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本記事では、札幌・仙台・広島・福岡の「地方四市」での不動産投資について検証していきます。

本題に入る前に、まずは2018年3月に発表された公示地価を分析してみましょう。結論から言うと、2013年を底に上昇基調に転じた地価のトレンドをさらに強める内容となりました。主な論点を整理すると以下の4つに集約できます。

1.全国住宅地の公示地価は、リーマンショック以降初めて横ばいから上昇に転じた

2.全国商業地の公示地価は3年連続で上昇し、上昇基調を強めている

3.三大都市圏は「大阪の住宅地」を除き、上昇基調を強めている

4.地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)は住宅地3.3%、商業地7.9%と上昇速度が速まっている

全国平均で住宅地の価格が上昇するという現象は、リーマンショック以降初めてのケースです。もっとも、上昇率はわずか0.3%ですから、平成バブル時のように全国の多くの地点で地価が異常に上昇したような現象ではありません。

しかし、少なくとも上昇基調に転じたという意味では大きなエポックになる発表だと言えると思います。また、全国商業地の地価は3年連続で上昇し、上昇率は1.9%と増加基調が強まっています。

メディアによる報道で、地価はリーマンショック後の2010年頃からこれまで「回復基調」といった表現が多用されてきましたが、実際は2013年までは地価の下落率が縮小する状態にあっただけで、下落していることには変わりがありませんでした。

東京、大阪、名古屋の三大都市圏の地価は、大阪の住宅地が対前年比で横ばいの状態ながら上昇基調は強まっています。とりわけ東京の住宅地は対前年比で3.9%の上昇、商業地は同6.4%の上昇を記録し、23区内の新築マンションの平均価格は7000万円を超える高騰ぶりを示しています。

不動産の価値は「ひととのつながり」で決まる

不動産投資を考える際、三大都市圏での投資を中心に検討することはいわば鉄則と言ってよいと思います。日本は戦後高度成長期を経て常に地方から都市部へと大量の人口移動が継続して行われてきました。不動産は基本的に「ひと」と繋がるビジネスです。オフィス然り、マンション、アパート、商業施設、ホテルと、どの用途をとっても「ひと」が介在する施設であることが不動産ビジネスの根幹です。モノを補完する物流施設とてモノを使う「ひと」が存在しないかぎり成り立たないビジネスです。

そうした意味で、三大都市圏において不動産投資をすることは中長期的な観点からみても理にかなった投資であることは自明です。しかし、いくら三大都市圏が良いと言っても、地価は平成以降、「一方的な値上がり」も「一方的な値下がり」もないかわりに、短期間の間で上下動を繰り返す投資対象になりました。

株式投資でも一緒ですが、上がりすぎた株式を買ってしまうとその後の値下がりリスクを考慮せずにはおれません。不動産投資においても、自らの資産ポートフォリオの中である程度の地域分散を行うことも、これからは考えていったほうがよさそうです。

検証、地方四市への不動産投資はアリか?

いま、投資対象になり得るエリアとして注目を集めているのが、冒頭に掲げた4つの論点の中の4番目、地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)です。それぞれの都市に投資をする際には、個々の物件の検証も必要ですが、それ以上に重要なのが各都市の現状と今後の成長可能性です。じっくり見極めてみましょう。

地方四市の人口・地価に関する統計一覧(出典:国立社会保障・人口問題研究所、各市統計資料、2018年地価公示、公示地価1983年から2018年の数値での分析より作成)(クリックで拡大)

◎札幌…商業系不動産への投資に勝機

札幌市は人口195万2000人(2015年)の北海道の中心都市です。1980年には人口は140万人あまりでした。今後はどうなるでしょうか。国立社会保障・人口問題研究所の調べによれば、2045年の札幌市の人口は180万人にまで減少することが見込まれています。とりわけ2045年には、若年人口(14歳以下の人口)の割合が10%を切って9.2%まで低下、生産年齢人口は地方四市の中で最低の51.1%まで縮小してしまいます(現状で63.7%)。つまり人口の高齢化が進んで、若い層が大きく減少するということです。 

地方四市の人口変化予測(出典:国立社会保障・人口問題研究所)(クリックで拡大)

一方、札幌市の人口の出入りはどうでしょうか。東洋経済新報社調査の人口移動ランキングでは、2016年における人口の社会増(転入者と転出者の差)と自然増(出生数と死亡数の差)の合計を1000人当りの人数で表していて、その数値によれば128.2人。四市の中では3番目となります。札幌市は幅広く北海道内から人を集めることに成功しているということになります。

公示地価は、中央区で坪当たり137万7922円と、対前年比で9.1%もの大幅な上昇を見せています。中央区のような市内中心部では、現在、オフィスマーケットが払底しています。札幌市のビジネス地区におけるオフィスビル空室率は2018年6月現在で2.3%と史上空前の低い数値になっています。また市内のインバウンド(訪日外国人)の宿泊数も延べベースで250万9000人泊と上昇が続いているため、ホテル用地などを物色する動きも目立っています。

住宅地のほうは北区や豊平区で対前年比4%強の値上がりとなっていますが、札幌市全体の公示地価の推移をみれば、1983年から2018年の35年間でピークは1991年の坪当たり226万4502円。ボトムは2013年の31万722円です。札幌は今後の人口推移を見ても住宅系はやや厳しく、むしろ人口の社会増とインバウンドの隆盛を見越した商業系不動産への投資が良いのではないでしょうか。

◎仙台…人口は減少傾向、発展に限界が見えた?

