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こんにちは。このたび楽待さんから依頼を受け、リレーコラム執筆の依頼を受けました珠(岸登)と申します。コラムのお題は「今、私が初心者だったらこう動く!」。知識やノウハウは現在のままで、資産がない状態から「今」、不動産投資をスタートするなら、どういった手法や行動を選択しますか? というものです。

コラムの読者ターゲットとしては「物件は所有していないが、不動産投資を始めてみたい初心者」とのことなんですが、執筆するにあたり1点疑問がありましたので楽待さんに問い合わせてみました。

珠(岸登):この「資産がない状態」とはどのような状態でしょうか? マイホームを含めた家はもちろんでしょうが、金融資産、例えば株式や仮想通貨、現預金、車すら所有していない状態のことでしょうか?

楽待:ええ、何も持っていない状態です。

珠(岸登):何も? ビタ一文?

楽待:はい、ビタ一文です(きっぱり)

珠(岸登):マジかよ…

私、困り果てました。いくらなんでも無茶ぶりすぎないか? と思ったのですが受けてしまったものは仕方ありません(笑)。とりあえず書くだけ書いてみようと思い、指先に力(怒りじゃないよ)を込めてキーボードを叩いています。

さて、まずは私のスペックですが、下記のとおりです。

年齢…40代前半

住所…東京都内(自宅は賃貸です)

職業…コンサルティング会社経営(個人事務所のようなものです)

年収…数千万円(本業のみ、不動産収入は別です。独立して9年。年により多少変動はありますが、概ね±10%程度です)

家族構成…妻と子供2人

既存借入…不動産以外の借り入れはありません

年収はある方だとは思いますが、平たく言えば自営業者ですので属性は高いとは言えません。単に属性だけで言えば一部上場の大企業勤めの方、公務員の方、医師や弁護士と言ったエリート士業の方達のほうが遥かに上だと思います。そんなわけで私のコラムについては、初心者の中でも以下のような方が読まれると少し参考になるかもしれません。

・自営の方(本業の借入がない、または少なければなお良し)
・年収は高いけど金融資産があまりない方
・現在はお勤めだけどゆくゆくは卒業し、卒業後も不動産投資をしたいと思っている方

私が重視する「3つの要素」

リレーコラムの前提条件として「知識やノウハウは現在のままで」ということでしたので、まずは下図にて私の不動産投資に対する基本的なスタンスをご紹介します。

心・技・体ではないですが、

・あらかじめ「融資してくれる金融機関を見つけ」ておき
・正常な判断を下せる状態、つまり「肉体的精神的に不調でない」時に
・その金融機関の融資条件に合うであろう「物件」を探す

というのが私の基本的なスタンスです。私とスタンスが異なる人もいるでしょうが、10数年不動産投資をやって来て、結果的にこのやり方が無駄がなかったので、今ではずっとこれです。

そしてもう1つ意識している考え方は「1棟買って終わりではない」ということです。不動産投資を継続していく、買うチャンスがある限り買い続けるという考え方はゴールのないマラソンのようですが、不動産投資においては入居率を維持しながら規模を拡大することはリスクの逓減を意味します。手間は増えますが(笑)。

というわけで、ここからは図で挙げた「金融機関」「正常な判断力」「物件」という3つの要素について説明していきます。

金融機関:キーワードは「自己資金」

後述の「物件」とも関連しますが、多くの人が間違いを起こす源がここにあります。

多くの人はまず、楽待や他の収益物件検索サイト、はたまた知己の不動産屋さんなどを通じて物件探しから始めてしまいます。物件をたくさん見て、気に入った物件を見つけ、それを自分が選択した金融機関や、不動産会社が提携する金融機関に持ち込み、自分の属性書類を添付して融資を申し込む。

それはそれで正しいプロセスかとは思いますが、本人の属性によほど光るものがある、金融機関の担当者の力があるなどのラッキーがない限り、結局は断られてしまうことが多いでしょう。私自身もそういった経験がありますが、本来の順序で言えば、自分の職業や年収、自己資金といった属性を見極めて融資をしてくれる金融機関に狙いを定める。そして、その金融機関の融資条件に合致するような物件を選んでいくという順序が正解だと思います。

次ページで、2018年6月末時点で私が金融機関に直接、または信頼できる不動産業者から、はたまた不動産投資家仲間からなどを経由して確認した金融機関の融資条件を記載しようと思うのですが、どの金融機関においても共通して言えることが1つあります。それは「自己資金が無いと極めて厳しい」という点です。

少し前までは、年収が高い、勤務先の属性が良い、物件の評価が高いなどの高ポイントがあれば自己資金の少なさには目をつぶってもらえたケースもあったようですが、昨今のかぼちゃショック以来、手元自己資金がないと融資のテーブルにすら乗らないというケースを良く聞きます。

