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スルガ銀行のシェアハウス融資をめぐる問題などの影響で、不動産投資家の間ではここ数カ月、金融機関の融資が引き締められているといった声がよく聞かれるようになった。地銀に関しては「サラリーマン向け融資が完全にストップした」「頭金の額や金利などの条件がかなり厳しくなった」などといった情報もあり、規模拡大を狙う投資家にとっては厳しい時代に突入しているといえる。

そういった状況の中、主に築古投資家の間で、自治体と信用保証協会、金融機関が連携して中小企業や個人事業主に資金を貸し出す「制度融資」の注目度が高まりつつある。「融資が厳しい今だからこそチャンスがある」と語る3人の投資家に、制度融資のメリット・デメリットや一般融資との違いについて聞いた。 

制度融資とは何か

まず、制度融資に登場する「信用保証協会」とは、中小企業や小規模事業者が金融機関から事業資金の融資を受ける際、保証人となって融資を受けやすくする公的機関。事業者は利息のほかに、保証協会への「信用保証料」を借入時に一括で払う必要がある。保証料は信用力などによって変わるが、おおむね借入額の数%程度になることが多いようだ。

制度融資とは、信用保証協会の保証に加え、都道府県や市区町村がバックアップする仕組み。借入人の利子負担を軽減するために金融機関に利子の一部を給付する「利子補給」を行ったり、保証料の一部を補助したりといった優遇策がある。

要件や融資限度額、貸出期間などの条件は自治体によって大きく異なり、収益物件の購入やリフォームで使えるかどうかは各自治体のスタンスに左右される。全国信用保証協会連合会は「それぞれの制度の要件や審査の流れなど、統一的な方法で運用しているわけではなく、どのような制度が使えるかどうかは各自治体に確認する必要がある」としている。

「自分にピッタリの制度」

「耐用年数超えの木造物件でオーバーローンが引けるのは公庫ぐらいしかないと思っていたので、本当にありがたい制度だと感じています」

楽待コラムニストの「不惑ラガーマン 仙台の良さん」は、これまでに中古アパートを中心に5物件の購入で、岩手県の制度融資「商工観光振興資金」を活用。すべてオーバーローンで、総額1億円近い融資を受けている。

最初にこの制度を活用したのは、2014年7月に購入した岩手県盛岡市の築30年の木造アパート。利回りは20%ほどで、物件価格1050万円に加え、信用保証協会への信用保証料など諸経費込みで1150万円の融資を受けた。金利は2.3%で、期間は15年だった。

「欲しい物件でしたが、耐用年数超えで満額融資が出ることはないと思っていました。そんな時に、地元の地銀の担当者から『満額どころかオーバーローン出せます』と紹介されたのが制度融資。存在自体は知っていたんですが、アパート経営でも使えるというのは全く知らなかったんです」

岩手県の「商工観光振興資金」は、県内に事業所のある中小企業者に設備改善や事業推進の資金を融資する制度。設備資金の場合は上限1億円で、融資期間15年以内、利率2.3%以内という条件になっている。「自分にとっては、保証人が必要ないというのも大きなメリットでした。妻の理解が全く得られていなくて、地元の地銀では保証人ネックで断られたりしていたので、自分にピッタリの制度だと思いました」

優秀な銀行員に感謝

この物件を購入した5カ月後には、同じく盛岡市で築33年、利回り27%の木造アパートを1800万円のオーバーローンで取得。その後もこの制度を使って2000~3000万円程度の築古物件を買い増し、昨年にも2000万円の中古アパートを購入した。

スルガショックを受けて金融機関の融資姿勢には変化が現れているが、制度融資の場合はそれほど影響がないようだ。「5月ごろに地元の金融機関の支店長に聞いたところ、制度融資も含めて『いい物件があれば協力させていただきます』という反応で、まだ普通に出るんだなと感じました」

今後も制度融資の活用は積極的に検討していく方針だという。「地方・築古の高利回り物件を狙っている自分としては、この制度融資がアパートにも使えるということを見つけた優秀な銀行員に心から感謝しています。制度融資を使わなかったら絶対に買えない物件だったと思いますし、キャッシュフローを重視する人にとっては非常に有効な制度だと思います」

優遇策をフル活用して早期返済

町田市でシェアガレージ付きのバイカー向け物件を運営しているはなぶんさんは、2016年にこの物件を法人で購入するにあたり、自宅がある多摩市の「中小企業事業資金貸付けあっせん制度」を利用した。購入当時築31年の木造アパートで、物件価格780万円に加え、リフォーム費なども含め930万円の融資を受けた。

多摩市の制度融資を使った一番の理由は金利の低さ。この制度で借りた場合の金利は1.975%で、利子補給が1%。「金利0.975%で借りられるのは住宅ローン並みですよね。保証料も数万円で、半額を多摩市が補助してくれたので助かりました」

