スルガ銀行本店=静岡県沼津市

日銀が発表した6月短観によると、「大企業・製造業の業況判断は前回比3ポイント低下し、2四半期連続で景況感が悪化した」そうです。原材料価格の高騰や人手不足に加え、トランプ米政権の保護主義的な通商政策も企業心理の悪化に影響したようですが、景気は踊り場を迎えたようにも感じます。では、不動産投資市場はどうでしょうか?

2018年も7カ月が過ぎましたが、この間に色々な変化がありました。まずは皆様ご存知の、スルガ銀行によるシェアハウス融資の問題などをめぐる「スルガショック」です。スルガ銀行自体の融資は当然引き締まりましたが、他の銀行も頭金を今までよりも多く要求したり、不動産の評価が厳しくなったりしているようです。

今、不動産投資の現場では何が起きているか?

<区分マンションの現場>

品不足から、個人投資家が買う価格よりも業者が買い取る価格の方が高くなっているという逆転現象が起きています。

新築ワンルームマンションを複数買ってしまい、毎月赤字をなくすにはどうしたらいいでしょうか? という方の相談に乗る中で、ある仲介業者さんが相場よりも0.5割程度高く買ってくれるお客様を見つけてくれて、残債を支払うことができました。購入してくれたお客様は、なんと買取業者さんでした。こんな高い価格で買って、出口はどうするのかしら? と不思議でしたが、聞くところによるとすごい裏技(?)が…。

どういうことかというと、利回りは良いけれど、古かったり都心から遠い物件と、利回りは低いけれど、都心で新しい物件をセットで仲介しているようなのです。確かにお互いの欠点を補完していますね(笑)。

買取業者さんもなかなか良い物件にめぐり合えないので、いろいろ工夫し、ある程度のリスクを取って買っているようです。買う方は投資初心者の方が多いようで、4~5戸買っている方などもいるようです。

また、スルガ銀行の融資が止まったことで一棟マンションでの仕事がなくなったいわゆる三為業者さんが、区分マンション市場に鞍替えしているという話も聞きます。新築・築浅区分マンションはまだまだ融資が付きますし、総額が小さいのでサラリーマンにも手が届く金額です。一棟マンションでの手法を区分マンションでやり始めたということです。

これには注意が必要です。ワンルーム投資で失敗した人が高値で売りに出していて、それを三為業者が買い、これから不動産投資を始める人に、さらに高く売りつける、という負のスパイラルが起きているように感じます。

<一棟マンションの現場>

大手仲介会社さんの話ですが、一棟マンションは全体的に品不足のようです。買取業者さんは売るものがなくなっているので、利回りが低いものや築年数が古いもの、レジデンスだけではなく事務所や店舗ビルも買い取り始めています。

また、ある大手買取業者の物件を買うのは、70%以上が買取業者さんだとか…。先に述べた区分マンションと同じですが、一棟ものはそれ以上に「売るものがない」ようです。

転売業者さんは常に物件を仕入れて売り続けなくてはいけないという宿命を背負っているので、薄利でも買っては売ることを続けざるを得ないのです。私の鑑定事務所にも、「鑑定がらみで何か売り物件が出たらぜひ紹介してください」という連絡がよく来ます。

個人の投資家さんがほとんど購入していないというのも最近の特徴です。フルローンで貸してくれる融資先が少なく、買いたくてもまとまった頭金を用意できないのが原因です。では、実際の最終的な購入者は誰なのでしょうか?

「企業」「相続税対策の地主」などが主な購入者です。この方たちにプラスして、高収入の個人の方がいます。稼いだ現金を不動産に回すのです。企業も富裕層も昔から業績がいいときに利益の一部を不動産に代え、そこから賃料収入を得て収益の安定を図ったり、業績が悪くなると、不動産を売却して本業の赤字を補填したりしています。

サラリーマン投資家には融資を引き締めている銀行も、富裕層や、本業で利益を出している企業にはまだまだ良い条件で融資をし続けているのです。

そのほか、10億円以上の開発案件や一棟ビルも好調です。このレベルになると、購入するのは私募ファンドやREIT、そして年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)となります。特にGPIFの不動産に流れる金額は多大です。不動産の価格を押し上げているのは、GPIFの影響も大きいのではないかと思っています。

このような状況の中、普通の個人投資家、特にこれから始めようと考えている投資家はどう動くべきなのでしょうか?