金融機関が保守的になっている(保全意識が強くなっている)ことの表れかと思いますが、私のケースように年収が高め…なのに、自己資金が無いという場合は

・本人に浪費癖があるのではないか
・家族を含めた生活水準に問題があるのではないか
・何かしらの隠れた負債があるのではないか

などと要らぬ邪推を呼んでしまい、人物評価的にNG、門前払いになってしまいます。実際に最近、不動産仲介業者さんから聞いた話ですが、40代半ばの某証券会社にお勤めで年収1800万のハイスペックサラリーマンの方が自己資金400万円しか持っておらず、オリックス銀行から融資を断られたという話もあります。

そんな訳ですから、まずは自己資金を貯めることに専念するのがベターでしょう。もどかしいかもしれませんが、急がば回れです。

では、どの程度自己資金を貯めておけばOKなのか? という問題ですが、概ね物件価格の諸費用分+αがあればOKですので、10%以上あれば融資のテーブルに乗ると思います(20%あれば、購入後のリフォームなどのテコ入れも含めてなお安心)。

私のケースを例に取ると、今年の春に東京都下、町田駅徒歩圏にある築25年の小ぶりなRC物件を4200万円、利回り10.7%で購入しました。このサイズの物件であれば500~600万円程度の自己資金があれば十分に対応できます。最初から億超えの物件を狙う人は滅多にいないと思われますので、狙う物件のサイズに合わせて自己資金をせっせと貯めるべきだと思いますが、私なら購入後のリスクと見せ金的な意味も含めて、節約を1年半~2年ほど頑張って1000万円は貯めてから始めますね。

さて、私が知っている金融機関の情報は下記です。

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上記の中にはもちろん私個人が利用していない金融機関も含まれていますが、それ以外の金融機関についても、

・私の弟が利用した
・信頼できる投資家仲間が利用した

ところばかりですので、情報については概ね合っていると思っています。ただし、金融機関は同じでも支店によって全く色が違うので、その辺はご容赦ください。

今現在の私から見ると横浜銀行、西武信用金庫あたりが使いやすい銀行なのですが、今回の条件である「年収はそれなりにあるけど金融資産が1000万円しかない」とすると、まず横浜銀行は外れてしまいますし、同様に関西アーバン銀行、りそな銀行も門前払いでしょう。

そしてもう1つのスタンスだった「一棟買って終わりではない」ことを考えると、購入時に頭金が掛かってしまう金融機関も再度キャッシュを貯める時間が勿体ないと考えれば、選ばないケースも出てくるかと思います。そうすると、一頭目を買う際に残されたルートは下図のとおり半分ほどになってしまいます。

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正常な判断力:「あばたもえくぼ」にご用心

何のこっちゃ。そんなこと言われんでも分かっとるわ。

そう思われる方ばかりかと思いますが、これが意外と落とし穴です。かくいう私もお恥ずかしい話ですが、5年ほど前に多忙を極めていた時、それまで何度か取引していた仲介業者さんからの薦めで区分マンションを購入しました。

何度か取引していたという安心感、概要書の字面だけは良かったのでほぼノールックに近い状態で借入を起こして購入を決めたのですが、購入後にさまざまな落とし穴があり、売却しようと心に決めてからも非常に難儀することばかりです。怖くて細かい計算が出来ていないのですが(避けているとも言う)キャッシュアウトだけでもおそらく2000万円近くになるでしょう。

しかも難儀なのは未だに売却できていないのです! 金融機関に対する返済、管理費および修繕積立金、固定資産税を含めると年間の返済だけで380万円程度になっており、それが未だに続いているのです。アホか、(当時の)俺。

コラムをお読みの方々にはぜひ私の失敗経験を他山の石としていただき、健康状態はもちろんですが、正常な精神状態の時に進めてもらいたいものです。土日もないくらいに忙し過ぎる時、仕事で行き詰まっている時、取引先や上司に腹が立って仕方がない時、彼女や奥様にエエとこ見せようと鼻息荒くなっている時、はたまた逆に不動産投資に対する気持ちが燃え上がっている時などは要注意です。

気持ちが燃え過ぎていると、物件の客観的目線よりも買いたい気持ちが先んじてしまい、気持ちが冷めた時に後悔がとめどない津波となって押し寄せてきます。いわゆる「あばたもえくぼ」状態にならないようにお気をつけください。

最後の「物件」ですが、これは上記で検討した金融機関によって変わってきます。「今、私が初心者だったら」と仮定した場合、私が選択する可能性があるルートは「西武信用金庫」「日本政策金融公庫」「三井住友トラストL&F」の3つでしょう。1つ1つ簡単にコメントしてみます。

◎西武信用金庫

検討スピード感は早く、エリアも割と広めに検討できますし、積算と収益還元を独自の視点で評価するのですが、私が今まで持ち込んだ物件は概ね評価が出ておりました。私なら、例えばですが下記のような物件があれば持ち込むと思います。

エリア:首都圏(東京都全域、神奈川県横浜市、川崎市、埼玉県さいたま市)

