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先日、一定の建築施工管理者に必須となる監理技術者講習に参加してきました。この講習は、5年に1度受講することが建設業法で義務付けられています。講義の内容には、不動産投資にも影響するであろうトピックも多々含まれていました。

まず気がかりなことは、建築に携わる労働者の不足です。平成9年では685万人いた建設業就業者が、平成28年では492万人に減少しています。約20年の間に193万人の建設業就労者が減っているのです。割合にすると、平成9年の約70%程度になっているわけですから、非常に深刻です。

さらにはこれから先、少子化や若者の建築業離れによる労働者不足も想定されています。ただ講習では、悲観的な未来だけではなく、技術革新により省人化や省力化ができる技術も紹介していました。減少した労力をすべて補うことは難しいでしょうが、これからの建築技術の進歩でできるだけ労働者不足に対応してもらいたいものです。

物件の修繕費、何にどのくらいかかる?

さて、今回は「修繕費」について考えてみたいと思います。修繕費は、不動産投資で避けては通れない出費。入退去時をはじめとして、建物や土地の経年による不具合で修繕が発生します。大家さんにとってはとても悩ましい問題です。

特に大きな出費を伴う修繕としては、外壁塗装や屋上防水が思い浮かぶのではないでしょうか。確かに外壁塗装や屋上防水は、最低でも7桁の出費が必要となります。しかしその他にも、多くの方が意識していない所で意外な出費が必要となることがあります。例えばエレベーター(EV)は20年程度で更新が必要になりますし、給排水配管等の管種によっては25年程度で寿命を迎えるなんてことをご存知の方は少ないでしょう。EV更新にしても配管のやり替えにしても、外壁塗装や屋上防水以上の出費になることもあります。今回はこれら「建築設備」の更新にどのくらいの費用がかかるのかを取り上げてみたいと思います。

出費の大きい設備更新ランキング

建築設備の更新は、何かと出費が嵩みます。そして各設備には寿命があり、建築躯体の寿命よりも短い場合が多いのです。例えば各戸に水を供給するポンプ類は10年程度で寿命を迎えるものもあります。エアコンや給湯器の寿命も10~15年程度ではないでしょうか。機械物の寿命には個体差があり、使用頻度、使用環境、使い方などでも変わってきます。一概にこの機器の寿命は○年とは言えないのですが、ここでは私の経験と独断と偏見で大まかな数字を紹介します。 以下、出費額の多そうなものから順に、その寿命と費用を交えて紹介しましょう。

◎1位 エレベーター(500万円~1000万円以上)

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なんといってもEVの更新にはお金がかかるという印象ですね。EVが付属しない物件も多々ありますが、付いていたらまず費用の認識が必要です。設備機器類の更新までの期間は20~25年程でしょうか。

費用は大きさ、高さ、更新内容によって変化しますが、最低でも500万円以上、通常は1000万円以上の出費を覚悟しておいた方が良いと思います。EVのメンテナンスに関する詳細は以前のコラムでも紹介させていただきましたので参考にしてください。

◎2位 給排水配管設備(200万円~)

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EVの更新とどちらの出費が大きいか迷ったのですが、一応2位とさせていただきました。配管には、給水や給湯、汚水排水、雑排水、雨水排水などの種類があるのですが、これら全てを一度にやる必要が無いケースもあります。管内を流れる流体によって配管の種類が違うので、寿命も異なるからです。

そして最近では、管種によっては長寿命のものも増えてきています。特に近年の集合住宅では「さや管ヘッダー」と呼ばれる配管方式が主流であり、この方式だと配管自体の長寿命が期待でき、配管が寿命を迎えても取り換えが容易にできます。

問題なのは、20年以上前に施工された鉄管や銅管、鉛管などの配管です。さすがに今の時代、給水系統に鉛管を使っているような古い物件はごくわずかですが、鉄管、銅管はまだまだ現役で活躍しているものと思われます。これらの管は錆の発生や浸食により管が使えなくなってきます。その場合、住人が日々使用している状態では取り換え作業ができないので、あらかじめ新配管を施工した後に切り替える必要があります。

通常、建物内のパイプスペースには空きが無いことが多く、建物の外壁沿いに露出配管することになるため、費用も大きくなる傾向になります。配管の寿命は一般的な鉄管の給水配管で25年~30年程度でしょう。3階建て12戸程度の建物の場合、給水配管のやり替えだけでも最低で200万円程度必要になります。

◎3位 浴室設備(100万円~)

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築古の物件で見られる「バランス釜」や、トイレ、洗面所、お風呂が一体となった「3点ユニットバス」などは浴室設備として不人気です。浴室のリノベーションを行うケースも増えてきてはいますが、費用が大きくなるので簡単にはできません。