融資期間は最長の7年。「早く返済したかったので好都合でした。一般融資も検討していましたが、当然金利が高い分返済期間が長くなってしまうので」

この制度を紹介してくれた商工会議所に物件概要や事業計画書、経歴書などを提出し、10以上の金融機関から借入先を選ぶことになった。「今後の融資の足掛かりになると思って」、あえて付き合いのなかった八千代銀行を選択。信用保証協会の事務所で面接があり、物件の利回りや返済計画、コンセプトについて説明した。

審査については「一般融資より緩いという印象で、期間も2、3週間ほどと極端に長いとは感じませんでした」と振り返る。「次回以降にこの制度を使う場合は面接も必要ないということなので、もう少し早くなると思います」

物件は町田駅から徒歩15分で、1K×4室。バイカー向けにリノベーションし、リフォーム費込みで利回りは20%を超える。順調に返済が進み、2023年には完済の見通しだ。

「制度融資のメリットは、なんといっても金利が低くて返済が早く進むことです。多摩市の場合は融資限度額が2000万円なので、この物件以降はなかなか条件に合う案件がなく使っていませんが、銀行が貸してくれない今こそ活用すべき制度だと感じています。各自治体によって条件が違うので、まずは制度について調べてみてほしいと思います」

はなぶんさんのバイカー向け物件

築古リフォームに有効活用

物件購入ではなく、リフォームに制度融資を活用するオーナーも多い。

楽待コラムニストの上田ジョニーさんはこれまで、個人・法人合わせて計4物件のリフォームに東京都の「小口零細企業保証制度」を活用した。アパートや戸建ての室内リフォームや外壁塗装で、金額は1物件につき200万円ほど。いずれも同じ信金から、金利2.5%、10年で融資を受け、数万円の保証料のうち都から1/2の補助を受けている。

最初に制度融資を使ったのは、2016年7月に購入した柏市の築37年アパートの室内リフォームだった。「当時は大家業2年目で10棟・50室ほどを所有していましたが、リフォームローンを短期間で連続して受けるのは難しく、他の金融機関に相談して断られたりしました。一般的なリフォームローンでは難しいと思っていたところだったので、制度融資は築古物件オーナーの『救世主』のようなものだと感じました」

金融機関に提出する資料は一般融資と大きく変わらないという。「ただ、信用保証協会の審査では追加資料を求められることがあります。各物件の毎月の収支明細を一覧でほしいと言われましたが、これは他の一般融資で提出を求められたことは一度もなかったので少し驚きました」

最もメリットに感じているのは、審査の通りやすさだという。「金融機関からすれば、仮に貸し付けた相手が破綻した場合でも保証協会がバックについているので貸しやすいんだと思います。信金の担当者も『稟議が書きやすい』と言っています」

実際の審査については「一般的なプロパーローンの方が断然厳しい印象」と語る。「信用保証協会は中小企業の保証人として企業育成を行う公的機関なので、中小企業のバックアップに積極的なんだと思います。逆にデメリットは審査期間が長いこと。私の場合は融資実行まで2カ月かかった物件もありました」

はなぶんさんと同じく、不動産投資に対する融資が厳しさを増す中だからこそ制度融資を活用する価値はあると感じている。「制度融資はマーケットの影響をほぼ受けないと思うので、こういう時期にこそ使うべきではないでしょうか」

制度融資は低金利で融資が受けやすい一方で、金融機関と信用保証協会の両方の審査があり、日本政策金融公庫と比較して融資実行までに時間がかかるケースがある。また、基本的には会社所在地の自治体の制度融資しか利用できず、融資限度額や最長借入期間などの条件が自治体によって異なるため、利用できる物件が限定的になるという面は否めない。

ただ、マーケットの影響を受けにくい制度であることを考えると、各自治体で使える制度があれば試してみる価値はありそうだ。東京都産業労働局によると、例えば東京都の制度融資の場合、上田ジョニーさんが活用した「小口」のほか、「小規模企業」「事業一般」「設備更新」なども収益物件の購入やリフォームに使える可能性があるという。

はなぶんさんのように商工会議所を通じて申請するケースもあるが、まず制度融資を利用したい場合は金融機関に相談するのが近道といえる。東京信用保証協会によると、「直接信用保証協会に相談にこられるケースはないこともないですが、金融機関の方で『保証が必要ない』と判断されることもあるので、まずは金融機関に説明していただく方がいいと思います」という。

全国信用保証協会の担当者は「制度融資の審査は不動産融資の動向に影響を受けることはそれほどないと思います。ただ、不動産賃貸業に限らず、事業性があるかどうかをチェックしているので、投機性が高いと判断すれば審査のテーブルにはのりません」と語る。まずはどのような制度融資が利用できるか調べたうえで、一般の融資と同様に事業性、収益性をアピールすることが重要になる。

(楽待新聞編集部・金澤徹)