構造:RC造、鉄骨造、木造問わず。ただし新耐震基準で、大規模修繕されていればなお良し

価格:1億円以内

利回り:9%以上

融資期間は概ね25~30年組めるので、キャッシュフローに対する返済比率が40%程度に収まるような物件が理想

八千代(きらぼし)銀行は居住区で支店がフィックスされてしまうので、ダメな支店に当たってしまうと悲惨という意味で、使いやすさでは西武信用金庫に軍配です。ここのデメリットは頭金が必要になることの1点だけ。5~10%の頭金が掛かりますので(入口では20%と言われるケースもあるようです)、諸費用も合わせると12~15%の出費は覚悟しなければ、です。

◎日本政策金融公庫

全国対応は大きなメリットです。都内の支店は軒並み融資がストップしていますが、埼玉県と神奈川県の某支店ではいまだに15~20年での融資に対応してくれています。諸費用除いたフルローンも可能ですが、融資期間がマックス20年なので、よほど利回りが高めの物件を持ち込まないとキャッシュフローが出にくいです。西武信金同様に、条件を書いてみます。

エリア:全国

構造:RC造、鉄骨造、木造問わず。築古でも可。

価格:5000万円まで

利回り:15%は欲しい

融資期間は最大で20年なので、仮に利回り15%で買えればキャッシュフローに対する返済比率は約40%になります

◎三井住友トラストL&F

ここを用いる場合は共担が要ります。そんな訳ですから、最初に共担用として現金で小ぶりな戸建てや区分を先に購入しておき、再度お金を貯めてチャレンジする必要があります。

はっきり言って面倒ですが、築古だけではなく借地権、再建築不可、建ぺい率や容積率オーバーといった通常の金融機関では対応できない物件でも融資してくれるのは大きなメリットです。そしてフルローンですし、築古であろうと期間が30年組めるので高利回りの物件を購入出来ればキャッシュフローはかなり回ります。

さて、こうして金融機関別に見てみると、選ぶ物件のエリアや対象(一棟もの、区分、戸建て)は変わりますが、私が物件で最も大切にしているのはキャッシュフローだと分かっていただけると思います。キャッシュフローが出ていれば返済余力が増えるだけではなく緊急的な出費にも対応できますし、何より売却の際に話を進めやすい。そして私の基本的なスタンスである「一棟買って終わりではない」点を考えると、次に買う物件までの時間を短縮することが出来ます。

ケーススタディで考えてみよう

ここでは私の所持金が1000万円だとして、西武信用金庫、日本政策金融公庫で実際に購入した物件を用いてケーススタディをしてみます。不動産からの収支だけではなく、引き続き給与所得からの貯蓄は継続する(400万円/年あたり)とします。ただし、三井住友トラストL&Fでは物件を購入していないので、申し訳ないですが今回は割愛です。

【物件1】価格4200万円 RC造 東京都町田市 家賃収入450万円(利回り10.7%)

西武信用金庫にて、平成30年4月に購入。融資期間は25年、借り入れ金額4000万円で金利は1.5%でした。頭金と仲介手数料等の諸費用(不動産取得税も含む)で約480万円かかり、購入後のバリューアップに約70万円掛けたので現預金残高は450万円です。

1年後および2年後の現預金残高シミュレーションは下表のとおりです。何事もシミュレーション通りにならないのは世の常ですが(笑)。1年ちょっと経てば同規模物件なら購入出来る水準かと思います。

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【物件2】価格4800万円 RC造 福井県福井市 家賃収入760万円(利回り16.0%)

日本政策金融公庫にて、平成27年5月に購入。融資は期間20年、借り入れ金額4800万円のフルローンで金利は1.85%でした。仲介手数料等の諸費用(不動産取得税も含む)で約400万円かかり、購入後のバリューアップに約300万円掛けたので現預金残高は300万円です。

全戸ファミリータイプかつ、当時の空室(3室)に対してリノベに近いリフォームを施したので思ったより金額が掛かりましたが、お陰ですぐに満室になり、その後も高稼働が続いています。

所与の条件は【物件1】と同じとすると、ほぼ似たようなシミュレーション結果に落ち着き、1年後には同規模の物件を検討することが出来るでしょう。

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最後に

そもそもこのコラムのお題が、知識やノウハウは今のままとして「今、私が初心者だったらこう動く!」という仮定に仮定を重ねているところがあるので、ケーススタディを含めてこの通りにならないこともあろうかと思います。

コラムを読んでいただいている皆さま方には一つの可能性として考えていただければ幸いですが、私自身もこのコラムを書きながら、特に昨今の情勢においては、以前より「お金を持っていること」が重要で、お金で幸せは買えないながらも「選択肢は買えること」を再認識した次第です(笑)。

融資してくれる金融機関を色々なツテを伝って探すのも大切かと思いますが、金融情勢が保守的になっている今だからこそ、まずは貯蓄に目を向けてみてはいかがでしょうか。

(珠・岸登)