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はじめまして。IT大家の佐藤と申します。この度ご縁をいただき、連載コラムを執筆させていただくことになりました。

都内在住で、大家業をはじめて12年ほどになります。元々インテリアやリノベーションが好きで、20代の時に東京の五反田に区分マンションを購入。セルフリノベして住み始めたところから不動産投資人生がスタートしました。

その後、結婚をきっかけにその区分は売却し、幸運なことに売却益が出たのでそちらを種銭にして、今度は千葉県茂原市を中心に築古高利回りボロアパートを4棟購入。空室率の高さに苦労しながらも、再生して高家賃で稼働させるスタイルで本格的に不動産投資に参入していきました。

それらはここ数年で全て売却し、そこからは新築アパートにシフト。土地から仕入れて設計した新築アパートを東京都足立区と神奈川鎌倉市に2棟建てました。その頃、人生の後半戦を色々と考えるようになり、会社での仕事も大好きだったのですが一度サラリーマンを卒業することにしました。

大家視点でITを読み解き、取り入れていく

現在は大家業を自主管理で行う傍ら、住まいに関するサービスを作ることに挑戦中。それまで大家をやってきて苦労した経験を元に「チェックル」という大家さん向けの空室募集分析サービスを運営しています。

このサービスは、自分の物件やライバル物件の空室情報がどのポータルサイトに、どの仲介会社から、いつからいつまで出稿されているかが無料で簡単にわかるというものです。空室募集時の参考や、新規購入を検討している物件の事前調査用に使えるようになっています。

さて、ここまでの経歴を見て頂いておわかりの通り、私は大規模に賃貸運営を拡大させているわけではありませんし、とんでもない高利回り物件を持っているわけでもありません。それでも、以下のような私のバックグラウンドが、少しでも読者の皆様のお役に立つのであれば、とコラムを執筆することにいたしました。

・ITサービスの事業経験があり、また現在も行っていること

・職業柄、新しいITサービスやプロダクトが好きで、国内外の事例などの情報収集をしていること

・人々の暮らしや住まいの変化にとても興味があること

・実際に大家業を12年ほど経験していること

本コラムでは今後、各種ITサービスをうまく活用した効率的な自主管理方法や、日々進化していく新しいサービスを大家視点で紹介していき、実際の賃貸経営にどう生かせるのかを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

すでに実現しつつある「未来」を目撃

新しいITサービスやプロダクトと言われても、実際の賃貸経営にどう関係があるのかいまいちピンと来ないという方もおられるかも知れません。

そこで、「例えばこんな話」ということで以下に一例を挙げます。こちらの写真は最近私が実際に見学して、衝撃を受けたとあるお部屋です。

「bento」のブランド名で展開中のリノベーション物件。写真はその第一弾となる立川の団地の事例

実はこちら、友人の大家が設計から施工まで独自に手掛けた自宅兼ショールームです。築40年強の古びた団地を見事にリノベーションし、スマートホーム(さまざまな家具や家電などがインターネットにつながれた次世代型ハウス)として再生させています。

団地物件にあえての近未来感たっぷりな内装はそれだけで大きな驚きがありますが、この物件のポイントはそれだけではありません。「家事省力化による圧倒的な時短」というテーマのもと、30カ所以上にスマート家電を設置して共働き家庭の家事負担を大きく減らし、生活者目線で「快適な生活を提供すること」に徹底的にこだわっています。

室内に導入されているのはスマートキー、スマートドアホン、スマートスピーカー、自動照明、自動水栓、自動調理グリル、自動食器洗浄器、自動洗濯乾燥機、自動掃除機、自動折り畳みロボット等々…と多彩でしたが(ペットの猫ちゃんの餌やり&トイレまで自動運転でした!)、彼はすでに発売されている1つ1つのスマート家電を丹念に調べ、使い方を吟味し、組み合わせ方も含めて選定しており、とても快適な住空間を作り上げていました。

例えばキッチンには写真左下のような投影型スマートデバイスが設置されていたのですが、スマートスピーカーと連携させることで音声とジェスチャーだけで操作することができ、調理中の手が汚れた状態でも快適にレシピを調べたり音楽やテレビを楽しむことができるなど、毎日の家事動線が考え抜かれた工夫が随所に凝らされていました。

私もスマートホーム化については以前から関心があり、個人的に調べたことがあるのですが、スマートホームと銘打つ各社の製品やシステムはいまいち使い勝手が悪そう、かつコストも高くつきそう、という印象で、「まだ賃貸物件への導入検討は早いかな」と感じていました。

しかし彼の話を聞いて私も色々とヒントをもらい、保有中の賃貸物件にも転用できそうな、後付けでお手軽スマートホーム化するアイデアを思い付きました。

次に退去が出たら試してみようと今、自宅で実験しているところです。このあたりの詳細はまた後日まとめようと思いますが、例えばわずか1.5万円ほどの投資でスマートリモコンとスマートスピーカーを設置するだけでも、入居者にとっては毎日の暮らしがとても便利になりそうな手ごたえを感じています。

既にWi-Fiを無料で提供している物件であれば、スマートリモコンやスマートスピーカーなどの設備でさらに付加価値をつけていくことは難しくないはずです。またある調査では、ひとり暮らしをする人の約半数がIoT(Internet of Things:家電など身の回りのものがインターネットにつながる仕組みのこと)化された賃貸住宅に住みたい、と考えているという調査結果も報告されています。入居者の目にも魅力ある特徴として映るのではないでしょうか。

不動産業界は変化の遅い業界の代表例としてよく挙げられていますが、IT化をはじめいろいろな新興技術が不動産各領域に徐々に浸透し、このような「既に起こりつつある未来」の風景がそこかしこに出現しはじめています。我々大家も、それらをキャッチアップしながら、どう読み解き、どのように自分の経営に取り入れていくかを考える必要があります。

不動産テック、大家はおいてけぼり?