人によって投資に対する考え方は違ってきます。ある40代の方は今購入して、定年後に賃料収入を得たい、ということでした。そういう人は35年ローンを組んではいけないのです。定年が65歳なら、65歳完済にする必要があります。40歳なら25年で完済するように融資を組むのです。今、持ち出しになっても「賃借人から入る賃料と持ち出し分で、将来の収入を形成中」という投資戦略になります。

また、「定年目前なのに貯金が300万円しかなく将来が不安なので、賃料収入を得たい」という方もいました。こういう場合は少し難しいですが、とにかく利回りの高い物件で、総額の小さい物件を探す必要があります。一部、政策金融公庫の「シニア枠」を使うのが良いかもしれません。

このように、その人によって買うべき物件は違うため、「購入ルール」と現実的な最終目標を決める必要があります。その中でルールに合う物件がない場合は、無理して買わない方が良いと思います。株式投資でいうところの「休むも相場」なのです。でも、常に物件探しは続ける必要はあります。ある時突然、思っていた通りの物件に巡り合えるかもしれないからです。

何から買うべきか

今、フォローしている30代の女性投資家さんの例を挙げると、彼女は「現在は会社員なのでそれなりの収入がありますが、10年後には会社を辞めて、あまりもうからないけれど自分の好きなことを仕事にしたい。そのために、今から投資不動産を購入し、10年後に月に20万円の副収入が欲しい」という方でした。また、「自分はDIYも苦手だし、それほど不動産にかける時間もないので、手間のかからない不動産が欲しい」という要望がありました。

彼女には「都内」と「実家のある地方都市」で、区分マンションをそれぞれ複数購入することを勧めました頭金を多めにした無理のない買い方のプランです。都内は利回りが低いですが、地方都市の物件は比較的利回りが高いので、なんとか入って来る賃料で支払っていけます。地方都市で選ぶ物件は将来に渡って価値が下がりづらいなど、かなり吟味して購入しています。

10年後すべて払い終えた時、彼女はまだ40代ですが、好きな仕事と副収入を手に入れることになります。利回りの低い都心と、利回りが比較的高い地方を組み合わせるのは、上記の買い取り業者さんの手法と同じですが、地方を買う場合は実家があるなど、よく知っている地域の不動産を選んでいます。

物件不足で以前よりも厳しくなった融資環境の今から投資を始める方は、総額の小さな物件を購入し、市場調査から管理会社探し、入居者探し、ステージング、運営など一度すべてのことを経験することです。

総額の小さい不動産は300万円台からあります。例えば、ある投資家の方が先日購入した区分マンションは、神奈川県内の私立大学がある駅から徒歩1分。1991年に建てられた物件でした。空室で購入したので、入居者が決まるまで、一通りのことが経験できました。次の段階として、築古戸建の購入に向かって物件探しをしています。

<練習物件の例>

・300万円~500万円くらいの区分マンションもしくは戸建

・1Kの場合は空室。ファミリーの場合は賃借人付き

・1Kは駅10分以内

供給過剰地域の方が練習としては良いです。区分で「ファミリーの場合は賃借人付き」という意味は、ファミリー物件は本来実需向けなので、空室よりも安く買えるからです。入居者が出たらリフォームして高く売却することも可能です。

まとめると、

1.自分の中で購入する物件のルールを作る

2.休むも相場。無理して買わない

3.物件探しは続ける

4.これから始めようと考えている投資家はとにかく小さな物件、スモールステップから

これらのことを守るのがいいと思います。

大家力を十分付けてから少しずつステップアップすることが、失敗せず、どんな時代でも生き残れる最強の投資家への道だと思います。

(浅井佐知子)