仙台市内の公示地価は、今回の発表では平均で坪当たり60万4357円、対前年比で5.68%の大幅上昇となりました。中心部である青葉区では坪当たり113万515円と対前年比で7.3%の上昇を記録。2011年の東日本大震災後に地価は大幅に下がりましたが、2014年の市内平均47万1081円をボトムに地価は上昇傾向を強めています。

仙台市は人口移動ランキングでは141.8人と地方四市では福岡市に次ぐ高水準となっています。この原因はやはり東北地方全体の衰退とそれに伴う仙台市への人口集中だと考えられます。

仙台市の人口は108万2000人ですが、2045年には92万2000人と15%も減少することが見込まれます。また札幌市と同じく若年人口割合は現在の12.5%から9.2%まで落ち込むことも予想されています。

さらに仙台市はオフィス空室率も5.8%と高く、またインバウンドも四市の中ではもっとも少ない、つまり商業系の発展には今後も限界があるということが見て取れます。

また東日本全体が今後は激しい高齢化の波にさらされることなどを考えると仙台市への不動産投資はあまり得策とは思えないというのが正直なところです。

◎広島市…人口移動は「現状維持」も、観光資源の魅力に期待

広島市は人口が119万4000人。中国地方の中心都市です。地方四市の中では現在若年人口割合が最も高い14.2%を占めます。2045年の推計でも人口は112万2000人と6.1%ほどの減少に留まるとの見方が出ているのも若年層の割合が大きいことに起因しています。

また広島市は人口移動ランキングでも地方四市で最低の120.1人と、「人の出入りの少ない」都市です。若者が比較的多いが移動もしない「現状維持」の都市と言い換えることができるかもしれません。

中国地方の都市は瀬戸内海沿岸に中小規模の市が数珠つなぎ状に並んでいて、それぞれの都市が大企業の工場などを擁し、企業城下町の色彩が強いようです。したがって広島市に人口が集中するコンパクト化を期待することにはやや無理がありそうです。

インバウンド需要は原爆関連施設のみでなく、宮島神社など瀬戸内海沿岸が今後一大観光ゾーンとなる可能性が高いだけに、「観光」という面での不動産には明るい材料の多い都市といえるでしょう。

地価は広島市平均で坪当たり76万7586円。対前年比で2.82%の小幅な伸びに留まっています。ボトムは2012年の61万9128円ですからすでに24%ほどの伸び率になっています。「出ていかない」若年需要を取り込んだ住宅系やホテル系の投資に触手が動きそうです。

◎福岡市…好条件が揃い、成長が見込まれる

福岡市は言わずと知れた九州ナンバーワンの都市です。2011年3月に博多と鹿児島間が開通した九州新幹線は、九州経済に絶大な変化をもたらしました。人口が続々、福岡市に集中したのです。そしてこの傾向はしばらく続くものと考えられます。2015年時点での福岡市の人口は153万8000人ですが、2045年には165万4000人になると予測されており、地方四市の中では唯一成長する都市になっています。

地価は市内平均で105万8659円。対前年比6.16%と大幅な伸びとなっています。中央区や博多区などの商業地では対前年比で9%以上の上昇を記録しています。原因は福岡市の経済の好調さです。福岡市は地政学的にも発展著しいアジアエリアに近く、福岡から東京に行くよりも上海のほうが近いという位置にあります。

またインバウンドも激増しています。市内のインバウンド宿泊者数は271万人泊と地方四市ではもっとも多い数値となっています。博多港には大型クルーズ船が多数寄港し、その数は年間で300回を超え日本一となっています。

また福岡空港に降り立つ外国人も年々増加しており、こうした需要を当て込んだホテルや商業施設への投資は増加傾向にあります。

市内ビジネス地区におけるオフィスビル空室率も2.73%という「貸手市場」の状態にあり、今後はアジア企業のニーズも見込めるなど明るい条件がそろっています。

さらに福岡市の強みは都市全体が常に新陳代謝していることです。人口移動ランキングでも福岡市は162.6人と地方四市の中でも飛びぬけて高い数値を示しており、人の出入りが多いことは住宅などの不動産がよく流通していることを物語っています。

このように考えてくると福岡市は住宅系、商業系ともに不動産投資にとってはチャンスが多い都市と言えるのではないでしょうか。

地方四市は、それぞれの位置するエリアのナンバーワン都市として、コンパクト化がすすむ日本では数少ない不動産投資エリアとして注目されます。総合的に見れば福岡市がもっともバランスがよく、しかも今後の成長性が期待できる都市といえるでしょう。次に、規模は小さいもののバランスが良く、今後も発展の可能性があるのが広島市、ついでオフィスやインバウンド需要を含めた道内全体の需要が見込める札幌市、東北の中心仙台市の順ではないでしょうか。

いずれにしても投資にあたっては、今回ご紹介したようなデータも含めて都市の将来性を良く調査して投資されることをおすすめします。

(牧野知弘)