えば、建物の引き渡し後、3カ月、1年、2年、5年、10年、15年…と長年にわたり、定期的に建設した住宅会社もしくは提携する会社が訪問し、建物の内外装を点検したり、建具や設備機器などの不具合のクレームを受け付けてくれたり。
テレビCMもしている誰もが知るハウスメーカーでも、アフターサービスシステムが「絵に描いた餅」のこともあるので、引き渡し後のサービスが機能しているかは押さえておきたいところです。ちなみに、そのシステムがちゃんと機能しているかどうかは、その会社で建築したお客様を紹介していただいて聞けばわかりますよ。
昨今のアパート・マンション建設の業界において、「大手だから大丈夫」、「テレビCMで話題だから大丈夫」という神話は崩壊しています。高いお金を払って(安くてもそうですが)、悔しい思いはしたくないですよね。
ローコスト住宅は賃貸住宅でも
不動産賃貸事業で新築を建てる時も同じです。
ハウスメーカーの建てる建築物は、やはりコストが高いです。テレビCMなどの広告宣伝費はもちろん、オリジナル商品の開発コスト、それに伴う人件費に膨大な費用がかかっており、それが価格に反映されてきています。
その分を家賃に転嫁できれば良いのですが、なかなかできない。もちろん、ブランドメーカーは客付けには多少は有利になるでしょうが、同等の設備であればそんなに変わらない。それだったら初期投資で少しでもコストを下げて、キャッシュフローを上げたほうが、事業を運営することを考えれば有利です。
ただ、会社の倒産リスクを考えると大手の方が断然安心です。昨今では、ちらほらアパート建設会社の倒産の話がでてきました(スルガがらみが多いですが…)。どちらを選択するのが良いのか悩ましいところですが、ここで差が出てくるのは不動産投資家自身の「行動力」と「勤勉さ」です。
安くて良質、安心な会社を自分の行動力で探す事。地元の中小ゼネコン、工務店でも優秀な会社はいくらでもあります。例えば、ハウスメーカーや大手ゼネコンの一次下請け、二次下請けの実績を持ちながら、別の窓口で自社オリジナルの建物を作っている会社です。
このような建設会社は、大手ゼネコンなどのグループ会社のWEBサイトを検索したり、ハウスメーカーの下請け業者は何処の会社か担当者に聞いたりと、行動力を発揮すれば見つけられます。
ハウスメーカーや大手ゼネコンは業者と取引するときにその会社の与信調査をするので、危ない会社とは取引しません。このような会社に出会う事ができれば、安心です。
自社オリジナルの建設において、手抜き工事などの問題が発生し世間からバッシングをあびれば元請け会社からお咎めが確実にありますし、最悪、発注停止処分も…。
そういった点から考えても、コンプライアンスに意識が高い会社なのです。
(安藤新之助)
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