1室程度のリノベーションであっても、最低でも100万円は必要でしょう。数室を一気にやるとなると前出のEVや配管工事以上の費用が必要になってきます。3点ユニットのトイレだけでも風呂と分けたいという要望もありますが、これはなかなか良い計画ができる物件は少ないでしょう。

これは、なぜ新築時に3点ユニットにしたのかを考えればわかります。トイレを独立させるスペースが取りにくかったからです。もし仮にトイレを独立させるスペースを確保できても、工事を行うのはお奨めできません。この工事は出費が大きくなるからです。やり方にもよりますが、ざっと100万円は覚悟すべきです。100万円かけても家賃額UPは難しいのではないでしょうか。むしろ家賃を1万円でも下げた方が収益的に有利だと思います。

◎番外編 浄化槽

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公共下水道が未整備の地区があります。特に地方都市で郊外へ行くとまだまだそういった地区が存在します。また、以前は公共下水道が未整備だったが、現在では整備されたという地区も多くあります。

こうした地域の物件では新築時に個別に「浄化槽」を設置し、排水を一旦そこにためこんで、排水を浄化した後に近隣の河川や海に放流しています。別にそのままでも良いのですが、浄化槽を設置しているとメンテナンス費が発生します。基本は年に1回の汲み取りが必要で、状態確認が年3回必要です。

その費用は大家さんが負担するので、余計な経費になるのです。もし浄化槽を廃止して公共下水道へ直接排水できればメンテナンス費は不要になります。直接排水に切り替えたい場合は、管理地方自治体に申請すればよいでしょう。

小さなアパートでも年間で10万円以上の費用が削減できますので検討の余地はあります。公共下水道への配管工事が必要になりますのでその費用がどの程度かを試算して、費用対効果が大きければ是非検討すべきでしょう。安くできる場合、50万円以下でできることもあります。

費用対効果の大きい設備更新は?

続いては、「意外に低予算でもできる設備更新」について触れてみます。

費用対効果が大きいものではキッチンが挙げられるのではないでしょうか。キッチン更新はファミリー物件でも材工込み10万円程度で交換できます。キッチンが汚いとそれだけで嫌がる人は多いです。特に女性は気になるようですね。新品のキッチンは部屋の雰囲気も良くしてくれますのでおすすめです。

その他、インターホンの更新も費用対効果は高いでしょう。築古物件であると呼び鈴だけの場合が多く、良くてもインターホンだけの物件があります。今の時代、カラーモニター付きのインターホンでも1万円程度で購入できます。材工込みでも2万円の出費で済むでしょう。セキュリティーについては敏感な昨今の入居者には必要なものです。

洗浄便座も最近は普及率が高い設備です。これも物自体だけであればで交換可能です。最近の物はほとんど全てのメーカーや機種に対応できるようになっているので便利です。洗浄便座に関しては取り換えに特別な技術も要らないので誰でもできます。ただ、新規で取り付ける場合は電源用のコンセントが必要になりますので、トイレ内にコンセントが無ければが必要になります。

エアコンも設備更新が必要な機器です。10年程度で壊れるものもありますが、20年使えるものもあります。ただ、エアコンの故障は真夏の使用機会が多い時期によく壊れます。こうした場面では入居者からの即時対応が望まれますので大変です。既に壊れそうなエアコンは入退去時のタイミングで交換してしまうのが良策です。シーズンオフであればも安く買えます。

設備の更新で入居率アップも

収益物件の修繕は、どんな優良物件でもいずれ必要になります。そのような修繕の中でも設備系の修繕は周期が短いものが多く、費用も高額になりがちです。

特にランキングでも紹介したようなEV、配管、水回り設備は、数百万円から数千万円単位になることも珍しくありません。行き当たりばったりの計画では資金繰りが難しい状況にもなりかねないので、計画的に修繕費用の積み立てを行う必要があります。

また、設備更新は入居者需要にも影響します。設備が古い物件は、やはり入居者から敬遠されがちです。特に女性は水回りの状況に敏感になる傾向があります。設備更新を行った後であれば、新規入居者募集時には最大のアピールができ、その更新により入居需要が高まることも大いにあり得ます。

実際私の物件でも設備更新にはそれなりにお金をかけて、入居率を上げることに成功しています。お金のかけ過ぎは本末転倒になる危険性がありますが、ある程度の出費であれば思い切ってやってしまう方が結果的に良くなりますので、上手に費用対効果を想定して対応していくべきでしょう。

(戸田匠)