世の中では「フィンテック」に続き、「不動産テック」(Real-estate Tech:Re-Tech)というキーワードもよく耳にするようになりました。とはいえ、不動産テックというと少し仰々しい響きがありますし、自分ごととして考えづらいかもしれません。

また日本の不動産テックと呼ばれる企業はToBビジネス、つまり不動産会社を相手にするサービスを展開していることが多く、我々大家はその影響や恩恵をあまり感じることはありません。

我々大家はテック側から「おいてけぼり」を食らっているとも言えます(実は海外では、大家さん向けのITサービスを提供する企業は多く存在しているのですが、業界構造や商習慣の違いからか、日本ではなかなかそのようなサービスが育ち辛いのが現状です)。

しかしそれでも10年前に比べたら、今の我々はすでに多くのITを抵抗なく取り入れ使いこなしていることに気づきます。物件購入を検討する際、現地調査前に「GoogleMap」や「Googleストリートビュー」をスマホで確認することは当たり前になりましたし、賃料の相場確認や収支シミュレーションなども事前に簡単にできるようになりました。大家同士のコミュニティもLINEなどのSNS上で運営されることが多くなりましたよね。FAXはまだなくなりませんが(笑)、e-FAXとしてメール上で送受信できるようにはなりました。

台頭する新サービスを賃貸経営に取り入れる

そして、ここ10年の進化はほんの始まりに過ぎなかったのだと後で振り返ることになるくらい、これからさらに大きな変化が次々と賃貸経営にも訪れようとしていることを予感しています。

例えば、国内には既に多くの賃貸ポータルサイトがありますが、DIYやデザイン物件、高齢者専門、ペット専門などテーマ特化型で入居者を募集できるサイトも立ち上がっています。さらには大家と入居者を直接マッチングするCtoC型のプラットフォームも徐々に浸透してきていて、市民権を得てきた印象はあります(ちなみに海外では賃貸の客付けを大家さんが独自に行うことは当たり前になっていますし、多くのサイトでリスティングが自由にできるようになっています)。

私は自主管理を行っていますが、上記のような集客サイトは一通り調べ、保有物件と相性がよさそうなものは一通り使ってみたりしています。自分の物件が集客サイトのコンセプトと合致するとやはり反響もよく、集客にはまだ工夫の余地はあるものだと感じます。

また賃貸管理を効率的にサポートする仕組みとして、スマートキーを活用したセルフ内覧や、店頭にいながら物件の見学ができるVR内覧、またIT重説の解禁や賃貸契約の電子化などはここ近年の各種イベントフェアでも毎回大きく特集されています。ここらへんの話は順次、普及段階に入ってくると見て良いと思います。

こうした賃貸経営の省力化の流れが進むと、まず最初に仲介会社がダイレクトに影響を受けることになりますが、大家側でもこのトレンドにどう対応していくかを真剣に考え、仲介会社と協調しながら対処していく必要があります。将来、これらに対応していないことが客付け時の機会ロスにつながる可能性があるからです。

その他でいえば、入居後の自主管理においても私は多くのWEBサービスを活用して効率化しています。例えば入居者とのやり取りには、1対多数も1対1もどちらのコミュニケーションも自由に行えるサービスである「LINE@」を使っていますし(使えば使うほど自主管理を行う上での最強ツールだなと感じています)、大家さんの管理業務をサポートしてくれる各種クラウドソーシングサービスもだいぶ豊かになってきましたので、ハウスクリーニングや修繕などを見積から発注、完了報告までスマホのみで完結させることもできます。ひと昔に比べると、諸業務が圧倒的に効率的になってきていると感じます。

さらに長期的な観点から見てみても、現在から2050年までの社会情勢や人口動態の変化は急激です。そこに技術革新のスピード加速もあいまって、今時点の非常識が5年後10年後の新常識になっていることが十分に考えられます。

「大家さんテック」で一歩進んだ賃貸経営を!

冒頭のスマートホームもそうですが、例えば海外では3Dプリンターが建設業を革新すると言われています。低コストで簡易な戸建てが、1週間たたずに建設できてしまう時代が来るかもしれません。

自動運転が2020~2030年頃までに本格浸透し、また自宅や職場以外の場所で仕事をする「テレワーク」が当たり前になった場合、従来価値が低いとされていた郊外や田舎の土地が見直されるなどの逆転現象が起こる可能性もあります。

賃貸運営は息が長く、長期間での融資を前提に事業計画や資金調達をすることがほとんどですから(今30年の融資期間で物件購入ということは完済は2050年近くになります!)、このような、今は予想できない大きな変化にも複数回、遭遇することになるかもしれません。

ここまでいくつか例を出してみましたが、このコラムでは、そのような短期的・長期的に大家さんの立場から見て有用になりうる新興サービスやその活用術や知恵・工夫のことを、不動産テックならぬ「大家さんテック」と密かに呼ぶことにしたいと思います(ええ、ダジャレです(笑))。

次回以降、「大家さんテックを活用して、大家さん自身で一歩進んだ賃貸経営を」というテーマで、新興ITサービスや技術をどのように日々の運営に取り込んでいくかを、現役の大家さん目線から読み解いていきます。経験談をベースにわかりやすく解説・考察していき、皆様と一緒に賃貸運営のアップデートを図っていけたらと考えています。

というわけで、明日から使えるライフハック的なものから、今は妄想段階だけど大きな変化の兆しまで取り上げて、自分の運営談も交えつつ考察していきたいと考えています。

それでは皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

(IT大家の佐藤)